BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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平穏な日常に届いた、一通の警告。ノクス機関からの宣戦布告により、凛馬達は再び戦いを迫られる。


71話 宣戦布告

午後の光が教室に差し込んでいた。いつもの放課後。

ミケが机に突っ伏したまま大きく伸びをする。

「はぁ〜……やっと終わった」

コハクがくすっと笑う。

「ミケ、今日ずっと眠そうだったよね」

「そ、そんなことないにゃ!」

ミナが横から冷静に言う。

「三回ぐらい机に頭ぶつけてましたよね」

「バレてたにゃ……」

軽い笑いが教室に広がる。ヒョウカは窓の外を眺めながら言った。

「最近、静かだな」

アオが頷く。

「そうだね。レオンさんの件もニュース落ち着いてきたし」

ミケが椅子にもたれながら言う。

「まぁ平和なのはいいにゃ〜」

その時、コハクがふと後ろの席に視線を向けた。ツキノが一人、窓の外を見ていた。

ミケが小声で言う。

「ツキノってさ、まだちょっと距離あるにゃね……」

ミナが言う。

「ここに来たばかりですし、仕方ないですね」

ヒョウカが肩をすくめる。

「まぁ……色々思うことがあるんだろうな」

アオがツキノを見る。

「でもちゃんと来てくれてるよね」

ツキノは会話に入らない。ただ窓の外を眺めていた。その横顔は、どこか考え込んでいるようにも見える。

ミケが小さく言う。

「まぁ、そのうち慣れるにゃ」

コハクが笑う。

「そうそう、時間の問題だよ」

その時。ツキノがゆっくり振り向いた。

「……なんだべ」

ミケが笑う。

「なんでもないにゃ〜」

ツキノは少し眉をひそめる。

「変なこと話してないべな?」

「聞こえてた……?」

ツキノは小さく鼻を鳴らす。

「聞こえでるに決まってるべ」

「あちゃ〜……」

コハクが柔らかく言う。

「ツキノ、今日このあと予定は?」

ツキノは少し考えてから答える。

「……特にねぇべ」

ミケが笑う。

「じゃあ一緒に帰るか」

ツキノは少しだけ視線を逸らした。

「……別にいいべ」

そう言いながら、もう一度窓の外を見た。まだ少し距離はある。でも、完全に離れているわけでもなかった。

だがその中で、凛馬だけは少し黙っていた。その様子に、アオが気付く。

「凛馬?なんかボーっとしてない?」

凛馬は少し笑う。

「いや、なんでもない」

そう言いながらも、胸の奥に妙な違和感が残っていた。理由は分からない。

ただ――何かが近づいているような気がした。

 

その夜。凛馬とミケは並んで家に帰った。

玄関で靴を脱ぎながら、ミケが大きく伸びをする。

「はぁ〜……今日も疲れたにゃ」

凛馬が苦笑する。

「授業ほとんど寝てただろ」

「寝てないにゃ!」

ミケはそう言いながらリビングへ向かった、その時——

玄関のポストが小さく音を立てた。凛馬が振り向く。

「……ん?」

ポストの中に白い封筒が入っていた。差出人はない。凛馬はそれを取り出す。

「なんだにゃ?ラブレターかにゃ?」

「絶対違うだろ」

凛馬は封筒を裏返した。そこには小さな黒い紋章があった。

凛馬は眉をひそめながら封を開く。中から一枚の紙が出てきた。

ミケが横から覗き込む。

「なんて書いてあるにゃ?」

凛馬は紙を開く。その瞬間、表情が変わった。

ミケが顔を近づける。

「……どうしたにゃ」

凛馬は黙ったまま紙を見ている。ミケが紙を取って読む。そこにはこう書かれていた。

 

混血の獣人へ

我々はお前を見ている。近いうちに、お前は我々の前に立つことになる。

抵抗するな。もし抵抗した場合、お前の仲間も殲滅する。

龍族も例外ではない。覚悟しておけ。

ノクス機関

 

