ゼロと悪霊さん   作:(´Д` )

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十話目

ルイズは気絶しているギーシュを適当に放り投げ軽く埃をはらい、深呼吸を一つ。魅魔のもとに身体を向け、歩き出す。

途中急いでギーシュの治療を始めた"水"のメイジ、モンモランシーといったか───を、一瞥する。

 

困惑してはいるが、パニックになってないあたり大事には至って無いようだ。

と、軽く思案し何てコトは無いように魅魔に声をかけた。

 

「やれやれ…中々にくたびれたわよ」

 

「でも、楽しかったんだろ?」

 

ニヤリと意地の悪い笑みを向ける魅魔。

 

「まぁ…ね、悪くなかったわ」

 

続くようにルイズも堪えきれず笑う。

それと同時にルイズは胸の奥にある熱い何かが沸き立つ感触を憶えた。

この熱さ、どこかで憶えた感触だ。

それは、メイドに頼んでもってこさせたクックベリーパイを、私の目の前でメイドが豪快に地面に落とした時だったか....

それとも、私の魔法が不出来と嘲笑する同級生達を睨みつける時?

 

兎も角、何処にもぶつけることないわだかまりを日々ルイズは積もらせていったのだが───

 

全て、報われた気がした。

 

こんな気持ちを味わえるのならルイズは、自身に生まれた大きな"力"を愛さずにはいられなかったのだった。

 

「ヴァリエール!アンタ何なのよあれは!?」

 

ここで情緒をぶち壊す様な大声が魅魔とルイズを妨げる。

 

「ちょっと煩いわよ…一応私はケガ人なのよ?そうでなくてもアンタの大声は頭に響くのよ…」

 

魅魔と会話していたルイズだが、ズカズカと疑問をぶつけてきたキュルケに疲れたように答える。

 

「アンタピンピンしてるじゃない!…じゃなくて、何なのあの光は!それと何より腕のルーン「何もなかった」えっ?」

 

「何もなかった」

 

「う、うん…悪かったわ…」

 

落ち込んでいるキュルケを尻目にこの騒動の中心人物に挨拶に行く。

 

「あ~シエスタ。だったわね」

 

ルイズに声をかけられた途端、物凄いスピードで頭を下げ始めるシエスタ。                  

「み、ミス・ヴァリエール今回は本当に申し訳ございませんでした!わ、私、どど、どうやってお詫びをすれば良いのか…」                 

 

 「良いのよ。コレは自分の意志で勝手にやったことよ、だからアナタは気にしなくても良いわ、逆に巻き込んで悪い事をしたと思っている位だし…ね」

 

ルイズは下がったままのシエスタの頭を軽く撫でる。

 

「あっ…」

 

シエスタは思い出す。決闘前に魅魔が言っていた事を…                    

───アイツがシエスタを守ったのはアイツの意志さ…

 

 

「あぁ…魅魔さんの言った通りだ…」

 

シエスタはさっさと魅魔を連れ広場から立ち去ったルイズの後ろ姿を眺めながら、誰に言うでもないように呟く。

数ある平行世界の、とある少年がこのメイドを救い以後、メイドはその少年に淡い恋心を抱くようになるのだが…この世界では一体どうなるのだろう。答えは簡単。ただ役者が代わるだけである…役者が代わり舞台は何事もなく進む。その結果が意味するモノとは何か?                      

私を助けてくれた貴族様。

 

 

誰に言われるでもなく、その小さい身体に傷を負ってまで私を助けてくれた貴族様。

 

あぁミス・ヴァリエール。届くはずもないこの思いをどうしようか。でも私の思いが届くなら是非とも親愛を込めて呼ばして下さい。

 

 

 

 

───お姉様と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…コレはのぅ…イヤしかし、何故コレが彼女に…」

 

決闘を見届けたオスマンは軽く溜め息を吐き、共に決闘を見ていたコルベールに顔を向け、

 

「ミスタ・コルベール。彼女…ミス・ヴァリエールの放った光の正体、どう思うかの?」

 

決闘中に復活していたコルベールは深刻そうな顔をしながら顎に手を当て、少しばかり考えると

 

「あれは…どう見ても使い魔のルーンですね…しかもアレは"普通ではない"」

 

「そう…いかにもあれは使い魔のルーンじゃ…しかし、何故ソレが彼女に…更にあれはこの世界の人間なら誰もが知っている始祖ブリミルが従えていたと言われている四体の使い魔の一つ、"ガンダールヴ"じゃの」

 

「そうですね…し、しかし…もし彼女が使い魔"ガンダールヴ"なら今すぐにでも王室に報告せねば!」 

         

「イヤ、今の王室の貴族どもは何やら戦争をしたがっておる。そんな奴らにこのことを報告したら何をしでかすか分からんからの…」

         

王室ども。こんな事を堂々と言えるのも、オールド・オスマンだけであろう。 コルベールは少しだけ苦笑すると、                  

「なるほど流石学院長、深い思案恐れ入ります…しかし何かご提案が?」

 

「まぁ、暫くは"まち"じゃな。またこの事はくれぐれも他言せぬようにの」

                  

「は、はい畏まりました。では失礼します」

 

そう言うとコルベールは部屋を退室していった…              

オスマンはこの日何度目か分からぬ溜め息を一つ吐き、チラッとコルベールが置いていった紙に書かれている魔法陣を見ながら

 

「"ガンダールヴ"、"始祖ブリミル"、そして"人間の使い魔"かぁ…全くコレは面倒くさいコトになりそうじゃなぁ」

 

