塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ご百物語

115 / 122
どうも、放仮ごです。大人しく療養してたらスネージナヤ来てましたってよ奥さん。とりあえずスネージナヤグラードに行くまでは進めましたけど寄り道しすぎでストーリーが全然進まない。でもFGOの夏イベント開始と同じ日なのはやめてほしかったかな!

今回はそんなスネージナヤで結構自国でも肩身が狭いとわかったファデュイの皆さんの話、つまりは北国銀行での一幕です。楽しんでいただけたら幸いです。


え、私【召使】のお母様ですけど???

「何者だ!」

 

 

 北国銀行に入るなり、警戒態勢で出迎えたのは仮面を付けた厚着の者たち。モンドで見覚えがある、ファデュイだ。でもあれ、知り合いの店なんじゃ……。

 

 

「あれ、私のことご存じでない?ここの責任者の万年十一位に出くわすたびに戦い挑まれてる白亜ですよ」

 

「し、知らん!その【公子】様はまだお帰りにならない!何か知っているのか?!」

 

「いや知りませんけど……あ、じゃあ。私、【召使】アルレッキーノの母ですが、それでもだめです?」

 

「え。も、もしかして往生堂フォンテーヌ支店の白亜さん!?仮面を被っているので気づきませんでした!」

 

 

 仮面を外しながら白亜がそう言うと、慌てて姿勢を正すファデュイの人たち。なんだろう、姐さんとか呼ばれてそう。

 

 

「おわあ、白亜凄いぞ……」

 

「い、今【公子】様は留守ですが何用ですか…?」

 

 

 【召使】の名はそれなりに大きいらしい*1が、今回はそれで助かったともいえる。にしたって怯えすぎな気もするけど。なにしたんだろ白亜。*2

 

 

 

「ちょっと千岩軍に追われてまして。匿ってくれます?」

 

「もしかして、先のヘウリアとモラクスの戦いと関係あります……?」

 

「ぐれーとです。私のこの顔、ヘウリアとそっくりでしょう?それが理由で追われてまして。貴方達も、【召使】のお母様とその仲間を無碍に追いだしたりしませんよね?」

 

「匿わせていただきます!」

 

「大変よろしい」

 

「白亜、それ脅迫なんじゃ……」

 

「パイモン、今は気にしないでおこう?」

 

 

 白亜の「お願い」に敬礼するファデュイの人たちが気の毒でならない。これ冤罪をどうにかできても脅迫罪で逮捕されない?

 

 

「【公子】が戻ってくるまで暇ですね。そうですね、蛍。聞きたいことがあれば答えましょうか」

 

 

 一応千岩軍が中に入ってきたときのためにと二階に移動し、客室の応接用のソファに座って長弓を取り出してしなりを調整していた向かいのヘウリアがそんなことを言ってきた。聞きたいことは山ほどあるんだ。

 

 

「白亜は、仙人なの?」

 

「はい。真白空我真君。塩華女帝のヘウリアに仕える眷属です。顔が同じなので仮面を被ってたわけですね。ヘウリアも仮の姿として使っています」

 

「なんでヘウリアはモラクスを襲ったんだよ?」

 

「乱心したから、だといいんですがね。私も理由は知らないんです。でも止めないといけない、そうでしょう?」

 

「ヴィーは今どこ?」

 

「安全な所です。ええ、すごく安全なところにいますよ」

 

 

 お腹を撫でながら白亜はそう優しく微笑んだ。

 

 

「私達は、どうすればいいんだろう」

 

「私も手がないんですよね。ヘウリアも行方を晦ましたので真意を問い質すこともできません。ですがまずやることは一つ、私達は関係ないのだと他の仙人たちに伝えることです」

 

「他の仙人たち…?」

 

「削月築陽真君。理水畳山真君。金鵬大将。留雲借風真君。この四人です。特に留雲借風真君は七星の秘書である甘雨の保護者なので、早く伝えに行かないとカンカンに怒って襲ってくるでしょうね。ですが、問題が一つ。彼らは縄張りを重視しており、勝手に侵入したものを排除しにかかります。例え顔見知りの私だろうと、今はモラクスを襲ったヘウリアと同じ顔なので追い返されるのが関の山ですね。なので、謁見するための手段がいります」

