塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ご百物語

117 / 122
どうも、放仮ごです。この小説を書くにあたり舞台になる土地をゲーム内で実際にロケしに行ってるんですが、新発見とかあって楽しい。100%にしてもうまみのあるテイワットはいいぞ……。

今回は仙人たちside。最初は魈視点、あとから旅人視点でお送りします。楽しんでいただけたら幸いです。


仙衆夜叉リターンズ

 理水畳山真君、留雲借風真君、削月築陽真君、そして我……降魔大聖は絶雲の間の東屋の一つに集まっていた。岩王帝君より、最近起きた異変を調べるように指示された調査の報告会を兼ねてだった*1。迎仙儀式が行われている間に集まり、終わった後に成果を報告できるようにまとめるつもり、だったのだが。

 

 

「……まさかとは思ったが、最近軽策荘で角を持つ少女の目撃例があった」

 

「明蘊町にて魔物を屠る四本腕の大男を見かけたと噂を聞いたぞ」

 

「璃沙郊にて佇む妙に凝った衣装の男がいたと塩ヶ宮で話題になっていたぞ」

 

「我は、遺瓏埠に炎を思わせる踊り子がいたと聞いた」

 

 

「「「「………」」」」

 

 

 三眼五顕仙人それぞれが各地で集めた情報を述べ、ある事実が脳裏によぎって押し黙ってしまう。それらの特徴は、四人の……特に我にとっては忘れがたき四人の面影があった。

 

 

「……死者が蘇るなどありえない、などとはヘウリアを思えばとても言えないな……」

 

「10年前にはあのシトリウスやアトラスも蘇っていた」

 

「北国の愚人衆(ファデュイ)も魔神の復活を研究していると聞く」

 

「……帝君に報告せねばならない。迎仙儀式が終わったらすぐにでも……む?人間、か?」

 

 

 どこか覚えがある気配を感じて、振り返る。そこにいたのは、小さく白い精霊を連れた金髪の旅人。たしか、今日の昼前だったか。ヘウリア様が帝君に会いに望舒旅館に来られた際に連れていた少女だ。その手にあるのは……。

 

 

「何者だ。何故勝手に絶雲の間に入った?……待て。それは、禁忌滅却の札か?」

 

「私は旅人の蛍。こちらはパイモン。これを持って、ここを訪れるように言われた。……貴方たちが、三眼五顕仙人でしょうか」

 

「如何にも。我は三眼五顕仙人、削月築陽真君だ」

 

「同じく。留雲借風真君である」

 

「理水畳山真君だ。我等に用があったというのなら、間のいいことだ」

 

「護法夜叉大将の魈だ。我等にいったい何用だ」

 

 

 そう問うと、旅人は信じられない事件の話を述べた。迎仙儀式においてヘウリア様が乱心し、帝君を襲撃し激しい戦いの末に殺害したというのだ。ヘウリア様とは我等もよく知った仲だ。あの方は数少ない帝君が気兼ねなく話せる仲だった。信じられるわけがなかった。

 

 

「馬鹿な。ヘウリアが帝君を殺したなどと……何かの間違いだ!」

 

「事実だとすれば言語道断、実に嘆かわしい……!璃月七星よ、傍にいながらヘウリアを止めることもできなかったというのか……!」

 

「まあ待て、削月の。ヘウリアに限って、帝君を襲うなどありえない。だとするならば強制的に乱心されたか、もしくは……」

 

「……偽物、か。偶然とは思えないな」

 

 

 冷静な留雲の言う通りだ。ヘウリア様は心の強さにも秀でている、乱心したとしても他者の手が及んだゆえだろう。それよりもしっくりくるのが、偽物が帝君を襲ったというものだ。それも、帝君が偽物だと見抜けず、そして帝君を倒しうる本物に匹敵する実力を有する偽物が。

 

 

「待て。旅人よ。何故お前たちは我等に接触した?貴重な禁忌滅却の札まで携えて……」

 

「私達は犯人の一味として璃月七星に追われていて、仙人たちにだけでも事実を知ってもらうようにと、旅の仲間の白亜……真白空我真君が、提案してきたの。彼女は、ヘウリアから生まれた仙人で、乱心したヘウリアを止めなければならないと言っていた」

 

「「「「なに!?」」」」

 

「お、おう。どうしたんだ?そんな揃って驚かれるとびっくりするぞ……」

 

 

 驚くに決まっている。真白空我真君とは、白亜とは。前者はヘウリア様が立場に囚われずに活動するための姿の名で、後者は人間に溶け込む際に名乗る、帰終様より与えられた名。望舒旅館にヘウリア様に連れられて旅人たちが来ていたことを考えると、旅人の仲間として一緒に旅していたのは事実だ。ヘウリア様から生まれた仙人と言うのは嘘なのだろうが、旅人たちに自分の正体を伝えたくなかったのだろうか。それを考えるに……。

