BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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アオとミナが、霧崎レイナの奇襲に巻き込まれる。
罠だらけのコンテナ港。圧倒的な経験差を前に、震えながらも立ち向かう。


80話 Pf.

ミナが銃を下ろした。

 

「……今日はこのくらいにしましょうか」

 

アオも盾をゆっくりと下ろす。

 

「うん。だいぶ感覚も掴めてきた」

 

潮の匂いを含んだ海風が吹く。

 

コンテナの隙間から、夜の気配がゆっくり広がっていく。

 

ミナが軽く息を吐いた。

 

「これで私達も、ミケ達に近づけるでしょうか」

 

その時だった。

 

――カチ、と小さな音。

 

ミナの目が動く。

 

「……?!」

 

次の瞬間。

 

ドンッ!!

 

近くで爆発が起きた。

 

だが威力は低い。コンテナが崩れ、通路が塞がれる。

 

爆風に押され、ミナの体が大きく揺れた。

 

「きゃっ……!」

 

アオが咄嗟に腕を掴む。

 

「ミナ!」

 

二人が横に転がる。煙が辺りを包み込んだ。

 

ミナが慌てて銃を構える。その呼吸が少し荒くなっていた。

 

「爆発……?!」

 

アオが盾を前に出す。

 

「誰か……いるの?」

 

その瞬間。

 

キィィン――

 

アオの目の前にピアノ線が迫る。ミナの目が見開かれた。

 

「……え?」

 

「アオ!危ない!!」

 

「……!!」

 

アオが本能で盾を振る。

 

ギンッ!!

 

火花が散る。その衝撃でアオが一歩下がる。

 

「くっ……」

 

腕が痺れ、盾が重く感じる。

 

だが――

 

レイナの目がわずかに動く。

 

(ちゃんと防げるようね)

 

静かな確認。

 

(ここまでは予測できる)

 

ミナが周囲を見る。

 

コンテナの影。上?横?

 

どこから来るか分からない。

 

「これは……罠です」

 

その声は少し震えていた。コンテナの上から、静かな声が落ちてくる。

 

「反応は悪くないわね」

 

二人が見上げる。

 

コンテナの上に立っていたのは――

 

霧崎レイナだった。夜風に髪が揺れ、冷たい目が二人を見下ろしている。

 

ミナが銃を向ける。

 

「あなたは……!!」

 

レイナは微かに笑った。

 

「やっと会えたわね」

 

アオが盾を構える。

 

「霧崎……レイナ……!?」

 

レイナは小さく頷く。

 

「あなた達がここに来ることも分かってたわ」

 

そして周囲をゆっくり見渡す。

 

「この港、全部仕込んでおいたの」

 

その瞬間。

 

――カチ。

 

ミナの顔色が変わる。

 

「……危ない!」

 

ドォン!!

 

別の場所で爆発が起きた。コンテナが大きく揺れる。

 

だが狙いは二人ではない。逃げ道が轟音と共に通路が塞がれた。

 

アオが盾を構えたまま言う。

 

「なんで……」

 

レイナは淡々と答えた。

 

「甘えたことは言わせないわよ」

 

その声には感情がなかった。

 

「卑怯なんて可愛い言葉じゃない」

 

レイナの目が細くなる。

 

「ここはもう、私の戦場」

 

少し沈黙し、そして静かに続けた。

 

「安心して」

 

夜風が髪を揺らす。

 

「別に、殺すつもりはない」

 

ミナの目が揺れる。

 

「だったら……何故!」

 

レイナは淡々と続けた。

 

「ただ——」

 

コンテナの影へ視線を向ける。

 

「視る必要があるの」

 

静かな声。

 

「あなた達が、本当に“敵”なのか」

 

その瞬間。

 

パンッ!!

 

ミナが発砲した。

 

(撃たなきゃ……)

 

レイナが横に避ける。弾丸がコンテナに当たり、火花が散った。

 

「手が震えてるわよ」

 

本当にミナの手は震えていた。初めて感じる命の危機。

 

(落ち着いて……落ち着いて……!)

 

ミナが狙う。

 

パンッ!!

 

弾丸はコンテナの角に当たり、外れた。

 

「……っ」

 

レイナが小さく言う。

 

「やっぱり、実戦は初めてね」

 

ミナの手がわずかに震える。

 

その様子を見ながら、レイナは静かに目を細めた。

 

(えっ……実戦経験なし?)

 

ほんの少し、思考が止まる。

 

視線がアオとミナへ向く。

 

盾を構える少女と、震えながら銃を握る少女。

 

(それで、“混血の支柱”……?)