 

「手段……手がないって言い方だと、今はないんだね」

 

「ですね。最悪仙人四人と千岩軍に追いかけまわされながらヘウリア様ご乱心の原因を突き止めないといけません」

 

「そんなの嫌だぞ!?」

 

 

 パイモンの絶叫に同意する。モンドでは西風騎士団どころかファデュイやアビス教団とも協力してたけど、その真逆ってことだもんね。無理だと思う。すると、入り口の方から喧噪が聞こえた。吹き抜けの廊下に出て、手すりから下を見下ろすと、仮面を頭に被ってはいるけど顔を隠していない、他のファデュイとは一線を画した青年がいた。服装はボロボロだったりずぶ濡れだったりで痛々しい。

 

 

「【公子】様!?いかがしたのですか!?その傷は!?」

 

「あー、この傷は自業自得だから気にしないでくれ。それより、モラクスの行方を全力で追って……あれ、この、匂いは」

 

 

 そう言って何かに気づいたらしく見上げてくる青年。その視線は私の背後を見て目を大きく見開いて。歓喜の声と共に跳躍してきた。

 

 

「白亜じゃないかあ!あれ、ついさっきまであそこにいたのになんでここに……いやいや、どうでもいいなそれは!さあ!俺と楽しい蜜月の続きをしよう!ぐえっ」

 

「調子に乗るなください」

 

「「「【公子】様ぁあああああああっ!?」」」

 

 

 ウキウキと喜びながら跳躍してきた【公子】を、白亜は容赦なく拳を突き出して叩き落とした。子供みたいに白亜を見て喜んでたのに塩対応、なんだか可哀そうかもしれない。

 

 

「お、おい白亜。今叩き落とした【公子】ってまさか……」

 

「ファトゥス第十一位ですね。10年間も十一位から上がれてない可哀そうな人です。いやほんと、タルタルも馬鹿強いのに十位は何者なんでしょうね」

 

「気にしてることを言わないでほしいなあ……で、君。誰?」

 

 

 二階から背中から落ちたのにピンピンしている【公子】が立ち上がり、冷えた視線を向けてくる。その視線は【淑女】を思いだすそれで。同じファトゥスなのだとひしひしと伝わった。

 

 

「真白空我真君、または白亜ですが何か問題でも?」

 

「じゃあ俺がさっき負けたのは誰だったのかな……まあいいや、偽物でも何でも。強いのはわかる。俺と戦ってもらおうか……!」

 

「嫌ですよめんどくさい」

 

「ああうん、間違いない白亜だ!なんだいどうしたの、俺達ファデュイを頼るなんてよっぽどのことだよね?」

 

 

 謎のやりとりで確信するってどんな関係なんだろうか。私とパイモンは口を挟まない方がよさそう。

 

 

「ご存じの通りへウリアがご乱心でして。で、同じ顔の私と一緒に旅していたこの二人が千岩軍のお尋ね者になってまして。往生堂も使えないのでここに来たわけです。私、【召使】のお母様ですし」

 

「へえ、その二人が噂の栄誉騎士か。強そうだ、いいね。でも、俺の組手相手と名乗ってもいいんだぜ?」

 

「事実ではないので丁寧にお断りいたします」

 

「ちぇっ。つれないな……まあそこまで聞けばわかったよ。まずは仙人に言い訳しようってことだろう。……どこまで知ってるんだい?」

 

「いやいや。私は風の噂で「禁忌滅却の札」をファデュイが手に入れたと聞いて、もしかしてと思ってきただけですよ?」

 

 

 そんな話聞いてないんだけど、と視線を向けると白亜はそっぽを向いた。もしかしなくてもまだ隠し事あるな?すると、そんな態度に慣れっこなのか【公子】はため息を吐くと赤い文字が記された黄色い札を一枚、懐から取り出した。

 

 

