階下に降りていく。
一緒にいるエミールがこちらに振り向き聞いてきた。
「ここの事、気にしてるのか?」
「…大義のためとはいえ、人が死ぬのは嫌だなと思って」
「子供が。それも飲み込んでこその『救世主』サマだろうが。がっかりさせんな」
「…」
そういって、先に進むエミールを見ながら、
『救世主としての大義と、俺の大義は必ずしも一致しないんだよ。そのギャップが苦しいだけだ』
そう言いたかったが、堪えた。俺の大義は俺のワガママそのものだから。
階下に着くと、そこにはオエンベリの残党がいた。
「…どっちがマフティーだ?」
「あんたかい、マフティーを騙っていた男は?」
そう問い返すと、ファビオと呼ばれた男は大声で笑った。
「こんなひよっこが、マフティーとはな!」
「…マフティーを名乗る人はインテリジェンスがある人だと思っていたが違っていたようだ」
視線が交差する。
「俺達にはまだ切り札がある」
「切り札?」
「ここでの虐殺を取ったビデオがある。それを持って宇宙に上がった仲間がいるんだ」
「たどり着けるのか?」
「居住権を持っている仲間がいるからな」
「そうか」
その後、これからのやり取りをどうするか取り決めて別れた。
「話は終わった。負傷者を収容しよう」
「…死んだよ」
「そうか…」
そうして、重い沈黙をもったまま、ヴァリアントに戻る事になった。
途中、ガウマンたちは先行して「壁」と呼んでいるポイントに行くために別れた。
ヴァリアントは、南下しバンダ海まで出られた。
船長室を訪れると1枚の暗号通信を見せてくれた。
そこには、次のデートはアデレードで行いたい、とギギがニューホンコンから送って来たものだ。
「ギギから…」
「この情報は本当なのか?」
「おそらく、本当だろう。彼女は気分がころころ変わるから、これもそういう事なんだろう」
ただ、
もう『史実』と違う以上、最終的にギギがケネス側に着くという可能性は否定できないが。
オーストラリア大陸の手前にある入り江で最後の補給を行う。
ファビオ達とも合流し、今後の方針を決めていく。
「アデレードで決まりなんだな?」
「ああ、確かな情報だ。なので君達にはダーウィン空港を攻撃してもらって、目眩ましをしてもらうのはどうだろう」
「それはありだな」
そうして、最後の打ち合わせと補給を終えて、入江を離れる。
ヴァリアント内で「へそ」へ向けた最終的なコースの確認を行っていく。
最終的な確認だけで終わるはずだったが、
「なんか嫌な感じがする」
クェスが唐突に言った。
「クェス、どの辺りが嫌な感じがする」
「一番西側のルートは、やめたほうがいい気がする」
「あー、俺もそんな感じするぜ」
エミールも賛同する。
確かに「史実」では一番西のルートが落とされた。
それも考慮して、立てたルートだったんだが、それでも駄目らしい。
「理解った。イアン、ルートを変更しよう。2人の意見は無視できない」
「ああ」
こうして、「史実」とは違うルートで「へそ」を目指すことになった。
これで戦力が落ちないと良いんだけど。
そうして、最終的なルートが決まりヴァリアントから、ギャルセゾンが次々と出発していく。
最後に俺が出た時、船の近くに嫌な感じを受けた。
そちらの方をズームしてみると、潜水艦の影が見えた。即座にビームライフルで撃墜する。
海中で爆発が起こり、大きな水柱が立ち波打つ。ヴァリアントが大きく揺れる。
『なんだ!?どうした!?』
「潜水艦がいたんだ。落としたから大丈夫だと思うけど、この海域からは早く離脱したほうが良い」
『ああ、そうするよ!』
そうして、帰還先がなくなるという不安を消して「へそ」に向かう。