うちの会社は小さな電機メーカーだった。
それが昨年に作った新商品「すかうたあ」が大ヒットしててんてこ舞いの忙しさを醸し出している。
この「すかうたあ」はいわゆるウェアラブルメガネのスカウター版だ。ウェアラブルメガネとはメガネの画面に液晶モニターが付いていて、時計や英文を翻訳した文章などが表示されるアイテムの呼称である。
まあ、それだけなら同じ様な商品はある。
むしろ、他所の、特に大手メーカーの製品の方が動画が見れたり、録画機能があったりと高性能である。うちのは予算の関係で液晶も文字しか表示出来ないし、ウェブとも繋がっていないなんちゃってウェアラブルの為、翻訳も予め登録された辞書をAIでそれっぽく見せているだけのまがい物だ。
にもかかわらず、零細企業のうちの製品が売れたのは、戦闘能力が表示されるという一点に尽きる。ウェブには繋げられないが「すかうたあ」同士は赤外線通信で若干の情報をやり取りができるように作った。その情報というのが戦闘能力である。
元々スカウターと聞いて子供の頃に某国民アニメを観ていたドンピシャの世代だった私は、是非とも戦闘能力の表示が出来るようにしたかった。
形も版権ギリギリまでそのアニメに寄せたのだから尚更だ。
ただ戦闘能力の数値化なんてうちのような零細企業で無くても技術的に確立していない。
私自身も戦闘能力と表示されるだけで満足だったので、半分苦し紛れに元々「すかうたあ」に標準装備される万歩計機能を流用した数字を表示する事にした。
その数字が何故かウケてしまったらしい。
数字の出し方は単純で、歩いた総歩数を「すかうたあ」を装着した日数で割った数字だ。
それが何故か良かったらしい。
仕事や通勤で平日はそこそこ歩くけど、休日は家でゴロゴロしているという人は多い。しかし、それだと「すかうたあ」の戦闘能力が大幅に下がってしまうのだ。例えば、普段なんとか1日1万歩を目標にしている人がいたとして、平日に1万歩達成していたとしても、週末をサボってしまうと表示される数値は7000歩程度に落ちてしまう。
これが自分にしか知られないというならまだしも、赤外線通信で他の人に見られてしまう。
他人から、
「ふっ戦闘能力8000以下の雑魚か。」
と笑われてしまう。
そういう強迫観念が生まれるというのだ。
おかげで休日もウォーキングやジョギングする人が増えたという。誰だって「雑魚が!」と思われるより、
「2万超え、だと!バケモノめ!」と讃えられたいのだろう。
結果、国民の健康増進に一役買ったと厚生労働省から健康増進功労者表彰というものを贈られてしまう。さらに、その様子がテレビで流れた事から現在の注文殺到に繋がった。
正直、そこまで考えて作ったものではない。
過大評価もいいところである。
遊び心で作ったジョークグッズなんだ。
自分でも贅沢な悩みだと思うが、過分な評価にプレッシャーで押し潰されそうなのだ。
そこで今度はもっと分かりやすくふざけてやろうと、「すかうたあ」の第二弾を作る事にした。
その名も「すかうたあRPG」。
今度は国民的ロールプレイングゲームを体験出来るアイテムだ。
「すかうたあRPG」をつけて、同製品をつけた人の方を向き
「ステータス、オープン!」
というと相手のステータスがスカウターに表示されるのだ。
声に出して言わせるのは盗み見を防ぐ為だ。
…嘘です。言ってみたかっただけです。
でも、ちゃんとプライバシーに配慮してステータス欄はHPやすばやさなど某RPGにならっているが、数値はほとんど自分で登録出来るようになっている。
経験値のみ万歩計の今までの累計と前の「すかうたあ」を踏襲した。前回のヒット要因を完全に取っ払う事は大人の事情で出来なかったからだ。
でも、その他は全部自分で登録だ。
項目欄もいくつか自由に入力出来るようになっている。
どうだ!完全にジョークグッズになったはずだ!
きようさを高く入力して、アピールするのも良い。
逆にかしこさの項目を分不相応なほど高く入力してツッコまれるのも一つの使い方だ。
なんなら自由項目に「経験人数」を作って、エロトークに持っていくのも有りだろう。
そんな風に合コンや飲み会の話のネタにでも使ってくれれば良い。
そんな軽い気持ちで私はこの商品を世に送り出した。
…翌年。
私は今、文部科学省より文部科学大臣賞を授与されている。
「すかうたあRPG」が子供達の入学やクラス替えの際のコミュニケーションツールとして、さらに自己分析と自己評価を考える際の教材として評価されたからだ。
表彰台で大臣と握手をしながら、
「違うんだ!そんな高尚な物じゃない。ただの玩具なんだ!」
と喉元まで出かかっている言葉を必死に飲み込んだ。