1. 電撃作戦
俺達が「壁」と呼ぶのは、アデレード東側に連なる山脈のことを指す。
山脈を隠れ蓑にして、戦力を移動させていたのだ。
夜明け前に起きる。
先日の戦闘で精神がやられていたのか、悪夢を見たようで汗をかいている。
精神安定剤を水で飲んで気分を落ち着かせ一呼吸してから、テントを出る。
テントの外では、もうみんな起きていて作戦の最終確認をしているところだった。
テントの前で、ギギがコーヒーカップを持ち、慌ただしく動いているみんなを見ている。
「ギギ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
俺は気になっていることを聞いてみた。
「どうして、こっちに来たんだ?ケネスの所にいても良かったのに」
「なんとなく、ハサウェイの方がいいかなって」
「そっか。なんとなくか」
「うん」
「これからの作戦どうなると思う?」
「成功するかどうかってこと?」
「そう」
「ハサウェイの思う通りになると思うよ」
「そっか、ありがとう」
そう、話していると、エミールとガウマンがこちらに向かってくるのが見えた。
「おう、起きたか」
「ああ、で、どこまで進んでる?」
ガウマンが報告してくれる。
「プロパガンダ放送は無事に放送出来たし、内湾での陽動は成功した」
「うまくいってるって事だな」
エミールが怪訝な顔をしながら心配ごとを確認してくる。
「だが、本当に早朝に襲撃するのか?」
「あの法案は連中が何が何でも通したいやつだ。こっちが動いたとみると強引に採決するだろう。だから早朝の襲撃なんだよ」
「連中がやりそうなことだな。…あそこにクワック・サルヴァーが居たらどうする?」
「その場合は、運が悪かったと思って諦めてもらおう」
こちらの作戦に文句を言うかもしれないが、その覚悟が無くマフティーを作ったはずは無いだろう。
クェスもこちらに気付いたのか近づいてくる。
「ハサウェイ、起きたの?」
「ああ、クェスの調子はどうだい?悪い感じはしないかい?」
「うーん、今のところはしないから大丈夫だと思う」
「なら、大丈夫そうだな」
ギギとクェスから悪い言葉が出なかったということは、成功する目算が高いという事だ。
作戦への集中が高まる。
そうして、作戦の準備が整い皆が集まる。
その皆を見渡してから告げる。
「かなり厳しい作戦になると思う。が、みんなの命を預けてくれ」
皆で頷き合って作戦へと向かう。
俺は、Ξガンダムに乗り込み、指定のポイントへ移動させる。
心配そうに見上げているギギが見えたが、頭を切り替える。
*****
Ξガンダムは指定ポイントに着いた。
場所はアデレード空港から数十キロ南の海上。
タイマーがゼロになる。
スロットルを全開にしてガンダムが加速していく。
加速途中で前方にビームバリアを展開して、空気抵抗を軽減させ、音速を超えてさらに加速する。
アデレード空港が近づき、滑走路から建物に近づいた時、ガンダムが急停止をする。
急停止したことで、音速を超えた際の衝撃波が、建物が震わせ、窓を割っていく。
それを背景にガンダムは、空港の格納庫に向けてミサイルをばら撒く。
格納庫が火柱を上げなから爆発していく。
火柱を合図に「壁」からギャルセゾン3機が、閣僚達が集まっているであろうフェスティバル・センターへ向けて進む。
その間、空港にいるMSが対応しようと動き出すが、ガンダムが優位側なため、すぐさま行動不能にされる。
そして、フェスティバル・センターにメッサーがミサイルとビームライフルを撃ち込み、爆発が連鎖していく。
更に、閣僚が泊まっているであろうホテルに、サイコ・ドーガが閣僚がいるであろう場所が理解っているような精度でビームライフルを撃つ。
それが、終わった頃に撤退のタイマーが鳴る。
空港とフェスティバル・センター周辺へ攻撃を成功させたマフティー軍は鮮やかに撤退していく。
連邦軍は、混乱したままで追撃が出来ないでいた。
奇襲と撤退の電撃作戦は成功した。