ゼロと悪霊さん   作:(´Д` )

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十二話目

此処はトリステイン王国トリステイン魔法学院。

 

時刻は昼。学院の生徒は授業を受けている筈の時間である。

しかし此処に、自室に引きこもっている生徒が居た。

 

「う~痛い~身体中が痛い~」

 

「やれやれ…"ガンダールヴ"で身体能力を底上げしてるのに全身筋肉痛とは情けないわね…」

 

「う、五月蝿いわよ…一応私、世間ではお嬢様で通っているのよ?それでなくとも軍人でも無い限り、メイジが身体を鍛えるワケ無いじゃない!」

 

そう、この少女。ご存知ルイズである。

昨晩から始まった魅魔の修行第一弾のあまりの激しさに動けなくなり、授業を欠席した次第である。

 

 

魅魔はベースとなる身体の筋力強化も面白そうだと考えていると…

 

「大体なんで私は気がついたら学院の近くで倒れてるのよ!何か昨晩の修行の記憶もプッツリ途切れてるし!アンタ私に何をしたでござる!!……ござる?」          

「まぁまぁ、取りあえずコレでも読んで落ち着きなよ」

 

魅魔は懐から何やらドサドサと、大量の本を取り出し始めた。         

「何よコレ…」

 

話を変えられ、文句でも言おうとしたが、好奇心が勝った。

 

「幻想郷に流れついた物さ、こっちで言う"場違いの工芸品"みたいな物かね。ソレが何処から来たのか私も知らない」

 

ルイズは試しに一冊読んでみる。

何故文字が読めるのかとかツッコミは無しだ。

 

「え~っとなになに…グラップラー刃「おや?誰か来るよ」えっ?この時間帯はあまり人がいないんだけど…」

 

勢い良くドアを開け入ってきたのは…

 

「やっほールイズ、お見舞いに来たわよん」

 

「キュルケ…今授業中の筈よ?」

         

そう、その正体はキュルケであった。キュルケはルイズのまるで小動物のような威嚇に若干ゾクゾクしながら、            

「だって~授業内容退屈なんですもの。コルベール先生は、変な自作の鉄の塊を自慢するし、ギトー先生は風系統の自慢しかしないし!あぁ、私の情熱を燃やすような未来の王子様はどこにいるのかしら」

 

ベットに縫い付けられたかの様に動けないルイズは、横目で

 

 

「...アンタは学院に結婚相手を探しに来てるのかしら?」

 

と、挨拶代わりの皮肉を飛ばす。

 

ルイズ的には精一杯の皮肉を込めて言ったつもりなのだが、キュルケはなんてこともなく、きょとんとした表情で

 

「なによ、当たり前じゃない」

 

と、バッサリ。

 

「ハァ、まぁ良いわ…どうせ今日は此処に居るんでしょ?ちょうどヒマだったし話相手になりなさい」

 

と、ルイズは自分の口からこのような言葉が自然に出たのに内心ビックリしていた。

代々昔から憎みあう家系同士である。

当然自分も例に漏れず、理由も無く目の前の少女に喧嘩を売る事もあった。

 

…まぁ今思い返せば私が一人で暴れていた気がしないでもない。

しかしそれにしても、自分の隣で杖を磨いているこの魔法使いに会ってから世界が一変した。

 

目の前にいるコイツと友人になったし、

周りの評価も変わり、何より自分自身が変わった。

 

自分は魔法を使えない。

正確に言うなら、どんな魔法も爆発という現象に変換されてしまう。

その事実を気づけば私は受け入れるようになっていた。

周りの環境の変化はルイズの内面を信じられないほど成長させていたのだ。

 

そこまで考え、この得体の知れない魔法使いに心の中で小さく感謝する。

 

…こら、ニヤニヤすんな。

 

 

「魅魔、アンタ実は人が考えている事わかるでしょ」

 

「さて、何のコトやら」

 

「何よ、二人だけで話してないで私にも教えなさいよ」

 

女三人寄れば姦しいという…時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜厨房~

 

学院の厨房。そこで何やらコック姿のおっさんが文字通り右往左往。一目も気にせずあっちに行っては顔をしかめ、こっちに行っては頭を抱えていた。

 

一歩間違えれば通報されそうな雰囲気を持つ彼こそ、ここトリステイン学院の生徒の胃袋事情を一手に担う専属料理長。マルトーである。

 

豪快で快活な性格の彼だが、珍しく悩んでいた。

悩みの種は同じ学院で奉公しているメイドである。娘に歳が近いこともあってかよく世話を焼いてやっていたのだが、ここ最近彼女の様子が少しおかしい。

 

そう、とにかく元気がない。何かを考える素振りをしたと思ったらため息を一つ。

心ここにあらずといった具合である。

原因はわかっている。だが、それをどう表現して良いのかわからない。

今日もマルトーは悩み続け、料理を焦がすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

最近シエスタの奴がおかしい。

きっかけは一時期、厨房でも話題になった

"偉大なる貴族様様決闘事件"である。

 

貴族と言ってもまだまだお子様である。その場の感情に流され、決闘になるなどこの学院ではそれ程珍しくはない。

しかし今回の騒動。

発端はシエスタだというのだ。

 

なんでも、悪い貴族に言いがかりをつけられいちゃもんをつけられかけたその時、颯爽と現れた正義の、それもカッコいい貴族様(シエスタ談)がその身に傷を負ってまで助けられたとか。

 

俺は最初、この事を信じられないでいた。そもそも俺は貴族という存在が大嫌いだ。

俺には貴族は魔法という凶器をちらつかせて偉そうにしているようにしか見えない。

平民だって長所はある筈なのだ!そう!…例えば俺の料理の腕前とか!!

