塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ご百物語

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どうも、相変らず腰をやってる放仮ごです。腰の痛さで全然書けない。まあ今回はスネージナヤの探索を終えて、世界任務も全部終わらせたので落ち着いて書けたのですが。スネージナヤのストーリーが神過ぎるけど魔神任務の第二幕と世界任務で心折れそうになったのさすが公式。ロザリンが悲しすぎたから今作では何とかしたいところだけど難しいよなあ。

これから璃月編における前書き後書きでは、モラクスを倒した方をヘウリア、旅人に協力してる方を白亜と称することにします。そんなわけで申鶴VS白亜です。楽しんでいただけたら幸いです。


鶴が啼く、仮面は割れる

「ハァアアアアアッ!!」

 

 

 槍を手に、刺突や薙ぎを連続で叩き込む。目の前の、あの人を騙る偽物を滅殺するべく、持てる力の全てを籠める。10年前、療養していたあの人の帰省に付き添って初めて訪れた璃月港。長年人々と離れて山奥で暮らしていた我にとっては劇薬に等しかった。俗世との交流と、食の素晴らしさ、そして人並みの生活を与えてくれたのは、あの人……白亜さんだった。そのすぐあとにフォンテーヌという国に行って、璃月に帰ってくるのは一年に数回程度しかなかったけど、我はあの人が与えてくれたものを失わないために、たびたび山から下りて甘雨先輩に頼りつつ、璃月港になじむべく頑張った。様々な店をクビになった末に万民堂で雇ってもらえ、今年の迎仙儀式で帰ってくると聞いていた白亜さんに胸を張って報告しよう、とそう思っていた。

 

 

 だけど帝君が襲われた。我はそうでもないが、師匠や甘雨先輩が敬愛する神が、その一番の友であるはずの白亜さんに襲われるのを、迎仙儀式で白亜さんと合流しようと考えていた我は目の当たりにしてしまった。その気配、匂い、気迫、声。仮面で顔こそ隠れていたものの、我の感じるすべてが彼女が本物だと言っていて。混乱している間に帝君は海に叩き落とされ、白亜さんは師匠たち仙人の住まう山岳地帯へと飛び去って行った。

 

 倒れてしまっていたらしい甘雨先輩を顔見知りである凝光たち七星に断りを入れて、彼女の自宅まで運んだ。気持ちは痛いほどわかる。我よりも付き合いの長い甘雨先輩の受けた衝撃は想像もできない。我がこうなった理由を突き止める、そう目覚めない甘雨先輩に誓って外に出れば、千岩軍が急いでいる光景が見えた。おかしなことを言っていた。白亜さんは、塩の魔神ヘウリアは飛び去ったはずなのに、璃月港に「白亜」がいるというのだ。

 

 以前、白亜さんがおすすめスポットだと教えてくれた璃月港全体を見下ろせる高所に向かい、常人より優れた視力で見渡せば、見つけた。白亜さんがほとんど使わない大弓を背負い、金髪の少女と共に今まさに璃月港を脱出しようとする「白亜」を。怒りがふつふつと湧いた。師匠曰く赤紐で封じられている我の激情が溢れ出し、考える前に跳躍していた。

 

 

「っ!?」

 

 

 高所からの、風の翼も使わない純粋な急降下による奇襲。それを、驚きながらも「白亜」は手にした大弓で防いで見せた。同時に感じる、よく知る白亜さんの匂いに混じった異臭。それでこの「白亜」が偽物だと確信した我は怒りのままに槍を軸にして体を持ち上げて宙返りして着地すると、札を取り出して氷元素を迸らせ、氷柱を形成して弾幕として飛ばす。白亜さんが言っていた。せっかく造形できるのだから、より鋭くより重くより速くより多く、そしてそれを一瞬で形成できるようにするべきだと。この10年、その教えに従い鍛え上げた自慢の技は、剣を手にした金髪の少女を吹き飛ばすことはできたが、「白亜」は涼しい顔で受け流していた。

 

 

「まさか、千岩軍の追手…!?」

 

「いいえ、これは個人的な刺客ですね。いやあ、今年も離れたところで迎仙儀式を見てたんですかねえ、申鶴?」

 

 

 金髪の少女……の傍に浮いていた白い小さな少女の言葉に、飄々とした態度で我に話しかけてくるその言葉に、激情が燃え上がる。凶暴な我が顔を出す。それ以上、その声で、我の名を呼ぶな。

 

 

「黙れ。偽物。これ以上あの人を騙るのなら、我は容赦なく粉々に砕く」

 

