圧倒的な力で押し込んでいくガイ、氷で全てを塞ぐツキノ。勝者の行方は?
「遊ぼうぜ」
次の瞬間——
ガイが地面を蹴った。
ドン!!
アスファルトが砕け、拳が一直線に飛ぶ。ツキノは軽く横にずれた。
「うおっ!?」
拳が地面に突き刺さる。
ドゴォン!!
コンクリートが砕けた。
ツキノが呟く。
「力はあるべな」
その瞬間——
氷柱が地面から突き出した。ガイの足元を狙う。
「ちっ!」
ガイが横に飛ぶ。
間髪入れずツキノの指先が動く。氷の破片が弾丸のように飛んだ。
ガイが腕で弾く。
パキン、パキン!!
氷が砕ける。
ガイが笑った。
「面白ぇ!」
再び踏み込む。
拳の連打。
ドドドド!!
ツキノは滑るように後退する。足元の氷が地面を滑らせ、拳が空を切る。
その瞬間——
ツキノの手が動いた。
ドゴッ!!
氷柱がガイの横腹をかすめる。ガイの体が数メートル吹き飛んだ。
ガイが着地し、血を拭いながら笑った。
「お前……何族だ?」
ツキノが淡々と答える。
「龍族だべ」
その瞬間、ガイの目が見開く。
「……龍族だと?」
――その言葉で、記憶がよぎる。
暗い部屋。巨大なモニターの光。コクヨウの声が静かに響いていた。
「覚えておけ」
カイル、レイナ、そしてガイが立っている。
コクヨウが画面を見つめたまま言う。
「龍族は、獣人の頂点だ」
静かな声。だが、その言葉には異様な熱があった。
「遥か昔、戦争の時代ですら恐れられた存在だ。空を裂き、天候すら支配した種族」
ガイが腕を組む。
「でも龍族は伝説の種族だろ?生きてんのかよ?」
コクヨウが頷く。
「生きている」
そしてモニターに映るツキノを見つめた。
「だが今、その誇り高き龍は混血側にいる」
カイルが眉をひそめる。
「何故だ」
コクヨウは静かに言った。
「理由は一つ。洗脳だ」
レイナの目がわずかに動く。コクヨウは続ける。
「本来、龍族が混血を守るはずがない。龍とは支配する側の存在だ」
静かな声。まるで、それが世界の真理であるかのように。
「だが奴は利用されている」
コクヨウがゆっくり笑った。
「だから——救ってやれ。誇り高き龍族を、本来いるべき場所へ戻してやれ」
――記憶が途切れる。
ガイがニヤリと笑った。
「なるほどな」
拳を鳴らす。
「ヤツの言ってた通りだ」
ツキノを睨む。
「龍族の生き残りぃ、混血に洗脳されてんだろ!?」
ツキノの眉がわずかに動いた。
「……洗脳?」
ほんの一瞬胸の奥に小さな違和感が生まれる。
だが——
ガイが叫んだ。
「安心しろ!!」
拳を握る。
「今から俺が解いてやる!!」
ドン!!
地面が砕ける。
「その洗脳をなぁ!!」
拳がツキノへ飛ぶ。ツキノが氷を展開する。
バキィン!!
氷が砕け散った。ガイが笑う。
「目覚ませ龍族ぅ!!」
ツキノの目が細くなる。氷が静かに広がった。
「……うるさい犬だべ」
ガイが再び地面を蹴る。拳が一直線に飛ぶ。
ツキノが後ろへ滑る。拳が再び地面を砕いた。
「それさっきもみたべ?」
ツキノが距離を取る。
ガイが笑う。
「逃げんな龍!!」
ツキノが片手をポケットに入れたまま言う。
「逃げてねぇべ」
もう片方の手を前に出した。
「試してるだけだべ」
指を銃の形にする。ガイが眉をひそめた。
「……あ?」
ツキノが小さく呟く。
「ミナちゃんの真似だべ」
指先に冷気が集まる。小さな氷の球が生まれた。
「バン」
パシュッ!!
氷弾が一直線に飛ぶ。それはガイの肩に命中した。
バキッ!!
