ゼロと悪霊さん   作:(´Д` )

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十一話目

魅魔によるルイズへの修行開始から数日たった今日は虚無の日…つまり休日であった。

 

この数日の間に先生達から決闘の件で何らかのお咎めを受けるのではとルイズは内心ビクビクしていたがそれもなく。

 

先生の叱咤の代わりに、ギーシュがまた両頬に大きなもみじを貼り付けながら私に謝りにきた時は腹がねじ切れるかと思った。

 

つまり何が言いたいかというと、この数日間、平和だったのだ。

件の決闘をきっかけに周りの生徒たちからのイジメもなくなったし、なんだか頭も回る気がする。

 

充実している勉学。美味い食事。魅魔からの手ほどきを受ける目新しい魔術の数々。

 

...まぁ、魅魔から受ける修行という名の虐待を除けばなのだが。

 

変わったコトと言えば、こないだ廊下で偶然私にぶつかり、倒れ、尻餅をついた少女が私を見た途端、青ざめ、泣き出し、逃げ出した時くらいか。

 

....何だったのだろうか?

         

他にも出来事があるにはあったが…いや、あの事は正直忘れたい…                    

しかし平和というモノは簡単に崩れてしまうモノであり、儚いのである…

 

それは、何気ない日常...魅魔との会話から始まった。

 

 

 

 

 

              

◇  

 

 

 

〜ルイズの自室〜

 

              

魅魔は何やら自分の杖の手入れ、私は修行のせいか、身体が酷く痛むので、布団の上で休んでいる。                          

「魅魔、前々から私言おうと思っていたんだけど、修行の後何故か記憶が無いんだけど」

 

「そうかい」

 

「朝、気づいたら毎回学院の外で倒れているんですけど!」

 

「そうかい!!」

 

「何で怒鳴るのよ!?」

 

「まぁ、落ち着きなって、それより町で見つけたものなんだけどさ」

 

…と一枚の紙をベッドの上のルイズに見せつける。

 

「町ぃ!?アンタ何時行ったのよ…よく道がわかったわね」

 

少しだけ驚くがなんて言うこともない。

目の前のコイツのやることなすことにいちいち驚いていたら身が保たないのだから。

 

「ヒマな時にちょくちょくとね…前に、空中を飛びながらウロウロしていたら偶然見つかったのさ」

 

「と、飛んで!?此処から一体どんだけ距離があると思っているのよ!」

 

訂正、やっぱり時々驚かないとおかしくなる。

 

「アンタ何者よ…」

 

「教えない☆」

 

「ぐぬぬ…絶対正体を暴いてやるんだから…」 

 

話が逸れたと、魅魔は無理矢理その紙をルイズに押し付ける。

 

「何よコレ。依頼書?」

 

「酒場にちょっと寄ったんだけどね。イヤほら、情報と仲間集めなら昔から酒場と相場が決まっているからね」

 

ルイズは何も言わず話を聞く。

 

「で、そこには丁度この近くの森に"オーク鬼"っていう亜人がいるらしいのさ」

 

オーク鬼。亜人の中でも危険な部類に入る。

魔法こそ使わないがその腕力は巨木をなぎ倒し、その分厚い皮膚は刃物すら通さない。

また、武器を扱う程度の知識を持っており、何でも人間とほぼ同じ大きさの超重量の斧を扱う個体も見つかったとか。

         

「...で、コレが何なのよ?」

 

薄々気づいていたが、そうではないと信じ、質問する。

 

だがしかし、魅魔はあの整った顔をニヤリと歪ませ、笑う。

 

嗚呼…そうか、やっぱりそうなのか。背筋が凍るような感触を感じながら

 

「じゃ…そゆことで…」

 

そそくさとルイズは部屋から出て行こうとする。

 

魅魔はヤレヤレとため息、その後

 

「どういうコトだよ?」

 

と、首根っこを掴まれる。

 

                           

…ですよね-。

 

