プリンセス・プリンシパルSS ーこの時、このキャラは、こう思っていたのかもー 作:Sano / セイノ
パイ養成機関の同期生である委員長の裏切り、そして彼女の死。
アンジェとドロシーは今回の顛末を報告へ向かうため、雪の舞う中車を走らせていた。薄く道路を覆った新雪に車が轍《わだち》の跡を残していく。
「……ありがとな、アンジェ」
ハンドルを握るドロシーは前を見つめたまま、隣のアンジェに言葉を零《こぼ》した。
アンジェはいつものように〝なんのこと?〟ととぼけるが、彼女にはドロシーが言わんとしていることが分かった。相棒はこういうときだけは察しが良いのである。
「先走ったのは、アタシが委員長を撃たなくて済むようにって考えたんだろ?」
「任務の成功率を上げようと思っただけよ」
淡々と応じるアンジェに、ドロシーは悔し気に口元を歪めた。
「……全く。どいつもこいつも嘘つきばっかりだ」
今回の任務で標的となった委員長、アンジェは彼女のことを考えていた。
諜報のための機械になり切れなかった少女、それがアンジェが描く彼女の姿である。
彼女はスパイの弱点となる人間らしさを手放さないドロシーに惹かれ、その劣等生との心温まる思い出に縋《すが》りながら生きてきたのだ。
人間らしさとスパイらしさ、本当と嘘の狭間で揺られながら、遂には銃口を自身に向けた委員長。胸の内に燻《くすぶ》る炎を露《あらわ》にしたら、冷酷なスパイの世界では生きていけない。だが、その内なる熱が消えてしまえば、自分の形を保てない。人間らしさに憧れた諜報機械、どちらをも選び取れないその矛盾が彼女に道を誤らせたのである。
だからこそ委員長の人生を暖かに照らし続けた灯《ともしび」、そのドロシー自身に彼女を撃たせるわけにはいかなかった。列車の上で、アンジェのリボルバーが虚うつろな銃口をずっと委員長に向けていたのはそういう理由からであった。
————————だが、機械に徹しきれないのは彼女だけであろうか。
それは親友との契りを胸に秘め、スパイであり続けようとする自身の姿とも重なってしまう。ドロシーは委員長を一人の友人のように扱っていたが、アンジェにはそうは出来なかった。なぜなら優秀なスパイとして以上に、彼女の在り様がアンジェとよく似ているのだ。
委員長とドロシーの関係は、自身とプリンセスの絆と鏡合わせなのである。
アンジェにとって委員長は、よく似たもう一人の自分の姿であった。
だからこそ今回の任務は、アンジェに自身の行く末を暗示しているようにも思えてしまうのであった。きっといつかはアンジェ自身もどちらかを選ばなければいけない時が来る。
その時、どうするのであろうか————————
そして無情なことに、アンジェは人員が変わったコントロールからのプリンセスの暗殺命令を下されることになる。
了