「――先生、俺死にたいんですよ」   作:性癖×

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止めてくれ砂狼(黒)、その術はオレに効く

『――バカだなぁ、砂狼は』

 

 私の先輩は、いつだって笑っていた。

 

『結局の所、遅かれ早かれだったんだよ』

 

 セリカが居なくなっても。

 

『まぁでも瞬瞬必生! 悔いはそんなにない!』

 

 アヤネが死んでも。

 

『……出来の悪い後輩を遺して逝くってのは、ちょっと心残りだけども』

 

 ホシノ先輩が死んでも。

 

『しかし! この俺がお前の未来に幸福を祈ってやるからには大丈夫! きっと良くなる!』

 

 ノノミが死んでも。

 

『だからほら、早く行った行った。これで守り切れなかったってなったら俺完全に無駄死にするリョナエロゲのモブだしさ、アレ良いよな、興奮する』

 

 こうして、自分が死にそうな時ですら笑顔で。

 

『……おう、そんまま走れ砂狼。楽しく生きろよ! ……童貞卒業したかったけどな!!(切実)

 

 最後の最後まで、私は先輩の笑顔しか知れなかった。

 

「先輩……」

 

 箱舟での出来事から一ヶ月。こっちの先輩が退院したらしい。それを知ってすぐ、衝動的に先輩を探してしまった。

 

「そんじゃ、先生また明日」

「うん、また明日……今日はごめんね?」

「いやまぁ、あれは俺が悪いからしゃーないっす」

 

 シャーレの部室から出てきた先輩は元気そうに笑って――

 

「ダメ、また重ねて……」

 

 こっちの先輩は、私の先輩じゃない。アビドス生じゃないし、学年だって違う。それに年齢だって、もう私の方が上。全くの別人、それは解ってる。

 

 解ってるのに……どうしても、重ねてしまう。あの声、あの仕草、あの匂い。そしてなにより、あの笑顔。

 

「ごめっ、ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 

 私が、私のせい。私のせいで――

 

「あれ、黒砂狼じゃんどしたの」

「え、先輩、なんで……」

 

 

 


 

 

 

「いやぁ、すっげぇ怖かったよ」

 

 ホント、もう。すっげぇこわかった。まさか現実で乳で溺死しかけると思わなかった。そっか、理想に溺れて溺死しろってこういう事だったんだ。

 

 いやぁ、先生も心配性だなって思う。俺ってばもう五体満足だぞ? ま、腕、無いんですけどね! ヨホホホホホホホホホ!!

 

 このネタちょっとおもろいな、今度誰かに披露しよ。

 

「黒砂狼は経験ある? あるか、十六夜のおっぱいデッケェもんな」

「……ん」

 

 シャーレ近くのビルの屋上。シャーレの部室が良く見えるからたまに盗撮カメラとか設置されてる場所に別世界の砂狼こと黒砂狼が居た。いやぁ、定期的にチェックしに来て盗撮カメラが置かれてたことはあれど人が居た事は初めてでビックリ。

 

「てか先生って意外と力強いのな。普通に引き剥がせなかった、おかしいよな、いくら俺が貧弱とは言っても腕力は倍くらいあるのに」

「そう、だね……」

 

 なんかずっとしょんぼりしてるな黒砂狼。せや! ここはさっき思いついた小オモロ隻腕ギャグで笑いを掻っ攫う時でしょうよ。間違いないね。

 

「まぁ、俺、片腕ないから倍だとトントンなんですけどね! ヨホホホホホホホホホホホホホ!!」

「ッご! ごめんなさッ、ごめんなさい」

 

 あれぇ!? 泣いちゃった!(ハチワレ)

 

「いやちょ、ちがっ!? 謝って貰おうとかは考えてない! から!! いやほんとごめん! ワイらはもうネットミームカルタとコミュニケーションの境目が分かんないからんだ、優しく殺してクレメンス」

 

 やっべBad Communicationだこれ。もっと泣いちゃった。

 

 ぶっちゃけスゲェ興奮する。

 

 やめろ! 去るんだ闇の俺!! お願いします心の中の下江さん。

 

『死刑』

 

 アザッス。これぞ悲しきインターネットミームモンスター、もう死ぬしかないかもしれない。

 

「いや別にね、なんにも黒砂狼は悪いことしてないから泣かないで欲しくってェ……というか笑わせようとしてるのに泣かれるの辛くってェ……もう疲れちゃって、全然動けなくってェ……」

 

 クソ!! 口から勝手にミームが!!

 

 誰かー!! 大人の先生呼んでー! ちょっと男子~シロコちゃん泣いちゃったぢゃ~ん! 謝りなよぉ~~!!

 

「いやもう、ほんと。すんません許してください! なんでも島風!」

 

 結局謝るしかなくってもうどうしようもない。ひぃん、俺のせいだけど辛いっピ。

 

「……なんでも、してくれるの?」

「なんでもします、許して」

「それじゃあ――」

 

 

 


 

 

 

「もうちょっと詰めて、先輩」

「これマジ?」

 

 すっかり湯冷めして体温の低い俺。そしてその隣にまだ風呂の温度でちょっとポカポカしてる黒砂狼。on the bed.

 

 こいつ! 俺を! 童貞を殺す気だコイツ! これで手を出そうものなら圧倒的スペック差で俺の事をボコボコにして先生に突き出して俺の社会的地位を地の底にまで落とす気なんだ!

 

 ちょっと興奮して来たな。

 

『死刑』

 

 あっぶね、道を踏み外すところだった。ありがとうイマジナリー下江さん。今度限定ケーキを補習授業部の分もあげるね。

 

 というか、黒砂狼お前流石に良くないよ。お前俺の事先輩とか呼ぶくせに俺より年上だろうが、しかも砂狼よりもスタイル良いしさ。マジで良くないよ。俺のMy SonStand by meだよ。

 

「黒砂狼さん、その、せめて俺は床とかに――」

「ダメ」

「ウス」

 

 やめろ腕を抱くな! お前の胸の感触がダイレクトに来るんだよ!! てか俺が脳死通販で間違えて買ったモコモコのパジャマ似合うね、殺すぞエロすぎるだろいい加減にしろ。

 

「それと」

「ハイ」

「今だけで良いから、砂狼って呼んで」

「エッ……いや別にそれは良いか」

 

 確かに2人居ない状態だったら分けなくてもいっか。

 

「ありがとう。それじゃあ、おやすみ先輩」

「おう、おやすみ砂狼……寝れるかなこれ」

 

 多分寝れない。生殺しって奴かこれが。ガッチリと左腕捕まってるから抵抗できないんだよね、右腕無いし。多分あっても勝てないけどさ。というか勝てなかったから右腕無くなったんだけどさ。

 

 とりあえず素数でも数えながら無心になってよう。じゃあまず1……




彼:518192まで数えた。バカ。

黒砂狼:重ねちゃいけないと思いつつも、こうして重ねてしまう自分が嫌い。どうして違う先輩のはずなのに、こんなことをした私の事を嫌わないでいてくれるの。

1:素数じゃない。
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