その後は大体なすがままである。

 

準備すらせずに、窓から飛び出した彼女は私をいわゆるお姫様抱っこの状態のまま依頼人に会いに行く。

 

引きつった笑顔が印象的な依頼人に挨拶した後、オーク鬼達が集まっている上空にて待機。

 

「さて…この下に討伐すべきオーク鬼達がいる訳だけど…」

 

「ねぇ?私半ばなすがままだったんだけど、杖さえ持ってきてないんだけど?」

 

「持ってこなかったのかい?じゃあ今回のテーマは"乙女は素手でオーク鬼達を殲滅できるのか?"と、言うことで」

 

「意味わかんないし!ワタシはメイジになりたいんであって、グラップラーになりたくはないのY「逝ってこ~い」って、ギャアアアアアッッ!!?」

 

魅魔は腕の中でギャアギャアと騒ぐルイズを綺麗なフォームでオーク鬼達のど真ん中に投げ込む。

 

結構高い所から投げたけどあの子なら死なないでしょう…多分。まぁそれはそれで面白くなるだろうけど。

 

その時の魅魔の笑顔といったらまるで鬼か悪魔そのものであったとルイズは後に語る。

 

鬱蒼とした木々を押しのけ掻き分け吹き飛ばす。高速にまで達したルイズの身体の命運はその頑強さのみに委ねられた。

数秒もたたないうちにズドーンとまるで漫画のように上半身だけ地面に突き刺さるルイズ。

 

「もー!荒っぽいのよアンタは!」

 

と、密集した木々の隙間に浮かぶ魅魔に吠える。 

 

彼女は何やらジェスチャーでルイズの周りを指差している。

 

何よ!全く私にこんな事をして…と、軽く周りを見渡すと…

 

「……」

 

そこは一面のオーク鬼達。…四十体はいるかしら?

 

「ご」

 

「フゴッ?」

 

「ご機嫌よう…」

 

「「「フガアッッ!!」」」

 

「イヤァァー!!」

 

私の言葉を合図に一斉に襲ってくるオーク鬼達。

 

逃げるルイズ。

 

チラッと空を見ると魅魔がグッと親指を立てている。

 

上手くオーク鬼達を避けつつ、取りあえず囲まれ、袋叩きにされるのを防ぐ。

 

「取りあえず…一発!!」

 

人外のスピードで撹乱し、隙が出来た一匹のオーク鬼の横っ面に拳をブチ当てる。しかし…

 

「フゴ?」

 

オーク鬼は何てことの無いように頬を掻いている。

 

「なんで…?私の拳は青銅のゴーレムすら壊す拳よ…?」

 

しかしそれでもコイツらに勝つためには戦うしかない…

 

「…チィ!」

 

大きく息を吸い込み、小さい舌打ちを一つ。ルイズは連続してオーク鬼に攻撃を仕掛ける。

 

顔面を突く、無反応。

 

 

太ももを蹴る、無反応。

 

 

額に向かって回し蹴り。…腰が落ちる。

 

「そ、其処が弱点ね…」

 

此方の攻撃の最中、向こうも黙っている訳もなく、オーク鬼の武器である歯で噛みつかれ、爪で切り裂かれ、丸太の様な腕力で吹き飛ばされ…要するにルイズはボロボロである。

 

「ふん、面白くなってきたじゃない…」

 

上辺ではこう言ってはいるが、内心恐怖で埋め尽くされそうである。心は…震えない。

 

「取りあえずアンタからよ!」

 

突く、突く、突く。

 

息つく暇も与えない。連続でオーク鬼の額を一点集中、ただひたすらに殴り続ける。

相手の攻撃を避けつつ、額に己の拳を叩きつける。

その繰り返す成果はオークを気絶させるのに充分であった。

 

チラリとドヤ顔を魅魔に見せつけてやる。

...あれ?魅魔の他になんかデッカイ竜に乗ったキュルケと、プルプルしてるタバサがいる。

 

