銃弾が効かない理由を、誰も知らなかった   作:もりもりバナナ

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多分7話くらいで終わるかな……。


同じじゃない

異変は、戦闘じゃなくて休み時間に起きた

 

教室の後ろで、友達がユリの包帯に気づいた。

「……それ、まだ取れてないの?」

 

普段、何気なくずっといる友達

 

ユリは一瞬だけ、言葉に詰まった

 

「うん。ちょっと、治りが遅くて」

 

その場にいた誰もが、同じことを考えた

 

 

――そんなはずはない。

 

 

キヴォトスでは、傷は長引かない

 

生徒たちは仕組みは理解出来てないが、なんとなくヘイローの加護で傷はつかないか、すぐ消えると信じている。

それが常識で、それが当たり前だった

 

「また撃たれたんでしょ?」

もう一人のが軽く言う

「なら平気じゃん。私なんて昨日三発だよ」

 

笑いを誘うつもりだった言葉は、宙に落ちた

 

ユリは決して笑わなかった

 

代わりに、包帯の上からそっと腕を押さえた

 

「……あはは…今回は、ちょっと違うんだよね…」

 

沈黙

 

それは、ゲヘナの教室に似合わない重さだった

 

「へぇ?なにが違うって?」

 

友達が一歩近づく

 

「どこが?」

 

彼女は視線を逸らした。

答えない、という選択をした

 

その選択が、事態を悪化させた

 

「ねぇ__なんかさ、隠してる?」

 

誰かが言った。きっとそこに悪意はなかったと思う

 

「ま、まさか__先生に言われて?」

「え?何それー」

 

ざわ……ざわ…

 

言葉が重なり、空気がざわつく。

私は教室の端からそれを見ていたが、口を挟めなかった

 

「ねえユリ」

一人の声が、少しだけ強くなる

 

「私たち、同じでしょ?」

 

その同じという言葉が、刃だった

 

「一緒に撃たれてさ、一緒に笑ってさ、一緒に規則違反者を取り締まって…平気で――」

 

 

「平気じゃない」

 

ユリの声は、小さかった。

でも、確かに響いた

 

全員が黙る

 

「私、あの日……血が止まらなかった」

 

 誰かが、息を呑む音を立てた

 

「じ、冗談でしょ?」

誰かが笑おうとする

「だって、そんなの――」

 

「本当だよ」

 

ユリは、包帯を少しだけずらした。

完全に治りきっていない傷跡が、そこにあった

 

教室内の時間が、止まった

 

「……え?」

 

「そ、それさ__ま、まだなの!?」

 

「嘘、でしょ……っ」

 

声が震える。

恐怖なのか、戸惑いなのか、誰にも分からなかった

 

「ユリ、それって……」

 

友達の言葉が、最後まで続かなかった

 

「__ねぇ、死ぬかもしれない、って言われた?」

 

誰かが、言ってしまった

 

禁句と同類の事を

 

ユリは首を横に振った

「言われてない。でも……」

 

 “言われていない”ことが、逆に真実味を増した

 

教室の空気が、ゆっくりと変わる

 

さっきまでの距離が、少しだけ開く

 

「じ、じゃあさ……っ!」

 誰かが、無意識に後ずさる。

「次の演習、ユリは出ない方がよくない?」

 

正しい判断だった

 

だからこそ、残酷だった

 

「ねぇ、危ないしさ__」

「そうだよっ!もし何かあったら……」

 

その何かを、誰も口にしなかった

 

ユリは、うなずいた。

拒否しなかった

 

「うん。そうだね」

 

それが、一番つらかった

 

昼休み、ユリの席の周りだけ、少し空いていた。

誰も彼女を嫌っていない。

ただ、どう接していいか分からなくなっただけだ

 

私は、その光景を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………っ………いてて…」

 

放課後、ユリは校舎の裏にいた。

一人で、包帯を巻き直している

 

「___あ、先生」

 

気配に気づいて、顔を上げる

 

「みんな、優しいよ」

 

私は何も言えなかった

 

「でもね」

ユリは、かすかに笑った。

「優しいまま、離れていくんだ」

 

夕焼けが、校舎の影を長く伸ばしていた

 

__決して、友情は壊れていない。

ただ、“同じ”ではなくなっただけだ

 

それが、彼女にとってこの世界で一番、耐えがたい違いだった

 

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