BEAST BLOOD   作:ruemtrnmdxxx

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いつも通りの放課後。仲間達と笑いながら帰る帰り道は、どこまでも平和だった。
だからこそ、その違和感はよく目立った。


84話 照合

放課後。

 

校門を出ると、夕陽が街を橙色に染めていた。

 

あの戦いから1週間ほど過ぎていた。アオとミナの傷もすっかり治っている。

 

凛馬達は並んで帰り道を歩いていた。特に急ぐ理由もない。だから自然と会話が続いた。

 

「そういえば」

 

コハクがふと思い出したように言った。

 

「最近ノクス機関?全然出てこないね」

 

その言葉に全員が少し考える。確かにそうだった。

 

レイナとの一件以来、妙なほど静かだ。

 

ミケが尻尾を揺らす。

 

「まぁいいことにゃ〜」

 

「そうだべな」

 

ツキノも頷く。角の先がほんのり光った。

 

アオが苦笑する。

 

「逆にちょっと怖いけどね」

 

「……まぁな」

 

凛馬も頷く。

 

何も起きないのは良いことだ、だが大人しくしているというのも違和感があった。

 

そんな空気を吹き飛ばすようにコハクが笑う。

 

「もしかしてさ」

 

全員がコハクを見る。

 

「アオとミナが頑張ってくれたから改心したんじゃない?」

 

一瞬静かになる。そして——

 

「ん?」

 

ミナが真顔で返した。アオも目を丸くする。

 

「そんな訳ないでしょ!?」

 

「いやいや」

 

コハクは笑う。

 

「レイナはきっと感動したんだよ」

 

わざとらしく手を広げる。

 

「私達、間違ってました〜!って」

 

ミケが爆笑した。

 

「じゃあ謝りに来るべきだにゃ!」

 

尻尾がぶんぶん揺れる。

 

「菓子折り持って!」

 

「お菓子が食べたいだけだろう」

 

ヒョウカが真顔で頷く。

 

「最低でも高いやつじゃないとな」

 

凛馬まで乗っかる。

 

「いや待って」

 

アオが慌てる。

 

「なんで皆その流れなの!?」

 

「改心したなら誠意を見せるべ」

 

アオの耳が忙しなく動く。コハクは楽しそうに笑った。

 

「もしかしたら、今日来たりしてね?」

 

「はは、ないない」

 

凛馬が即答した。

 

「まぁ、来ないとは言えませんが……」

 

ミナも頷く。

 

「えぇ〜やだよ……」

 

アオも苦笑する。

 

「まぁ来るなら菓子折りは期待してますにゃ」

 

ミケが笑う。

 

ヒョウカが小さくため息を吐いた。

 

「それは……フラグか?」

 

「なんで!?」

 

全員が笑った。

 

夕陽の下。いつも通りの帰り道。誰も本気でそんなことが起きるとは思っていなかった。

 

 

 

 

しばらく歩いた後、それぞれ帰路に着く。

 

「じゃあまた明日!」

 

アオが手を振る。

 

「また明日だべ!」

 

ツキノの角がほんのり光る。

 

「遅刻しないでねー!」

 

コハクが大きく手を振る。

 

「また明日」

 

ヒョウカも小さく手を振る。

 

「気を付けて帰ってくださいね」

 

ミナも小さく頭を下げた。

 

それぞれが分かれ道へ進んでいく。さっきまで賑やかだった空気が少し静かになる。

 

残ったのは凛馬とミケだけだった。ミケが大きく伸びをする。

 

「そういえば、こうやって二人で帰るの、久しぶりにゃ〜」

 

猫耳がぴこぴこと動く。凛馬も少し考えた。

 

「言われてみれば……そうだな」

 

昔は当たり前だった。同じ家に帰り、同じご飯を食べるそんな毎日が。

 

けれど最近はこうして二人でのんびり帰る時間も減っていた。

 

「なんか変な感じにゃ」

 

ミケが空を見上げる。

 

「何が?」

 

「凛馬がこうやって皆と仲良くしてるの」

 

「どういう意味だよ」

 

「だって昔はもっと頼りなかったにゃ」

 