 

コクヨウの言葉が頭をよぎる。

 

“先に折れ” “混血を支える脚だ”

 

だが——

 

レイナは小さく眉をひそめた。

 

(……矛盾してる)

 

もし本当に、混血を支える中核なら、もっと戦い慣れているはず。

 

もっと冷酷で。もっと、“壊れている”はずだ。

 

海風が静かに吹く。

 

レイナの指先が、静かにワイヤーへ触れる。

 

(……実戦経験のない相手を追い詰めるのは、あまり好きじゃないのだけれど)

 

海風が3人を通り抜ける。

 

(でも)

 

その目がゆっくり鋭くなる。

 

(証明してもらわないと、この小競り合いは前に進まない)

 

コンテナの影に、盾を構えるアオと震えながらも銃を握るミナ。

 

レイナは静かに息を吐いた。

 

(だから見せて)

 

冷たい目。

 

(あなた達の“答え”を)

 

その瞬間、コンテナの影が動く。

 

アオが叫んだ。

 

「ミナ!避けて!」

 

ミナが振り向く。

 

ドォン!!

 

巨大なコンテナが落下する。

 

だが狙いはまたミナではない。

 

通ろうとしていた道だった。轟音と共に通路が塞がれた。

 

地面が震え、煙が上がる。レイナの目は静かだった。

 

(……当てる気はないわ)

 

崩したのは、退路だけ。

 

レイナの声が響く。

 

「逃げてもいいけど、逃げ道はない」

 

その瞬間、また爆発。続いてピアノ線。間に銃撃。

 

コンテナ港の迷路の中で、罠が連続して作動していく。

 

ミナの息が荒くなる。

 

(完全に……読まれてる)

 

アオが盾を構える。レイナの攻撃を防ぐことしかできなかった。

 

「くっ……!」

 

パンッ!!

 

再び弾丸が飛ぶ。

 

ガンッ!!

 

盾へ命中するが、アオの体が後ろへ押される。

 

だが——

 

レイナの狙いは、徹底して盾の中心だった。腕も、脚も、頭もハナから狙っていない。

 

(……特訓の成果ってやつかしら)

 

レイナの目が静かに細くなる。

 

「いい連携ね」

 

レイナはコンテナから降り、二人の前に立つ。

 

「でも、経験が足りない」

 

その言葉が重く落ちた。爆発の煙がまだ漂っている。

 

アオは盾を構えたまま、荒い息を吐いた。

 

「……っ」

 

数々の奇襲で腕が痺れ切っていた。

 

ミナがコンテナの影から顔を出す。

 

「アオ……大丈夫ですか……?」

 

アオは答えなかった。その代わり、ゆっくり周囲を見る。

 

コンテナ。影。高所。そして、レイナ。

 

(……どうしよう)

 

頭の中で状況を整理する。地形も、射線も、全部向こうが握っている。

 

(このままだと……勝)

 

アオは歯を食いしばる。

 

(ミナはボクより頭が回る。でも――)

 

アオの視線がミナに向く。

 

ミナの手は、まだ少し震えていた。

 

(……ずっと躊躇ってる)

 

アオの中で、考えがまとまる。

 

「ミナ」

 

「……?」

 

「こっち」

 

アオはミナの腕を引いた。

 

コンテナの奥の深い場所まで押し込む。

 

ミナが驚く。

 

「アオ……?」

 

アオが盾を構え直す。

 

「ここにいて」

 

「え?」

 

「ボクがあの人を止めるから」

 

ミナの目が揺れる。

 

「何を言って……」

 

アオは短く言う。

 

「後ろから援護して」

 

その声は、珍しく強かった。

 

「……」

 

「それと」

 

アオが小さく息を吐く。

 

「凛馬たちに連絡して」

 

ミナが固まる。

 

「……一人で戦う気ですか」

 

アオは少しだけ笑った。

 

「大丈夫だよ」

 

そして盾を軽く叩く。

 

「時間稼ぎする」

 

アオは笑う。だがその笑顔の奥に底なしの恐怖が滲んでいた。

 

「こうするしか……思いつかなかった」

 

ミナの声が少し震える。

 

「無理です……相手は圧倒的です」

 

アオはコンテナの影から、ゆっくり外を見る。

 

場所も、射線も、罠までも。全部向こうが握っている。

 

(……怖い)

 

正直な感情だった。

 

それでも視線は前を向いていた。

 

「ミナ」

 

アオは振り向かないまま言う。

 

「ボク、絶対生き残るよ」

 

