今回は本編、ではなく、前回の.5話みたいな話になります。水夜叉のお話。楽しんでいただけたら幸いです。
揺蕩う様な感覚の中で、懐かしい夢を見た。誰よりも頼りになる兄者と、気兼ねなく話せる仲間達。同士である彼等とは別に、忠誠を預ける三人もいた。
我等夜叉を支配していた魔神の手から救い、招集した貴金の魔神モラクス様*1。塵の魔神ハーゲントゥスこと帰終様。そして、塩の魔神ヘウリア様……白亜だ。特に白亜とは、彼女の鍛錬の相手として同じ時を共にし、友と呼んでくれた。失礼ながら神とは思えない言動に絆され、我等夜叉全員が彼女に自然と気を許していた。
――――「最初に言っておく!私はかーなーりっ、弱いので!手加減をお願いしまっす!!」
――――「見てください伐難!ほら、ほら!塩で私そっくりの分身作れたんですよ!貴女の水像を参考にしたんですよ!褒めてください!あ、ほらほら!この初めて作った塩の刃で削った貴女のフィギュア……もとい、木彫りの像ですよ!拙いものですが、もらってくれると嬉しいです!」
そう満面の笑みで渡された私そっくりの木彫りの像は最高の宝物だった。特に自分は、水を自在に造形する能力からコツを教授したため、モラクス様と同じ師匠と思われたようで「ヘウリア様」ではなく帰終様より名付けられたという「白亜」と呼ぶようにと言われたため、他の皆より仲が良かったと自負している。帰終様にとっての歌塵浪市真君のような、白亜の付き人として民に認められたことは誇りに思う。
白亜は気づいていなかったが、彼女が傍にいるだけで私達夜叉を蝕む業障を浄化してくれるので、居心地が良かったともいえる。浮舎の兄者たちと今日は誰が白亜の傍に行くか、と武器を手に争っていたところを見られて、白亜から
彼女の死に際に立ち会えなかったのは、生涯通しての不覚だ。あの人が、居場所を求めてないことは何となく察していた。何事に対してもどこか他人事の様に話す彼女の眼は、此処ではないどこかを見ていたのだ。だから、彼女が死に場所を求めていたなんて気づきもしなかった。気づけたのは師であるモラクス様か、顔も忘れてしまった
その後悔もあって、白亜がいなくなった途端に業障に飲まれてしまった応達に続いて自らも業障に飲まれたのは必然的だった。私を止めようとした弥怒を道連れにしてしまったのは、本当に申し訳ないが……それでも私は、白亜のもとに行きたかったのだ。
―――――「鎮魂歌、ですか?」
―――――「ええ。夜叉の魂には帰る場所がないのよ。死した夜叉や兵士たちに、せめて魂の平穏を……と。下手だったかしら」
―――――「いいえ、そんなことありませんよ。ああ、そうか。だから……安心してください、伐難。いずれ、死してなお安息を辿れぬ魂を成仏させる術を有する者たちが現れます。彼らの手で、彷徨える魂も往生することができるでしょう。あ、その顔。信じていませんね?なら予言しましょう、その者たちの名を。文字通りの「往生堂」です。賭けてもいいですよ?」
そう語った顔は、白亜には珍しく確固たる自信に満ちていた。なんで自分のこと以外となると、あんなに自信満々になれたのだろうか。その疑問は終ぞ尋ねることは叶わなかった。いずれ私の魂も、往生させてくれるというのだろうか。……ああ、だけど。その往生堂の者たちの手でも。貴女を死なせてしまった私の未練は、消えることはないと思うのだ。
そうして幾千年。やはりというべきか成仏できず、自我も持たない魂として彷徨っていたある日のこと。何かに引き寄せられる感覚と共に、どんどん意識が浮上していく。その先に遭ったのは、仮面を付けた邪悪な気配の男が率いた一団と、弥怒と相討ちになった際に遺したであろう、木彫りの像だった。それが下から燃えていく様を見せられて、必死の思いで手を伸ばせば、私の体が実体化し水流が消火する。
「ふむ。そうか、水夜叉。お前は私と同じものに執着している様だ……やはり燃やして正解だったな、魂を呼び出すには未練を刺激するのが一番だ」
そう語る、今の私の主は……まるで玩具を壊す幼い子供のような、見るに堪えない醜悪な笑みを浮かべていた。
仙衆夜叉の脳まで焼いてるヘウリア。退魔の効果があるからまあ必然である。
以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
伐難の白亜への感情は……
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友情!
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敬意!
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友愛!
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執着!
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それは愛じゃよ