~学園外~
揺れる馬車、案内役であるロングビルに手綱を任せ、ルイズは装備を確認。
顔には緊張のせいか強張っている。
ルイズは学院の他の生徒に比べ戦闘経験が多い。それはメイジだったり、オーク鬼などだ。しかしそれは良くも悪くも彼女にある種の危機感を抱かせる。
彼女の数々の戦闘経験により、昔のように物事を楽観的に見る事が出来なくなっていたのだ。
(相手は今までの相手とは違う…相手は名のしれた盗賊…しかも実戦で研ぎ澄まされた本物のメイジ…果たして私の技術があの"土くれ"に通用するのかしら…)
と、ここまで思案した所で溜息を一つ。一息ついたのち、チラリと前を確認。
「...魅魔は良いとして、何でアンタ達がついてくるのよ?」
「オホホ♪目の前でライバルがみすみす成果を挙げる所を見逃すなんて嫌よ、アンタにだけは負けるワケにはいきませんもの」
と、キュルケは視線を隣の少女に移す。
「けど、アンタまで来る必要はなかったのよ?タバサ」
タバサは独り言の様に呟く。
「……心配」
キュルケ、感動した面持ちでタバサにお礼を一言。
「ありがとう...タバサ!!」
キュルケはそのまま流れる様にルイズに顔だけを向け、
「私達は一応、"トライアングル"だし?遅れをとるつもりも無いから心配しなくても大丈夫よ」
「そんなこと、心配はしてないわよ…それよりこの任務は私が承ったのだから、私の言うことは従いなさいよね?」
「はいはい、分かっているわよん」
「心配ね…って、それよりタバサ、魅魔のコト苦手じゃなかった?」
と、隣で瞑想?する魅魔を横目で見ながらこの小さな少女に質問する。すると…
「い、言わないで…」
…よく見るとさっきから一向に本のページが捲られてない。
キュルケは苦手を乗り越えてまでついて来たこの友人に更に感動し、
「た、タバサ~」
と、抱きつき、頬擦りする。
「…苦しい」
ルイズはとりあえず二人を放っておき魅魔に習って息を整え、目を閉じ瞑想をする。
これは魅魔に習った呼吸法であった。リラックスし、雑念すら傍観する。
…暖かく心地よく感じるこの感触。こうすることでルイズ自身の魔力の流れというものを最近一人で感知出来るようになっていた。…強張っていた身体も軽い。
◇
時間にして約一時間。馬車が止まり、フーケがルイズ達に伝える。
「此処から先は深い森になります。なので馬車を降りて徒歩で、行きましょう。情報によるとフーケの潜伏先が見える筈です」
馬車を降りた一行は深い森の中へと入って行った。
ルイズを先頭に、邪魔な木々をデルフリンガーを使い伐採しながら進んで行く。やっとの出番に張り切っていたデルフだが、内容が伐採と聞くなりげっそりとしていた。
…気がする。
暫く進むと開けた場所が見つかり、その中央にボロボロの小屋のようなものが見える。
「…アレがフーケの潜伏先かしら?」
「人の気配はしないが…どうするんだ相棒?」
「そうね…まずは身軽な私が探索してくるわ、みんなは待機してて」
ルイズは一同がいる森の入り口から走って小屋の窓に近づき、中を確認。
「誰もいないみたいね…」
キュルケはルイズのジェスチャーにより小屋の中に誰もいない事を知り、
「さて、行きましょ」
と、一同に一言。小屋に向かう…
◇
「罠は無いみたい…」
タバサは小屋に向かって杖を振った後、呟いた。
それを聞いたルイズは扉を蹴破り、中に駆け込む。タバサと魅魔はそれに続き、
キュルケの火の魔法は室内で使うと危険という事で外で待機、ロングビルは周囲の偵察をしますと一言。森の中に消えた。
お目当てのモノを見つけるのに時間はかからなかった。
タバサは小屋の中にある机の上にあったソレを持ち上げ呟いく。
「…破壊の杖」
今まで黙っていた魅魔はソレを見た途端、眉を顰め
「…コレが"破壊の杖"かい?」
タバサはぷるぷるしながらも、一言。
「ま間違いない、前宝物庫で見たことある」
魅魔はタバサからソレを受け取り、観察を始めた。
…破壊?コレが?私の記憶が正しければコレは破壊とは無縁のモノなんだけどねぇ
と、ここまで思案しもう少しだけ詳しく調べてみる。