ミナが息を呑む。

 

アオが続ける。

 

「大丈夫。あの人は殺すつもりないって言ってたよ」

 

そして前を見る。

 

「……あと」

 

少しだけ照れたように笑う。

 

「凛馬に、かっこいいとこ見せたいし」

 

ミナは思わず目を見開く。

「僕も……もっと凛馬や皆の役に立ちたい」

 

ミナは思わず小さく笑った。

 

「……こんな時に、それですか」

 

アオは耳を少し赤くしながら言う。

 

「だ、だって大事だし……」

 

少しだけ空気が和らぐ。

 

その後、ミナはトランシーバーを握った。その手は、まだ少し震えている。

 

足も、心臓も、全部震えていた。

 

それでも——

 

ミナはゆっくり息を吐く。そして、小さく笑った。

 

「……アオ」

 

「?」

 

ミナはトランシーバーを握ったまま言う。

 

「証明しましょう」

 

静かな声だった。

 

「“私達”を」

 

アオが少し目を見開く。その後、少しだけ笑った。

 

「……うん」

 

盾を握る手に、力が入る。

 

「絶対、証明しよう」

 

ミナはコンテナの奥でトランシーバーを握っていた。

 

「聞こえますか、こちらミナ」

 

その声は今にも消えそうなぐらい小さかった。

 

だが、レイナの耳がわずかに動く。

 

「……通信」

 

銃口がゆっくりミナの方向へ向く。

 

「それはちょっと嫌ね」

 

コンテナの影。アオはそれを見ていた。

 

ミナの背中。レイナの銃口。

 

頭の中で状況が一瞬で整理される。

 

(……なんとしてでも止める)

 

アオはゆっくり息を吐いた。

 

そして――

 

コンテナの影から、盾を構えたまま姿を現す。

 

レイナの目が動く。

 

「……?」

 

アオが一歩前に出る。

 

パンッ!!

 

アオが弾を弾く。

 

ガンッ!!

 

弾丸が盾に弾かれ、火花が散る。アオの体が再びわずかに揺れる。

 

それでも止まらなかった。

 

もう一歩。そして、もう一歩。

 

レイナが小さく言う。

 

「……時間稼ぎのつもり?」

 

アオが答える。

 

「そうだよ」

 

その瞬間、レイナが銃を構え直す。

 

「いいわ。どれだけ持つか試してあげる」

 

レイナが引き金を引こうとした、その瞬間――

 

ヒュンッ!!

 

小石が空を裂いた。

 

カンッ!!

 

レイナの銃が大きく弾かれる。

 

「……?」

 

目がわずかに見開かれた。

 

(何を……したの?)

 

アオの手には、小石が握られていた。

 

レイナが静かに言う。

 

「へぇ、そんなことも出来るの?」

 

アオは何も答えない。

 

ただ、ミナに背を向けたまま立つ。

 

ミナの声が震える。

 

「アオ……」

 

アオは短く言った。

 

「ミナ、通信続けて」

 

レイナが小さく笑う。

 

「流石は熊族ね」

 

アオはナイフをもう一個石を拾う。

 

レイナを真っ直ぐ見据えた。コンテナ港の夜風が、静かに吹いた。

 

その背後で、ミナはトランシーバーを握っていた。

 

「……聞こえていますか」

 

そして――

 

『ミナ!?』

 

凛馬だった。ミナは短く言う。

 

「霧崎レイナと接触しました」

 

『……場所は』

 

「コンテナ港です」

 

その瞬間――

 

凛馬の空気が変わった。

 

『待ってろ』

 

“あの時”の低い声。

 

『今すぐ行く』

 

 

通信が切れる。

 

 

 

その頃。街の中で、凛馬はすでに走り出していた。

 

(レイナ……)

 

ミナとアオの顔が頭に浮かぶ。

 

(くそっ……!)

 

凛馬がさらに速度を上げる。街灯が流れていく。

 

(あの時ついていけば……!)

 

信号も、車も、全部無視して走る。ただ一つ、向かう場所は決まっている。

 

凛馬の目が鋭くなる。

 

「絶対に助ける」

 

小さく呟いた。その姿は、夜の街を切り裂くように駆けていった。

 

――コンテナ港へ。




最後まで読んでくださりありがとうございます!
更新めちゃくちゃ遅れてすみません……!あげ忘れです 

ついに2人がレイナと対峙しました。レイナの攻撃は強いですが、同時に優しさも見えますね。2人はどの様に自身を証明するのでしょうか?
次回も見てくださると嬉しいです!
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