暫くうんうん唸っていたルイズだったが急に眼を覚まし唐突、魅魔に怒鳴り始めた。
「いきなり何よ!まぁ、悪夢を見ていたから助かったんだけどね!」
哀れトリステインの精。貴方のルイズの中の評価は「汗をかきながらハァハァ言いながら追っかけてくるなんだかキモイおっさん」である。
まぁ、大体合っているから問題ない。
「じゃあ良いじゃない。所で学校は良いのかい?」
「…ハッ!?」
気づけばもう朝食の時間である。ルイズは猛スピードで身支度を始めた。
魅魔はとりあえず外へ出ようとドアノブに手を当て、開くと…
「…っと、」
「あ、アナタ…昨日ルイズが召喚した使い魔ね?」
目の前には昨日見た気がする真っ赤な髪をし、褐色の肌色をした…まぁなんと言うかルイズの体型と比べるのもおこがましいような、見事なスタイルの女性がいた。
「ん、そうさ、昨日はすまなかったね…あそこまで極端な反応されると、なんだかヘコむよ」
「あははっ、良いのよ、温室育ちの坊や達はあれぐらいの経験をしないと良い男にならないもの」
「ふ~ん、まぁどうでも良いよ。私は魅魔、アンタの名は?」
「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよん。二つ名は"微熱"、よろしくね」
続いてキュルケはルイズに目だけをルイズに向けると
「あら、ルイズ。おはよう。昨晩は食堂にいなかったけど何かあったのかしら?」
「うるさい、ツェルプストー。色々あって、そのまま寝ちゃたのよ…」
キュルケの小馬鹿にするようなものいいに対して、疲れたように答える。
そのあと、キュルケの後ろからひょこっと火を噴くトカゲ…サラマンダーが現れた。
「それ…アンタが召喚した使い魔…だっけ?」
ルイズは恨めしそうにそのサラマンダーを見る。
魅魔はというと、軽くしゃがみこみ、そのサラマンダーをペタペタと触っている。
「そうよ、名前はフレイム。見なさいこの素晴らしい鱗の色艶、きっと火竜山脈のサラマンダーに違いないわ。そこんじょそこらのサラマンダーとはワケがちがうのよ‼」
あ、サラマンダーが魅魔に炎を吐いた…が、かわされた。目標を見失った炎はそのまま廊下をコソコソ歩いていたギーシュに当たった...。
…何で女子寮にいるのよ!
キュルケはフレイムを軽く撫で、続いてルイズと魅魔に向かいにこやかにオホホと微笑み、軽く手を振り、フレイムと共に食堂に向かって行った。
「ふ、フンッ、な、何よっ!キュルケのヤツ、自慢しちゃって!」
キュルケが去ったあと、ルイズが内心の苛立ちを露わにした。
魅魔はそんなルイズを見、
「あんなトカゲのどこが良いのよ?」
「…使い魔ってのはね、そのメイジの器量と強さを表しているのよ…つまり、メイジの強さ、才能、技量の象徴みたいなもんなのよ!」
ルイズは悔しそうにうぎーっと声を荒げる。
それを聞いた魅魔は小さく微笑み、軽く答えた。
「なら、少なくともアイツよりアンタの方が、強さ、才能、技量は上だね」
「へっ、な、何で?」
「どんな強力な使い魔でもここでは使徒しているのは人間だろ?ならその人間を召喚したアンタは勝ち組だねぇ」
まぁ、本当は人間では無いのだが。
それに対しルイズは
「むむむ…そ、それもそうね!!」
魅魔は内心この子扱いやすいなぁ…と、思いつつ。
「ん、そうさ。所で朝食だろ?ほら、早く食堂に行かないと食べれなくなるよ」
「そ、そうね!早く行きましょう!」
適当にルイズを励ました魅魔はこの世界の朝食とやらにワクワクしつつ、貴族御用達食堂に向かうのだった。
☆
「ほう…コレはなかなか立派じゃないか」
「ふふふ...凄いでしょ!此処は有名な超一流のシェフが働いているから何時でも美味しい食事が食べられるのよ!その外壁も素晴らしく、これまた超一流の建築家が高い技量を持つ土メイジ達を集めて丁寧に作りあげた正に"貴族の食堂"なのよ!」
食堂の入り口で、朝から熱弁をふるう。魅魔はやれやれと溜め息を吐き、周りでルイズを見ていた生徒達は感動した!っとばかりに惜しみない拍手をする。
食堂の中はとても広く、今数百人の生徒達が談笑をしているがそれでも十分空きがあった。
調子に乗ったルイズの熱弁を尻目に魅魔は少し食堂を散策することにした。
(ふ~ん料理の味もなかなかどうして…)
パクパクと料理を摘みながら散策する魅魔。
周りは昨日の魅魔を見ているので、怒りたくとも怒れない。
…大なる始祖ブリミルと女王陛下よ、今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことに感謝致します───
此処のメイジ達の朝の祈りだろうか…?