「おや。何を根拠に?」

 

「匂いが違う。反吐が出る匂いだ」

 

「香水を変えただけかもですよ?蛍、先に慶雲頂に向かってください。ちょっと、時間がかかりそうなので。急がないと手遅れになります」

 

「……うん、気を付けて!行こう、パイモン!」

 

 

 逃げるように促された金髪の少女は騒ぎを聞きつけた千岩軍が駆け付けてくるのを危惧したのか、少し躊躇した後に小さな少女を連れて璃月港を後にした。彼女たちも気になるが、今は目の前の偽物を壊すことからだ。

 

 

「十年前より愚人衆(ファデュイ)が魔神の複製を行っていると噂を聞いた。……お前は、あの人の……?」

 

「当たらずとも遠からず、ですかね?恩を仇で返されて私は悲しいですよ、申鶴。いやほんと。もう少し後に出てきてほしいというか」

 

「黙れ偽物。白亜さんを返せ」

 

「あ、話聞いてませんねこれ?」

 

 

 瞬間、踏み込んだ我の槍を、大弓を棍棒の様に握って弾き返した「白亜」は、距離を取ると塩で矢を三本取り出して番え、発射。放たれた瞬間それらはさらに分身して矢の雨となり、咄嗟に氷壁を目の前に展開することですべて防ぎきってから氷壁を消すと、「白亜」は姿を消していて。

 

 

「っ……!?」

 

「咄嗟になるとすぐに氷の術ぶっぱに頼る……貴女の悪い癖ですね」

 

「ぐうっ!?」

 

 

 いつの間にか右から迫っていた「白亜」のフルスイングが迫り、咄嗟に右腕を盾にした上で氷元素で凍り付かせて防ぐも、踏ん張りきれず吹き飛ばされてしまう。なんてパワーだ、我でも耐え切れないとは。氷で保護してなかったら腕が折れていた……。

 

 

「こっちも急いでいるんで手加減できないんですよ。ご満足いただけました?」

 

「まだだ…!氷霜よ、化神となれ!」

 

 

 氷元素の籙霊を四体形成し、「白亜」の四方から襲わせる。本物の白亜さんならこの程度いなされるが、偽物なら……!しかし、「白亜」は弓を真ん中から二本に分離すると二刀流の片手剣の様に振るい、籙霊を全て斬り捨ててしまい、立ち上がって突き出そうとしていた我の槍の穂先を蹴り上げて手放させると、弓を再び連結して矢を引き絞り眼前に突きつけると射出。放たれた矢は炸裂して軽い衝撃と同時に崩れ、複数の塩の礫となって我の全身を打ち付け、大きく吹き飛ばした。その、型にはまらない変幻自在の戦い方は……。

 

 

「そんなはずない、そんなはずは……」

 

「あれ、知りませんでした?弓って近接武器なんですよ?そろそろ千岩軍が集まってくるから勘弁してほしいんですけどね?」

 

「我は信じない!あの乱心した白亜さんも、お前も!白亜さんと、重なるなんて……!愚人衆(ファデュイ)の【博士】なんだろう!お前を生み出したのは……!白亜さんすら認めるあの男なら、こんな……こんなっ!」

 

「……ごめんなさい、二人とも」

 

 

 涙ながらに必死に問いかければ、何故か呆然としてから謝罪の言葉を述べる「白亜」。二人……逃げたあの二人のことだろうか。そうこうしているうちに顔見知りが率いた千岩軍が駆け付け、我と「白亜」を取り囲み槍を構える。同時に、我の体に絡みついて立ち上がらせてきた。千岩軍を率いた夜蘭だった。

 

 

「大丈夫かしら、申鶴。七星お抱えの用心棒が何て様なの?……いや、相手を考えれば無理もないわね」

 

「……夜蘭。あれは、ファデュイの【博士】が生み出した人造魔神だ。デミ・オロバシに習えばデミ・ヘウリアと呼ぶべきだろうか」

 

「っ、それは確かなの?」

 

「我の鼻はそう言っている……あの人にはないはずの死臭を漂わせている」

 

「ええ、そんなに匂います?いやまあ璃月港に来るなり実行に移したからシャワーは浴びてないですけど、ちゃんと包んでますのに」

 

「おい、動くな!」

 

 

 我と夜蘭の会話に口をはさんでくる「白亜」に、ピリピリしている千岩軍の一人の槍の穂先が突き出され、夜蘭が止める間もなく「白亜」の右腕に突き刺さる。しかしそれは、疑念を解消するにはちょうどよかった。あの人は血を流すことは決してない。何故なら血がないからだ。血も涙もないとかではなく、我はあの人が岩塩の像を肉体に顕現しているのだと知っている。だから。

