今回のタイトルは勢いだけなので気にせんでもろて。みんなのトラウマ登場。楽しんでいただけたら幸いです。
「……気のせいなのです?」
「ん、どうしました?ヴィー」
塩ヶ宮の屋台の前にあるベンチでくつろぎながらヴィーと一緒にポテトにトマトを煮詰めて砂糖・塩・酢その他諸々と混ぜたもの……つまりケチャップ*1をつけたものを味わっていると、ポテトをつまんでハムスターの様に食べてたヴィーが北西に視線を向けて首をかしげていた。
「んー、知ってる気配がするなあって思ったのです。でも、私の住んでたところはこことは違うはずだから……」
「フォンテーヌでしたっけ。隣国とはいえ遠いですね………あー。私、その気配に心当たりあるかもしれません」
「本当なのです!?」
碧水の原の奥地の湖にいる彼女と、その見張り?と思われる彼らのことだろう。ヴィーも元々フォンテーヌにいたらしいし、知り合いだったんだろうか。
「蛍たちもあと一日はゆっくり旅の疲れを癒すみたいですし……せっかくなので、行ってみます?」
「なのです!」
私がそう提案すると、ぱあっと顔を輝かせて頷くヴィー。うむ、かわいい。蛍とパイモンに行きたいところがあると伝えて、明日望舒旅館で合流する手はずとなって、私とヴィーはほぼ逆走する形で旅立つのだった。
「こんなところに洞窟が……!」
「地元民にも旅人にも意外と知られてないんですよねえ」
石門の前を通り過ぎ、北上するとベビーヴィシャップが襲い掛かってきたので軽くしばいて*2洞窟を見つけてそこに入る。彼女の周回するときは基本近くの秘境かワープポイントにワープするか上から行くのが楽だから、ここのことを知らない旅人も多そう。
「こんな辺鄙なところに現れるなんてもの好きねえ!わきゃあ!?」
「そっくりそのままお返ししますよ」
「失礼するのです」
「お、覚えておきなさいよ!ね、ねえ!?聞いてるの!?ねえったら!?」
中を進むと何故かここを陣取っている雷蛍術師が襲い掛かってきたため、カウンターで蹴り飛ばして塩のナイフを投げて裾を壁に縫い付けることで拘束し、ヴィーがお辞儀をしてそのまま進む。悔しそうに唸ってたけど傷つけないだけありがたく思ってほしい。数年前にリュドヒカやカタリナが雷蛍術師になって自慢しに見せに来たもんで、雷蛍術師を今まで見たいに容赦なく倒せなくなってしまったのだから、本当に二人に感謝してほしい。これだからファデュイが身内にいると参るなあ。リュドヒカは玄冬林檎として鳴神大社で元気にやってるだろうか。カタリナには地下だけは行くなと伝えたけど、どうか何事もなく無事でいてほしい。
「ほら、見えてきましたよ」
「綺麗な所なのです……!」
そこに在ったのは、滝に包まれた水源の中に四角い足場だけが水面に出ている美しい光景で。ヴィーが目を輝かせ、私はその手を取って軽く持ち上げ、ダンスのエスコートでもするかのように水面を歩いて足場に向かう。え、海水じゃないのに何で歩いているんだって?いや、私もね?海水じゃないと歩けないの困ってたんですよ。だから、逆に考えたのです。触れた傍から塩水にして足場にしちゃえばいいんだ、と。私には無限の塩を出してくれる「器」があるのだし。いやあ、現役時代に持てる力のほとんどを注ぎ込んで作っただけはありますねえ!*3
『故郷からの刺客か、それとも軽策の水を侵すものか……』
「この声は…!」
すると、足場に降り立つと水面が泡立ち、私はヴィーを下ろして警戒する。いやあ、ゲームみたいに話しかけたら始まる、みたいなご都合主義じゃないか。この声を私は何回聞いたことか。バーバラや行秋の育成のために嫌というほど戦ったから、もう耳コピしちゃったよ。
『生物の姿形を羨み、「純水」はあらゆる形へと変化する。この「水」の力で裁きを与えよう』
「えっと、たしか……ローテーションなのです?」
『ローデシアだ……!』
首を傾げたヴィーの言葉にキレたのか、リス・カニ・イノシシ・カエル・アヒル・スズメ・トビ・ツルの形をした幻形生物*4を召喚し、私達を取り囲む声の主が姿を現す。水でできた巨大な異形。「純水精霊ローデシア」。本来はフォンテーヌ固有の生物なのに、初代水神を敬愛していたからか現水神たるフォカロルスとは決別して璃月に渡った存在だ。ちなみに純水精霊はテイワット各地にスパイとして潜伏していて、たとえばモンドの清泉町にもいるんだとかなんとか。
「こんにちは、ローデシア。お久しぶりですね。友人に対して酷くないですか?」
『我が聖域を塩で穢した魔女が何を言う。貴様は我が生涯の仇敵だヘウリア!!!』
あらら。顔見知りなのに冷たいことだ。水で剣や槍や矢まで作って殺意マシマシじゃないか。ローデシアがエゲリアの指示で璃月にスパイしに来たときに、前世の恨みから水源を塩水に変えただけじゃないか。友好的に「いい水源だな」と褒めてくれたのに、余裕がなかった私は容赦なく塩をどさあ、と叩き込んで追い返して………あ、私が悪いですねこれ!
