それぞれが武器を手にし、自分の戦い方を見つけていく中、凛馬とツキノは別格の力を見せつける。
凛馬達は校舎の奥へと向かっていた。人気のない廊下を進む。突き当たりには地下へ続く階段があった。
アオが少し驚いた声を出す。
「すごい……本当に地下があるなんて……」
ミケが肩をすくめる。
「久しぶりだにゃ」
「前に一回来たよね」
ヒョウカが頷く。
「あぁ、模擬訓練の時な」
ミナが言う。
「学校の公式施設ではないですね」
灰谷が振り返る。
「まぁ裏の施設やな……バレたらめんどくさいかもな」
アオは階段を見下ろす。
「こんな場所……あったんだ」
ツキノが笑う。
「この学校、面白ぇべ」
階段を降りる。コンクリートの壁。地下へ続く通路。
やがて巨大な鉄の扉の前に着いた。灰谷がカードをかざす。
重い音と共に扉が開く。その先には――
壁一面に並ぶ武器。剣、槍、鎖、銃。見たこともない武具。
アオが目を見開く。
「……すごい」
「お前らここから武器選び。自分に合うもん探せ」
ヒョウカが剣を手に取る。
「なるほどな……」
ミナは銃の棚を見ていた。
コハクは鎖武器を持ち上げる。
ミケは棚を眺めながら歩く。
「うーん……」
そして止まる。
「あ……これ」
手に取ったのは鋭い双爪。猫の爪のような武器。
灰谷が頷く。
「一番合っとるな」
ミケがニヤッと笑う。
ヒョウカは短剣を選んだ。
「軽い方がいい。合理的だ」
コハクは鎖を軽く振る。
「これ面白そうじゃん!」
ミナは小型銃を確認していた。
「遠距離支援向きですね。ぴったりです」
アオは迷っていた。
「僕……あまり戦うの得意じゃないから」
灰谷が棚を指差す。
「なら……あれやな」
「え?」
「お前は周り見れてるからな。盾とかええんちゃうか?」
アオが盾を手に取る。少し重い。
「似合ってるにゃよ!」
アオが少し笑う。
「……守れるかな」
凛馬が言う。
「あぁ。きっと守れるよ」
その時、コハクがふと聞いた。
「凛馬は選ばないの?」
凛馬は静かに掛けてある双剣に手をかけた。
そして――双剣を抜いた。金属音が地下に響く。
「もう持ってるからな」
「あぁ、そうだったそうだった……」
その隣でツキノが指先を軽く振る。空気が冷え、氷が静かに広がった。
「うちはこれで足りるべ」
灰谷が言う。
「凛馬と白雪は別枠や」
「別枠?」
灰谷は静かに言った。
「あの二人はもういつでも戦えるけど、お前らはまだ準備中や」
ヒョウカが拳を握る。
「……なるほど」
灰谷が手を叩く。
「ほな、実戦や」
「え!いきなりにゃ!?」
灰谷は指を向けた。
「凛馬」
そしてもう一人。
「ツキノちゃん」
凛馬が少し眉をひそめる。
「……マジでやるのか?」
視線はツキノへ。
「まだ来たばっかだろ」
ツキノはその言葉を聞いて――
ニヤッと笑った。
「関係ねぇべ」
空気が少し張り詰める。指先を軽く振る。空気が冷え、氷が静かに広がった。
「ちょうどいいべ。どんくらいか、試したかった」
ミケが目を丸くする。
「やる気満々にゃ……」
コハクが苦笑する。
「ツキノ、意外と好戦的だね……」
凛馬は小さく息を吐いた。
「……分かったよ」
2本の木刀に手をかける。
「怪我すんなよ」
ツキノは肩をすくめる。
「それはこっちの台詞だべ」
氷が槍の形を取る。
「ほな、始め!」
次の瞬間——
ドン!!