この先に起こるであろう事を予想し、冷めた紅茶を一口。自分の運命をほんの少しだけ恨むオスマンであった。

 

 

 

 

 

 

 

此処は学院近くにある森。不自然に開けた場所…広場に2つの人影があった。

 

 

「今から修行?私、ボロボロなんだけど…」

 

「それが良いんじゃない。アンタの修行の当分のテーマは"人間の壁を越える"よ。生半可な鍛え方じゃあムリね」

         

そう魅魔とルイズである。魅魔は約束通りルイズに魔法を教えるべく、簡単な治療を行い、夕食を食べ、皆が寝静まった時を見計らって此処に来た次第である。…ちなみに邪魔者が入らないよう結界を敷いてある。            

「うぅ…私はただ魔法を使いたいだけよ…」

 

「小さい夢ね」

 

「なな、なんですってーー!!」

         

魅魔にバカにされ、吠えるルイズ。

 

うがー。               

「小さい夢って言ったのよ…ってアンタ元気じゃない。…この私が教えるのよ、どうせなるならこの世界で一番の魔法使い…最強を目指しな」

 

最強という言葉にピクリと反応するルイズ。

 

「さ、サイキョー?この私が?」

 

何やら発音がおかしいが、ここは華麗にスルー。

 

「そう、最強。その為の修行さ」

 

「さ、サイキョーね…わ、悪くないわね…で、具体的に何をするのよ?」

 

「中身は簡単さ、筋力を鍛えれば筋力が付く、なら魔力を鍛えれば魔力が付くのよ」

 

「ず、随分単純ね…」

 

 

「言う安し行うは難し…よ」

 

そこまで言うと魅魔はトコトコとルイズから離れ大体20メイル位で止まり、向き直った。

 

「とりあえず修行第一段。今から私が此処から一歩も動かずアンタを攻撃するから、アンタは私に近づき私に一発、何でも良いから攻撃しな。まぁ、無理なら触れるだけでも良いから…さ」

 

ルイズは軽く頷き、

 

「そういえばアンタの実力をまだ見てなかったわね…」

 

「まぁ機会がなかったからね…結界も敷いてあるし、加減してあげるから本気でかかってきなさい」

 

「ふ、ふん…今の私に加減なんて必要ないわよ!せいぜい私にボコられるが良いわ!」

 

ルイズは"ガンダールヴ"の力を使い、爆発的な脚力で魅魔に一発いれるべく近づく。

 

今のルイズのテンションは例えるのなら最高にハイって奴である。

 

ギーシュと戦った時に発現したあの力。

あの力さえ使えばどんな奴らも倒せる。

 

 

…たとえ歴戦の傭兵でも。

 

…たとえ王族直下の騎士団でも。

 

…たとえ偉大なメイジである母様でも。

 

…たとえ、たとえコイツでも!

 

 

 

 

───そんな風に考えていた時期が私にもありました。

 

「やれやれ…アンタの自負心は取るに足らない幻想だったらしい」

 

「うぅ…もうダメ…」

 

 

その場に、隙だらけで突っ立っている魅魔 の鼻っ面に拳を突き立てようとルイズは真っ直ぐ飛びかかったが…

何か圧倒的な"力" がルイズをぶっ飛ばした。

ソレは魅魔が放つ魔力で出来た"弾幕"と気づいた時には…ルイズは意識を手放していた。

 

コレを大体数時間位続け、その間、実に四桁は気絶した。

 

 

「さて…修行第二段だけど…」

 

「まだあるの!?」

 

余りの疲労とダメージにより、クレーターだらけの地面に寝転がっていたルイズだが、反射的に勢い良く起きながら驚く。…ってか引いた。

 

 

「まぁまぁ…コレでも飲みな」

 

と、どこから取り出したのか魅魔の手には虹色に光る何か詰められた瓶が収まっている。

 

「な、何よソレ…」

 

「コレかい?話せば長くなるんだけど…私の元々住んでいた場所の近くはやたらと魔力を含むキノコが採れてね…それらをすり潰したり、煮込んだり、はたまた乾燥したりすると偶然にも魔法が出来たりするパターンが見つかったりするのさ。…でコレはそのパターンの一つ!!"なんだかとっても元気になる魔法のお薬"さ!」

 

テンションが高い魅魔をジト目で見つめながら、

 

「いっ、嫌よ!そんな怪しさの塊みたいなモン誰が飲むものですK「まぁまぁ」ゴボボッ!?」

 

反抗するルイズを華麗に受け流し、ルイズの鼻をつまみ、口を開けさせ、無理やりビンの中身を押し込んだ。

 

うぅ…と、最初は呻いていたルイズだったが、次の瞬間

 

「ワタシハヤクシュギョウガシタイデゴザル!ワタシゲンキゲンキデゴザル!」

 

…と、先ほどの疲労が嘘のようにシュバッ!と立ち上がり笑顔で答えた。…目は死んでいるが…

 

それを見た魅魔は

 

「取りあえず朝になるまでずっと"ガンダールヴ"の力で、学院の周りを走ってなさい」

 

と、答える。

 

それにしてもこの悪霊、外道である。

 

「ウンワカッタ!デゴザル!」

 

命令されたルイズ(洗脳)は気持ち悪い位爽やか笑顔のまま、すたこらと学院に向かって走っていった。

 

 

余談だがこの日から学院に夜な夜なゴザルゴザル聞こえてくると噂され、学院を恐怖に陥れたという…

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