 

 

「……わかった。帝君を襲撃したヘウリア様は偽物に違いない。恐らく愚人衆(ファデュイ)の【博士】が関わっている。ヘウリア様も危険視していた男だ」

 

「え。【博士】ってファトゥス第二位の!?で、でも……」

 

「ファデュイはむしろ、白亜のお願いを聞いて私達を匿ってくれた。ファトゥス第十一位の【公子】って言うんだけど……」

 

「なんだと?では、愚人衆(ファデュイ)の仕業ではないのか?」

 

「いや、理水。愚人衆(ファデュイ)が一枚岩ではない可能性もある、警戒を解く理由にはならないぞ」

 

「10年前に蘇ったシトリウスはアビス教団の手の物だと聞いたぞ。そちらの可能性も高い」

 

「仙衆夜叉が蘇った可能性も高いというのに帝君の死に、ヘウリアの偽物とは……」

 

「なんで、ヘウリアは偽物だとわかるの?」

 

「何故って決まっている。それは……「な、なあ。仙衆夜叉が蘇ったってなんだよ?」」

 

 

 危ない。恐らくヘウリア様が偽名を使っている理由を察せなかったのだろう、削月の言葉を割り込む様にそう疑問符を浮かべるパイモンだが、無理もないか。数日前に璃月を訪れたというのなら仙衆夜叉を知らなくても無理もない。

 

 

「仙衆夜叉とは、かつて璃月に満ちていた瘴気や魔神戦争に敗北した魔神の残骸の発する怨嗟から生まれる妖魔を滅するべく岩王帝君に召集された夜叉の中でも、特に強かった五人を指す言葉だ。……もっとも、我以外は既に死んでいるがな」

 

「それは……悪いことを聞いちゃったぞ……」

 

「気にするな。問題は、ヘウリア様の偽物だけでなく、蘇った仙衆夜叉が璃月各地で目撃されているということだ」

 

「我等に接触もないということは、恐らく敵の手に落ちている可能性が高いな」

 

「そしてその場合は、なにかしら理由があって蘇らせられたということとなる」

 

「帝君亡き今、対処できるのは我等しかいない。だが、ヘウリアの偽物についても調べたい。……時に、真白空我真君は今どこに?」

 

「氷を使う槍使いの女性に襲撃されて、時間がないからって私達を送り出してくれたの」

 

「氷、槍使い……恐らくその女は、我が弟子の一人、申鶴だろう。あやつめ、偽物だと思い込んで襲ったのだろうが……」

 

 

 状況は混沌と化している。早とちりしてもおかしくないほどに。まともに動けるのは我等だけか……。すると、借風が嘴を開いた。

 

 

「すまない旅人。私*2は申鶴と合流して璃月港にて帝君の死の真相を調べることとする。他の三人と共に、仙衆夜叉の噂の是非を探ってほしい。削月、理水、魈。任せられるか?」

 

「うむ。我等の中ではお前が最も璃月港に潜める。任せたぞ借風の」

 

「仙衆夜叉のことは我等に任せるがいい。ああ、璃月七星を責めてもよいぞ」

 

「歌塵に協力を仰いでもいいだろう。彼奴なら、事件の顛末を見ていた可能性が高い」

 

「うむ。では先に行くぞ!」

 

 

 そう言って飛び立つ借風を見送り、我は旅人を抱え上げた。

 

 

「え、な、なに!?」

 

「時間がない。仙衆夜叉の目撃例があった場所に急ぐ。我は旅人を軽策荘に送り届けた後、明蘊町を目指す。四本腕となるとアイツしかありえない……我以外太刀打ちできないだろう。理水と削月は璃沙郊と遺瓏埠を頼む。調査が終われば塩ヶ宮の外れにて合流しよう」

 

「空を飛べる我は遺瓏埠を目指すべきだな。削月の、璃沙郊を頼んだぞ」

 

「承知した。理水が焼き鳥にならないことを祈ろう」

 

「ぱ、パイモン!おいで!」

 

 

 慌ててパイモンに呼びかけて胸に抱えた旅人を連れ、ヘウリア様が神速だと称した速さで軽策荘を目指す。我の脚が神速などとは恐れ多い……帝君やヘウリア様と同じ、神の名に冠するなどと。旅人とパイモンを軽策荘に送り届け、止まらずに河を超え山を越えて明蘊町を訪れると、四本の雷がヒルチャールたちを撃ち抜いているところだった。

 

 

「……やはり、お前か」

 

 