 

 

「おっと。乙女の柔肌に傷をつけるとかひどくありません?」

 

「……どす黒い、血……!」

 

「やっと尻尾を見せたな、狐め……!」

 

 

 その割れた様な陶磁が如き肌から零れたどす黒い血のような液体は、「白亜」が偽物だという確かな証左だった。我の言葉に、溜め息をつく「白亜」。何とか持ち直した我が夜蘭と共に構えて警戒する中で、「白亜」は。囲まれているというのに、弓を分離して臨戦態勢をとった。

 

 

「ばれちゃったなら仕方ないです。時間の無駄は嫌なので、おしとーる」

 

「ふざけてるのかああ!」

 

「塩華女帝を侮辱するなあ!」

 

 

 気が抜ける掛け声で挑発してきた「白亜」に、一番近かった千岩軍二人が、恐らく得体の知れなさに恐怖したのもあるのだろう、槍を振り下ろすがしかし、「白亜」は軽く跳躍して槍を避けると、踏みつけにして二人の槍を使えなくすると、分割した弓を振るって昏倒させてしまう。一拍遅れて我と夜蘭が飛び込もうとするが、千岩軍がパニックを起こしてしまい、迂闊に近づけない間に次々と叩きのめされていく千岩軍。彼らは十年前煙の魔神の復活において無力を痛感し、鍛え直した精鋭たちだ。それが、白亜さんの乱心と帝君の死、得体のしれない「白亜」と立て続けに動揺させられて本来の力を出し切れていなかった。

 

 

「ふぅ。そろそろ限界なので、お暇させていただきますよ」

 

「限界って、なにがかしら。【博士】からなにか命令を?」

 

「まあそんなところです。あ、会話の間に糸で縛っていたようですが無駄ですよ」

 

「っ、待ちなさい!」

 

 

 集まった千岩軍の大半を叩きのめした「白亜」を、会話を利用して縛り上げようとした夜蘭だったが、あっさりと斬られて跳躍されてしまい、水元素の矢を放つもすべて防がれる。門の上に着地する「白亜」に、ならばと残った力を右腕に振り絞る。まだ先の衝撃で痺れているが、氷元素で補強しろ。白亜さんから学んだすべてを活かせ……!

 

 

「それではさよなら……おわあっ!?」

 

 

 ブンッと。風を切り、凄まじい速さで投擲した槍が、こちらを振り向いていた「白亜」の頬を仮面ごとき飛ばした。割れた陶器の様になった傷口から溢れるどす黒い液体を押さえて同時に顔を隠しながら、こちらを睨む「白亜」。

 

 

「今のは痛かったです。さすがは私の一番弟子ですね」

 

「っ、待て……!我は、白亜さんの一番弟子だ……!」

 

 

 溢れる力の制御を学んだ。氷元素の応用の仕方を教えられた。戦いにおける心得を学んだ。武具の扱いを教えられた。我のもう一人の師である白亜さんを穢したやつを、絶対に許さない。跳躍して飛び去って行く「白亜」を見て、我はそう決意した。

 

 

「……妙ね。気絶させられているけど、全員大した怪我はないわ。すぐに凝光に報告して追跡隊を組織してもらうから、申鶴は気絶した彼らを運んでくれる?」

 

「承知した。……すまない、助かった」

 

「同僚である前に友人だもの。当たり前でしょ」

 

 

 目にも留まらぬ速さで去っていく夜蘭と言葉を交わし、我は倒れた千岩軍を担ぎ上げる。……纏めて運ぶとしよう。少しでも鍛錬になればいいのだが。




白亜はデミ・へウリアらしいです。血(?)が流れてる時点で偽物ですね。

今作では十年前に白亜が璃月港に連れてきた結果、そのまま数年のうちに居ついて様々な店で働こうとしてもうまく行かず、結局万民堂に落ち着いているほか、迎仙儀式のような有事の際には甘雨の手伝いとして「七星の用心棒」として働いていた申鶴さん。一番弟子だと言ってますが、璃月での一番弟子です。どちらが先かと言われたらクロリンデと喧嘩になる。今だと万葉たちもか。

以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

ヘウリアの一番弟子は……?

  • フォンテーヌ代表、クロリンデ
  • 璃月代表、申鶴
  • 稲妻代表、千速と万葉
  • シオンだけどスメール代表、ディシア
  • モラクス「共に切磋琢磨した俺だ!!」
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