「おい」

 

即座に返す。ミケはけらけら笑った。

 

「こっちに来た時とか覚えてる?」

 

「あー……」

 

思い出したくない記憶だった。

 

「めちゃくちゃ慌ててたにゃ」

 

「うるさい」

 

「私が助けてあげないとダメだったにゃ」

 

「あれは仕方ないだろ!」

 

「知らないにゃ〜」

 

即答だった。凛馬は思わず吹き出す。

 

「お前は……ホント」

 

本当に変わらない、ミケはずっとこうだった。だから少しだけ安心する。

 

ミケがふと笑うのをやめた。

 

「でもさ」

 

その声に凛馬は顔を向ける。ミケは真っ直ぐ前を見ていた。

 

「今の凛馬は頼りになるにゃ」

 

夕陽が横顔を照らす。冗談じゃない声だった。

 

凛馬は少しだけ視線を逸らす。少し照れくさくなる。

 

「姉孝行だよ」

 

そう返した。ミケは笑った。

 

「じゃあ、もっともっと頼るにゃね?」

 

しばらく二人で歩く。どこか遠くで子供達の笑い声が聞こえた。

 

本当に、平和だった。ノクス機関ってなんだったんだろう。と思えるほどに。

 

——その瞬間。ミケが何か“違和感”を拾った。

 

足と、尻尾が止まる。凛馬も同時に顔を上げた。

 

風に混じる匂い。それは何か——嫌な匂いだった。

 

「初めまして」

 

“白い髪の女”は静かに立っていた。ただそれだけなのに、不思議な威圧感がある。

 

凛馬は眉をひそめる。

 

「……誰だ?」

 

女は少しだけ頭を下げた。落ち着いた声だった。

 

「私は……霧崎レイナ」

 

その瞬間だった。

 

(霧崎……レイナ?)

 

凛馬の表情が消えた。

 

アオとミナを追い詰めた相手。仲間を傷付けた相手。アオを泣かせた相手。大事な人達を襲撃した相手。

 

全部が頭の中を駆け巡る。気付けば拳を握っていた。

 

「……レイナ」

 

低い声だった。ミケが思わず凛馬を見る。

 

「り、凛馬!この人……」

 

凛馬が一歩前へ出る。

 

「よく一人で来たな」

 

レイナは何も言わない。ただ真っ直ぐこちらを見ている。

 

(まぁ……そりゃあこうなるわよね)

 

凛馬はさらに一歩前へ出た。

 

「ふざけてんのか?」

 

その声には明確な怒りが滲んでいた。レイナは静かに答える。

 

「そういうつもりじゃ――」

 

「じゃあ何だよ」

 

レイナの言葉を遮る。

 

「アオを泣かせて、ミナを傷付けて、今度は誰だ?」

 

凛馬が静かに双剣のキーホルダーに手をかける。

 

「お前だけは、許さない」

 

その瞬間。ミケの話がぴくりと震えた。

 

――この匂い。忘れるはずがない。

 

レオンとの戦い。凛馬が“赤”に呑まれた時と同じだった。

 

鉄が焦げたような、胸の奥がざわつく匂い。

 

ミケの顔色が変わった。

 

「凛馬?」

 

返事がない。凛馬はただレイナの元へ歩みを進める。

 

握っている拳が震えていた。腕には赤い筋が浮かび始めている。

 

ミケの尻尾が膨らんだ。

 

(これ……やばい!!)

 

本能がそう告げていた。

 

「ち、ちょっと……!」

 

慌てて凛馬の腕を掴む。

 

「落ち着くにゃ!」

 

凛馬は反応しない。視線はレイナから動かない。

 

「凛馬!」

 

ミケの声が少し大きくなる。

 

「今は違うにゃ!」

 

その言葉に、凛馬の肩が僅かに揺れた。

 

 

荒くなっていた呼吸、震えていた拳が少しずつ収まっていく。

 

夕暮れの風だけが吹き抜けた。レイナは黙ってその様子を見ていた。

 

報告書で見た、レオンを打ち倒した力。空気そのものが張り詰めるような圧迫感。理性がなければ危険だと、本能が理解する。 

 