「ご主人さま何やったのです!?」
「えーと、正当防衛ですね!」
『貴様のは過剰防衛と言うのだ!』
お怒りのままに幻形生物をけしかけ、水の武具を飛ばしてくるローデシア。いやあ、私が見せた造形技術をものにしていてすごいですねえ!?試しに塩の剣でリスの首を断ち斬らんとするも、擦り抜けてしまい強烈な体当たりを喰らってひっくり返る。物理が効かない上に水元素に反応する元素攻撃も持ち合わせてないから逃げるしかねえ!ヴィーを抱えて逃げ水の上を走って逃げるも、幻形生物は飛んだり当たり前の様に水の上を走って追いかけてくる。ああもう、「水はどんな形にもなる」「升に入れば四角く瓶に入れば丸く」「時には岩すら砕いて何処までも流れて行く」とは言いますが!*5やりすぎでしょうが!!私なんか塩だぞ!!!魔神でもないのにその力は強すぎるでしょう!?
「ローデシア、ローデシア!思い出したのです!」
「あ、ヴィー!?乗り出さないでください落としてしまう……」
「ローデシア!私なのです!」
『お前の様な人の子など知らぬ!我が名を気安く呼ぶな……!』
「きゃあ!?」
ヴィーが身を乗り出して呼びかけるも、ローデシアは怒りのままに水の鶴を飛ばしてきて、咄嗟に塩を足裏に纏ったハイキックで蹴り飛ばすことで水でも迎撃する。こんな小細工そんなにもたないだろうけど!
「ヴィー、もしかして知り合いなんですか!?」
「なのです!魔神になる前に、ただのスライムだった時の友人で……弱い私を、ずっと守ってくれていた優しい人なのです!で、でもその時の私に名前は無くて、魔神になって毒が強力になって、彼女をおびやかさない様に黙って離れたのです……」
「スライムだった時に……そりゃあ、わかりませんね。しかしどうしたものか」
「貴方達!やっと追いついたわ!」
すると、そこに現れたのは先ほど拘束したはずの雷蛍術師だった。見れば裾が破れている。引きちぎってでも追いかけてきたようで、相当お冠らしい。利用したいのは山々だけど、雷蛍術師は酷い目に合わせたくない。
『なんだ?またこの地を脅かす者か……?』
「うわ、純水精霊!?なんで、私が調べた時は出てこなかったのに!?」
「悪いこと言いませんから!危ないから逃げたほうがいいですよ!」
「な、なめないでよね!」
すると、矛先を変えて襲い掛かってきた幻形生物を、雷蛍でぶち抜く雷蛍術師。あ、相性よければ対抗はできるのか。怒らせるだけな気もするけど。でも、ローデシアの怒りがそちらに向いたのはありがたい。
「いいですか、ヴィー。私がなんとかローデシアまで接近します!私の言葉なんか聞く耳持ちそうにないんで、貴女だけが頼りです!」
「で、でもローデシアもヴィーのことなんか、きっと忘れてしまっているのです……」
「いいですか、モラクスも悩んでましたが、磨耗なんてねえ。記憶だけなんですよ。本当に友ならば、魂が覚えているものなんです!例え数千年経っていようともね!」
マルコシアスも思い出しましたし、マジで記憶なくなろうが魂は覚えていると思うんですよねえ。ほら、多分まだ封印されてる若陀龍王も肉体の方はモラクスと友人だって忘れていても魂の方は覚えていたでしょう。私なりに考えた「磨耗」への答えはこれだと思うんです。
「行きますよ!」
「な、なのです!」
「ファデュイに首席合格したエリートをなめるなあ!」
瞬間移動しまくる雷蛍術師から高速で雷蛍が飛び交い、幻形生物を次々と撃ち抜いて霧散とさせていくど真ん中を、水の上を走って突っ切る。それに気づいたイノシシやらカニやらが阻もうと突撃してくるも、塩を固めた拳で殴り抜け、空中から水の武器を飛ばしてくるローデシアに向けて跳躍する。
「新技、ソルトホッパー!」
