BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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ヒョウカが接触した敵――ノクス機関。
仮アジトに集まった凛馬達は、迫り来る“戦争”と、それぞれの役割を知る。


75話 支点

仮アジトの中には、すでに全員が集まっていた。

急な呼び出しだったせいか、空気は張り詰めている。

 

ミケが腕を組んで言う。

「ヒョウカからの連絡……ほんとにゃ?」

 

ヒョウカは壁にもたれながら短剣の柄を軽く回した。

「あぁ、敵と接触した」

 

ミナが息を呑む。

「敵って……もしかして……」

 

ヒョウカが淡々と言った。

「恐らく、ノクス機関だ」

 

倉庫の空気が一瞬で冷える。

コハクが小さく呟く。

「……もう来たんだ」

 

灰谷が奥から歩いてきて、頭をかいた。

「……再集合が早すぎるなぁ」

 

灰谷がヒョウカを見る。

「怪我ないか?相手は?」

 

ヒョウカが答える。

「1人の男と戦った。後から女が来て退散して行った」

 

灰谷が腕を組む。

「特徴は?」

 

ヒョウカが思い出すように言う。

「犬の獣人だった。完全に近接特化の様な戦い方だった」

 

ミケが眉をひそめる。

「犬……?」

 

ヒョウカが続ける。

「とにかく戦闘狂だった。強いやつと戦うことしか考えてない」

 

灰谷が小さく頷いた。

「……やっぱりそいつか」

 

ツキノが腕を組む。

「知ってるべ?」

 

灰谷は淡々と答えた。

「情報はもう掴んどる。レオンの残党が動いとるって話は、結構有名やねん」

 

「灰谷先生優秀にゃ!」

 

「元々表立って活動してた連中やからな。調べるんは簡単やった」

 

ヒョウカが言う。

「つまり、あいつは?——」

 

灰谷が言った。

「鷹城ガイ」

 

「鷹城ガイ……」

 

その瞬間、ヒョウカがキッパリと言う。

「……あいつは無理だな」

 

全員の視線が向く。

 

ミケが首を傾げる。

「そんなヤバかったにゃ?」

 

ヒョウカは淡々と答える。

「会話してる感じがしなかった」

 

少し目を細める。

 

「理解より先に拳が来る」

 

灰谷が深く頷いた。

「まぁ、概ね合っとる」

 

ツキノが軽く笑う。

「犬だべなぁ」

 

少しだけ空気が緩む。

 

灰谷は指を三本立てた。

「ほんでな、ノクス機関の主戦力は今のとこ三人や」

 

倉庫の全員が黙る。

 

灰谷が一本目の指を立てる。

「一人目——獅堂カイル」

 

凛馬の目がわずかに動く。

 

灰谷が続ける。

「元レオン勢力の右腕で、剣と拳のハイブリッドや」

 

ツキノが呟く。

「王の部下か」

 

灰谷が頷く。

「あそこ3人は同期やけど、三人の中で頭ひとつ抜けて強い」

 

コハクが小さく言う。

「……ヤバそうだね」

 

凛馬の目が細くなった。

 

灰谷が二本目の指を立てる。

「二人目——霧崎レイナ。冷静で頭めっちゃ切れるらしいで」

 

ミナが言う。

「つまり、中心ですね?」

 

「その通りや」

 

灰谷は続ける。

「今回ガイを止めて撤退させたんも、多分あいつや」

 

そして三本目。

 

「三人目が——鷹城ガイ」

 

灰谷は吐き捨てるように言う。

「こいつは……ただの狂犬や」

 

灰谷が少し笑う。

「ホンマに、意味わからん」

 

その時——ツキノが肩を回した。

 

「ほな猛犬はうちやな」

 

全員がそちらを見る。

 

「凍らせりゃ動けんやろ」

 

ツキノが言う。

 

「犬は氷で躾けるもんだべ」

 

少し笑う。

 

「噛み癖あるなら、なおさらな」

 