深い沈黙が落ちた。ミケの耳がぴくりと動く。

「……なに、これ」

凛馬が静かに言う。

「宣戦布告か……?」

ミケはもう一度紙を見る。その目が、少しずつ見開かれていく。

「ちょ、ちょっと待てにゃ!これ……ヤバいやつじゃないかにゃ!?」

ミケは紙を握りしめたまま凛馬を見る。

「普通にヤバいやつだにゃ!?」

凛馬は落ち着いた声で言う。

「……落ち着け」

「落ち着いてられるかにゃ!」

ミケはその場をぐるぐる歩き回る。

「どうするにゃこれ!?どうするにゃ!?とりあえず皆に言うにゃ!絶対言うにゃ!」

凛馬が頷く。

「……ああ。そのつもりだ」

ミケがぴたりと止まる。そして凛馬の服をぎゅっと掴んだ。

「……ほんとかにゃ?もう一人で抱え込んだりしないにゃ?」

凛馬はミケを見る。少しだけ笑った。

「うん。一人で抱え込むのは辞めた」

ミケはしばらく凛馬を見ていた。やがて小さく息を吐く。

「……ならいいにゃ」

ミケは手を離し、軽く手を叩く。

「じゃあ明日、学校で作戦会議にゃ」

凛馬は静かに頷いた。

 

