とりあえずアンケート全部が多かったので、全部書くことにしました。今回はタルタリヤです。実は大人の姿では初めての出番。楽しんでいただけたら幸いです。
「ははは……はははは!最高じゃないか!!」
ヘウリアとモラクスの戦いを見届けた【公子】タルタリヤは、玉京台を見下ろせる崖の上から歓喜の声を上げていた。かつて、幼い頃の執行官になりたての時にヘウリアに完全敗北を喫し、いつかリベンジを果たそうと璃月やフォンテーヌ、スメールに寄る任務があれば自ら申し出て、そのたびにいなされていた。
ヘウリアの真の実力を見たのは、スメールで起きたアトラス事変で共闘した時だ。その時はテイワット全土の危機に共闘したが、最凶ともされたアトラス相手に、七執政と同じく片手間に対処し、その分身はアトラス打倒の決め手ともなった。その本気を引き出せればとワクワクしたが、本体は同僚であり瞬く間に4位に収まった【召使い】の義母であり、分身もスメールの統治者。手を出そうにも出せなかったため、燻ったまま十年が過ぎた。子供だからと侮られていた以前とは違う、大人の身体だ。認めさせてみせる、そう意気込みながら岩神の神の心を奪えという任務を受けて訪れた璃月。
迎仙儀式を利用してモラクスの居所を探るつもりで偵察していた。するとどうしたことか、まさかのヘウリア襲撃、からの両者全力を出しての殺し合い。偵察?そんな事知ったことかと言わんばかりにその戦いを目に焼き付けた。目標であるモラクスがヘウリアに負けて海に落ちたが、そちらは同行していた部下に指示して調べさせることにして、ヘウリアのもとへと直行する。途中で何者かに狙撃されていたが、知ったことではない。
「今のヘウリアなら、本気で戦ってくれるはずさ…!」
悲願が叶う時をワクワクしながら、タルタリヤは空を駆って絶雲の間を目指したかと思えば何故かすぐに方向転換して帰離原に向かうヘウリアに向け、手にした弓を構えた。
「あの時は近接戦しかできなかったから無様を晒したが、今の俺なら…!」
我流でありフォームもくそもない射撃をヘウリアに放つタルタリヤ。水元素で形成された矢は真っ直ぐ飛んでいき、そして「塩の華」が自動的に展開されてヘウリアの真横で爆ぜた。
「……あー、もし見てるんなら来ると思ってましたよ。タルタル」
「いい加減俺の名前を憶えてくれないかな、ヘウリア」
空中で制止し、振り返ってこちらを見るなり溜め息を吐いたヘウリアに、崖の中腹から見上げて弓を構える。一度も自分の名前をちゃんと呼んでくれないことにうんざりしていたタルタリヤの手に殺意がこもる。
「大の仲良しのモラクスを手にかけるだなんて、なんのつもりだい?こちらとしたら仕事が増えて困ってるんだ」
「貴方に関係ありますか?私達の問題です。それとも……なんでしょうか?モラクスを殺されては都合が悪いことでも?」
「……それこそ君には関係ないんじゃないかなあ?」
「それもそうですね。こちらも急いでいるんです、何もしなければ見逃してあげますけど」
そう返したヘウリアの声色は、仮面でも隠れていても感情が伝わる程に不機嫌に満ちていた。まるで、至高の楽しみに水を差されたかのように。ひしひしと伝わる怒気に、冷や汗を垂らしたタルタリヤの口元に自然と笑みが浮かぶ。
「そうだ!それだ!俺は、アンタが本気で敵意を向けてくれる時を待っていた!」
邪眼から雷元素が迸り、神の目から溢れた水流と共に足元からタルタリヤを包み込み、黒と紫の鎧に包まれていく。星柄のロングマントをはためかせ、長い角が生えた紫色の単眼が特徴の赤い仮面ですっぽり顔を覆い隠し、普段の2倍ほどの大きさとなった【魔王武装】を発動したタルタリヤは、雷元素の槍を手に空を舞い、突進した。
「10年も待たせた!!俺の全力、受け取ってくれ!!」
「……はあ。懲りることを知りませんね、貴方は」
