≠ハサウェイ   作:なべを

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7. 覚醒の予兆

初めは狭いな、と思った。

操縦桿もゲームとほとんど同じだからこれなら無双できるな!とか浮かれていた。

 

だけどそれは、シミュレータが開始されると一瞬で変わった。

 

なんというか、感覚が広がるというか、宇宙に溶けていくというか、

自分の外に目があってそこから見ている、なんとも形容しがたい感覚。

 

ただ、宇宙に溶けていくだけではない。ちゃんと「俺」が中心に居るのだ。

変わらない、変えられないものとしてそこにある。

 

ゲームをしているそれとはまた違う感覚でシミュレータをこなす。

即応性も良くて楽しくなってどんどん撃墜数を増やしていく。

 

『教練Bもクリアだ!次、教練Aを始めるぞ!』

 

外からアストナージさんの声が聞こえるが、認識をせずシミュレータに没頭していく。

それがどれほど異常なことかを認識せずに只々没頭していく。

 

最終的には教練Aを最高スコアでクリアするという、事実が出来上がった。

 

「…ェイ!ハサウェイ!」

「…!あ、父さん」

「大丈夫か?」

「うん。集中しすぎてたみたい」

 

父さんの声で現実に引き戻され、コックピットの外に出る。

すると、歓声があがる。

 

「お前すごいな!」

「さすが艦長の息子だ!」

 

などなど、いろいろな人の声が聞こえる。

 

「すごい!すごいよ!ハサウェイ!あんなに上手なんて驚いちゃった!」

クェスが興奮しながら近づいてくる。

「ありがとう。なんか相性が良かったのかな?」

 

と、その興奮の渦の中から一つの視線を感じた。

視線の方を向くと「アムロ・レイ」がこちらを見ていた。

その視線に誘導されるように向かう。

 

「アムロさん、ですよね?どうでした、自分の操縦は?」

「…ああ。初めてとは思えないほどの内容だな」

「ありがとうございます!」

「君は…。いや、なんでもない。いいパイロットになれると思うよ」

そう言い、離れていく。

 

「あれがあの「アムロ・レイ」?なんか優しい感じするね?」

「そうだね」

「食堂で飲み物でも貰ってちょっと休憩しようか?」

「うん!」

 

そうしてクェスと一緒に艦橋を出て外が見えるところで話し合う。

ニュータイプの事やシャアの事。

 

「ハサウェイは『ニュータイプ』なのかな?」

「うーん。噂に聞いてるアムロさんみたいなことが出来たからと言ってどうだろ?」

「私が知ってるのは、物事を誤解無く理解し合える人ってことだけど、ハサウェイはそれを感じた?」

「宇宙に感情が流れていくみたいな感じはあったから、それが出来るなら理解し合えるのかな…」

「すごい!本当に『ニュータイプ』みたい!」

 

「クェスはシャアが大人だと思ってるんだね。俺は逆に子供っぽいと思うよ。問題を解決するためにテーブルをひっくり返すみたいな行動するからさ」

「うん。それはちょっとわかるかも。2つの顔をもってるよね」

 

「史実」だと精神的に幼いイメージがあったが、クェスは思ってた以上に物事を考えていたこと、自分の家族が嫌いなことはよくわかった。

 

 

これが、ロンデニオンに向かう最中に起こった「ちょっとした」一騒動。

そして後の出撃への布石になるとは、自分自身思わなかった。

 

 

その日は、久しぶりに夢を見た。

白鳥が湖から飛び立つ夢だ。

 

飛びだった白鳥の先には、2羽の白鳥が絡み合うように飛んでいた。

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