やがて、凛馬はゆっくり拳を開いた。荒れていた呼吸を無理やり整える。

 

ミケもまだ腕を離さない。凛馬はレイナを睨んだ。その視線には警戒も怒りも残っている。

 

「……早く言え」

 

レイナは一度だけ目を伏せる。

 

「話をしに来たの」

 

凛馬の眉が動く。

 

「早く話せ」

 

冷たい声だった。

 

「無駄な会話をする気はない」

 

許した訳でもない。信じた訳でもない。

 

ただレイナからは、嘘の匂いがしなかった。凛馬は絶つ代わりに言葉を選んだ。

 

レイナは小さく頷く。

 

「分かったわ」

 

少しだけ息を吐く。そして、真っ直ぐ凛馬を見た。

 

「場所を変えましょう」

 

夕陽が三人を照らす。その張り詰めた空気だけは、“あの日”と変わらなかった。

 

 

 

 

 

 

近くの公園だった。夕暮れ時ということもあり、人の姿はほとんどない。

 

凛馬は腕を組んだまま立っていた。ミケも少し前に出るような位置を取っている。

 

レイナだけが少し距離を空けていた。誰も座ろうとはしなかった。

 

最初に口を開いたのは凛馬だった。

 

「で」

 

冷たい声。

 

「話ってなんだよ」

 

レイナは一度だけ息を吐いた。

 

「確認したかったの」

 

「何をだよ」

 

「あなた達が本当に敵なのか」

 

凛馬の眉がぴくりと動く。

 

「敵?」

 

思わず笑いそうになる。だが、到底笑えなかった。

 

「アオとミナを襲ったのはそっちだろ」

 

空気が張り詰める。ミケもレイナを見る。

 

レイナは否定しなかった。

 

「そうね、否定はできない」

 

凛馬は舌打ちした。

 

「じゃあ何を確認する必要があるんだよ」

 

レイナは少しだけ目を伏せた。そして——

 

「あなた達は」

 

少しだけ言葉を選ぶ。そして——

 

「私は、“混血は獅子王レオンを無惨に殺した”。そう聞いていた」

 

静寂が流れる。

 

「は?」

 

凛馬が言った。

 

「は?」

 

ミケも同時に言った。綺麗に声が重なる。

 

レイナが僅かに目を瞬かせた。凛馬は頭を抱える。

 

「……無惨に?」

 

(いや……でも周りにはそう見えてたのか?)

 

信じられないという顔だった。ミケも耳をぴこぴこ動かしている。

 

「いやいやいや!何言ってるにゃ!」

 

凛馬はため息を吐いた。

 

「向こうから襲ってきたんだぞ」

 

即答だった。

 

「話そうとはしてたんだ」

 

ミケが頷く。

 

「そうにゃ!凛馬、最後まで止めようとしてたにゃ」

 

レイナは黙って聞いている。凛馬は少しだけ視線を落とした。

 

「……殺したかった訳じゃないんだよ」

 

その声は小さかった。だが確かだった。

 

「でも……それしか無かった」

 

風が吹く。夕陽が三人の影を長く伸ばした。

 

レイナは何も言わない。ただ見ている。

 

表情。声色。目。呼吸。彼らのその全てに、嘘はなかった。

 

少なくとも、彼女の目にはそう映った。

 

(そう……やっぱり)

 

アオ。ミナ。そして今目の前にいる凛馬とミケ。全てを重ねる。

 

必死に守ろうとしていた姿。泣きながら戦っていた姿。希望だと言った姿。

 

そして、今の言葉。

 

(彼女達があんなだったら)

 

レイナは小さく目を閉じた。

 

(そりゃそうよね)

 

胸の奥に残っていた最後の違和感が消えていく。レオンは誰かに奪われたのではない。

 

あの人は、最後まであの人のままだった。

 

自分で選び。自分で戦い。自分で散った。

 

レイナはゆっくり目を開く。そして——

 

「ありがとう」

 

小さく言った。凛馬が眉をひそめる。

 

「……?」

 

ミケも首を傾げた。

 

凛馬はしばらく黙った。やはり嘘の匂いはしない。

 

