お待たせしました、今回は胡桃&帰終コンビVS浮舎です。楽しんでいただけたら幸いです。
それは、旅人一行が北国銀行に身を寄せていた頃。往生堂には、千岩軍による立ち入り調査が行われていた。
「なんで千岩軍が往生堂のガサ入れしてるんですかっ!!!」
「ここの従業員である白亜に七星から逮捕状が出ている。帝君襲撃の共犯の疑いだ。白亜に関わるものは押収させてもらう」
「なんでっ、ヘウリアと共謀している容疑がうちの従業員の白亜姉にかかってるんですか!!!」
「うるさいぞ。おい、誰かつまみ出せ」
胡桃、怒髪天。しかし怒りはすれど相手は七星、璃月の最高権力だ。ただの葬儀屋の堂主でしかない自分にはどうしようもなかった。普段より数倍はピリピリしている千岩軍に往生堂から追い出され、ぷんすこ怒りながら石畳を歩く胡桃。
「あーもう、白亜姉が帰って来てなくて逆によかったけど……こういうとき頼りになる鍾離先生も今日に限ってどっか行ってるし、どうすりゃいいのさ!!」
『大変だねえ』
そんな他人事の如くぽわぽわと胡桃に応えるのは、往生堂の堂主である胡桃にしか見ることができない半透明の少女。つい先刻前に知り合ったばかりの幽霊は、事の重大さを理解してないのか能天気であり、胡桃はぷちんと何かが切れた音がした。
「ずっと一緒にいて聞いてたでしょ、なんとかならないのっ!」
『幽霊に意見を求められても困るなあ。やましいことがないなら、このままでいいんじゃない?』
「やましいことって……いやさ、堂主としての私は、なんもやましいことはないよ?でも、小さい頃からずっと一緒にいる鍾離さんや白亜姉は、絶対私に何か隠してるし……もし、私が止められなかったせいで2人に迷惑がかかるのは、やだよ……」
寂しげにそう俯く胡桃に、少女は腕を組んで『むむむ……』と考える。自分の目から見てもふざけた言動ながらいい子な根っこが隠しきれてない胡桃がこんなに寂しそうにしているのに、友人二人は何してんだと怒りたいし、なにじゃれあいで民の顔を曇らせているのかについては小一時間どころか半日は説教したい。だが今の自分は、ヘウリアの権能で顕現できているだけの亡霊だ。ではどうすればいいか。
『……ねえ、私が白亜とモ……鍾離の古い友人だって言ったら、信じる?』
「え……?白亜姉と、鍾離さんの……?たしかに、似たような雰囲気だなとは思ってたけど……」
『じゃあ、鍾離がからくりみたいなものを持っていたのを、知らないかな?“浮世の錠”って言うんだけど』
「鍾離さんが休日のたびに取り出しては眺めていたアレのことかな?」
『あと、未だにあの二人は夫婦じゃない、って言い張ってるんじゃない?』
「それはそう!白亜姉は鍾離さんに重すぎる信頼を向けてるし、鍾離さんは白亜さんが他の誰かと楽しそうに話していると露骨に不満げにするし!巷ではおしどり夫婦って言われてるぐらい、どこからどう見ても夫婦にしか見えないのに!」
『ふふっ、変わらないなあ』
「本当に友達なんだ……」
正直に言えば、思うところはある。自分が先にモラクスと一緒にいたのだとか、自分はモラクスに愛されている自覚もあるし、白亜が自分とモラクスの関係を応援していたのも知っている。でも、それでも。一番近くで見ていたからわかるのだ、白亜を支えられるのはモラクスであるし、モラクスの隣に立てるのは白亜なのだと。
『友人二人の助けになりたいんだけど、何か方法はないかな?』
「んー、じゃあ。私の体、使います?なんか私、蚊帳の外みたいだし?」
『え。いやいや、できるの?じゃなくて、いいの?私みたいな見ず知らずの幽霊に体を渡すなんて、私が悪霊で悪用なんてされたりしたら………』
「あはは。そんな心配する悪霊なんていないよー。……ってのは冗談だけど。多分、私じゃ二人の助けになれないから。だから、お願い。あの二人の助けになれるなら、私を使って。霊に体を貸すだなんて、本当はやったらいけないんだけど……多分、二人のためならご先祖様たちも許してくれるはず」
そう笑う胡桃に、同じなのかと納得してしまう。本当に、あの二人は一番近くにいる私達に気を遣わせているなんて思ってないのだろうな。
『……ねえ、名前。聞いてもいいかな?』
「往生堂77代目堂主、
『胡桃、いい名前。じゃあ
そうして二人は重なり、共に問題児たちのために戦う道を選んだ。
「お前は、誰だ……!」
雷夜叉……浮舎が両手二本ずつで放った雷の槍。雷速で放たれたそれを胡桃は捉えることはできず、直撃。しかし障壁に阻まれ、衝撃で怯みこそすれど霧散したそれに冷や汗を流す。隣の帰終もビビっていた。モラクスの加護であった。
『だ、大丈夫!?桃ちゃん!?』
「あぶなっ、これなかったら死んでたぞ!」
