今回はそんな本来はビジュアル不明のヘウリアの、さらに新たな姿(?)が登場。モラクス視点でお送りします。楽しんでいただけたら幸いです。
魈についていった桃嬢の体を借りた帰終と別れ、璃月の喧騒を目にしながら璃月港を目指す。俺の目にしたその全ての民が嘆いていた。突然の岩王帝君の死、それを齎した塩華女帝の裏切り。それを知って嘆き悲しまない者はいなかった。信じない者もいた。俺は、「岩王帝君」がいるから人の時代は訪れぬのだと思っていた。だがしかし、そうではない。そうではないのだ。たしかに岩王帝君に依存する者も多くいる。神や仙人の手から離れて人だけで生きるべきだとは今でも思う。だが、全ての国を回ったヘウリアは語っていた。
――――「神はいなくとも民は生きていける。それはそうでしょう。モンドとかまさにそうですね。バルバトスが放任しているので、「自由」を得た人々がしっかりしなければならない。そんな国です。ですが、神と言うのは民にとっては道標であり、なくては人は間違ってしまうものです。モンドの貴族への弾圧はひどいものです。貴族の末裔だからと罪などないのにね?これはバルバトスが与えた「自由」の罪であると言えるでしょう」
――――「雷電将軍が支配する稲妻はその真逆を行く国でしょう。民は雷電将軍の「武」に絶対的な信頼を置き、雷電将軍さえあれば「永遠」の栄光が約束されるのだと信じている。特に昨今は目狩り令により願いすら徴収されている。しかし、その支配にも抗う者たちもいる。雷電将軍が求める「永遠」とは、人そのものであると私は思います。私は、そんな彼らの味方でありたい」
――――「スメールは神を必要としない国でした。いえ、正確には神に対してあまりにも重すぎる期待を向けていた国、が正しいでしょうか。期待に応えぬ神などいらない、だから幽閉する。モラクスは優秀すぎるからそうなることはないでしょうけど、貴方が目指す「神のいらない国」の体現と言えるかもしれません。「知恵」さえあれば神などいらない、はあまりにも傲慢ですけどね」
――――「フォンテーヌは、神が軽視されています。水神がどんなに努力しようとも、人々にとってはエンターテイナーにすぎないのです。これは500年間もの間、人に近すぎた弊害だと思います。そんな長いこと人間臭すぎる姿を見せれば誰も彼女を神だとは思わないでしょう。そして「正義」という毒に酔いしれて腐ってしまった国とも言えますね。あ、モラクス。貴方も人のことは言えませんよ?貴方もその本来の姿を民に見せれば呆れた視線を向けられると思います。え、私も人のこと言えない?私の場合、塩華女帝像が無辜の偶像過ぎてですね……」
――――「ナタは素晴らしい国です。神が先頭を歩いて灯火として人々を率いて災厄と長年戦い続けている。「戦争」の国でありながら存続し続けるのはひとえに神が常に道標になり続けたからでしょう。“反魂の儀”により死しても帰ってこれますが、死の恐怖と言うのは闇深き物。そんな闇を照らす炎があり続ける限り、彼等は負けることはありません。……その炎が炎神の存在を犠牲にしている点を除けば、ですが」
――――「スネージナヤは「慈愛」に満ちた国です。他の国とは比べ物にならないほど異種族が混在しさらには物資も不足し寒さに苦しむ国でありながら、女王の絶対的な愛により人々は統治されている。逸れ者や腹黒い者もいますが、露見されれば許しはしない絶対王政。稲妻やナタとはまた別ベクトルで神ありきの国ですね」
――――「そして璃月は、神と仙人の民が力を合わせて築き上げた国、私の自慢です。岩王帝君の存在は確かに民を盲目にするかもしれません。「契約」ですから貴方は璃月を導かないといけない。だけども、貴方が神の座を降りたいと言うのなら仕方ないです。心配なら試しましょうか。私も手伝いますよ。責任は私にもありますからね」
ああ、そう言っていた。あいつに背を押された事実から正しいことだと思っていたが……果たして、本当にそうなのか。揺らぎつつ、璃月港に戻った。喧噪の中、用意するのは送仙儀式。野生の瑠璃百合を摘み、永生香を用意する。あとは歌塵浪市に譲った帰終の「洗塵の鈴」を受け取れば準備は終わる。そうすれば岩王帝君の葬式が滞りなく行われ、璃月は神を喪い、俺は凡人となる。……そのはずなのに。
「………ああ、そうか。俺は……この手から離れるのを、惜しんでいるのか」
例えば俺一人で。例えば帰終を失った俺と生き残った仙人たちだけで。璃月を作っていたのならば。迷いはあれど、民のことを思い手放して凡人となることを選んだだろう。だが俺にとってこの土地は、ヘウリアと共に築き、ヘウリアと共に繫栄させ、ヘウリアと共に守り抜いてきた居場所。その証左だ。ああ、そうだな。俺は、ヘウリアを手放す気になれないらしい。
そう茶を飲んで休みながら再認識していると。旅人を見かけた。今は白亜の仲間として追われている身であるはずの旅人は、先刻回収された俺のダミーの遺体が奪われないか心配で駆け付けた様だ。黄金屋に運ばれたと伝えて同行すると、各地で討伐されたはずの四人の夜叉の偽物が突如璃月港に現れていた。
