淫魔男とでかぱい魔術師による楽しいダンジョン造り   作:ぜぜ

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ダンジョンの進歩と足音

「おおお……! 明るい」

 

「見違えましたね、これは」

 

 俺はリーナを伴って、ダンジョン予定地に下りてきていた。

 

 コカトリスを増やすことにも成功し、また、森の洞穴にも蛇と蔓の子株を持っていき、あちら側からも穴を掘削している。じきに穴同士は合流し、そして本命のダンジョンに繋げられるだろう。

 

「光苔も生育が順調ですね。蔓がまさかその性質を受け継ぐとは思っていませんでしたが」

 

 なぜか最近ぼんやり光るようになり、光る葉を穴の中に出してくれている蔓を弄びつつ、リーナは感慨深げにつぶやいた。

 

 正直、俺もリーナから十分な魔力を手に入れ、そこいらの冒険者には負けないくらい使いこなせてきたので付いて来なくてもいいのだが、それを伝えてもやんわり断られた。

 

 まだ俺のダンジョン作成が悪い方向に転じないか見張っているのだろう。正直最近は楽しんで趣味に走ってきているが、自分のやっていることは魔の側のことなのだなと再確認する。

 

 良いけどな、俺は冒険者の事を殺す気もないが。自分の家に死体が転がっていい気はしないものだ。……これは高位魔族になると、人間を害虫扱いして殺す奴らもいるらしいけど。

 

「それに岩達も良い感じだなあ」

 

 ダンジョンの中をゴロゴロ転がる一団も目に付く。これは森を探索している際に見つけた岩の魔物で、冒険者たちの間では剣殺しと言われている奴だ。

 

 見た目はまるきり、動く岩。何に魔力が作用したかは定かじゃないが、とにかくこいつらは動く岩なのだ。これがダンジョンには丁度いい。

 

 土と岩のダンジョンなので、隠れて意識を刈り取っても、堂々と冒険者たちを迎え撃っても違和感が無い。森側から攻略すれば、ゴブリンやボアの一団を抜けて剣殺しが登場する、ちょうどいい難易度になるのではないだろうか。

 

「攻略しようと思ってもらって、宝を見つけてもらわないと金にならないからな」

 

 そして蛇や、蛇で相手にならなければコカトリスで冒険者を麻痺させ、身ぐるみを剥ぐ。最近は金貨や銀貨だけでなく、銀行が発行する紙幣なんかも冒険者たちの間で利用されているし、いい稼ぎになるだろう。なんでも旅なんかをすると重い貨幣は持ち歩いてられないらしく、職業組合であるギルドと銀行家たちが組んで始めた事業のようだ。

 

 当然公権力も関わっているらしく、リーナは「うちの国でもそんなものを裁可した覚えはありますね」と言っていた。ロイヤルな話である。

 

「楽しそうですね」

 

「ん? そうか?」

 

 リーナは俺の顔を覗き込む。そんなに面白いだろうか。

 

「リーナも楽しそうだぞ」

 

「え? そうですか……?」

 

「おおおい! 大変だ!」

 

 どたどたと、街側からニックが走ってやってきた。

 

 宝を納品してもらわねばならないので、ダンジョンの場所は共有してある。

 

「国お抱えの冒険者パーティーがうちの街に来るってよ!!」

 

「それはっ……!」

 

「まずいな」

 

 のんびり工事している暇はなくなりそうだった。

 

 

 ・・・

 

 

 冒険者とは、主に一般市民では立ち入ることのできない森や山などの自然環境に立ち入り、資源を採取したり、依頼を受けて魔物を討伐することを生業にする者達のことだ。

 

 そしてピンからキリまで質の差が激しすぎる職業でもある。駆け出しなんかは近所の悪ガキがナイフを持っただけのものだし、トップクラスともなれば、単独で竜を討伐する武の達人なんかがいる世界だ。

 

 そして国お抱えの冒険者とは、武の達人サイドの存在であり、国の抱える騎士団なんかでは立ち入ることのできない辺境で任務をこなす、言わばダンジョンの宿敵とも呼べる存在だった。

 

「よりによって『草分の剣』が来るのか……」

 

「未踏破の山や森林なんかを好んで探索するパーティーだ。探知魔術なんかも卓越したものを持ってる。仮に怪しまれれば……まずい」

 

「どうにかして隠す必要がありますね。現状、ダンジョン候補地は探知魔術を使えばすぐに見破れるくらいには大きくなっています。幸い、蔦の魔物は元が植物なので自然に紛れることは可能ですが、これだけの穴は誤魔化しきれません」

 

 確かに、もうじき森側とも繋がるし、本格的に地下も開発中だ。蛇たちを地下深くや森に隠しても、隠蔽が追いつくかは微妙なところだ。

 

「ニーナちゃんは魔術師なんだろ? 隠せたりしないのか?」

 

「魔術による隠ぺいは魔術の気配を産みます。自然の中においては感じるわけもないものなので、何かが隠されていると勘付かれることになります。そうなれば……」

 

「トップ冒険者が気づかないわけもない……か」

 

 ダンジョンの中で俺たちに重苦しい空気が流れる。事が露見すれば街の重役たちは黙っていないだろう。ダンジョンが露見すれば破壊されるだろうし、その後、力を付けた魔族が街にいると分かれば俺だって討伐の対象になる。人の社会に紛れられる淫魔の領域をとっくに追い越した自分には、ひどく苦しい事態だった。

 

「……難しいのかもしれませんね」

 

 リーナも重い表情を浮かべている。そういえばこの子はなぜこんな顔をするのだろうか。

 

 こんな状況にもかかわらずそんなことに気をやっていると、脛に岩の魔物がぶつかってきた。

 

「いって!! おい、急になんだ」

 

「──、──!」

 

 何やら契約魔術を介して岩の意思が伝えられる。なんだよ岩の意思って。

 

 しかしそうとしか言えない物に耳をすませば、にわかに信じられないことを伝えてくる。

 

「──この地下に眠ってる他の岩で上層を埋める?」

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