凛馬の踏み込みで床が砕け、空気が爆ぜた。
「……え」
ツキノの足元から氷が広がる。床が一瞬で凍る。
凛馬が滑るように横へ跳ぶ。氷柱が突き出す。
「……速い」
凛馬が一気に距離を詰め木刀を振る。氷が砕け散る。
ミナが呟く。
「レベルが違う……」
「あのレベルになるのは無理にゃね……」
ツキノが笑う。
「なかなかやるべ」
氷が吹き上がる。吹雪のような氷片。凛馬が突っ込む。衝撃波が地下に響く。ミケ達は完全に見入っていた。
その時。灰谷がミケの頭を軽く叩く。
「あれはな、参考にしたらあかん」
「にゃ?」
灰谷が言う。
「お前らはお前らの特訓や」
ヒョウカが拳を握る。
「……そうだな」
「私達は私達の戦い方を、ですね」
「なんか、燃えてきたね!」
「皆……集中しよう」
全員が訓練に戻る。地下訓練所には武器の音が響く。
その奥で――氷と衝撃がぶつかる。氷柱を砕きながら、凛馬が踏み込む。
「……速いな」
ツキノの槍が横薙ぎに走る。凛馬がそれを弾き、距離を詰める。
ガキンッ!!
氷と刃がぶつかり、破片が散る。
ツキノが笑う。
「やるべな」
凛馬も口元を上げた。
「そっちこそ」
次の瞬間――
ドン!!
踏み込みがさらに深くなる。床が砕ける。
ミナが息を飲む。
「……さっきより出力が上がってる」
ツキノの足元から氷が一気に広がる。さっきよりも速く、鋭く。
凛馬がそれを“砕いて”進む。
「……っ!」
ヒョウカが目を細める。
「対応してる……?」
ミケが呟く。
「さっきより楽しそうにゃ……」
凛馬の動きが、明らかに変わっていた。速さも、踏み込みも――
迷いが消えている。ツキノが槍を回す。
「ほう……」
氷の密度が上がる。吹雪のような氷片。だが凛馬は止まらない。砕き、踏み込む。
その動きに、ツキノの目が細くなる。
「……ええな」
凛馬が双剣を振り抜く。
「楽しいな、これ……!」
ツキノが一瞬だけ笑った。
「やっと本気出してきたべな」
空気が変わる。氷がさらに厚く、鋭くなる。凛馬も踏み込みを強める。
衝撃が、地下を震わせる。
ミナが小さく呟く。
「……まだ上がるんですか……」
ツキノはその中で、冷静に見ていた。
「……なるほどな」
一歩引く。凛馬の一撃を受け流す。そして――
小さく呟く。
「やっぱり――」
視線が変わる。
「凛馬さんは、守る側やねぇな」
氷が一気に収束する。槍の先が凛馬へ向く。
「……やばいな、この力」
凛馬の足が一瞬だけ止まる。
「守る必要、ないべ」
静かな断定だった。
次の瞬間――
氷と刃が、真正面からぶつかった。
その様子を、灰谷だけがその戦いを見ていた。
「……ええやん」
そしてゆっくり視線を動かす。地下訓練所のあちこちで、武器の音が響いていた。
ミケが双爪を振るう。目の前の訓練用マネキンに飛び込む。
壁を蹴り、一気に距離を詰め、鋭い連撃。
灰谷が頷く。
「ミケ、ええ動きや」
ミケがニヤッと笑う。
「当然にゃ!一応戦ったことあるにゃ!」
少し離れた場所では、コハクが鎖を振るう。鎖が円を描き、マネキンの腕を絡め取り、一気に引き寄せる。
灰谷が目を細める。
「コハク、センスあるな。捕縛向きや」
コハクが笑う。
「ほんと?」
別の場所では、ヒョウカが短剣を構える。一歩踏み込み、
そして――マネキンの背後へ回り、鋭い一撃。
灰谷が低く言う。
「ヒョウカ、お前かなりやれるな」
ヒョウカが肩をすくめる。
「まぁな」
少し離れた場所。パンッと銃声が響く。
ミナの弾は、マネキンの中心を少し外れていた。
ミナが眉をひそめる。
「……また外しました」
灰谷が腕を組む。
「考えすぎや。もっと楽に考え」
その隣ではアオ。盾を構えて、飛んでくる軽い弾を防いでいた。
カンッ、カンッと盾に当たる音が響く。アオは必死に防ぐ。
だが――コツン。