「むっ……!」
自身の雷撃の直撃を受けても元気に文句を垂れる胡桃に困惑し、接近して右の二本の腕で拳を握り、力の限り顔面目掛けて振り抜く浮舎。しかし、胡桃は驚異的な体の柔らかさで脚を大きく開いて腰を下げることで回避していた。よく見れば、代わりに浮舎に打ち抜かれた帰終が胡桃の頭を押さえて抑え込んでいた。
『うわあっ、貫かれたー!……あ、私幽霊だったや!』
「いきなり押されてびっくりしたや!といやっ!」
「ぐうっ…!?」
そのままブレイクダンスの様に回転した胡桃。浮舎の軸足を揺らして体勢を崩させながら立ち上がり、護摩の杖を両手で振りかぶって顎をかち上げる。これには浮舎も引っ繰り返り、すぐに立ち上がって距離を取る。
「なんだろ、いつもより体の調子がいいや!帰終さん、なんかした?」
『いや、知らないけど……あ、でも!桃ちゃん、炎元素なんだよね?なら、白亜から教えられた私の能力の応用もできるかも…!』
「伯陽、お前はどこに…!」
「散ッ!」
帰終がなにかを思いついたが知ったことかと言わんばかりに突撃してくる浮舎に、炎の蝶の翅を背中に展開して紅蓮の炎元素を纏った槍の穂先で薙ぎ払う胡桃。しかし浮舎は下の二本腕に雷元素を纏って防御して過負荷反応で爆裂し、その攻防の一瞬で視界が隠れた隙を突いて死角へ移動していたのだが……生憎、今の胡桃に死角はない。
『右に炎を!』
「そいさ!」
「っ!?」
ドゴォオオオオォンッ!!
俯瞰して動きを見ていた帰終が右手を振るいながら告げ、胡桃が躊躇することなく炎元素を纏った護摩の杖を右から突撃してくる浮舎に振るった瞬間。まだ当たらない距離で振るわれたにも関わらず、浮舎と胡桃の間の虚空に爆発が生じて吹き飛ぶ両者。胡桃は護摩の杖を地面に突き刺してグルグル横に回転して勢いを殺して着地。浮舎は対応できずひっくり返りゴロゴロと転がって背中から岩肌に叩きつけられようやく止まった。
「眼が回るぅ~…なに、今の?」
『私の力と炎元素があれば粉塵爆発で火力出せるんじゃない?みたいなことを前に白亜に言われて……思ったより威力出てびっくりしてる』
「爆発ってテイワットでもメジャーな死因のひとつなんだぜーい!侮ることなかりけり!主に宝盗団だけど!でも私も吹っ飛ぶから小規模にできる?」
『まっかせて。力の調整……白亜曰くリソース管理?は私が教えたんだから。ぶっつけ本番だけど、頑張るよ!』
瞬間、雷の槍を二本ずつの手に握り、飛び掛かる浮舎。しかし、近づいた途端に帰終がばら撒いた「塵」が雷元素に反応したのか引火、小爆発を起こしてその手から霧散させ、無防備となった腹部に胡桃の護摩の杖が突き刺さる。
『そこお!』
「ほいさ!」
『えーと、白亜はなんて言ってたっけ……オラオラ無駄無駄……ほらほら……アリアリ……ボラボラ……わーなびぃ……、ドララァ?』
「何言ってんの帰終さん!?」
さらに帰終が次々と手をかざしたところに合わせて、炎元素を纏った護摩の杖を押し付けて片っ端から起爆していく胡桃。しかし、どうやらなにかを迷っているのか、どこか上の空な帰終。白亜に入れ知恵されたものに思いをはせている様で、勢いが切れてできた隙に、雷の槍は相性が悪いと判断したのか浮舎の四つの拳が次々と襲い掛かり、胡桃を守っている障壁が悲鳴を上げて罅割れていく。
「ちょっ、たんま!本当にタンマ!帰終さん!?ねえ帰終さん!?あ、やば……」
「往生堂の……!」
ついには完全に粉砕され、その瞬間に二組の両手の間に雷元素が発生し、過負荷反応と共に大爆発。たまらず魈が瀕死の体に鞭打って駆け寄ろうとするも、爆風が晴れたそこに胡桃の姿はなかった。
「そんな、我のせいで……」
「その光明……伯陽、そこにいるのか……?」
幻覚に囚われているらしき浮舎が、打ちひしがれて膝をついた魈へと矛先を変え、雷の槍を握る。そして振りかざしたそれの周囲で何かが煌めいて。
「むっ?……っ!?」
大爆発。雷の槍を握っていた右の上腕を中心に爆ぜて右の肩部が吹き飛び、傷口を押さえてふら付く浮舎の背後に、炎元素の蝶の翅が広がったかと思えば、その仮面に覆われた顔面に蹴りが突き刺さり、同時に起爆。頭からひっくり返る様に吹き飛んで、なんとか体勢を立て直した浮舎の視線の先。今の今まで浮舎が立っていた、魈の傍に。何か細かい粒子が崩れるようにして、少々黒焦げながら無事な姿の胡桃が姿を現した。
「テッテテー!騙されましたー!」
『白亜の塩の花弁の見様見真似だけど、一回だけどんな攻撃も防ぐ技。しかも、広がった塵の角度で光を操作して透明になれるおまけつき!我ながら発明の才能が怖い!土壇場で思い付いてよかったね、桃ちゃん』
「それは言わない方がかっこよかったかな!さあーて、燎原の蝶!!!いっくぞお!」
