BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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昼休みの屋上で、ミケは凛馬のために作ったお弁当を振る舞い、仲間たちも次々と集まる。皆から好意を向けられ、「ここではみんなのものでいたい」と笑って答える。
それは、元の世界で孤独だった彼が“ひとりにならない”ための選択だった。
賑やかな昼休みの裏で、凛馬の小さな本音だけが誰にも届かずに消えていく。



8話 揺らぎ始める想い

放課後—。

「さあ、図書館行くにゃ!凛馬、リード付けるにゃ!」

ミケが赤いリードを首輪に取り付ける。

「学校の中でもリード?過保護ね♫」

「当たり前にゃ!凛馬が迷子になったら大変にゃ!」

一行は学内の図書館へ向かった。天井まで届く書架が並ぶ広い館内で、司書が眼鏡越しにこちらを見て静かに頷く。

「人間に関する資料ですね。事前に連絡は受けています。特別に閲覧を許可しましょう」

案内された書架の奥で、凛馬は首輪の鈴が鳴るたび、周囲の視線を意識した。一方でミケは、まるで自分の部屋のように堂々としている。

「にゃ〜、古い本がいっぱいにゃ!」

「人間の世界って、どんな場所だったんだろう……」

アオが小さく呟く。

ミナは資料を整理し、ヒョウカは周囲を警戒するように立っていた。

「まずは"異界に迷い込む者"の伝承から調べましょう」

ミナの提案に、凛馬は頷く。

——異界への門。世界の裂け目。迷い人。

だが、どの記述も曖昧で、帰還に成功した例はほとんどなかった。

凛馬は一冊の古い書物を手に取る。

表紙には《門の記録》。

「……"特異点"?」

「にゃ!"光の中に消える者"って書いてあるにゃ……戻れた者は稀、だって……」

「だからこそ、古文書が重要なんだ」

ヒョウカが静かに言う。その一言で、凛馬の胸が少しだけ軽くなった。

"戻れる可能性がゼロではない"と言われた気がしたからだ。

 

夕暮れが近づき、探索は区切りを迎える。

「…見つからなかったにゃ」

ミケが耳を垂らす。

「ごめんなさい。帰還記録は見当たりませんでした…」

ミナが頭を下げる。

「でも、また探そう!」

アオが明るく言った。

「今日はここまでね。凛馬くん、疲れたでしょう?」

コハクが優しく肩に触れる。

図書館を出ると、街は夕焼けに染まっていた。

「にゃ…凛馬。見つからなくて、ごめんにゃ…」

ミケが手を握る。

「でも……ここにいてくれたら、私は嬉しいにゃ」

「私もよ」

「僕も!」

「……悪くない」

「……大切な時間です」

夕暮れの中、五人の想いが向けられる。

「ありがとう。もし……帰れなくなっても、皆となら楽しいと思う」

凛馬は、自分の迷いを初めて言葉にした。

「にゃああ!凛馬ぁ!」

ミケが飛びつき、抱きしめる。

「そんなこと言われたら、離したくなくなるにゃ!」

「ふふ……本当にちょろい子ね」

コハクも腕を絡める。

「僕も!」

「あの…私も…」

「……図書館前だぞ」

ヒョウカは呆れつつ、視線を逸らした。

そのまま一行はミケの家へ向かい、夕食を囲んだ。

「今日は特別にステーキにゃ!」

「凛馬くん、厚切りよ」

「はい、あ〜んにゃ!」

賑やかな食卓。凛馬は笑いながら肉を頬張り、胸の奥で小さく思った。

—ここにいれば、もう「いらない存在」じゃなくていいのかもしれない。

獣人たちに囲まれた新しい日常が、静かに形を成し始めていた。




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