銃弾が効かない理由を、誰も知らなかった   作:もりもりバナナ

8 / 10
開戦

 

夜が明けきる前、境界線の霧はまだ薄暗く滲んでいた

静寂はあった

けれどそれは、死の前の吸い込みのような静けさだった

 

 

「ゲヘナ風紀委員会、配置完了!」

 

「確認、砲塔展開! 突撃体型を構えろ!」

 

 

風紀委員の重装部隊が、遮蔽物の裏に陣を取る

 

背後ではドローンが空を舞い、戦術情報がリアルタイムで回される。その情報は全て、ゲヘナ側の司令部に回されていた

 

 

 

 

 

 

一方、トリニティのも、既に展開していた

 

純白の制服に金属光沢のプレート

 

やるせない顔の正義実現委員会

 

「……やるのか」

 

誰かが呟く

 

やる

 

もう、止まらない

 

 

「砲列、展開!」

「リロード完了!全弾装填済み!」

「遮蔽物に被弾痕──接敵間近!」

 

その時

 

 

──ドン!

 

 

初弾が空気を裂いた

 

火線が走り、遮蔽壁が砕ける

 

 

「伏せろ! 前列崩れるな!!」

「機関銃、反応照準合わせてください!!」

 

怒号が走る

 

罵声と命令が交差する

 

耳鳴りのような連射音が、鼓膜を焼くように響く

 

「右側面! 突破してくるぞ──撃て撃て!!」

 

トリニティ側、白い制服の生徒が銃を構え前進

 

まるで祈るように静かに

 

しかし、その手の銃口は迷いなく火を噴いた

 

「皆さん!ゲヘナの悪魔に悔い改めさせなさい!」

 

ドドドドドッ!

 

パァンッ!パァンッ!

 

 

「っ──くそっ!こっちもやらせてもらう!!」

 

ゲヘナの生徒が反撃に出る。

風紀委員の黒いエンブレムが、炎に照らされ歪む

 

 

「主砲、後方まで下げろ! 広範囲で焼くぞ!」

「全員耳塞げ──撃つッ!!」

 

 

 

ズゥン!

 

 

 

「っ!」

 

「ぎゃぁっ!」

 

空気が振動し、大地が跳ねる

 

閃光と共に、トリニティの前列が崩れた

 

「前進止まるな! 突破路を開け──!」

 

白と赤の制服が、銃撃の中で交差する

 

一人が叫ぶ

 

一人が倒れる

 

誰も名を呼ばない。呼ぶ暇がない

 

 

「おらぁっ!」

 

「っ!」

 

「死ねっ!!!」

 

パァンッ!!!

 

ドドドッ!

 

____ズドンッ!

 

 

ゲヘナの生徒が、握った銃を投げ捨てナイフを抜く

 

その前に、閃光弾が炸裂した。光が全てを奪う

 

直後、聞こえた

 

「トリニティ正義実現委員会より宣告──」

 

声が、拡声器越しに響く。冷たく、儀礼的に

 

「ゲヘナ風紀委員会の行動は、明確な宣戦行為と認定」

「よって、交戦状態へ移行する」

 

その瞬間、空が爆ぜた

上空から滑り落ちてきたのはトリニティのエネルギー弾頭

迎撃の暇もなく、境界の地が火柱を上げた

 

何処から持ってきた兵器なのだろうか、きっと極秘で開発していたに違いない

 

「っ──っぐ……後衛、大破!」

 

「衛生班! 負傷者搬送急げ!盾壁!再構築急げ!」

 

煙の中で、誰かが叫ぶ

 

 

 

「これが……これが、あのユリがいた世界の続きかよ……!」

 

 

誰も答えない

 

答えられない

 

答えなんて、もうどこにもない

 

 

戦争は始まった

 

誰の意思でもない

 

誰か一人の死で火がついてしまうような──そんな世界で。銃声だけが、答えだった

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。