今回は甘雨視点の話となります。地味に修行開始直後の頃のヘウリアを描くのは初めてかな。曇らせ回です。楽しんでいただけたら幸いです。
「てーくん!へうりあさま!みてください!」
とてとてと、まだ幼い身体でお二方に駆け寄る。留雲借風真君に連れられたまだ幼い私はその二人が天上の存在だとは知らなくて、無邪気に話しかけていた。麒麟の母親は行方不明で薬売りだった父親も寿命で死に、半仙であるもののまだ幼い私は留雲借風真君のもとに拾われて育てられた。そんな私にとってお二方は、留雲借風真君とはまた別の親のような存在だった。
「おや、なんですか甘雨。似顔絵ですかね?」
「そうらしい。うむ、実によく描けている。特にこの白い人間の横にいるウナギ、よく描けてるが色が茶色ではなく黒ではないか?」
「あ、モラクスそれは……」
「てーくん、です……」
「え。あ、ああ!泣くな甘雨!」
「あー、泣かせました!閑雲、モラクスが甘雨を泣かせましたよ!」
「待て。これは不可抗力で……」
「帝君とて許せぬ!とぁああっ!!」
「てーくんー!?」
「ふ、ふっははっ!ちょっ、面白過ぎますってモラクス…っ!」
私を泣かせてしまったとオロオロする岩王帝君。留雲真君に告げ口し顛末に笑い声をあげるヘウリア様。私を泣かせたと聞いて帝君だろうと飛び蹴りを叩き込む留雲真君。三人とも私を大事にしてくれているのが見えて、子供心ながらに嬉しかったことを覚えている。
「いくよ!へうりあさま!」
「ふふふっ、さすがに半仙といえど幼い子供に負けはしま……どあぁああああっ!?」
「へ、へうりあさま!?」
「お前の言う子供に負けてる様ではまだまだだな。ヘウリア、修行の量を増やすぞ」
「私は子どもにも負ける最弱です………がふっ」
「へうりあさまー!?ごめんなさい、ごめんなさい!?」
まだヘウリア様が修行を始めたばかりの頃、帝君に言われて組手をした際、全力で突進したら鳩尾に角が当たって吹き飛ばされ、悶絶するヘウリア様に謝り倒した時もあったっけ。
「あ、帝君!実は、ヘウリア様……塩華女帝を称える絵画ができたんです!璃月港の皆で、渦の魔神から璃月港を守ってくれたヘウリア様に感謝を伝えようと……帝君?どうしたん、ですか…?」
「……ヘウリアは、死んだ。間に合わなかった……すまない、甘雨」
「そん、な…、嘘です!あの、渦の魔神を相手にたったおひとりで足止めなされたヘウリア様が死ぬはずがありません!そんなの、嘘です……」
「ヘウリアは、あいつが愛する民の手で殺された……下手人の王とその配下は全員自害していた。これが、事実だ」
「そん、な……やだ、ヘウリア様、あ、ああぁあっあああああああ……!!」
ヘウリア様が亡くなったと知らされた時。帝君の方が悲しいだろうに、泣き崩れた私を労わってくれたことは悔いるしかない。だけど私は、三日三晩飲まず食わずで泣き続けるぐらいに、ヘウリア様の死はあまりにもショックだった。
「おや、失礼。つい癖で」
「………あの、もしかして白亜様。あなたは、もしかして、ヘウリア様……ですか?」
「……はい。そうです。塩の魔神なのに、小さかった貴方より弱かった、ふがいないヘウリアですよ。っと、うわっ!?」
幾千年の時が過ぎて、10年前にヘウリア様が復活なされた時は、滝の様に涙を流して抱き着きながら喜ぶしかなかった。だけどすぐに転落事故が起きて、始めて有給を使って付きっ切りで看護をして……なのに、傷ついた体でも民を守るために体を張るヘウリア様に、怒りのまま凍らせたのは自分でも驚いた。私は、もう二度とヘウリア様を喪いたくないのだと。そう実感した。それでもあの人は体を張って無茶ばかりするものだから、微力ながら璃月七星の秘書として、これからも、ずっと。お二方を支えていくんだと、そう思っていたのに。
だから、これは何かの間違いのはずなんだ。
「あはははっ!岩王帝君!!ずっと、ずっと!その面、殴りたいと思ってたんですよ!!!」
『お前か……ヘウリア、何故だ……!』
「何故もへったくれもあるもんですか!むしろ、あれだけのことをして私に恨まれてないとかどんなお花畑な頭してるんですかァ?」
ヘウリア様が、帝君を恨むなんてあるはずがない。2人が、殺し合うはずがない。だって、私の知る二人は、ずっと、仲良しで、でも……私は、あの方たちのことを本当は知らないんじゃないかと、そう思えて。ヘウリア様の声色に嘘偽りがないのだと*1長年付き添った経験から気付いて、私は………。
「はっ!!!!!!?」
目が覚める。見慣れた天井。横を振り向けば、岩王帝君のグッズとして売られているデフォルメされたもふもふの帝君を模したぬいぐるみが。反対を向けば、フォンテーヌからもらってきたという写真機とやらでヘウリア様と二人で撮影した絵が収められた写真立て。絵の中のヘウリア様は、普段の儚げな表情と打って変わって満面の笑みを浮かべてピースサインを作っている。昔からの知り合いにしか見せない素のあの人の姿だ。
「悪い、夢でしたね……ヘウリア様が、帝君を襲うなんて、そんなこと……ありえません」
窓から外を見ると、太陽は高く昇っていて正午過ぎだとわかる。はて。なぜ自分はこんな時間まで寝ていたのだろうか。普通に遅刻だ。早く着替えて身支度を整えて出勤しなければ、と。布団から出て、首をかしげる。寝間着ではなく普段着そのままだった。着替えずに寝ていたのだろうか、と考えて。扉が開いて上司が顔を出した。
「お目覚めのようね。寝起きで悪いけど、すぐに対処しないといけない仕事がたくさんあるの。手伝ってくれないかしら」
「もちろんです、天権様。ですが、早速で悪いのですがなにがあったのでしょうか?」
至極当然な疑問。当たり前だ。私の知る限り、そんな緊急性の高いことなんて何も起きていないはずだ。何故なら迎仙儀式に向けて前日までに仕事を終わらせたのだから。
「……本当に覚えていないのか。それとも現実逃避なのかは知らないわ。だけど、現実を見なさい甘雨。岩王帝君殺害の犯人、ヘウリアについてよ」
「……ああ、何故ですか……どうしてこれも、夢に、ならないんですかぁ……」
天権様の厳しい言葉に現実を直視し、泣き崩れる私を。天権様は咎めはしなかった。私は、どうすればよいのでしょうか……。
A.親同然の二人が目の前で殺し合いを始めた際の心境を述べろ。
Q.どうか、夢でありますように
仲良し二大武神に可愛がられていて敬愛していたのに、いきなり殺し合いを始めたらそら卒倒するよね。
以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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