「痛っ……」
小さな金属片がおでこに当たる。コハクが思わず笑う。
「あらら〜」
アオが少しおでこを押さえる。
「だ、大丈夫……」
少し恥ずかしそうに言う。
「次は防げるから……」
灰谷が言った。
「焦らんでええ。お前らはこれからや」
その奥では――
凛馬とツキノの戦いが続いている。
氷が砕ける、双剣が閃き、衝撃が地下訓練所に響く。
ミケが思わず振り向いた。
「……やっぱすごいにゃ」
ヒョウカも目を細める。
「別格だな」
コハクが小さく笑う。
「負けてられないね」
ミナが静かに言う。
「ええ。私達も追いつきましょう」
アオも盾を握り直す。
「絶対役に立ってみせる……!」
ツキノの氷が爆ぜる。凛馬が突っ込む。その衝撃が、地下訓練所に響く。
ミケが爪を構えた。
「……燃えてきたにゃ」
「もう一回やるぞ」
「よし、いくよ」
それぞれがマネキンへ向き直る。武器の音が再び響き始めた。
灰谷がそれを見て小さく呟く。
「……ええチームやな」
灰谷は小さく笑った。
「思ったより粒揃いやな」
地下訓練所には、それぞれの戦う音が響いていた。
しばらく経った頃、氷が砕ける音が止んだ。地下訓練所に静けさが戻る。凛馬とツキノは少し距離を取って立っていた。
ツキノが肩を回す。
「……強ぇべな、凛馬さん」
凛馬が双剣を収める。
「そっちこそ」
ツキノが笑う。
「うち本気出したら凍らせるところだったべ」
凛馬が少し笑う。
「それは困るな」
ツキノが槍を肩に担ぐ。
「でも面白かったべ。久しぶりに本気で戦った気がする」
「あぁ、いい経験になった」
しばらくの沈黙の後、ツキノが言う。
「凛馬さん」
「ん?」
ツキノがニヤッと笑う。
「またやろうや、今度は本気だべ?」
凛馬も笑う。
「もちろん」
ミケが後ろから言う。
「なんか仲良くなってるにゃ」
「まぁ、いいことだな」
「なんか戦った後って仲良くなるよね」
ツキノが肩をすくめる。
「まぁそういうもんだべな」
凛馬が言う。
「次は俺が勝つからな」
「望むところだべ」
一方その頃——
暗い部屋に巨大なモニターが光っていた。映像に映っているのは――
教室と、凛馬達の姿。
「皆で戦う」
その言葉で、映像が止まった。
暗い部屋にいたのは四人。
神城コクヨウ。そして――
獅堂カイル、霧崎レイナ、鷹城ガイ。
コクヨウが静かに言う。
「見ただろう?抵抗する気のようだ」
カイルが腕を組む。
「想定内だ。奴は王を殺した男だ」
レイナは黙ったままだった。ガイが一歩前に出る。
「なら話は簡単だ!先に俺が行って混血ぶっ潰してやるよ!」
その時――
「待て」
コクヨウの声だった。ガイが止まる。
コクヨウはモニターを見つめる。そこには凛馬の仲間達。
「敵を崩すなら、順序がある」
静かな声。カイルが眉をひそめる。
「……どういう意味だ」
コクヨウはゆっくり言った。
「彼は一人で立っているわけではない」
レイナが視線を向ける。
「ならば?」
コクヨウはわずかに微笑む。
「支えを崩せばいい」
空気が重くなる。ガイが口元を歪める。
「……仲間からってわけか」
コクヨウは否定しない。
「戦争というのはな。勝つことが全てだ」
カイルは黙る。レイナも何も言わない。
――違和感はある。だが、否定できる材料もない。
コクヨウはモニターに映る凛馬を見つめる。
「英雄というものは、一人では成立しない」
その声は静かだった。
「ならば――その足を折ればいい」
部屋が静まり返る。ガイは笑っていた。
「面白いな!誰から行く?」
コクヨウの目がわずかに細くなる。
「そうだな……」
そして、淡々と告げた。
「まずは――近いところから」
モニターが暗転する。
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