だから余計に分からない。

 

「……そうかよ」

 

小さく呟く。

 

「もう1ついいかしら」

 

「まだあるのかよ」

 

「これで最後よ。許してちょうだい」

 

レイナは静かに答えた。そして、真っ直ぐ二人を見る。

 

「私はノクス機関から聞いている」

 

その声は変わらず落ち着いていた。

 

「あなた達は龍族を狙っている」

 

風が吹く。レイナは続けた。

 

「そして、いずれ全てを壊すと」

 

「はぁ!?」

 

凛馬の声が公園に響いた。レイナは再び目を瞬かせる。

 

凛馬は本気で意味が分からないという顔をしていた。

 

「何だよそれ!いや……本当に何だそれ」

 

ミケも耳を逆立てる。

 

「意味分からないにゃ!」

 

凛馬は頭を抱えた。

 

「何で俺が龍族狙うんだよ……」

 

レイナはそんな様子をただ見ていた。

 

「ていうか全てを壊すって何だよ、そんな物騒なこと言った覚えないぞ」

 

ミケも大きく頷く。

 

「むしろ壊される側にゃ!いつも巻き込まれてるにゃ!」

 

「そうだ!」

 

凛馬も即答する。

 

二人とも演技をしているようには見えなかった。むしろ心底困惑している。

 

レイナは黙って聞いていた。凛馬は続ける。

 

「そもそも龍族なんてツキノ以外知らないし、狙う理由もない」

 

「会ったのだって最近にゃ!」

 

「っていうか!お前らだろ!」

 

レイナを指さす。レイナは少し驚く。

 

「お前らを滅ぼすって手紙で丁寧に送ってきたじゃねえか!」

 

レイナが目を見開く。

 

「……え?」

 

「とぼける気か?」

 

凛馬は嫌そうな顔をした。ミケも思い出したように言う。

 

「一方的に喧嘩売られたし、しかも偉そうだったにゃ」

 

「いや……ちょっと待って」

 

レイナは頭の中で情報を整理している。

 

(龍族を狙ってないの……?手紙って何……?)

 

あまりにも全てが噛み合わない。

 

(手紙は……カイルな訳無いわね)

 

カイルは真っ直ぐな人間だ。感情的で危うい部分もあるが、それでも、こんな回りくどい真似をする獣人ではない。

 

(ガイはそもそも手紙とか知らないでしょ)

 

ガイならもっと単純で、もっと直接的だ。手紙など使わず、そのまま殴り込む。

 

なら——

 

(誰がそんな情報を流して、こんな誤解を作ったの?)

 

答えは、一つしかなかった。レイナは静かに目を閉じる。

 

胸の奥にあった違和感。ずっと引っ掛かっていた小さな棘。

 

それがようやく一本の線になる。

 

(やっぱりね)

 

静かに息を吐く。

 

(おかしいのは——)

 

夕暮れの風が白い髪を揺らした。レイナはゆっくりと目を開く。

 

そして、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。

 

「……神城コクヨウ」

 

その声だけが、静かな公園の空気に溶けて消えていった。

 

凛馬とミケは聞き逃さなかった。

 

「誰だ?」

 

凛馬が眉をひそめる。ミケも首を傾げた。

 

レイナは二人を見る。少しだけ迷うような表情を見せた。

 

だが、もう隠す意味はない。そう判断をした。

 

「神城コクヨウ」

 

静かな声だった。

 

「ノクス機関の長よ」

 

「……ボス?」

 

凛馬が聞き返した。

 

「ボスは獅堂カイルじゃないのか?」

 

本気で知らない顔だった。ミケも驚いている。

 

「初耳にゃ……」

 

レイナは小さく頷いた。

 

「表には出てこない人だったから」

 

風が吹く。夕陽が少しずつ沈み始めていた。

 

レイナは続ける。

 

「そして」

 

その声は今までより少しだけ重かった。

 

「“私達を騙した奴”」

 

凛馬の目が細くなる。ミケの耳もぴくりと動いた。

 

「……騙した?」

 

レイナは頷く。

 

「ええ」

 

迷いのない返事だった。

 