そして――次の日の放課後。教室に全員が集まっていた。

凛馬が机の上に紙を置く。

「これを見てくれ」

ヒョウカが紙を手に取る。眉がわずかに動いた。

「……なんだ、これ」

コハクが横から覗く。

「……ノクス機関?」

ミナの顔が少し青くなる。

「聞いたことない組織です……」

ツキノが紙の下の一文を見る。その声が低くなる。

「……“龍族も例外ではない”?」

教室の空気が一気に重くなった。凛馬が静かに言う。

「昨日、家に届いた」

アオが凛馬を見る。

「え……それって……」

凛馬はゆっくり言った。

「多分、レオンの時みたいに……」

誰もすぐには言葉を返さなかった。沈黙が落ちる。

ミケが小さく呟く。

「……仲間も殲滅?って書いてあるにゃ」

コハクが紙を見つめたまま言う。

「これ……本気で言ってるんだよね」

ミナが震える声で言う。

「かなり危険な相手の可能性があります」

ツキノは腕を組む。しばらく黙ってから言った。

「龍族狙っとるなら……うちも関係ある話だな」

アオが凛馬を見る。

「凛馬……どうするの?」

凛馬は少しだけ黙った。そして言った。

「……戦う」

――その言葉の直後。教室の空気が、わずかに揺れた。

ミケの耳がぴくりと動く。コハクの指先が、ほんの少しだけ止まる。ヒョウカも、一瞬だけ目を伏せた。

頭をよぎるのは――

あの時の光景。音。血。重さ。

ミケが小さく呟く。

「……また、やるのかにゃ」

声は、ほんの少しだけ弱かった。コハクも笑おうとして、やめる。

「正直……怖くないって言ったら嘘だよね」

ミナが静かに言う。

「……前回よりも、危険な可能性があります」

アオは黙ったまま、拳を握っていた。短い沈黙。

――だが。

ヒョウカが顔を上げる。

「……だから何だ」

低い声。

「一度、乗り越えただろ」

その言葉に、空気が少しだけ動く。

「仲間が狙われてるなら――」

言葉が一瞬、途切れる。

「……」

拳がわずかに強く握られる。

「俺たちも一緒にやってやればいいだけだろ」

ミケがゆっくり顔を上げる。

「……そうにゃな!」

拳を握る。

「怖いけど……それでもやってやるにゃ!」

コハクも小さく息を吐いた。

「うん。逃げたら、多分後悔する」

ミナが眼鏡を押し上げる。

「……なら、準備を徹底しましょう」

その時、アオが凛馬をまっすぐ見た。

「凛馬」

凛馬が振り向く。アオは静かに言う。

「僕も凛馬と一緒に戦うよ」

教室が少し静かになる。

凛馬が小さく笑う。

「……言うと思ったよ」

最初は少し驚いたような顔をしていた。だがすぐに笑う。

「ありがとう。無茶すんなよ」

アオが微笑む。

「うん。みんなでなら、大丈夫」

その時——後ろから声がした。

「……やっぱ来たか」

全員が振り向く。教室の後ろの扉のところに、灰谷が立っていた。

ミケが驚く。

「にゃ?灰谷先生?」

凛馬が聞く。

「知ってたんですか?」

灰谷は首を振る。

「いや?ただの勘や」

そして静かに言う。

「長く生きてると分かるねん。嵐が来る前の静かさってやつがな……」

教室が静まり返る。灰谷は凛馬達を見渡した。

「でもな……よく考えろ」

教室の空気が止まる。

「お前ら、分かって言うてるんか?」

その声は、いつもより低かった。ミケが少しだけ顔を強張らせる。

灰谷は一人一人を見る。

「これは遊びちゃうねんぞ?大きい争いはまず間違いなく起こる」

誰も言葉を返せない。

「最悪——死ぬぞ」

ミナが視線を落とす。アオの手がわずかに震える。

灰谷は続ける。

「それにや」

ツキノへ視線を向ける。

「白雪。お前、来たばっかやろ」

「こんなんに巻き込まれる筋合いない」

少し間を置く。

「特に女の子や。無理に前出る必要もない」

教室が静まり返る。誰もすぐには動かなかった。

――だが。ヒョウカが一歩前に出る。

「……分かってる」

短く言う。

「それでも、やる」

その目は、揺れていなかった。

ミケが続く。

「めちゃくちゃ怖いにゃ」

正直な声。でも、顔を上げ、拳を握る。

「でも……仲間見捨てる方が嫌にゃ」

コハクが少し息を吐く。

「正直、私もビビってるよ」

肩をすくめる。

「でもさ、ここで逃げるほど腐ってないよ」

少しだけ笑う。

「それにさ――」

軽く親指で自分を指し、少し顔を上げる。

「勝ったらヒーローみたいでかっこいいじゃん?」

一瞬、空気が緩む。ミケが思わず笑う。

「それはそうにゃ!」

ミナが小さく頷く。

「……合理的ではありませんが、理解はできます」

静かに続ける。

「私は支える側として、最善を尽くします」

アオが一歩前に出る。手は少し震えていた。

「……皆怖いのは同じだから」

正直な言葉。でも、目は逸らさない。

「だから……凛馬を、皆んなを守りたいから」

そして――

ツキノ。少しだけ間を置いてから言う。

「うちもやるべ」

視線は真っ直ぐ。

「龍族狙われとるなら、逃げる理由ねぇ」

一歩前に出る。そして、ぽつり。

「……こいつら、優しいからな。放っとけねぇべ」

「ツキノ……!」

教室が、静かに揃う。全員が前を向いていた。

灰谷はしばらく黙っていた。やがて、小さく息を吐く。

「……なんやお前ら……」

頭をかく。

「その覚悟はどこからくんねん……」

呆れたような、でも少しだけ笑っている声だった。

そして顔を上げる。

「……よし、分かった」

一言。

「そこまで言うなら、止めへん。言っても止まらんやろ」

少しだけ真剣な目になる。

「その代わりや」

全員を見る。

「中途半端な覚悟で立つな」

その一言で、教室の空気が再び締まる。

「死にたくなかったら――強くなれ」

ミケがニヤッと笑う。

「望むところにゃ」

ヒョウカが拳を鳴らす。

「やるしかないな」

コハクが笑う。

「ヒーロー目指すか〜」

ミナが眼鏡を押し上げる。

「では、計画を練りましょう」

アオが頷く。

「みんなで、勝とう」

ツキノが腕を組む。

「面白くなってきたべ」

凛馬はそれを見て、小さく笑った。

――でも。その奥で、何かを背負うように。

「……よし、行こう」




最後まで読んでくださりありがとうございます!
それぞれの覚悟が揃い、いよいよ戦いが始まろうとしています。凛馬達がどのようにノクス機関へ抗うのか、要注目です!
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