ミケが少し引く。

「なんか……怖いにゃ」

 

コハクが笑う。

「でも、ほどほどにね?」

 

ヒョウカが頷く。

「……適任だ」

 

凛馬も言う。

「じゃあ頼んだ」

 

「任されたべ」

 

灰谷が凛馬を見る。

「で、カイルはどうする」

 

凛馬は迷わず答えた。

「最悪の場合、俺がやる」

 

アオが少し不安そうに見る。

「凛馬……」

 

凛馬は静かに言った。

「レオンの名前使って、仲間狙うなら——」

 

双剣の柄に触れる。

 

「俺が止めるしかないだろ」

 

灰谷は小さく息を吐いた。

「……ほな決まりやな」

 

少し沈黙が流れる。

 

その時。

 

ミナが静かに口を開いた。

 

「……平和的解決は、無理なんでしょうか?」

 

倉庫の空気が少し変わる。

 

ミケが目を丸くする。

「ミナ……」

 

灰谷は少し考え込むように目を伏せた。

 

そして。

 

「……ゼロではない」

 

全員の視線が向く。

 

灰谷は腕を組み直した。

 

「カイルは無理や」

 

空気が静まる。

 

「レオン思想に一番染まっとる。俺らの事相当恨んどるやろな」

 

灰谷は続ける。

 

「ガイは論外やな」

 

ミケが苦笑する。

「アホそうだもんにゃ」

 

ヒョウカが短く頷いた。

「実際アホだった」

 

少しだけ空気が緩む。

 

そして灰谷は静かに言う。

 

「……せやけど、レイナだけは別や」

 

ミナが静かに聞く。

「別?」

 

「あいつだけは、“状況”を見て動いてる」

 

灰谷の視線がアオとミナへ向く。

 

「もし話が通る可能性あるなら——」

 

「多分、あいつだけや」

 

アオが少し驚く。

「……なんで僕ら見るの?」

 

「この中で一番冷静に話できそうなん、お前らやしな」

 

ミナが頷く。

「……分かりました」

 

アオも続く。

「できるか分かんないけど……可能性があるならやらなきゃ」

 

「……ねぇ」

 

全員の視線がコハクに向く。

 

コハクが少し頬を膨らませる。

「……あたしは?」

 

灰谷が少し笑う。

「お前はな」

 

ポケットのトランシーバーを指差す。

 

「それが鳴ったら一番最初に動け」

 

コハクが首を傾げる。

「え〜?それだけ?」

 

灰谷が頷く。

「お前は動きが軽い。状況見て、一番必要なとこに行け」

 

コハクが少し考える。

「……なるほどね」

 

ミケが笑う。

「便利屋さんだにゃ」

 

コハクが軽く睨む。

「違うもん」

 

灰谷が言う。

「戦場で一番強いのはな、予定外に動ける奴や」

 

灰谷が全員を見る。

 

「あと一つ決めとく」

 

倉庫が静かになる。

 

灰谷は言った。

 

「放課後はここ集合や」

 

ミケが首を傾げる。

「部活みたいにゃ」

 

灰谷は即座に言う。

 

「んなええもんちゃうわ」

 

灰谷が続ける。

 

「それと、生活は変えるな。学校も行って、家にも帰れ」

 

コハクが驚く。

「いいの?」

 

灰谷が頷く。

 

「生活変えたら逆に怪しまれるやろ?今まで通りにしとけ」

 

その時、空気が少し張る。

 

「でもな、常に誰かに見られてると思って動け」

 

倉庫が静まり返る。

 

「敵はもう、お前らの存在知っとる。いつ、どこで見られててもおかしくない」

 

ミケが少し真顔になる。

「……ガチだにゃ」

 

灰谷は続けた。

 

「あと、このことを親に話すかどうかは任せる」

 

ミケが少し驚く。

「え、いいの?」

 

「無理に隠せとは言わん」

 

灰谷は静かに言った。

 

