銃弾が効かない理由を、誰も知らなかった   作:もりもりバナナ

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終戦

銃声が、止んだ

 

焦げた空気だけが残っていた

 

白い煙と赤い瓦礫の中で、動ける者たちが、互いに銃を向け合いながらも、引き金を引かなかった

 

ゲヘナ学園とトリニティ総合学園の戦争は、事実上の終結を迎えていた

 

 

「……通信だ。トリニティ側から」

 

ヒナの隣で、包帯を巻いた通信士が言う

 

傷だらけの手が、まだ震えている

 

「降伏ではありません。あくまで――和解の申し入れ」

 

ヒナは、通信端末を見下ろした

 

返事をしないまま、戦場を見渡す

 

 

焼けた大地

 

崩れた講堂の外壁

 

弾痕にまみれた舗道

 

赤い瓦礫の上に、白い制服が崩れている

 

その向こう側には味方の――先生の姿もある

 

泥と血と煙の中

 

勝者など、どこにもいなかった

 

「……分かった、交渉班を出して」

 

ヒナは静かに言った

 

「武装解除はさせない」

 

通信士が頷く

 

「和解条件は?」

 

「不明です、詳細は現地交渉にて。トリニティの代表が来る」

 

ヒナは目を閉じた

 

静かだった

 

耳の奥に、遠くの銃声の名残がまだ残っている気がした

 

 

その数時間後

 

壊れた図書塔の広場に、両陣営の代表が並んだ

 

 

ゲヘナ:空崎ヒナ委員長

トリニティ:百合園セイア代理(臨時代表)

 

 

かつてティーパーティーのホストだった桐藤ナギサは、この場に姿を表すことが出来なかった

 

代わりに来たセイアの声は淡々としていた

 

「トリニティ総合学園は、ゲヘナとのこれ以上の戦闘を望まない。

同様に、これ以上の生徒の犠牲を看過できない」

 

「本日をもって――一切の武装衝突を停止し、その上でゲヘナ風紀委員会に対し、正式な謝罪と再発防止条項を含む協定を申し入れる」

 

ヒナは黙って聞いていた

 

声も表情も、何も変わらない

 

ただ、ポケットの中に入れていた小さなメモを、そっと握る

 

ユリが書いた『境界の方、ちょっと気になるかな』という一行だけの紙片

 

あの子が最後に気にしていた、境界線のこと

 

そこが、今まさに戦場になり

 

そして、終わろうとしている

 

「……和解は受け入れる」

 

「だが、忘れることはない」

 

ヒナの返答は、それだけだった

 

「私たちは、ゲヘナの生徒だ」

 

「優しいまま、傷ついて死んだ子のことを、忘れるような学園ではない」

 

セイアは、一瞬だけ目を伏せたように見えた

 

その後、ゆっくりと頷く

 

和解は結ばれた

 

だが

 

ゲヘナに笑顔はなかった

 

彼女らは勝った

 

けれど、それはあまりにも苦すぎる勝利だった

 

風紀委員会の詰所には

 

まだ、一つだけ空いた席がある

 

誰もそこに座らない

 

そして誰も、もう「ユリ」という名前を出さない

 

だが

 

ユリがそこにいたことを、忘れた者もいない

 

終わったのは戦争だけだった

 

悲しみは、まだ何一つ終わっていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告書

 

 

ゲヘナ=トリニティ第七区画局地衝突事案

 

 

 

関係組織

 

・ゲヘナ学園 万魔殿。風紀委員会。給食部

 

・トリニティ総合学園 ティーパーティー。正義実現委員会。シスターフッド。救護騎士団。自警団

 

 

被害

 

死亡者    11名

重症者   210名

軽症者    69名

行方不明者   6名

 

 

 

事案概要

 

当該区域における治安確認及び警備行動中、ゲヘナ学園風紀委員会所属部隊とトリニティ総合学園の一般生徒の間で意見の不一致が発生

 

その後、双方の現場判断により指示系統が錯綜。怒号、威嚇行為、武装展開が連鎖的に発生し、事実上の武力衝突状態へ移行した

 

停戦命令は発出されたが、現場への伝達および履行は間に合わず、混乱の中で上記死亡者が発生した

 

 

 

総括

 

本事案は、「事故」または「単独判断による暴走」として処理することは困難であり、複数組織間の緊張状態、指揮系統の不備、および相互不信が累積した結果であると結論づけられる

 

特に、死亡者が発生した事実は重く、今後の学園間関係および生徒感情への影響は不可避と考えられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備考

 

作戦は継続中である

 

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