なので今回はいつもよりちょっと短めですがご了承ください。海の落ちた後のモラクス視点です。楽しんでいただけたら幸いです。
塩で固められ、海底に沈んでいくという初めての体験。なんとか人型になることで脱出はできたが、続けて落とされた大質量の影響で起きた渦潮に流されていく。たしかにヘウリアの「初めて」にはなりたかったが、こんな「初めて」はいらないんだがな……!本当に加減なく固めてきおってからに。信頼の証と言われれば嬉しいが、本当に死にそうで困るのだが!!
「
流石に死体がないと民も俺の生存を信じ続けそうだから、即席で偽物の死体を作ってぷかーと浮かす。ふむ、我ながらいい出来だ。だが別に水中で息ができるわけでもないので、急いで璃月港の沖合に逃れて海面に顔を出そうとして。
「……うん?」
何かが足に絡んでいるな、と視線を下に向けて。後悔した。そういえばヘウリアが言っていたな。「死んだふりするためとはいえ、本当に海に落としていいんですか?」と。あの時はなんのことかわからず首を傾げていたが、その理由を痛感する。
「?」
「もごがぁああああああぁああぁっ!?!?!?!?」
タコだった。フォンテーヌにいそうな、というかフォンテーヌにしか生息してないはずのマンマルタコによく似た紫色のタコの触手が、俺の脚に絡みついていて。間髪入れず、全力で両手を動かして脱出を図る。しかし、なんと伸縮自在なことか。どれほど離れようとしても絡みついて離れようとしなかった。
「もごがああっ!?」
それどころか、こちらが息を満足にできないことに気づいたのか、深海に引きずり込もうと引っ張ってくるタコ。不味い、本当に不味い。苦手なのもあるが、龍の姿ならともかく人の姿では服が水を吸って重くなることもあり自由に泳げない。ならば龍の姿に戻れば、とは思ったがまたあの巨体になれば俺の生存が確定してしまう。いやしかし死ぬよりは、だがしかし……。
あ、息が、もう………。迷っている間に、空気がなくなり力なく沈んでいくしかない。走馬燈と言うのだろうか。何千年前かも忘れたヘウリアとの会話を思いだす。たしか、ヘウリアとの模擬戦においてヘウリアが初めて俺の一撃浴びせた時の話だ。
―――――「え、なんであの時、避けるでも防ぐでもなく懐に飛び込んだか、ですって?いや、まぐれで刃先が当たったとはいえ特に関係なくボコボコにされたんですが。え、いやだって。あの攻撃、避けても第二陣が回避不可能なタイミングで炸裂して、防いだところで防ぎきれるわけないんでじり貧なのは目に見えてる」
―――――「ああ、そうだ。俺はわざとそうなる様に攻撃を仕掛けた。取捨選択を学んでほしかったからな。するとどうしたことか、お前は敢えて懐に飛び込むことで着弾時間をずらして、結果的にすべてを回避した上に俺に一撃を与えた。何故だ」
―――――「ああ、そうでした。モラクスは素で防御力が高いからまず避けるなんて選択肢がないんですよね。逆転の発想ですよ、モラクス。逆に考えるんです。避けても防いでもダメなら自分からぶつかればいいのですよ。どんなものごとでも、前提を変えることで突破口が見えるものなんです」
―――――「恐らくなにかから聞きかじったんだろうが、俺でもわかるぞ。お前のそれはなにか間違ってる。いいたいことはわかるが、自分から相手の射程に飛び込むのは自殺行為だ」
―――――「じゃあなにが正解だったんですかねええ!?」
―――――「敢えて痛みを味わって危機感を学ぶことで、そうならないように策を弄してほしかっただけだ」
―――――「意外!それは正論ッ!!痛いの嫌です!」
そしたら「塩の花弁」なる自動防御技を編み出したのだから天才という他なかったなあれは。いや待て。逆に考えるんだ……?引きずり込もうとするタコから逃れようとするから体力と空気を消耗するのだ、ではどうするか。逆に考えればそれは必然……正直触りたくもないが、仕方あるまい!
「逆に考えるんだ、引きずり込まれてもいいさと!」
「!」
岩元素で脚を固め、海底に引きずり込もうとする触手に、敢えて受け入れることで自重も合わさり加速。ドロップキックをその顔面に叩き込み、触手がほどけたのを確認した瞬間、足を伸ばすと同時に岩元素を崩し、軽くなった体が勢いよく水面に向かって飛び上がった。
「ゲホッ!ゴホッ……!」
なんとか海面に顔を出し、深呼吸をする。この数千年の生で一番、真面目に死ぬかと思ったぞ。よし、あとはこっそり泳いで陸地を目指すだけだ。そう、璃月港から陰になっている崖の下の砂浜に上がったところで。見覚えのある黒衣の少女がいることに気づく。何故ここに、とは思ったが平静を取り繕う。今の俺はモラクスではなく、往生堂の客卿の鍾離だ。
「胡堂主か…少し足を滑らせて海に落下してしまってな。悪いが胡堂主、炎元素で乾かしてもらってもよいだろうか?」
「海に落ちた時はまさかと思ったけど、相変らず海の生き物が嫌いなんだね。モラクス。ヘウリアとじゃれて調子に乗るからだよ?」
「……え」
胡桃嬢と同じ姿、同じ声。しかしその口調に、その気配に、目を見開く。なんだ。これは夢か?まだ走馬燈が続いているのか?
「どうしたの?そんな呆けて。ああ、安心して。彼女には許可をもらって体を貸してもらっているけど、この間の記憶は残らないはずだから」
「……おま、えは……帰終、なのか……?」
その問いかけに。かつての彼女と瓜二つの笑みを浮かべて、若き堂主は後ろに手を組んで照れくさそうに微笑んだ。
「―――――うん。ヘウリアのおかげ、なのかな?久しぶり、モラク……きゃあっ!?」
水を吸った服などどうでもいいとばかりに、飛び込んでいた。すまない桃嬢、だが俺は……!すると、軽く両腕で突き飛ばされてしまう。なんで、と顔を上げると憤怒の笑顔を浮かべていた。……うむ、懐かしいな。ヘウリアとやりすぎた時は共によく怒られたものだ。(現実逃避)
「私も再会を喜びたいよ。だけど……OHANASHI、しようか?」
「その発音はへウリアに教えられた奴だな。たしか白い魔王に似てるとかなんとか……」
「話をそらさない!なに、璃月のみんなを泣かせてるの!!!」
うむ、ヘウリア。助けてくれ。もしくは俺と一緒に怒られてくれ。
甘雨が苦悩して嘆いていた一方、モラクスは海洋生物と死闘していた。知られたらヘウリア共々氷漬けにされそうですね。
このタコはいわゆる地方伝説です。璃月の海底にいるオセルの影響でなんか強くなったタコ。それだけ。
そんで早々に現代に登場、帰終さん。肉体を貸してる胡桃ともどもモラクス側で手伝ってもらう予定。復活できたのはヘウリアの力らしいです。
次回はようやく旅人side。本筋を進めていきまっせ。
以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
帰終in胡桃、どうなる?
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肉体を借りて「塵」の力を行使する
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肉体を借りて胡桃流で戦う
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ヘウリア発案アイテムを制作して戦う
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某幽波紋の如く帰終が傍に立って……
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戦わないでサポート特化