「ただ、知れば巻き込まれる」

 

空気が重くなる。

 

「守ろうとして動く大人ほど、狙われやすい」

 

沈黙。

 

ツキノが目を伏せる。

「……そういうもんか」

 

灰谷は頷いた。

 

「やから、自分で決めろ」

 

静かな空気。

 

そして最初に口を開いたのは凛馬だった。

 

「……言わない」

 

アオも小さく頷く。

「僕も」

 

続けてミケ。

「凛馬が言うにゃら……」

 

ミナ。

「……同じく」

 

そして、コハク。

「まぁ、そうなるよね」

 

誰も、家族を巻き込みたくはなかった。

 

灰谷がトランシーバーを指差す。

 

「やし、これだけは常に持っとけ。敵はいつ来るかわからん」

 

ミケが爪を鳴らした。

「……いつでも戦闘ってことにゃ」

 

灰谷が頷く。

「そういうことや」

 

ヒョウカが短剣を回す。

 

「次は逃がさない」

 

ツキノが笑う。

「狂犬……どんなもんかね」

 

ミナが銃を確認する。

「では、準備を進めましょう」

 

アオが盾を胸に抱く。

「皆んな……守る」

 

コハクが鎖を握る。

「絶対負けないよ」

 

凛馬が双剣の柄に触れた。

 

「誰1人、傷つけさせない」

 

 

その頃——

暗い部屋のモニターには、凛馬達の姿が映っていた。

 

ガイが笑う。

「なかなか面白ぇ奴だった!」

 

レイナは静かに画面を見ている。

 

カイルは腕を組んだままだった。

 

その時——

 

部屋の奥から声が響く。

 

「どうだった」

 

三人が振り向く。

 

そこに立っていたのは、神代コクヨウ。

 

ガイが言う。

「とりあえず強え女が居たぞ」

 

コクヨウはモニターを見る。

 

しばらく沈黙した後、静かに言った。

 

「戦力は確認できた……か」

 

コクヨウはモニターを見つめる。

 

「だが、問題はそこじゃない」

 

画面に映る凛馬。

 

コクヨウが続ける。

 

「英雄はな、案外簡単に壊れる」

 

モニターに映っているのは——

 

アオとミナ。

 

ガイが眉をひそめる。

「そいつらか?強そうには見えねぇぞ」

 

コクヨウが静かに答える。

 

「戦闘能力は低い。だが、この二人が戦場の中心にいる」

 

レイナの目がわずかに動く。

 

コクヨウが続ける。

 

「状況判断と作戦の軸、そして味方の動きの支点」

 

そして言った。

 

「ここを折れば、全体が崩れる」

 

ガイが笑う。

「なるほどな!じゃあ俺が——」

 

「待って」

 

レイナが言った。

 

ガイが振り向く。

 

「私にやらせてください」

 

コクヨウがレイナを見る。

「ほう、理由は?」

 

レイナはモニターを見つめたまま言う。

 

「参謀は参謀で潰すべきかと」

 

静かな沈黙。

 

そしてコクヨウは少しだけ微笑んだ。

 

「いいだろう。任せる」

 

ガイが肩をすくめる。

「ちっ、つまんねぇな」

 

カイルが去り際に小さく言う。

「気をつけろ」

 

三人は部屋を出ていく。

 

静かな部屋に、モニターの光だけが残る。

 

レイナはしばらく画面を見ていた。

 

モニターに映るのはアオとミナ。

 

「……あの二人が、“支点”? 」

 

レイナは考える。

 

「いや……違う気がする」

 

レイナは静かに目を細めた。

 

「自分の目で確かめないと」

 

部屋の光が消える。

 

戦争は、静かに動き出していた。




最後まで読んでくださりありがとうございます!
霧崎レイナは、敵でありながら少し違う立ち位置の様です。
次回から、彼女が凛馬達とどう関わっていくのかも見ていただけたら嬉しいです!
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