跳躍した後に足裏から塩の足場を作り、それをジャンプ台の様にバネにして跳躍を繰り返すことで空中を直線移動する新技だ。名前は前世でアニメを見たことがある「ワールドトリガー」の“グラスホッパー”から取った。あれに出てくる技、トリオンとかいうエネルギーを固めたものばかりだったから色々再現できそうだけど如何せん記憶に全然残ってないのでもったいない。
「背後、取ったあ!」
『甘い』
「げばあ!?」
ソルトホッパーで背後まで移動するも、次の瞬間頭上に水元素が集まって実体化したトビの幻形生物の急降下攻撃を背中に受けて、撃墜される。しかし、落ちる寸前にヴィーを投げ飛ばすことには成功した。
「ご主人さま!?」
「貴女の言葉を伝えるんです、ヴィー!貴女は強いんですから!足りないのは、勇気だけですよ!」
とかかっこいいことは言いながら無様に頭から水に叩きつけられて水死体みたいにぷかぷかすることになったが、頭を上げるとどうやらヴィーはローデシアに組みつけた様で。
『おま、お前!?離れなさい!?いや、その前に何故私の水の体に触れるのです!?』
「私も水元素の体だからなのです!ローデシア!私は、貴女に守られてばかりだった、ダスタリオなのです!」
『だから私はお前など……ダスタリオ?その名は、どこか懐かしい、ような…………まさか、おまえ、は……あの、私に守られてばかりだったあのスライムのダスタリオ……!?だ、だがその元素量、まるで魔神……』
「なのです!」
『え、ええ……な、なぜ人の形を……あなたも、エゲリア様の……?』
「なのです?」
困惑しているようだが、旧友だと気づいたらしく。幻形生物の動きが止まる。雷蛍術師も困惑していた。あ、待ってその話言うの不味い。ローデシアは初代水神エゲリアのことを敬愛していて、フォンテーヌ人の起原も知っているとされていたはず。それをファデュイに聞かれるのは不味い。
「あ、あれ……?ど、どうしたのよ…!」
「あー……ローデシア?一応、部外者がいるのでそこら辺の事情は話さない方が……」
『ふ、ふむ……。ヘウリア、ダスタリオはお前の眷属になったのだろうか』
「厳密には違いますけど……まあ、そうなりますかね?」
『しばし、彼女を借りる』
「え。なのですぅううううう!?」
そのまま私の返答を待たずに、ヴィーを連れたまま水中に飛び込んでしまったローデシアと共に、幻形生物もすべて水に戻って姿を消した。
「……えっと、私はどうすれば……?」
「とりあえず、持ち場に戻るのをおすすめします。あ、あと。リュドヒカやカタリナに会ったらよろしく言っておいてください」
「あ、はい」
困惑しながら雷蛍術師もとぼとぼ帰っていった。……さて。しばしと言うが、どれだけ待てばいいのだろう。しかし友人との再会はいいものだ。まあ蛍たちと合流するのは明日だし。気長に待ちますかね。
ダスタリオの生きた時代ってフォンテーヌ創世の時代なので、エゲリアやローデシアはがっつり顔見知りなんですよね。毒スライムになって、友人を穢したくないから一人で隠居してたら魔神になって祭り上げられてレムスと戦わされて死んで今に至る。そんな身の上を聞いたローデシアはダスタリオにも気付かなかった自分にも人間たちにもブチギレたあと、ダスタリオことヴィーを救ってくれたヘウリアに対して複雑な感情になった模様。
ヘウリアは現役時代にローデシアが璃月にやってきたのを知るなり塩で追い返そうとした黒歴史アリ。この塩華女帝、黒歴史も多いのである。
次回は旅館にてまさかの人物との邂逅。以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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ええい、全部だ!!