背中に炎元素の蝶の翅を展開し、飛び出す胡桃。浮舎は仮面が砕けた顔と、失った右腕からどす黒い霧を漏らしながらも迎撃のために拳を掲げ、その全てが、胡桃の槍の乱打と同時に発生する爆発により迎撃され、ついには胡桃側からの連撃として次々と浮舎の巨体に叩き込まれていく。
「胡桃の「ふ」はおふざけの「ふ」!胡桃の「た」はぐーたらの「た」!胡桃の「お」はおどろけ~の「お」!……え、面白くない?そんなー。じゃあまじめに、てやてやてやてやてやてや!!!」
『白亜から教わった掛け声、どれもしっくりこないから……こほん。ちりりぃやぁあああああああっ!!!』
まるで演舞が如き型にはまった胡桃の連撃に合わせて、技術もへたっくれもなく両手の拳をただただ振り回しながら次々と「塵」を付与、次々と爆発させるラッシュを叩き込んでいく帰終。この場に白亜がいたら鍾離……もとい、勝利のBGMが脳内で流れていたであろう連打は、ついには浮舎の巨体を持ち上げ、胡桃自身の体も次々と生じる爆発で浮いて、天高く打ち上げていく。
暴走しているとはいえど最強と謳われた夜叉の敗北。これは、思いもしない両者の相性による結果だった。葬儀屋と幽霊。炎元素と塵を操る能力。胡桃の傷を負えば負うほど火力が上がるスタイルと必ず余波でダメージを受ける粉塵爆発。これにより理論値最大級の火力を叩き出したそのラッシュは、護摩の杖を手放しどこからか引っ張ってきた霊魂(?)の尻尾(?)を掴んで振りかぶった胡桃の一撃で、フィニッシュとなった。
「ぶっとべええ!!!」
『ちりりりぃりゃぁあああ!!!』
「ぐっ、ぐぅおおおおおおっ!?伯陽ッ、我の仲間が、迎えに……!?」
そして胡桃の幽霊ホームランにより天高く打ち上げられた浮舎は、最後の最期に帰終がありったけを籠めた塵に引火して大爆発を起こし、青空に散った。しかしその代償も軽くはなく。自身もかなりの自傷ダメージを受けた胡桃の体力も限界で、その身体が落ちていく。
「あ、やばあ……さすがに、疲れた……え。わああ!桃ちゃん!?起きて起きて!?私、着地の方法知らないよお!?」
「……!」
いきなり肉体の権利を渡され、狼狽えながら落ちていく帰終。ひやひやしながらもそれを見ていた岩王帝君。思わず自分が死んでいることも忘れて飛び出そうとして。その直前に、魈が高速で空に舞い上がって胡桃の体を受け止めて、着地。鍾離はそっと元居た場所に戻り、魈は自分に抱かれて委縮している帰終in胡桃に、複雑そうな表情を浮かべて地面に降ろした。
「あ、えっと……降魔大聖、ありがとう……」
「……かつて、ヘウリア様が往生堂は我等夜叉の救いになるとおっしゃられてたが、まことであったか……いや。それよりも、ハーゲントゥス様……ですよね?何故貴女が……」
「帰終」
「……?」
「私のことはハーゲントゥスじゃなくて帰終って呼んでってみんなに言ったよね!?」
「あ、はい。帰終様……」
「よろしい」
ばつが悪そうに呼び方を訂正した魈に満足げな帰終の相変わらずな姿に、茂みの中から鍾離は苦笑するのだった。
スタンド的な能力を言うのなら、粉塵爆発。手がかざした場所に塵を設置し、それを起爆することで瞬間火力を引き出す、みたいな感じです。胡桃との相性最強です。置いてけぼりコンビともいう。
色んな事がいろんな視点で起こっててわかりにくいだろうから時系列にすると、
帝君襲撃、胡桃のもとに帰終が現れる→甘雨気絶→白亜VSタルタル→白亜が蛍と合流→甘雨起床→往生堂立ち入り調査→タルタル、北国銀行に到着→鍾離タコと奮闘中→申鶴襲撃→鍾離と帰終再会→旅人、仙人と邂逅→ほぼ同時刻に各地で夜叉戦。こんな感じ。オムニバスみたいなことになっているとはえわかりにくくてすまない。
以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
残りの炎・岩夜叉は……
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ちゃんと描いてほしい
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あとから結果だけ報告で
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閑雲視点だけでも
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どちらも閑雲視点もぜひ
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侍「おや、風が泣いているでござるな…」