…こら、欠伸すんな。

 

 

 

 

ズン…ッと軽く地響きが一つ。

 

素手でオーク鬼を倒した戦果は素晴らしいが、戦いはまだまだ始まったばかりである。

 

「どうしようかしら…こんなに多いと素手じゃちと無理ね…」

 

オーク鬼の攻撃をかわしつつ、考える。

 

すると…

 

「おいッ!そこのお前ッ!俺を使え!」

 

声のした方へ視線を移すと、一振りの錆びた長剣が地面に突き刺さっていた。

 

「...アンタまさかインテリジェンスソード?」

 

「おうっ!って、今はどうでも良いっ!まずはコイツらをやっちまえ!」

 

剣を引き抜くと、気持ち悪い位両手にフィットする。まるで長年大事に愛用してきた武器のようだ。

 

「お前まさか…使い手か?」

 

ルーンが現れ、身体能力も格段に上がる。力が満ちる。

 

そこへ隙ありと襲いかかるオーク鬼。獲物は何やら此方に背を向け、ぼーっとしている。

 

獲物に向かい拳を引き絞り、放たんとした瞬間、獲物は消え、何かを両断したかの様な耳に残る生々しい音か辺りに響く。

 

2テンポほど置き、今度は意図せず視線が落下する。

そう、両断されたのは自身の胴体であった。オーク鬼は痛みもなく絶命する。

 

「…いい剣ねぇ」

 

「ふん、そうだろうよ!ちなみに俺様の名前はデルフリンガーだ!よろしくなっ!"相棒"!」

 

「相棒?」

 

「お前は俺を使うべきだ、今俺が決めた」

 

フッとルイズは軽く苦笑すると…

 

「ルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ、よろしく」

 

「ああっ!?新しい使い手は貴族かよ!…て、お前、虚無の担い手!!?」

 

質問は後回し。ルイズはギャアギャア騒ぐ剣をいったん無視する事にし、決して少なくないオーク鬼達の殲滅を図る。

 

「よし....行くわよ!」

 

「おぉ!なかなかに悪くない"震え"だぜ!」

 

ルイズは新しく出来た錆びた鉄作りの"相棒"と共にオーク鬼の群れに飛び込む...

 

 

 

 

結局最後の一体を殺しきるのに、夕刻までかかってしまった。

ひとまず"相棒"を地面を突き刺し、向こうから迎えの竜がやってくるのを確認し…吐いた。

 

それはもう、盛大に。

 

彼女は一応、ついこないだまでただの女の子だったのだ。

そんな彼女が初めて犯した"殺し"。それが戦いが終わった後になりジワジワと実感が湧いてきたのであった。

 

「あ、相棒…大丈夫か?」

 

「ウプ…も、もう大丈夫よ…」

 

彼女は夕日を背にまた一つ、強くなったのである。             

「所で私の事使い手なんて言ってたけど…」

 

「あぁ…アレか、俺を振るって良いのは今も昔も"ガンダールヴ"だけってコトさ、それにしても、俺の前の持ち主があのオーク鬼に襲われて、直ぐに相棒が現れるなんて運命かもなぁ」

 

「気持ち悪いわよ…で、アンタその"ガンダールヴ"とやらが使っていた剣なの?」

 

「……」

 

「?」

 

「だっけ?」

 

「ハァ!?」

 

「イヤほら俺、結構長生きでさ、長年この世にいれば忘れる事だってあると思うんだって!」

 

「ハァ、もう良いわよ…まぁ取りあえず疲れたわ…早く帰るわよ…」

 

「でも、迎えの竜、行っちまったぜ?」

 

「えっ」

 

ふと見ると此処に来ると思っていた竜が、そのまま通り過ぎ、遙か向こう側に飛んで行くのが見えた。

 

ルイズは大きく息を吸い、叫んだ。

 

 

「鬼ィィィィィィィィ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ」

 

「照れんな!」

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