銃弾が効かない理由を、誰も知らなかった   作:もりもりバナナ

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これなんか適当に書いてるので、設定がおかしいかもしれません。

だから短いし、投稿頻度も短いです。あと寿命も。



説明責任

 

「………」

 

ここは生徒が出入りすることはめったにない

 

皆はここを管理棟と呼んでいる

 

 

管理棟は、夜になるとやけに白い

 

照明は明るすぎるほどなのに、人の気配がない。昼間は忙しなく動いているはずの廊下が、今は無音だった。足音が自分のものしかないと気づくたび、胸の奥がひやりとする

 

執務室の扉は、最初から開いていた

 

 

 

 

「来たか」

 

 

 

中にいたのは、真っ黒な髪の毛と目をした中年の男、いわゆる学園管理者だった。書類を整える手つきが、いつもと同じであることが妙に腹立たしい

 

そんな気持ちをぐっと抑えて、私は彼と話を始める

 

 

「ユリの容体は?」

 

私は立ったまま答えた

 

「安定していません。通常の修復反応が、明らかに弱い」

 

管理者は一瞬だけ目を伏せ、それから頷いた

「……例外だな」

 

その言い方が、あまりに軽かった

 

まるで雑談の中で、友達が知らない情報を流してきたかのように、とても軽く、嗚咽が走った

 

「知っていたんですか」

 

可能性としては、な」

 

彼はモニターを操作し、いくつかのグラフを表示した。成功率、分布、誤差範囲。整然と並ぶ数字たち

 

「処置の成功率は九九%以上だ。全員に完全な結果を保証することは、現実的ではない」

 

「それで、“追跡不要”ですか」

 

声が低くなったのが、自分でも分かった。

普段生徒には出さない声

 

管理者は椅子にもたれ、息をつく。

「追跡すれば、問題が顕在化する。顕在化すれば、説明が必要になる。説明すれば、恐怖が広がる」

 

「恐怖?」

 

「死だ。君も分かっているだろう。あの子たちは、“死なない”前提で日常を構築している」

 

彼は、ユリの名前を決して口にしなかった

 

「一人の例外のために、全体を壊すわけにはいかない」

 

___理屈としては、理解できてしまう。

それが何より最悪だった

 

「ユリは、その全体の一部です」

 

「そうだ。だから守られてきた」

 

「守られて“いなかった”」

 

言葉が鋭くなる。管理者の眉が、わずかに動いた

 

「先生」

 

諭すような声だった

「君はシャーレ(連邦捜査部)の教師だ。守るのは“日常”だ。真実ではない」

 

私は、ユリの顔を思い出していた。

医療室の天井を見つめて、静かに問いかけてきた声

 

 

『私、死ぬ?』

 

 

「彼女は知り始めています」

 

管理者の指が止まる

 

「……どこまで?」

 

自分だけ違うところまで」

 

沈黙がその執務室に落ちた

 

「なら、尚更だ」

 

管理者ははっきり言った。

「それ以上は知らせるな。治療は続ける。必要なら、配置転換も検討する」

 

「戦闘から外す?」

 

「危険因子だからな」

 

 

危険因子

 

その言葉が、胸の中で反響した

 

「ユリは生徒です」

 

「例外の生徒だ」

 

その瞬間、理解した

ここでは、ユリはもう“個人”ではない

 

 

 

 

 

執務室を出ると、廊下の白さがやけに眩しかった。

私は医療室へ戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユリは起きていた

 

私の足音に気づいて、少しだけ笑う

 

「なんかあったの?先生__」

 

「……うん」

 

「大人の?」

 

誤魔化せなかった

 

「そうだよ」

 

ユリは、しばらく黙ってから言った

 

「ね、先生。私、迷惑?」

 

心臓が、嫌な鳴り方をした

 

「どうしてそう思うの?」

 

「みんなと違うから」

 

私にとって、理由としては十分すぎた

 

 

ガタン

 

「ユリ」

 

私は椅子に座り、目線を合わせる

 

「君は、何も悪くない」

 

「じゃあ___っ」

 

ユリは、少しだけ声を震わせた

 

「なんで、みんなは大丈夫で、私は駄目なの?」

 

 

答えは、もう持っている。

けれど、それを口にする資格が、自分にあるのか分からなかった

 

私は言った

 

「……先生にも、まだ分からないことがあるんだ。ごめんね」

 

嘘ではない

 

同時に、逃げでもあった

 

ユリはそれ以上、何も聞かなかった。

ただ、天井を見つめたまま、小さく呟く

 

「私、ちゃんと生きてるよね」

 

その言葉が、決定的だった

 

私はもう、“知らないふりをする側”には戻れない

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