薙ぎ払い、刺突、雷撃の雨、水の矢、雷槍車輪、双剣による二連撃、雷槍を投げてのブーメラン、水の衝撃波。その全てが、翡翠の片手剣を手にしたヘウリアに避けられ、防がれ、受け流される。これだ。まるでこちらのすべてを理解している様な予知染みた動きで、こちらの攻撃が届かない。*1悔しい、負けたくない、だけど楽しい。他の執行官は強いものの、まともに戦ってくれるものは少ない。故に全力を叩き込むのが今回が初であったタルタリヤは、精神がハイになっていた。
「もっと、もっとだ!ギアを上げてけよヘウリア!生前葬だ!生きたまま葬ってやるさ!!」
「大技を出さずに勝てると思われているのはちょっと癪ですね」
文字通りギアを上げて、超高速で周囲を飛び回って水と雷の斬撃の嵐を叩き込むタルタリヤだったが、いつの間にかヘウリアの周囲を霧の様に漂う塩で全て受け止められ、痛烈なカウンターのハイキックを受けて天高く打ち上げられる。顎に叩き込まれた一撃に、脳が揺らぐ。自由に動くことは当分無理だがしかし、高度を利用して大技を叩き込むことはできる。
「喰らい尽くせ!極悪法……っ」
しかしそこで、自分がまだ大技を出してないことをヘウリアが悟っていた台詞が頭によぎる。わかった上で挑発するということは、これを打ち破る自信がある?それとも、こちらを侮ってるが故の単なる油断?罅割れ顔が半分露出した仮面の下で、タルタリヤは不敵に笑った。
「どちらもありうる。それだけさ。極悪法…『空鯨噬滅』!」
「来ましたね」
放たれた巨大な水元素の鯨を前に、どこか恨みのこもった声色でヘウリアは構えた。タルタリヤの幼少期、迷い込んだ異界でトラウマとして刻まれた記憶の再現。当たれば致死を受けることを確信できるその一撃は、空からゆっくりとヘウリアに落ちて行って。
「
しかして、無造作に振るわれた塩を剣身に纏った片手剣の一撃で、巨大な質量を誇る水の鯨は真っ二つに斬られてヘウリアの側面を落ちていき、巨大な水飛沫を上げた。タルタリヤは見た。無造作に振るわれた瞬間、塩が巨大な斬撃として放たれて鯨を真っ二つにして自身の眼前を飛んでいった光景を。
「またつまらぬものを斬ってしまった……なんてね?」
「つまらないものだって……!?」
「初見のインパクトは凄まじくて実際に当たったら致死級の一撃でも、当たらなければどうということはないんですよ?あんな速度で当たると思います?」
瞬間、頭を振って無理矢理に脳震盪から回復して構え直したタルタリヤの眼前にヘウリアは跳び上がってきて、面食らう顔面に塩を纏って岩の堅さを有した拳が突き刺さり、山の岸壁に埋められてしまったタルタリヤ。仮面を被ってなかったら痛いじゃすまなかったと、過去の敗北の記憶が言っていた。魔王武装が解けて埋まったまま気を失ったタルタリヤを一瞥し、ヘウリアは頭を抱える。
「……やっちまいました。何度も辛酸を舐めさせられた鯨を見て思わず……。お、起きなさい!?貴方はこのあと旅人を颯爽と助ける役目でしょうに!……ええ、どうするんですか本当に。………いや本当にどうしよう?」
本気で困っているヘウリアに、薄れる意識でタルタリヤは笑う。
「ははっ……ざまあみろ……」
いやあ、呪術の彼と同じ声で同じ戦闘狂なんだから使わない理由がないよね。
魔王武装タルタリヤを完全敗北させて一蹴するヘウリアさん。これでも自認が弱いらしいです。鯨に対しては【公子】とフォンテーヌの週ボスのせいで殺意ましましです。
タルタリヤのヘウリアへの印象は、10年追い求めた「認めさせたい相手」。子供の頃の敗北があまりにも脳に焼き付いている。原作イベントを一つ潰してヘウリアを困らせているので痛み分け、なのかな?
以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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