BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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新たな拠点を手に入れ、少しずつチームらしくなっていく凛馬達、そしてツキノ。
穏やかな時間の裏で、確実に近づいていた視線があった。


73話 開戦前夜

地下訓練所に響いていた武器の音が、ふっと止まった。

そして、灰谷が手を叩く。

「よし、今日はここまでや」

張り詰めていた空気が、ゆっくりと緩む。ミケが大きく息を吐いた。

「はぁ〜……疲れたにゃ」

コハクも鎖を肩に担ぐ。

「本格的だったね」

ミナは銃の状態を確認しながら頷いた。

「いい訓練でした」

灰谷が武器棚を顎で指す。

「気に入った武器は持って帰ってええ」

ミケの目がぱっと輝く。

「ほんとにゃ!?」

コハクも笑う。

「やった!」

灰谷は肩をすくめる。

「どうせ――もう始まってるようなもんや」

一瞬、空気が沈む。

「さっきも言ったけど気ぃ抜いたやつから、死ぬで」

ヒョウカが短剣を腰に差した。

「……現実的だな」

ミナは無言で銃を握り直す。

「もっと練習しないと……」

アオは盾を持ち上げ、少し顔をしかめる。

「思ったより重い……」

ツキノがくすっと笑う。

「守る人は必要やべ」

凛馬が軽く頷く。

「似合ってるよ」

アオが少しだけ照れた。

「……ちゃんと守れるかな」

「あぁ、絶対守れるよ」

その言葉に、アオは小さく笑った。

「ほな次や」

ミケが首を傾げる。

「次?」

灰谷は出口へ歩き出す。

「拠点や」

 

外に出ると、夜の空気が冷たかった。数分歩き、辿り着いたのは学校の外れの古い倉庫。

錆びたシャッターを押し上げる。ギィ……と重い音。

中は広いが荒れている。壊れた棚、古い机、埃の積もった床。

ミケが目を輝かせた。

「秘密基地みたいにゃ!」

コハクも笑う。

「いいじゃん!ここ拠点にするの?」

灰谷が腕を組む。

「今日からここが仮アジトや」

ヒョウカが一瞥する。

「……悪くないな」

ミナも頷いた。

「拠点としては十分です」

灰谷がふっと笑う。

「せっかくやし、チーム名でも決めるか」

「いるかにゃ?」

コハクも続く。

「いらなくない?」

「絶対いるわ!!」

ツキノが肩をすくめる。

「楽しそうだべ」

灰谷が考え込む。

「チーム名は――」

ミケが腕を組む。

「なんかダサそうだにゃ〜……」

「まだ言ってへん!」

「……暁の牙」

全員が目を合わせる。

「ダサいにゃ」

「却下」

「ナシだべ」

「お前ら容赦ないな!?」

凛馬が苦笑する。

「名前はまた今度で……」

灰谷はため息をつく。

「……そうやな」

ポケットから小さな機械を取り出した。

「それと……これや」

机に人数分並べる。

「トランシーバーや」

コハクが目を丸くする。

「おお、それっぽい!」

ミナが手に取る。

「通信機ですね」

灰谷が頷く。

「これ鳴ったらな――」

灰谷は一瞬言葉を選ぶように言葉を区切った。

「“誰か危ない合図”や」

空気が一段沈む。アオの表情がわずかに強張る。

「……そこまで危ないの……?」

灰谷は軽く笑う。

「用心や」

ツキノが機械を見つめる。

「……これ、何だべ?」

一瞬の沈黙の後、コハクが吹き出す。

「え!?知らないの!?」

「機械触ったことねぇべ」

ミケが笑う。

「ツキノ原始人にゃ!」

「違うべ!」

ミナが優しく説明する。

「離れていても話せる道具です」

ツキノの目が少し丸くなる。

「……すげぇべなぁ」

凛馬は受け取り、軽く頷く。

「……分かりました」

灰谷が言う。

「誰か襲われたら、すぐ連絡や」

ミケがニヤッと笑う。

「ヒーロー参上するにゃ!」

灰谷は肩をすくめた。

「まぁ、そういうこっちゃな」

そして、シャッターが閉まる。

「今日はこのへんにしとくか」

「「先生、さようなら〜」」

「ガキかお前らは」

それぞれが帰路についた。

「気をつけろよ、ほんま」

 

