しかしその日常の裏で、ミケの独占欲と、凛馬の「人に必要とされたい」という想いが静かに揺れていた——。
昼休み、屋上。ミケが凛馬の手を引いて連れてきた。
ベンチに腰を下ろし、ミケがそっとお弁当箱を開ける。中には、色とりどりの可愛らしいキャラ弁が詰められていた。
「にゃ……恥ずかしいけど、凛馬のために朝早く起きて作ったにゃ。食べてくれる?」
ミケの耳がぴょこぴょこ動き、期待に満ちた表情で凛馬を見つめる。
「ミケ、お弁当ありがとう。いただくよ」
「にゃ〜!ありがとうにゃ!じゃあ、はい…あ〜んにゃ!」
箸で掴んだおかずが、凛馬の口元に差し出される。その仕草は、どう見ても飼い主がペットに餌をあげる時のそれだった。
「あらあら、ミケったら堂々としてるわね。凛馬くん、恥ずかしくないの?ふふっ」
いつの間にか、コハクが屋上に現れていた。その後ろから、アオ、ミナ、ヒョウカも続いてくる。
「僕もお弁当持ってきたよ!一緒に食べよ!」
アオは元気よく言いながら、唐揚げを差し出す。
「あの…私も…。よかったら、卵焼き……」
ミナは頬を赤らめながら、小さく微笑んだ。
「…私は別に。ただ、屋上が空いてただけだ」
ヒョウカはそう言いながらも、時折ちらりと凛馬の方を見ている。
「にゃ…みんな、凛馬のこと好きすぎにゃ……」
ミケが少しムスッとしながら、凛馬の腕にしがみついた。
「独り占めはダメよ、ミケちゃん。凛馬くんは……ほら、人気者なんだから」
そんな和やかな空気の中、屋上のドアが勢いよく開いた。
「ねえねえ!噂の人間でしょ?写真撮っていい?」
犬族の女子生徒が、スマホを構えて駆け寄ってくる。
「にゃ!?ダメにゃ!凛馬は保護対象にゃ!勝手に写真撮るのは禁止にゃ!」
「そうよ。本人の許可なく撮影するのは校則違反です」
ミナがきっぱりと言う。
「え〜、じゃあ本人に聞けばいいんでしょ?ねえ、人間くん。写真、いい?」
凛馬は一瞬、言葉に詰まった。全員の視線が集まる。
「……別に、大丈夫だよ」
少しだけ、笑って続ける。
「俺さ、ここでは…“みんなのもの”でいたいんだ。ひとりは、嫌だから」
その言葉に、空気が一瞬だけ止まった。
「にゃ…凛馬…」
ミケの耳がピンと立ち、目が潤む。
「あら…そんなこと言われたら、放っておけないじゃない」
コハクは嬉しそうに笑い、凛馬の頬をつついた。
「わぁ!じゃあ、僕のものでもあるんだね!」
アオが無邪気に抱きつく。
「凛馬くん…優しすぎます…」
ミナは俯きながら、そっと胸に手を当てた。
「……馬鹿だな」
ヒョウカが小さく呟き、ほんの一瞬だけ笑った。
「よし!撮るね!はい、チーズ!」
シャッター音が何度も響く。
「ありがとう!絶対バズる!」
女子生徒は満足そうに去っていった。
「にゃ…凛馬がそう言うなら…いいにゃ。でも!一番は私にゃ!私が飼い主にゃからね!」
ミケが凛馬の首輪を軽く引く。名札には、《飼い主:紅葉ミケ》と書かれていた。
昼休みが終わり、皆が教室へ戻る途中。凛馬は、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
「……元の世界じゃ、誰にも必要とされなかった。だから、ここでは“みんなのもの”って言っておけば……もう一人にならない気がするんだ」
その声は、雑踏に紛れて消えた。5人は楽しそうに笑いながら、凛馬の隣を歩いていく。
そして午後の授業が始まる。凛馬が教室にいるだけで、集中できない生徒が続出し、担任は何度も注意することになった。
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次回、6人の関係深くなります、、、
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