1.ハイジャック
U.C 105。
「シャアの反乱」から12年。
俺は月での「用事」を済ませたので、地球に向かう。
もちろん、ハウンゼン356便だ。
久しぶりにきちんとした格好をして、出発ロビーに向かうと見知った顔がいた。
「あれ?シオンじゃないか」
「やぁ」
着慣れた高級なスーツを着て、本革の椅子にゆったりと腰を下ろしながら、手を振ってきた。
連絡は取っていたが、久し振りに会う友人はすっかり大人になっていた。
「隊長、こちらの方は?」
同じように仕立ての良いスーツに身を包んだ青年がシオンに問いただした。
「ああ、こちらが、かの有名な『ハサウェイ・ノア』だ」
「あの!初めまして、ケネス・スレッグとい言います」
握手を求めながら自己紹介してきた、ケネスの第一印象は、出来る男。
その見た目通り、仕事が出来るタイプなのは知っている。できれば、仲良くしたいタイプである。
「初めまして、ハサウェイ・ノアです」
「いやー、有名人に会えて光栄です。つまらない旅かと思いましたが楽しみが増えました」
「楽しませられるような話はない、と思いますけどね」
「いやいや、そんな事ありません。あなたは軍の中では一つの伝説みたいなものですから」
そう会話しながら、出発までの時間を潰した。
ケネス自身がパイロットだったというのもあって、根掘り葉掘り聞かれた。
一種の憧れみたいなものを持たれているようで、少し気恥ずかしかった。
ハウンゼンに乗ると、連邦政府官僚が先に席に着いていた。
やはり、優先順位は後か。
道中、「あの少女」が目に入るが見すぎないようにした。
感の良い少女だから気付いているかもしれないが。
ハウンゼンはスケジュール通りに旅程を進んでいた。
流石というか、室内もサービス・食事も一流のものだ。
こういった洗練されたものには久しぶりに触れたから、田舎者が出ないかが心配だった。
そうして、窓から見える景色が地球の青色に染まってきた頃。
後ろの席でケネスが「少女」にちょっかいを掛けている。
マフティーの話をしているので、小説を読むふりをしながら、聞き耳を立てる。
そんなおり、
「あなたはどう思われますか?」
急に声を掛けられた。
「…私に聞いているのですか?」
「ええ、あなたに」
「俺も気になるな。あなたがマフティーの活動についてどう思っているのか」
「…行為は褒められたものでは無いが、思想自体は共感できますね」
「…あなたも通り一遍の回答なのね」
「ここで本音を言えるほど子供では無いということです」
そう言うと「少女」はその話には興味が無くなったようで、タブレットに視線を移した。
ケネスといっしょに肩をすくめるしかなかった。
ゆっくりと地球へと降下を始めた頃に、窓を一瞬の影が通り過ぎるのが見えた。
その後、何かが取り付いたのかショックウェーブにより機体が揺れる。
それによってアテンダンドが流されてくるのを受け止めて隣の席に座らせる。
銃声が聞こえ、仮面を被り銃を持った連中がキャビンへと入ってくる。
そして、カボチャ頭のハイジャック犯は名乗った。
「連邦政府官僚各位に申し上げる。わたしは、マフティー・エリンだ」