 

 

…話を戻そう。

 

どうやらシエスタ。決闘の後"恋"してしまったらしい。勿論助けられた貴族にだ。

 

そりゃあ、ピンチの所に颯爽と登場。身を削ってまで救われるだなんて惚れないワケがない。

 

しかし…相手が相手である。貴族と平民。禁断の恋以上の高いハードルだ。

 

いっそ失敗を経験させるか…イヤしかし…

 

しかし…成功したらどうだろか。

娘のように可愛がってはいるが、シエスタはモテる。なんと貴族の中にもチェックしている者もいるそうだ。

なら此処は父親として、彼女に適度にアドバイスをし、見送るのが自分の役目ではなかろうか?

 

…よし!決まったらすぐ行動だぁ!

 

「あ~シエスタ」

 

「ハァ…って、は、ハイ!何でしょうかマルトーさん?」

 

「いやほら、お前が貴族との恋愛の事で悩んでいるのかと思ってよ」

 

「!?…じ、実はそうなんです…ある一人の貴族様が頭から離れなくて…」

 

「そうか…告白とかしないのか?」

 

「ッ!…む、無理ですよ!あ、相手は貴族様ですし、第一嫌われたら怖いんですよ…」

 

「お前の好きな貴族はそんなモノなのか?」

 

「?どういう事ですか…?」

 

「そのまんまだ…お前が好きって思ってしまったんだろ?なら道は開けている筈だ…ようは踏み出す勇気さ、なら踏み出してみな、案外気持ちが良いものだぞ?」

 

シエスタは最初ポカーンとした顔だったがうんうん考えだし、そのうち考えがまとまったのか、

 

「マルトーさん!ありがとうございます…考えがまとまりました!」

 

「おうそうか!なら即行動だ!行ってこい!」

 

うぅ…コレが娘を見送るって事なのか…誰も居なかったら泣いてる所だ…

 

それにしても糞貴族野郎…もしうちの可愛いシエスタの告白を蹴ったらどうしてくれようか…

 

 

「はいっ!行ってきます!"ミス"・ヴァリエールの所へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……へっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…お腹すいたわね…」

 

夕方になり、キュルケと魅魔は食堂に行ってしまった。

 

私は身体が動かなく、食堂に行けないので自室で待機中である。

だからこうしてメイドが運んでくる料理を待っているのだが…

 

軽くドアを叩く音。

 

「やっと来たわね…入って良いわよ」

 

するとそこに現れたのは

 

「あら、シエスタじゃない。私に何か用かしら?」

 

そう、入ってきたのはメイドのシエスタであった。

 

他のメイドはまだ働いている筈である。

 

一体用事は何だろうか…

 

 

何やら顔が赤く染まり、モジモシしながらおぼつかない足取りで近づいてくる。

 

 

…なんだろう、嫌な予感しかしない。

 

 

「み、ミス・ヴァリエール!」

 

と、突然筋肉痛で動けない私に抱きついてきた。

 

 

「い、いだぁぁ!!筋肉痛!筋肉痛!」

         

シエスタは知ってか知らずかそんな私をスルーしながら抱きつき、何やら話を始める。              

「ミス・ヴァリエール…覚えていますか…「痛い!」食堂で私を助けてくれたコト…その日「放して!」から毎晩アナタが夢に出てくるんです…相手「い~だ~い~」が相手だし…迷惑とは重々承知です!で、でも…アナタにだけは伝えておき「あ…何か意識が…」たくて…」

 

何を言っているのか理解はできるが、他ならぬ彼女が返事をさせてくれない。

 

「アナタのコトが…好きです…」

 

何やら動けない私を抱き締めながら、目を潤ませながらその林檎のような顔を近づけ、囁くように語りかける。

 

 

もし私が男性ならこの状況はきっと凄まじい破壊力を持つのだろうが、生憎と私は女である。

 

…だから可愛いなとか微塵も思ってない。決して無い。泣いても無い。

 

「でも、アナタの重荷になるのは分かっています…だから…せめて…せめてアナタの事を"ルイズさん"とお呼びしてよろしいでしょうか?」

 

「わかった!わかったから放して!」

 

 

「うぅ…る、ルイズさん!」ギュ~ッッ

 

 

「ギャアアアアアッッ!!!」

 

 

 

 

…愛が重い。

 

 

 

と、ココで何故かタイミングを見計らったようにドアが開く。

 

「やれやれ…アンタメイジなんだろ?杖を忘れてどうするのさ?」

 

「悪かったわよ…早く行かないと食べそびれるわね…って、まぁ!」

 

 

 

部屋には抱き合う貴族とメイドの乙女二人。

 

キュルケの脳内をスパークするには充分すぎた。

 

 

「ここ、コレは違うのよ…」

 

「あ~大丈夫。この事は秘密にしといてあげるからね」

 

「いやはや…コレはコレは…」

 

「ルイズさんはぁはぁ」

 

おいメイド自重しろ。

 

ドアから入ってきた二人はその後…

 

「じゃ、ごゆっくりと…」

 

「私はそんなルイズを応援しているから安心しなよ」                     

「ルイズさんはぁはぁ」   

                        

と、ドアから出て行くのだった。

 

「全っ然空気とか読めてないからぁぁぁ!!」

 

「あ、そうだ…」

 

と、ドアからにゅっと出てきた魅魔は一言。

 

「今夜も修行あるからね」

 

「お」

 

「(^ω^)お?」

 

 

「鬼ィィィィィ!!」

 

「いやぁ」

 

「褒めてないわよ!」

 

「ルイズさんクンカクンカ」

 

「嗅ぐな!」

 

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