「私もガイもカイルも」

 

少しだけ視線を落とす。

 

「今確信した、私達は騙されてるって」

 

凛馬は黙って聞いていた。レイナは続ける。

 

「だからと言って、許してもらおうとは思っていない」

 

その言葉には強い意志があった。

 

「貴方達の大切な人を傷つけたのは事実だから」

 

凛馬は何も言わない。ミケも黙っている。

 

レイナは二人を真っ直ぐ見た。そのまま静かに言う。

 

「だから」

 

空気が張り詰める。

 

「信じられないなら」

 

レイナは小さく息を吐いた。

 

「ここで私を殺しても構わない」

 

ミケの耳がぴたりと止まる。凛馬の目も僅かに見開かれた。

 

レイナは続けた。

 

「抵抗もしないし、言い訳もしない」

 

レイナの手が僅かに震える。

 

「それだけのことはしたと思っているから」

 

静かな声だった。だが、その覚悟だけは伝わってきた。

 

凛馬は困惑した。目の前にいるのは敵のはずだ。

 

アオとミナを傷付けた相手だ。それなのに——

 

今のレイナからは敵意が一切感じられない。

 

ミケも戸惑った顔をしていた。誰もすぐには言葉を返せない。

 

夕暮れの公園。吹き抜ける風だけが静かに音を立てていた。

 

「……」

 

凛馬は小さく息を吐く。そして、レイナを見る。

 

嘘の匂いはしない。それはずっとだ。

 

最初に会った時から、話している今も。嘘はついていない。

 

「なぁ」

 

低い声だった。

 

「そんなことして」

 

レイナが顔を上げる。

 

「俺達が喜ぶと思うか?」

 

レイナは答えられなかった。凛馬は続ける。

 

「俺はまだお前を許してない」

 

真っ直ぐ言い切る。

 

「多分、すぐには無理だ」

 

ミケも黙って聞いていた。

 

「アオが泣いた。ミナも傷付いた。それを無かったことにはできない」

 

レイナは小さく目を伏せる。

 

「ええ」

 

短い返事だった。否定はしない。凛馬はそんな彼女を見つめる。

 

「でも」

 

レイナが顔を上げた。

 

「今のお前が嘘をついてないのも分かる」

 

風が吹く。白い髪が揺れた。レイナの目が僅かに見開かれる。

 

「だから」

 

少しだけ考える。“本当にこれでいいのか”と。

 

——それでも凛馬は決断する、

 

 

「一回だけ信じる」

 

レイナは何も言わない。ただ静かに聞いている。

 

「勘違いするなよ」

 

凛馬の目が細くなる。

 

「ただ、今のお前の話を信じるだけだ」

 

レイナはゆっくりと頷いた。

 

「……ありがとう」

 

その声はどこか安心したようだった。

 

「十分よ」

 

凛馬はすぐに返す。

 

「次に怪しいことしたら終わりだ」

 

レイナは小さく笑った。

 

「そうね」

 

初めて見る笑顔だった。どこか肩の力が抜けたような、そんな笑みだった。

 

ミケが耳を動かした。

 

「で……私達はどうしたらいいにゃ?」

 

ミケは真剣だった。 

 

「そのコクヨウが悪いって分かったし、騙されてたのも分かったにゃ」

 

レイナも真剣に聞いている。

 

「だから何するにゃ?」

 

レイナは夕暮れの空を見上げる。

 

そして、静かに言った。

 

「まずは」

 

その瞳に迷いはなかった。

 

「カイルを止めないといけない」

 

凛馬が眉をひそめる。

 

「カイル……」

 

レイナは頷く。

 

「もう……時間がないかもしれない」

 

その言葉だけで十分だった。やはり何かが起ころうとしている。

 

夕陽は完全に沈み始めていた。長く伸びた三人の影が、静かな公園の地面へ落ちた。

 




最後まで呼んでくだりありがとうございます!
遂に凛馬とレイナが腹を割って話しました。レイナの迷いも消え、凛馬達との蟠りも少しは消えたように感じます。ですが、これからカイルが大きく関わってきそうです、、、
次回も呼んでくださると嬉しいです!
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