新しい小説を作ってみます。
続きません、ほとんど続きません。
多分。
設定に駄目なところがあるかもしれません
キヴォトスにおいて、生徒が演習で撃たれることは、ここでは日常だった
トリニティでも、ゲヘナでも、ミレニアムは…知らん
パァンッ!
乾いた銃声が校庭に反響し次の瞬間には誰かが倒れる。制服が裂け、赤い点が散る。それでも生徒たちは立ち上がり冗談めかして弾痕を指さし合う
「ほら、また当たった」
「今日のはちょっと痛かったかも」
笑い声と薬品の匂いが混ざる光景を、私はもう何度も見てきた
血はすぐに止まる。いや、そもそも出ない事が多い
傷は、なかったことになる
それがキヴォトスの、私達の当たり前だ
この日も、いつもと同じ演習だった。ゲヘナの風紀委員会での出来事
シャーレの先生である私は、そこにお邪魔していた。
理由は覚えてない、多分ヒナからのお誘いだった気がする
隊列、号令、模擬弾――そして、予定調和のような被弾。私はタブレットを片手に、数値を確認しながら生徒たちを見ていた
ユリが撃たれたのは、その流れの中だった
特別なことは何もなかった。
彼女は少し遅れて遮蔽物から飛び出し、銃声が一つ鳴った。それだけだ。
_______はずだった
ユリは倒れた。
勢いよく、ではない。まるで足元の力が抜けたように、見えない力に引っ張られるように、静かに膝から崩れ落ちた
「ユリ?」
誰かが名前を呼ぶ。
笑いは起きなかった。
私は走った。制服の布越しに、赤が滲んでいるのが見えた。珍しくもない光景――そう判断しようとして、違和感が喉を締めた
血が、多すぎる。
「止血――!」
指示が自分の声だと気づくのに、一拍遅れた
他の生徒の医療キットが開かれ、圧迫が行われる。だが血は止まらない。布が赤く染まり、滴り落ちる
私もすぐ側に駆け寄る
「先生……?」
ユリの声は、思ったよりはっきりしていた。
そのことが、私の余計に不安を煽った
「大丈夫だよ、すぐ――」
”治る”と言いかけて、言葉が喉に引っかかった。
私はその言葉を、今まで何度使ってきただろう
医療室は静かだった。機械音と、誰かの呼吸音だけがある。
止血処置は続いている。それでも、血は完全には止まらなかった。
_ありえない
数値を確認する。異常はない。修復反応も、通常通り――
いや、通常より弱い
ユリは透き通るように美しい青空を見つめていた。
「ねえ、先生」
「どうした?」
「私……これ、結構まずい?」
その問いは、軽い調子だった。
だからこそ、胸の奥が冷えた
「_そんなことはない……っ!」
反射的に答えた。嘘だと分かっていても
彼女は少し黙ってから、ゆっくり言った
「みんな、すぐ治るのに。私だけ、時間かかってる」
観察力のある子だった
だから私は、何も言えなかった
夜になって、医療室を出た私は資料室に向かった
許可のいらない範囲のデータを一通り確認し、それでも足りず、封印されたフォルダに手を伸ばす
警告表示が出た
【アクセス権限:管理者】
――それでも、指は止まらない
止められるはずがない
古いログ。処置記録。成功率。
数字の並ぶ画面の中に、ひとつだけ異質な行があった
【例外報告:1件】
【処置未完了/原因不明】
【追跡不要】
追跡不要
まるで、存在しなかったかのような扱いだ
胸の奥が、嫌な音を立てた
私はもう一度、医療室へ戻った
ユリは眠っていなかった
「先生」
名前を呼ばれた瞬間、逃げ場がなくなる
「私、死ぬ?」
とても静かな声だった
私は答えを持っていなかった
ここで初めて、その事実に気づいた
――銃弾が効かない理由を、私は知らなかった。
そして今、それを知ってしまったかもしれない
ユリの手は、まだ温かかった。
その温度が、なぜかひどく恐ろしかった