 槍を握る手が震えるのがわかる。ヒルチャールの亡骸の中心にて荒い息を上げていた四本腕の益荒男が、こちらに振り返る。夜叉の面を被った紫色の逆立つ髪が、風になびいた。

 

 

「我は……我は、誰だ。お前は……誰だ」

 

「名を忘れたか……我は金鵬大将、魈だ。そしてお前は……騰蛇大元帥、浮舎だ」

 

 

 認めたくはない。ずっと、その行方を追っていた。唯一最期を確認できていない仙衆夜叉だった。層岩巨淵にて名をはせた「無名の夜叉」がそうなのだと半ば確信していたが……こんな形で再開したくはなかった。自我が残っていれば、とは思ったがこれは……業瘴に飲まれている。開放してやることこそがせめてもの……。

 

 

「……ついにお前を超えられなかった。今日こそは、お前を超える……!」

 

「ぐぐぐぅ……アァァアアアアア!!!」

 

 

 四本の手に握られるのは、余波だけで周りの岩が砕けていくほどの雷元素の槍。浮舎は武器など滅多に使わない、その鍛え抜かれた肉体こそが最大の武器だ。四本の槍を握り、目にも留まらぬ速度で駆け抜けてくる浮舎に、我は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれよあれよと言う間に、知らないところまで来ちゃったわけだけど。軽策荘だっけ。マップによれば塩ヶ宮の近くみたい?」

 

「仙衆夜叉を捜せって言われたけど、どういうやつがいるのか聞いてないんだぞ……」

 

 

 見るからに、清らかな水と段々畑が広がるのどかな村だ。なんというか、田舎って感じがする。少し回ってみると、帝君の死はまだ伝わってないらしく迎仙儀式を祝おうという話が各所で聞かれた。

 

 

「うーん、手掛かりがないことにはなあ……仙衆夜叉って聞けば伝わるかな?」

 

「無理だと思うぞ……白亜は何か知ってるのかなあ」

 

「今、白亜って言った?」

 

 

 段々畑を見下ろせる崖に座って休憩していると、そんな言葉と共に誰かが近づいてきた。青い角?と青く水を思わせる衣装が特徴の少女だった。

 

 

「え、言ったけど……白亜の知り合いか?」

 

「あなたたちこそ、あの人の知り合いなの?そっか……うーん、残念だな……」

 

「なにがだ?」

 

 

 パイモンが応答している間に立ち上がり、体勢を整える。いやな予感がした。なんだろうか、無邪気なんだけど……スイッチが、切り替わる様な……。

 

 

「その名を聞かなかったらずっとここの水と戯れることができたのに。――――白亜を知っているなら、捕まえないと」

 

「パイモン、避けて!」

 

「え……?」

 

 

 パイモンの手を引いて、咄嗟にもう片方の手に風元素を圧縮してそれを防ぎ、弾く。水の刃。躊躇いなくパイモンの四肢を切断しようとしていた。見れば、無邪気さを称えていたその瞳は濁った水の様に淀んでいる。

 

 

「命令なの……白亜を捕らえろって、あの人の、命令なの……!」

 

「パイモン、ここのみんなに逃げるように伝えて」

 

 

 強さはドゥリン・ダスタリオには遠く及ばないけど、軽策荘の水を集束させていくその力は、魔神のそれに匹敵する。これを相手にみんなを守りながら戦うのは不可能だ。

 

 

「た、旅人はどうするんだよ!?」

 

「なんとか、止めてみる」

 

「水夜叉……螺巻大将、伐難……参る」

*1
実際に異変が起こったのでこれ幸いと、モラクスが璃月港に近づかない様にあらかじめ指示していた

*2
本来は「妾」だが身内以外と話すときは「私」




仙衆夜叉が蘇ってました。実は璃月編の最初の方にフラグになる様な話は出てたりします。気づかれていたかは定かではないけど。

仙人たちの認識は「真白空我真君→本物。帝君を襲ったヘウリア→偽物!」で確定しました。あっちでこっちで認識が変わるから書く方としてもこんがらがってめんどうです。おのれヘウリア!お前のせいでめちゃくちゃだ!

次回は中ボス、伐難戦。旅人(風・岩)は単騎で勝てるのか。

以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

仙人と夜叉たちで一番好きなのは?

  • 削月築陽真君
  • 降魔大聖・魈
  • 留雲借風真君
  • 理水畳山真君
  • 歌塵浪市真君
  • 掇星攫辰天君
  • 移霄導天真君
  • 銅雀
  • 騰蛇大元帥・浮舎
  • 火鼠大将・応達
  • 螺巻大将・伐難
  • 心猿大将・弥怒
  • 浮錦
  • 白馬の仙人・兹白
  • 真白空我真君
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。