夜の街。四人は並んで歩いていた。

ミケが伸びをする。

「疲れたにゃ〜」

アオも笑う。

「でも楽しかったね」

ツキノが頷く。

「ええチームだべな」

ミケも頷く。

「ほんとにゃ」

ツキノがふと凛馬とアオを見る。

少し首を傾げる。

「そういえば、凛馬さん」

「ん?」

「アオさんと……付き合ってるんべ?」

凛馬とアオがギクリとする。

「なんか、そこの2人だけ空気やけに柔らかいから……」

ミケがニヤッと笑う。

「急に核心いくにゃ〜」

アオの顔が一気に赤くなる。

「え、えっと……」

凛馬が少し困ったように笑う。

「……まぁ、そうだな……」

ツキノが頷く。

「やっぱりか」

そしてニヤリと笑う。

「あつあつだべなぁ」

ミケが吹き出す。

「それが言いたかっただけにゃ!?」

アオは完全に真っ赤だった。

「なんでそんな落ち着いてるの……」

ツキノが肩をすくめる。

「ええね、そういうの」

凛馬が苦笑する。

「……急に恥ずかしくなってきた」

夜風が吹く。

――その一瞬、街灯の下で影が揺れた気がした。

それに誰も気づかないまま、四人は歩き続ける。

 

一方その頃。コハクとミナ、ヒョウカは別の道を歩いていた。

「今日は疲れたね〜」

「ええ」

ヒョウカは無言で歩く。その時、ミナの足が止まる。

「……」

コハクが振り向く。

「ミナ?」

ミナは周囲を見渡す。

「……今、一瞬だけ」

少し迷うように間を置く。

「視線を感じた気がして……」

ヒョウカもわずかに視線を巡らせる。

(敵か……?)

だが、何もない。

コハクが笑う。

「気のせいじゃない?」

ミナも小さく頷く。

「……そうかもしれません」

(……気のせいだな)

違和感は消えない。そしてそのまま、分かれ道に差し掛かる。

「じゃあここで!」

「また明日」

ヒョウカは短く頷く。

「あぁ」

二人が去る。ヒョウカは一人、歩き出す。

静かな住宅街。

――のはずだった。ヒョウカがしばらく歩いた後。

「……一人か」

足が止まる。振り向くと、電柱に一つの影。そこに立っていた男が、ゆっくりと姿を見せる。

鷹城ガイ。鋭い目と、荒々しい気配。

ヒョウカが短剣を抜く。

「……誰だ」

ガイが一歩踏み出す。

「探す手間が省けた、混血の仲間だな?」

(混血……凛馬の事か)

「そうだが?」

ガイが笑う。

「なら簡単だ」

肩を鳴らす。

「……試させろ」

ヒョウカの目が細くなる。

「理由になってない」

ガイが肩をすくめる。

「そりゃそうだろ、難しいこと分かんねぇし」

一歩。それだけで空気が変わる。

「でもな――」

一瞬だけ、目の色が変わる。

「強ぇかどうかは、分かる」

次の瞬間――

音が消えた。気づいた時には、目の前にいた。ガイの拳が振り抜かれ、ヒョウカの短剣がわずかに光る。

静かな住宅街に、戦いの火蓋が、切って落とされた。




最後まで読んでくださりありがとうございます!
今回は束の間の日常回……と思いきや、ノクス機関の手はついに仲間に届いてしまいました。
次回、ヒョウカVSガイ開戦です。
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