検証という名の実験が始まって一年。
その時は、ネオ・ジオン残党掃討という名目のファンネル実験で月まで出かけた。
作戦終了後に辟易しながら、食堂で食事を取っているときに声を掛けられた。
「ここ、空いてるかな?」
周りを見ると、席は空いている。ここを選ぶ理由など無いのが、
「他の席は空いてますよ?」
「少し君と話したいんだよ。『ハサウェイ・ノア』君」
「…名乗りましたっけ?」
「『君』は有名だよ、いろいろな意味でね」
その人は、アナハイムのエンジニアをしている「マルコ・エヴァンズ」と名乗った。
白衣を着てメガネを掛けているので、さもエンジニアですとわかる風体だ。
会話は向こうから切り出してきた。
「量産型νガンダムは役に立ったかな?」
「…っ!?あれはあなたが手配したんですか?」
「念の為と言うやつだよ。それが役立つとは思わなかったが」
ということは目の前の人も「そう」なのだろう。
「この世界」には何人いるんだ?
「…なにが目的ですか?」
「それはこちらが問いただしたいことだ。『君』の目的を知りたい。それによって私の『これから』が決まる」
そう言って、真剣な眼差しでこちらを見る。彼の『これから』が決まるのは本当のことなんだろう。
なので、こちらも自分の目的をきちんと話す。自分の芯はぶれない。ぶらさない。
「ハッピーエンドを目指したいんですよ」
「それは誰のための「ハッピーエンド」だい?ちなみに私のハッピーエンドは、家族が幸せであることだ」
「『俺にとってのハッピーエンド』です」
「その他のハッピーエンドはどうでもいいと?」
「それ以上は僕の背中では背負えませんから」
「自分自身のは背負える、と?」
「…クェス・パラヤは生きています」
「生きているのか!?」
驚きが動きに出て、椅子を倒して音を立てて立ち上がった。
周りの視線が集まると、軽く咳をしてさもなんでもないように振る舞った。
「それは背負っていきます」
「そうか…」
そういうと、考え込んでしまい周りの食事の音が聞こえてくる。
彼は逡巡した後、
「…わかった。これからのことは「そうなる」と捉えて良いんだね?」
「『将軍』に会ったことが無いので、なんとも言えませんが、現状ではそうなります。ので『アレ』が必要です」
「では、そういう風に動こう」
「それに関してなんですが…」
これからのことについて、いくつか注文を付けた。
「…わかった。なるべく君の注文には応えよう」
「ありがとうございます。あと、わかったらでいいので、『エミール・ラーン』というネオ・ジオンのパイロットを探してくれませんか?」
「その『彼』もそうなのか?」
「はい」
「わかった。探しておこう」
そう言って、彼は食器を持って立ち去った。
まさか、こんなところにもいるなんて。
だけど、アナハイムに協力者がいるのなら心強い。
本当に、ハッピーエンドを迎えられそうで少し気分が良くなった。
あ、シオンにも連絡しておこう。