BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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突如ヒョウカの前に現れた、ノクス機関の男・鷹城ガイ。
圧倒的な力と本能的な戦闘センスにヒョウカは立ち向かう。


74話 猛犬

ドンッ!!

ガイが地面を蹴った。アスファルトが爆ぜる。

迷いのない突進。ヒョウカの目がわずかに見開いた。

(速い――)

拳が迫る。だがヒョウカは咄嗟に体をひねる。拳が頬をかすめた次の瞬間――

ドゴォンッ!!

背後の壁が粉砕された。コンクリート片が夜空へ散る。

ヒョウカはそのまま後方へ跳び、短剣を構え直した。

「避けたか!」

ガイが楽しそうに笑う。ヒョウカは静かに言う。

「……速いな」

ガイが首を鳴らした。

「そりゃ、どうも」

次の瞬間——再び地面が砕ける。ヒョウカの目の前にガイがいた。

「っ――!」

ヒョウカは短剣を滑り込ませる。

キィンッ!!

だが、なんとガイが拳受け止めていた。ヒョウカの目が細くなる。

(拳で……受けた?)

ガイがニヤリと笑う。

「軽いなぁ、女」

振り下ろされる拳。ヒョウカは後ろへ跳ぶ。

ドゴォォン!!

アスファルトが陥没した。衝撃だけで足元が揺れる。

(まともに受けたら終わる)

ガイが笑う。

「いいねぇ!!お前、強ぇな!!」

ヒョウカは無言のまま距離を詰めた。

最短距離で短剣が閃く。

シュッ!!

喉元の狙った刺突。だが――

「危ねぇな」

ガイの肘が横から飛ぶ。

「っ!」

ヒョウカが腕で受け流す。だが止まらない。

(マズイ……!)

ヒョウカはそのまま体を回転させ、脚を払う。ガイの体勢がわずかに崩れた。その隙に短剣が脇腹を裂いた。

先に血を流したのはガイだった。

自分の脇腹を見て――笑った。

「……いい」

口元が吊り上がる。

「すげぇいい」

ヒョウカの目が細くなる。

(この状況で……こいつ)

ガイが拳を鳴らした。

「速ぇじゃねぇか!!だから好きだぜ、こういうの!!」

次の瞬間。

「ならこれならどうだ!?」

拳の嵐がヒョウカを襲う。

ドドドドドドォッ!!

住宅街が揺れる。電柱が軋み、アスファルトが次々砕ける。

ヒョウカは後方へ流れながら躱す。

(重い、速い)

拳が頬を掠める。それだけで頬から血が流れた。

(そして何より、読めない)

ヒョウカが間に短剣を滑り込ませる。

しかしガイが半歩だけズレた。刃が空を切る。

ガイが笑う。

「それ、二回目だぜ?」

立て続けにガイが反撃する。ヒョウカは躱した——はずだった。衝撃が体をなぞる。

「っ……!」

吹き飛ばされ、地面を滑る。

(さっきよりも……パワーもスピードも別物みたいだ)

ガイは本能だけで動いている。それなのに常に最適だの行動を起こす。

ヒョウカが立ち上がる。ガイは楽しそうに笑っていた。

「もっと来いよ!!まだ終わってねぇだろ!?」

その瞬間——ガイが深く踏み込む。獣のような圧。

その姿を見た瞬間――

ヒョウカの脳裏に、映像が走った。

 

古い木の床。

暗い部屋。

冷たい声。

『立て』

刃の音と、血。

 

「……っ」

ヒョウカの動きが、一瞬だけ止まる。ガイの拳が迫る。

(これは——)

絶対に間に合わない。その時——

脳裏に別の動きが浮かんだ。

 

地下訓練所。凛馬のステップ。力を受けずに流し、潜る。

(受ければ終わるだろう)

(でも……賭けるしかない)

ヒョウカの体が沈む。紙一重。

ガイの拳は空を切った。目が見開かれる。

「っ!?」

次の瞬間——短剣が閃く。

シュバッ!!

ガイの腕に深い裂傷が走った。再び血が飛ぶ。

ガイが初めて停止する。

そして――笑った。

「いいねぇ……!!」

拳を握る。瞳が獣のように光り、呼吸が荒くなる。

極度の興奮と高揚。

「もっとだ……!」

地面を踏み砕く。

「もっと来いよ!!」

ヒョウカが短剣を構える。

「……うるさい犬だ」

ガイが牙を見せて笑った。

「俺は――」

深く沈む。まるで怪獣のような圧。

「猛犬だぁぁッ!!!」

ドンッ!!!

踏み込みだけで地面が陥没する。今まで見たことないような爆発的加速。

風圧だけでヒョウカの髪が揺れた。

拳と刃が衝突する。

キィィィンッ!!!

衝撃波で住宅街の窓ガラスが震える。ヒョウカの刃が押され始める。

「くっ……!」

(純粋なパワーじゃ勝てない……!)

ガイが笑う。

「このまま押し切ってやるぜぇ!!」

その時――

「――ガイ」

静かな女の声。

ピタリ、とガイの動きが止まった。ガイの表情がわずかに歪む。ヒョウカの目が細くなる。

そこに、隠れる様子もなく一人の女が立っていた。

長い髪。静かな瞳。霧崎レイナ。

ガイが舌打ちする。

「……レイナ」

ヒョウカが短剣を向ける。

「仲間か」

レイナはヒョウカから目を逸らさないまま言う。

「ガイ。今日はここまでよ」

「はぁ?」

「勝手に1人で行くなって言ったでしょ……」

ガイが不満そうに眉をひそめる。

「まだやれんだろ」

「ダメです」

静かな声だが、逆らわせない圧があった。ガイが舌打ちする。

「……チッ」

ヒョウカが低く言う。

「逃げる気か?」

レイナが静かに視線を向ける。その目に、敵意はない。ただ観察している。

「今回は、です」

ガイが最後に笑う。

「じゃあな豹女!次はもっと遊ぼうぜ」

次の瞬間——

レイナがガイを引きずって、闇夜へ消えた。

 

ヒョウカは短剣を下ろす。少しだけ息を吐いた。

(追ったところで……勝ち目はない)

荒れた呼吸。夜風が頬を撫でる。

その時――

脳裏に、さっきの光景がよぎる。

古い木の床。冷たい声。血。刃の音。

ヒョウカの眉がわずかに動いた。

「……」

戦闘中、一瞬だけ動きが鈍った。あれは何だったのか?胸の奥が妙にざわつく。

「……いや」

ヒョウカは小さく目を伏せた。

「今の俺に、必要ない」

切り捨てるように呟く。

そして、ポケットの中の小さな機械が触れた。

ヒョウカは視線を落とす。灰谷から渡されたトランシーバー。

しばらく見つめ、ゆっくり取り出した。そしてボタンを押す。

「……聞こえるか」

一瞬の沈黙。次の瞬間——

『ヒョウカ!?』

ミケの声。

『早くないかにゃ!?』

続いて凛馬。

『何かあったのか!?』

ヒョウカは夜道を見つめたまま言う。

「……敵と接触した。恐らく……ノクス機関だ」

向こう側の空気が変わる。凛馬の声に焦りが見える。

『場所は!?』

「俺の家近くの住宅街だ」

『今行く!動くなよ!』

通信が切れる。ヒョウカはトランシーバーをポケットへ戻した。

「始まったか……」

夜空を見上げ、小さく呟いた。




最後まで読んでくださりありがとうございます!
ガイの力はかなり圧倒的でした。これから凛馬達はどう立ち向かっていくのか注目です!
次回、ついにレイナと凛馬たちが動き出します。
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