氷が炸裂し、肩から血が滴る。ガイが少し後ろへ下がる。
「……ちっ」
ツキノがもう一度構える。
「もう一発あげるべ」
だが、ガイは腕で弾いた。
「ふざけんなぁ!!」
ツキノが少し笑う。
「なかなか面白いべな」
氷が周囲に舞う。
次の瞬間——
ガイが今までより速い踏み込みを見せた。
ツキノの目がわずかに動く。
「……おぉ」
だが即座に氷壁を作る。
バキィン!!
拳で砕かれた。ツキノが少し距離を取る。
ガイが笑う。
「どうしたぁ!!」
拳を鳴らす。
「さっきの余裕はよぉ!」
ツキノの周囲に氷が舞う。
ガイが言う。
「俺はな——」
筋肉が膨れ上がり、瞳が獣のように光った。
「猛犬だぁ!!」
ドン!!
踏み込みだけで地面が砕ける。拳がツキノへ迫る。
ツキノが氷で受ける。
バキィン!!
氷が砕け、ガイの拳が肩をかすめた。
「すげぇ!!あの豹女より全然つえぇ!!」
ツキノの眉が少し動く。
「あぁ、ヒョウカちゃん」
少し思い出すように言う。
ガイがニヤリと笑った。
「ヒョウカって言うのか!?あいつもなかなかだったぜ!」
ドン!!
拳が振り抜かれる。
「俺の方が強えけどな!!」
ツキノが後ろへ飛び、地面に手を付いた。
「そうだべな」
氷が地面に広がる。
「ヒョウカちゃんもあんたも強い。でも——」
ツキノが静かに笑う。
「うちはあんたよりもっと強いべ」
氷が爆発的に広がった。
ガイが避けながら話す。
「そうかい……でもよぉ——」
その時。
ガイの筋肉がさらに膨れ上がる。
「まだ終わりじゃねぇぞ」
ドン!!
更に速い踏み込み。ガイが叫ぶ。
「もう一段上げてやる!!」
ドドドドド!!
拳の連打がツキノを襲う。
衝撃が連続で響く。ツキノが氷壁を展開するが、すぐに砕かれた。
「ちっ……」
さらに拳の雨が降り注ぐ。
ドドドドド!!
地面が砕け、鉄骨が歪む。
ガイが笑う。
「どうした龍!!避けてばっかじゃ勝てねぇぞ!!」
ツキノが後ろへ跳ぶ。
(ちょっと……やべぇかも)
ガイが笑う。
「ビビったか!?これが狂犬だぁ!!」
狂ったような踏み込み。拳が一直線に飛ぶ。
ツキノが氷を展開する。
だが——
バキィン!!
なんと、今度は拳が氷壁が貫通した。
「!!」
拳がそのままツキノの顔面に叩き込まれる。
ドゴォン!!
ツキノの体が数メートル吹き飛び、コンクリートの壁に激突した。
ガイが肩を回す。
「……はぁ」
ゆっくり歩いてくる。瓦礫の前で止まった。
「どうだ龍族、頭冷えたかぁー?」
その時——
ガラッ。
瓦礫が少し動く。ツキノがゆっくり立ち上がった。
額から血が少し流れている。
だが——
表情が消えていた。ガイの眉がわずかに動く。
「……おい?」
ツキノは答えない。ただ静かに、首を鳴らした。
「龍族が頑丈で良かったべ」
ガイの笑みが少し歪む。
「……は?」
ツキノが顔を上げる。その目が、さっきとは違っていた。
冷たくて、圧倒的に静かだった。足元から氷が広がる。
パキ……パキ……
廃工場全体に冷気が満ちていく。
ツキノが静かに言う。
「ちょっと遊ばせすぎたべなぁ」
氷が爆発的に広がる。地面が一瞬で凍りついた。
ツキノが拳を軽く握る。
「久しぶりだべな」
お互いの冷たい息が白く広がる。
ツキノの目がゆっくりと開く。瞳が白銀に染まっていた。
ガイの笑みが止まる。
(こいつ……まだ)
冷気が、一気に強くなる。
ツキノが静かに言った。
「昂ってきたべ」
氷が空気を震わせた。
そして——
龍族の本性が、目覚めた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
狂犬相手にまだ余裕を見せていたツキノですが、ついに“白銀”が動き始めます。次回、龍族が本気を出します。