…ッ!ほう…コレはコレは…
この"破壊の杖"の本質を見た魅魔はコレが自分の知っている物とは違うコトに気づき、と同時にコレを製作した者の技術力の高さに驚く。
「…ま、私の方が上手くやれる」
「?魅魔アンタこれがどういう物か分かるの?…言っちゃ悪いけど全然破壊の"杖"に見えないんだけど…」
「あぁ…確かにコレは破壊を生み出すよ、山くらいなら吹き飛ばせるんじゃないかい?」
「な、なによソレ…危なすぎるわよ…」
「だから"破壊の杖"さ」
二人の雑談を尻目に周囲を警戒していたタバサだったが、ピクリと何かに反応し、
「…来た」
と、呟く。
次の瞬間、バコォ!!と音を立て、小屋の屋根が吹き飛ぶ。
ルイズは反射的に小屋を飛び出しつつ、背中のデルフリンガーを抜き、構える。
そこには20…いや、30メイルもの巨大な土のゴーレムが立っていた。
遠くでキュルケとタバサが何やら呪文を唱えたらしく、火と氷の塊が止めどなくゴーレムに降りかかるがゴーレムは意にも返さない。
「…こんなにデカい相手じゃ私の火も力不足かしら」
「退却」
タバサの一言でキュルケとタバサは一目散に逃げ出す。
タバサは指を口に当て、甲高い音を出す。
すると、どこからともなく自身の使い魔である風竜のシルフィードが飛んできた。
タバサとキュルケは急いでその背中に乗り、空中に脱出。
「それにしてもデカいわね…」
「…ルイズを助けないと」
◇
…急いでお宝を盗んでみたは良いけど、使い道がわからない。
色々弄ってみたけど解らずじまい。
私こと"土くれ"フーケは仕方がないからこんな作戦を思い付き、実行に移したんだけど…
「…早くゴーレムに"破壊の杖"を使いなさいよ!こちとら使い道がわからないで困っているのよ!」
「教えてあげようか?」
「是非とも…って、うわっ!?」
「こんにちわ」
「こんにちわ…って、動くな!」
突然気配もなく後ろに立っていたのは、私の手伝いをしてくれたミス・ヴァリエール…が召喚したメイジであった。
「やれやれ…挨拶も出来ないのかい?これだから、最近の若者は」
「わ、私は、動くなと、言ったのよ。杖を下ろし手を上げなさい呪文は既に杖に込めてあるわ!」
「なによ、やる気?」
◇
…おかしい。さっきまでは幾ら切り刻んでも再生したゴーレムがいきなり崩れだし、土の山へと化した。
「どういうコトよ…」
「こういうコトよ」
ガザっとちょうどこの広場を見渡せるであろう所から魅魔が出てきた。
「アンタ…ミス・ロングビルに何してるの?」
魅魔は腕の中で暴れている何故かボロボロの彼女を地面に下ろし、ポンッと手を彼女の頭に乗せつつ、
「トリステインを恐怖に陥れる悪名高き大盗賊。"土くれ"フーケとはコイツの事さ」
ルイズはジト目で、
「…そんなワケ無いじゃない!幾らアンタでも言って良いことが…」
と、此処でロングビルの肩が震えている事に気づく。
…えっマジ?
「ミス・ロングビル本当なのですか?」
「...そうさ、如何にも私が"土くれ"フーケさ」
「…それを聞いて私が黙っていると思うのかしら?」
「ま、まぁ最悪逃げれば良いことだしねぇ…しかし、アンタ何でこんなコトを?」
と、魅魔に顔を向けるフーケ。
「いや、ルイズにも、そろそろ本当のメイジとの戦いを経験させた方が良いと思ってね…ねぇ、"マチルダ"?」
それを聞いた瞬間フーケは目を見開き、
「…ななな、何でおお、お前がその名を…?」
あきらかに動揺する彼女ルイズは頭にハテナマークを浮かべたままだ。
「気にしなさんな、考えを吹っ切れないヤツは老けるよ?」
「気にするわよ!」
魅魔はまぁ、とにかく…と呟き、
「ルイズ、アンタはフーケを捕まえたい」
次にフーケに視線を向け、
「フーケ、アンタは此処から逃げ出したい…ならすべきコトは一つ」
と、魅魔はトコトコと丁度ルイズとフーケの真ん中に入り、腕を上にクロスし、一言。
「ファイ!!」
「……」
「……」
「どうしたんだい?始めないのかい?」
ルイズとフーケは顔を合わせ、
「「えええぇぇぇ~~~!?」」
コイツ自由過ぎだろっ!と、ただただ、驚いたと後に語ってしまう。