≠ハサウェイ   作:なべを

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9. 別離

「シャア・アズナブル」

 

彼を見たときに感じた第一印象は、「大人な少年」だった。

大人として責任を背負っているが、中にはこだわりを捨てきれない部分を持っているみたいな。

それが「カリスマ」って事に繋がってるのかな…?

 

 

馬を翻しシャアが遠ざかっていくのを電動カーでアムロが追う。

 

「なんでここにいるんだ!」

「私はお前と違ってパイロットだけをやっている訳にはいかん!」

 

アムロとシャアの問答が始まる。

 

クェスはシャアに興味を惹かれたように視線を追っているが、その時自分はこう思っていた。

『名場面キター!』

と。

今思えば、ちょっと恥ずかしい。

 

「…あれ等は重力に魂を縛られているのだよ!」

 

 

そのセリフが聞こえた時、感情とは別に脳裏に浮かんだ言葉がそのまま口からこぼれ落ちた。

「でも、重力に縛られていない宇宙でも差別はあるんだから、みんなが何かに縛られてるんじゃないのか?」

 

その言葉に、クェスがハッとしてこちらを見る。

 

「本当の差別を無くすなら、誰かが神様にならないといけない?それをシャアが成す?」

「ああ、「彼女」はそういう風に感じたから「彼」にああ言ったのか…。でも神様に成るなんて誰も信じないよなぁ…」

自問自答とも取られる言葉が、次々とハサウェイの口からこぼれ出る。

「まずは認めさせることかな。どこまで広がっても人間は人間に縛られるということを」

 

そう、何かの答えが出そうな時に、アムロがシャアに飛びかかっていた。

 

「ハサウェイ!」

「!」

 

クェスの声で現実に引き戻され、ハンドルを握りブレーキを掛ける。

体制をかえながらも2人の問答は続いている。

 

「人類の知恵はそんなのだって乗り越えられる!」

「…今すぐ愚民どもに叡智を授けてみせろ!」

 

それを遠目に見ながら呟く。

「それは人類の叡智である「言葉」の否定だろうに。いや、「理解っている」上で戦争しているのか?難しいなぁ…」

クェスはその言葉を聞いて、今まで形なかった答えに出会った感じがして、こちらを見て固まっていた。

 

 

そして、シャアを投げ飛ばし(巴投げ!)て、アムロが腰にある銃のホルダーに手をかける。

 

 

本来の「史実」ならここでクェスがアムロを止めに入るが、動かない。

俺が呟いた言葉を反芻しているのか、こちらを見たままだ。

 

銃が抜かれるその時、

上からMSの降下する音が響き、バックパックの強風が吹き荒れ、シャアとアムロの間にハイザックが降り立った。

その強風に煽られてアムロは身動きが取れない。

 

「大佐!早くこちらへ!」

 

ハイザックに乗ったパイロットが叫ぶ。

マニピュレータに乗ったシャアがアムロに向かって声を荒げた。

 

「私はお前と対等に戦って勝ちたいのだよ!」

「…シャアめ!」

 

それを最後にハイザックはバックパックを吹かし遠ざかっていく。

「対等ね…。それが子供っぽさの正体か…」

 

 

それを眺める俺の横にはクェスがいる、ここが「史実」との完全な別離。

もう白鳥はどこにもいない。

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