それをBGMに小太りの少年の朝食をこっそり頂く。
妖霊たる自分の身体はこんなコトも出来るのだ。
後ろで少年が何やらわめいていたが、スルースルー。
生徒達の祈りも終わり、食堂の端に控えていたメイド達がティーポットを持ってきた。
どうやら生徒達のカップに紅茶を入れているらしい。
紅茶から溢れ出す独特の芳ばしい香りがまるで目に見えるかのようだ。
いつの間にか演説を終えたのか、テーブルに座り、メイドから紅茶をもらうルイズの姿も見ることができた。
魅魔は周囲を観察しているうちに一人のメイドと目があった。
「あっ魅魔さん!」
「シエスタじゃないか。悪いが、私にも紅茶を一杯くれないかい?」
「はい、直ぐにカップを持ってきますね」
そういうと、食堂の奥に行きカップを持ってきた。
カップを魅魔に手渡し、自分の持っていたティーポットをカップに傾ける。
純白のカップ。そこに綺麗な濃い琥珀色をした液体が充満すると、梅雨明けの太陽の様に芳醇な香りが魅魔を包み込む。
香りを楽しんだ後、それを一口、口に含む。その香ばしさとは別にやはり良い葉を使っているのか素晴らしい爽やかさを魅魔を与えた。
「ん、コレは良い紅茶だね」
「ありがとうございます。ではこれで」
シエスタは一礼すると、生徒達に紅茶を淹れる作業に帰っていった。
朝食も終わり、魅魔とルイズは自室にいた。
本来なら広場にいるべきであり、その広場にいるのは二年生になったばかりの生徒である。今日は丸一日召喚したばかりの使い魔とコミュニケーションを取る日なのである。
では何故自室にいるかというと…
「さてと…アナタには聞きたい事が沢山あるのよ…」
「そう、私もさ」
そう、昨日言いそびれたお互いの情報交換の為に誰もいない自室に集まった訳である。
「なら…」
「待った。先ずは私の質問だよ。私は自分の主張もなしに勝手に召喚されたのだし…ね」
此処まで言われたのならしょうがない。
何も言わず、質問に答える。
この大陸の歴史や文化、宗教、有力者、貴族やその支配体系。力を持つ大国の情報、それぞれの国の情勢など多少多様な事を聞かれ、そしてそれを全て丁寧に答えた。
「ま、こんな所かね」
「ゼェゼェ…や、やっと終わったわね…今度はこちらのターンよ!今夜は寝かさないわ!」
「あらあら」
「先ずは…そうね…アンタは何者なのよ!」
そう聞かれた魅魔は
「教えない☆」
「な、何よ!それ!色々教えてあげたじゃない!」
「何も教えないってワケじゃないさ、それ以外なら教えてあげるから…さ、」
「そ、そう…なら…アナタはどこから来たの?」
「ん…それなら…」
魅魔はルイズに答えた"幻想郷"の存在を。そこでは様々な魑魅魍魎が存在し、伝説や御伽噺の存在、神話の神が存在することを…
「案外、そのブリミルとやらも幻想郷でよろしくやってるかもねぇ」
「し、信じられないわ…そんなにコト…」
「信じなくても良い。ただ、私の言っていることは紛れもない真実さ」
「そして、私はその中のトップでもある。(うそ)」
「信じれるかっ!」
「まぁ、あれさ、私の正体に関しては私と勝負をしようか、」
「勝負?」
「私の正体を私に問わない代わりに私の正体を知ることができたらなんでも言うことを一つ、きいてやろう」
「ほ、ほんとに?うふ、うふふふ、な、なら此処では言えないような恥ずかしい思いをさせてやるわ!」
本当の所魅魔の正体はかなり曖昧な存在なのでどうとでも言えるのである。しかも数ある中の正解を言っても上手く回避する予定なので、ルイズは正解する事は無いのだが…
魅魔はそんなルイズを自分の弟子に重ね、生暖かい目をしながら頭を撫でるのであった。