「シャア・アズナブル」
彼を見たときに感じた第一印象は、「大人な少年」だった。
大人として責任を背負っているが、中にはこだわりを捨てきれない部分を持っているみたいな。
それが「カリスマ」って事に繋がってるのかな…?
馬を翻しシャアが遠ざかっていくのを電動カーでアムロが追う。
「なんでここにいるんだ!」
「私はお前と違ってパイロットだけをやっている訳にはいかん!」
アムロとシャアの問答が始まる。
クェスはシャアに興味を惹かれたように視線を追っているが、その時自分はこう思っていた。
『名場面キター!』
と。
今思えば、ちょっと恥ずかしい。
「…あれ等は重力に魂を縛られているのだよ!」
そのセリフが聞こえた時、感情とは別に脳裏に浮かんだ言葉がそのまま口からこぼれ落ちた。
「でも、重力に縛られていない宇宙でも差別はあるんだから、みんなが何かに縛られてるんじゃないのか?」
その言葉に、クェスがハッとしてこちらを見る。
「本当の差別を無くすなら、誰かが神様にならないといけない?それをシャアが成す?」
「ああ、「彼女」はそういう風に感じたから「彼」にああ言ったのか…。でも神様に成るなんて誰も信じないよなぁ…」
自問自答とも取られる言葉が、次々とハサウェイの口からこぼれ出る。
「まずは認めさせることかな。どこまで広がっても人間は人間に縛られるということを」
そう、何かの答えが出そうな時に、アムロがシャアに飛びかかっていた。
「ハサウェイ!」
「!」
クェスの声で現実に引き戻され、ハンドルを握りブレーキを掛ける。
体制をかえながらも2人の問答は続いている。
「人類の知恵はそんなのだって乗り越えられる!」
「…今すぐ愚民どもに叡智を授けてみせろ!」
それを遠目に見ながら呟く。
「それは人類の叡智である「言葉」の否定だろうに。いや、「理解っている」上で戦争しているのか?難しいなぁ…」
クェスはその言葉を聞いて、今まで形なかった答えに出会った感じがして、こちらを見て固まっていた。
そして、シャアを投げ飛ばし(巴投げ!)て、アムロが腰にある銃のホルダーに手をかける。
本来の「史実」ならここでクェスがアムロを止めに入るが、動かない。
俺が呟いた言葉を反芻しているのか、こちらを見たままだ。
銃が抜かれるその時、
上からMSの降下する音が響き、バックパックの強風が吹き荒れ、シャアとアムロの間にハイザックが降り立った。
その強風に煽られてアムロは身動きが取れない。
「大佐!早くこちらへ!」
ハイザックに乗ったパイロットが叫ぶ。
マニピュレータに乗ったシャアがアムロに向かって声を荒げた。
「私はお前と対等に戦って勝ちたいのだよ!」
「…シャアめ!」
それを最後にハイザックはバックパックを吹かし遠ざかっていく。
「対等ね…。それが子供っぽさの正体か…」
それを眺める俺の横にはクェスがいる、ここが「史実」との完全な別離。
もう白鳥はどこにもいない。