明らかにおかしい。璃月港に先刻まで邪気の一切を感じなかった。それが、本当に今この瞬間突如として璃月港の中心に現れた。しかも自我すら奪われた人形であるらしい彼らは破壊活動を始め、甘雨が率いる仙岩軍が駆け付ける。偽物とはいえ、璃月を守る仙衆夜叉に璃月港を破壊させるとはなんたる侮辱だろうか。それを理解しているのだろう、甘雨の形相も必死だ。出れば正体がバレると俺が手をこまねいているうちに旅人と【公子】、さらには「白亜」まで参戦し、乱戦となった。……この「白亜」はそうか、俺にも黙っていたという隠し札か。
なんたる無様か。死んだことになってさえなければすぐにでもモラクスとしての姿に変わり、駆け付けるというのに。守るべき居場所が破壊されているというのに、戦うこともできぬとは口惜しい。甘雨は「白亜」を見て苦し気な顔を浮かべるも、今は制圧の方が優先すべきと考えたのだろう、すぐ戦闘に戻った。
紫電が迸り、その全てが「白亜」の放った矢が広がって展開された塩の盾で防がれ霧散となり、突進しようとした浮舎に旅人の放った巨岩が激突。その混乱を突いて水の刃を手にした【公子】が飛び込んでその長い脚で弥怒と伐難を蹴り飛ばし、応達が形成しようとしていた火球に水の刃をぶつけて蒸発、水蒸気が周囲に広がり、そこに甘雨の冷気を纏った矢が叩き込まれて水蒸気を凍結させ質量で押し潰す。
初めての共闘にしては見事と言わざるを得ない。だがなんだ。この、胸騒ぎは。
復活した仙衆夜叉。十中八九、かつてデミ・オロバシを率いて璃月港を襲った【博士】の仕業だろう。いきなり出現したのも、かつて急襲した際に使った空間移動の技術を用いたのだろうか。浮舎が桃嬢と帰終に倒されたのは確認している。旅人の言を信じるなら他の夜叉もそうだろう。それを復活させ璃月港で暴れさせる、何故だ。そう、思っていた時だった。璃月港を見下ろせる、海の傍の崖の上にその姿を見たのは。
――――血の気すら失った死体の様に白い肌には黒い血脈の様な罅が走り。
――――常に綺麗に整えられていたはずが乱雑に伸びて黒く染まった幽鬼を思わせる長髪が風になびいて。
――――夜叉の面か稲妻の鬼を思わせる二本の黒い角が額から生えていて。
――――ボロボロに破けた装束から伸びる四肢は肘や膝まで漆黒に染まっていて、鋭い爪が生えている。
――――表情豊かだったその顔は鉄仮面の如く無表情で、赤い瞳の瞳孔や口の中は闇の様に黒く、無感情に。
「黒き、ヘウリア……?」
かつて見た悪夢の姿そのままのそれは、その手に禁忌滅却の札を複数重ねて掲げていた。なに、を……。そこで思い出す。この、黒きヘウリアが。俺達が総出で止めなければならなかったほどの……
「目覚めろ、オセルッ!全部滅ぼせ!全部飲み込め!そうすれば、そう、すればぁ!なにも、失わなくて、すむっ!!」
――――――――――――「【公子】、喜べ。私からのプレゼントだ。お前の責務を果たすがいい」
……破滅願望の持ち主であったことを。ああそうか。仙衆夜叉は、黒きヘウリアに気づかせないための囮か。止めようとしたときには、遅かった。どうやって再現したのかはわからないが禁忌滅却の札は複数集まれば俺に匹敵する力を有しているのは自明の理で。孤雲閣が揺れ、それはまるで噴水の様に海面から飛び出した。
ヘウリアが生前、最期に戦った因縁の相手。渦の魔神オセルが、復活した。
重すぎてめんどくさすぎる本心をようやく自覚したモラクス。原作通りならば同じ道を辿れたかもしれないけど、今の璃月港は今を共に生きているヘウリアと共に作った居場所。手放せるわけがないのだ。ヘウリアの各国の話は実際に旅してみての感想となります。璃月を基準にすると見方が変わるよね。
そんで前回話題に上がって速攻登場。黒きヘウリア。見た目は存在しない例を挙げるとガラテア・オルタかな。黒きヘウリアはモラクスたちの呼称だけど、書いてる身としてはヘウリアオルタと呼んでます。当時のモラクス陣営総出で止めにかかって、応達が発狂し伐難が弥怒を同士討ちに追い込む原因ともなった破滅願望の持ち主です。口調もだいぶ荒い。なんでこうなってるんだろうね?
そしてオセルも復活。まだ送仙儀式の準備すら終わってないっていう超早い段階での登場となりました。ドゥリン・ダスタリオ相手の総力戦だったモンドに負けず劣らずのハードモードです。
以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
黒きヘウリア、第一印象は……
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好き
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怖い
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やべーやつがやべーやつに
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夜叉たちがああなってもしかたない
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ドットーレェ!!!!