「どうだかね。……はあ、まあいいや。たしかに、ここに「禁忌滅却の札」がある。だけどこれはようやく手に入れた貴重な代物だ。俺達があんたに渡すメリットはないよね?彼等にとっては上司のおふくろさんだとしても、俺にとっては単に後輩の親なだけだ」

 

「ぽっと出の後輩にすぐさま昇格された時どんな気持ちでした?」

 

「ここで決着つけてもいいんだぞ……?」

 

 

 なんか地雷だったらしく、挑発合戦は白亜に軍配が上がった。【公子】は青筋を浮かべてプルプルと弓を手に震えている。

 

 

「まあそれは冗談ですが。うーん、そうですね。ヘウリアと戦ったようですが、この私とも一度だけ本気で戦う機会、と言うのは如何でしょう?その代わりできるだけ協力してくれると助かります」

 

「乗った。約束は守ってもらうよ。俺達としても、ヘウリア乱心が事実だった場合、約一名*3がめんどくさいから早急に解決に当たろう」

 

 

 あ、後ろのファデュイの皆さんが揃って頭を抱えた。大変だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、千岩軍を避けつつ北国銀行を出て、璃月港脱出を目指す私、パイモン、白亜の三人。ワープで逃げればいい、と思い至ったのだが、白亜が「今ワープはちょっと不味いかもです」と言うもんだから徒歩で向かうことになったのだが。千岩軍の視線が別の場所を向いたことを確認した瞬間、橋を駆け抜けようとして。ひんやりとした冷気が、私の首筋を走った。

 

 

「っ!?」

 

 

 ガキィン、と。私の真横で甲高い金属音が響き渡る。見れば、白亜が手にした大弓が、襲撃者の銀髪の女の手にした槍を受け止めていた。襲撃者は槍を軸にして体を持ち上げて宙返りして着地、札を取り出すと氷元素を迸らせ、氷柱を形成して飛ばしてきた。私とパイモンに当たりそうなものだけ剣で防ぐが、とんでもない威力だ。受け止めた腕がしびれている。

 

 

「まさか、千岩軍の追手…!?」

 

「いいえ、これは個人的な刺客ですね。いやあ、今年も離れたところで迎仙儀式を見てたんですかねえ、申鶴?」

 

「黙れ。偽物。これ以上あの人を騙るのなら、我は容赦なく粉々に砕く」

 

「おや。何を根拠に?」

 

「匂いが違う。反吐が出る匂いだ」

 

「香水を変えただけかもですよ?蛍、先に慶雲頂に向かってください。ちょっと、時間がかかりそうなので。急がないと手遅れになります」

 

「……うん、気を付けて!行こう、パイモン!」

 

 

 騒ぎを聞きつけた千岩軍が駆け付けてくるのを見て、少し考えてから白亜を置いて行くことを決めてパイモンの手を取り橋を駆け抜ける。

 

 

「十年前より愚人衆(ファデュイ)が魔神の複製を行っていると噂を聞いた。……お前は、あの人の……?」

 

「当たらずとも遠からず、ですかね?」

 

 

 そんな会話を聞きながら、私とパイモンは璃月港を後にしたのだった。

*1
蛍はまだ知らないがファトゥス序列第四位なのでそれなりどころではない。ついでに言うとアルレッキーノ就任時に白亜が隊長相手に大立ち回りをしたという噂も立ってるのでファデュイの中では悪い意味で有名人

*2
就任直後に四位まで上り詰めた【召使】の師匠()で一位の【隊長】と互角な相手に一兵卒が怯えるなと言う方が無理

*3
いったい誰トーレなんだ……




タルタル→困惑だけど戦えるならまあいいや!

ファデュイの皆さん→万が一粗相を働いたら【召使】様に殺される……

蛍→白亜何者なんだろう……偽物?

申鶴→こいつはくせえッー!


以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

ヘウリアは10年の間にナタやスネージナヤにも行ってるけど……

  • 短編で少しだけ先出し
  • あとからゆっくりでいい
  • ヘウリア以外の人間視点で回想
  • ナタだけ先出し
  • スネージナヤだけ先出し
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。