異世界に不本意に連れていかれた。
そして無自覚たる神を殺した、と聞こえはいいだろう。
その道のりは酷く険しく、そして多くの
友人、家族、そして恋人。自分以外を全て失う結末となり、天の世界は崩壊した。
とてもくだらない結末だった。
体が落ちていく感覚を感じながら、俺は俺の終わりが来るまで目を閉じた。
ずっと、閉じているつもりだった。
ふと、気づいたら喧騒が聞こえる。何もなくなったはずなのに音が聞こえるのはおかしいと目を開けた。
そこには青空が広がっていた。
体を起こす。
目の前にはかつて『俺』という存在が住んでいた現代の地球そのままだった。
「まさか、崩壊と共に戻ってきたのか?」
いつの間にか公園のベンチに寝ていて、もしかしたら悪い夢を見ていたのかと考えてしまう。
だが、身体が夢ではないと言うことを告げてくる。
普通の人間から『電気』は出ない。バチバチッと静電気よりも強い電気が手から放たれた。
夢ではなかったことに失望しながら、ベンチから立ち上がる。
ここがどこなのか、本当に自分が知っている地球なのか
とにかく誰かがいる環境が恋しかったのか、あてもなく街を歩き回ってみる。
知っている店、知っている道、知っている街。一部は時の流れのせいか変わっていたが俺の知る故郷と変わっていなかった。
戻ってきてしまった、という気持ちの方が前に出てとても残念な気分になる。
何せ、家族はいない。友もいない。共に歩みたかった恋人もいない。彼ら彼女の魂を異世界に残して『異質』となった自分だけ戻ってしまったことをひどく実感してしまった。
いや、この世界でも行方不明になった弟は居たが、遂に会えることは無かった。
このまま世界をさまよう存在になり果てるのだろうか。そう考えた矢先だった。
けたたましいサイレンが鳴り響く。地震の予兆を知らせるアラートなのかと疑問に思った。
『怪獣警報!怪獣警報!この地区は避難地区に指定されました!該当地区にいる人たちは速やかに避難して下さい!』
それを聞いた人たちは一目散へどこかへと逃げていく。
何も知らない俺はその場に立ち尽くして何が起こったのか理解できなかった。
怪獣?それって特撮とかに出てくる例のアレか?
そんなことを考えているとズシン、と地響きが聞こえた。
顔を上げるとそこにはとげとげしい体をした30m大の怪物が居た。
ナニコレ?そんなフリーズ気味な思考なぞ気にせず怪物は近くの建物をその手で破壊していく。
その瞬間に悟った。こいつは倒さなければいけない奴だ、と。
それと同時に何者かが三人、空中を飛びながら近づいてくるのも感じた。
何者なのか?もしやこの世界の防衛機構となる存在なのか?
とっさに隠れて観察するしかなかった。
商店街の物陰に隠れて数秒も満たないうちに、三人の姿が見えた。
「……………………は?」
『ソレ』はあまりにもファンタジーだった。
異世界帰りの俺が言えた事ではないが、フリフリとした衣装、手に持つステッキのような物。時間帯によるが日曜の朝にしてそうな格好、と言えばわかるだろう。
赤、黄、青と信号の色みたいに染められた衣装と髪に一瞬目を取られつつも、それよりも俺は彼女ら、いや、そのうちの一人である金髪の『男』の顔に目がいった。
「情熱!赤き太陽のサニーレッド!」
「それを冷却、深き海のシーブルー」
「これ僕もやるの…………?ゆ、揺らがぬ大地、アースイエロー」
「「「いざ尋常に、退治する!」」」
あの黄色いの弟やん。
滅茶苦茶久しぶりに見たけど忘れもしない面影がそこにあった。
情報過多すぎていくら高性能に作られた俺の脳でも処理しきれず宇宙猫と化した。
「みんな恥ずかしくないの?」
「慣れたら気持ちいいものよ」
「そう、露出と同じ」
「どうしてこんなことに…………」
それはそう。どうして変態集団の中に弟が紛れ込んでいるんだ?
だけれど俺が居たはずの世界では怪獣なんて存在しなかったし、弟は家出した後は完全に行方不明になっていたからそっくりさんの可能性もある。
そっくりさんでいてくれ。その集団に所属していることを認識したくない。
「『モモ』くん!恥ずかしがっちゃダメだよ!」
「そう、頭パーな『イオリ』くらいはっちゃけないと」
「お二人は仲悪いの?」
「「ぜんぜん?」」
「ギャオオオオオオオ!」
なんでコントしてるんだあいつら。目の前の怪獣が無視されて怒り狂ってるよ。
「よし、それじゃあモモ君の初陣だ!張りきっちゃおう!」
「そこは花を持たせるのが正解。さあ、やっちゃおう」
「ご、ご指導よろしくお願いします」
そう言って彼女たちは三方向へ飛んでいき、赤が真正面からの突撃、青が足元を水浸しにして凍らせ、弟が上から雷で目くらまししている。
…………雷かぁ。そこは大地じゃないんかい!土関連の魔法が飛びかうかと思っていたけど雷なんかい!
思ったよりもツッコミどころが多いぞ?本当にこんなのでやっていけるのか?
そう思ってはいたが、怪獣が突撃されて足元を凍らされていることですっころび、さらに追い打ちとして感電して叫び声を上げているので確実に効いているようだ。
怪獣が弱いのか、それとも彼女たちが強いのか。怪獣から放たれるエネルギーからすると、恐らく後者だろう。
「思ったより弱い!よし、みんな決め技でいくよ!」
「そんなの知らないんですけど!?」
「とりあえず見本を見せる。新人、ついてこい」
「とりあえず先輩風吹かせたくなったようにとってつけた台詞やめません?」
モモが言い放った言葉がぐさっと誰かの心に刺さった。青いのだけ名前が出ていないから誰かとしか言いようがない、許せ。
誰に言い訳してるんだ。
赤と青が二人で固まってステッキを交差させる。その瞬間、ステッキに途方もないエネルギーが集まり始めた。
大丈夫なのか?あのエネルギーをそのまま街に放たれると大惨事が巻き起こりそうな気がしそうでならないんだが?
「「くらえ!天海のツインブラスター!!!!」」
ごう、と途方もないと感じることが出来るエネルギー弾が怪獣に向かって直進していく。
怪獣は抵抗しようと手を振り回すも、逆に手を焼きちぎられ、そのまま胴体に大きな風穴を開けた。
地面に着弾すると思った瞬間にエネルギーが一瞬で消え去ったので第三次だけは免れたようだ。
全くもって不思議な存在だなぁ。自分のことを棚に上げてでもよく分らない生態をしているというのが分かる。
大穴を開けて倒れ伏した怪獣は、みるみるうちに泡のように膨れ上がり、そして空気に溶けるように消えていった。
それを確認したのか。三人の魔法少女は…………いやあ1人男が混じっているんだが?何も言わずにその場から離脱していった。
時間で言うなら10秒も
「なんだったんだ…………?」
思わず口から出たその言葉は誰にも届くことはなかった。
この世界は俺が知る世界と何か違う。
情報を集めなくてはならない、弟がこうして存在していたということは家族は生きているのか?そしてあの怪獣は何だったのか?
今更この世界に戻って、何が起きようとしているのか確かめなければならない。
被害だけが残ったこの街に、一体何の意味があるのか。
どうして俺が居ない間に怪獣という謎の生命体が現れたのか。
そう考えて俺はこの場を後にした。
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