今後のために重要となる転換点になる話。楽しんでいただけたら幸いです。
海灯祭が終わって。申鶴もやはり璃月港が落ち着かないらしく閑雲の元に戻り、私は今日も今日とて往生堂で働いていた。ここ一ヶ月ずっと一緒だった申鶴と離れるのは寂しいが、十年も経ったらここを居場所に決めてくれるはずだ。その時は我が家に住ませてあげよう。
「これはなんですか?モラクス」
「お前は気にしてなかったようだが。魔神だとバレないように、言い訳になる品を持ってきた」
そう言って鍾離に差し出された桐の匣を開けると、中には岩元素の菱形の黄金の金型にはめられた「神の目」があった。いや、違う。「人生の最も険しい分岐点にて、その渇望が極致となれば、神の視線は降りる。それが神の目」とも呼ばれる神の目は「原神」と呼ばれる神になれる資質を持つ人間が決意や覚悟を示した時に、その手に現れるという逸品だ。こんな風に渡されることもなければ、既に魔神である私に現れることは、ほぼありえない。いや、未来だと雷神が作った人形の一人が風元素の神の目を手にしていたけど。私って今どういう扱いになるんだろ。魔神でないとしても、モラクスの人形……つまり、雷電影にとっての雷電将軍みたいなものになるのだろうか?
「これは、神の目を模したガラス玉ですね?」
「ほう?よくわかったな?これを持っていれば、お前の塩を操る力も、岩元素の延長として認識されるはずだ」
「ありがたくいただきますね」
受け取り、未来の
「なにか失礼なことを考えたな?」
「ヴェッ、マリモ!*1」
「ふざけてるのか?」
「ふざけました。あいたっ!?」
モラクスにデコピンされた。なんか煙出てる。痛い。
「ゲームだと、あんまりわかりませんでしたけど往生堂も大変ですね……」
今日は出張である。なんか変死事件が起きたらしく、その葬儀を行うために1人、璃月の隣国である自由と風の国「モンド」までやってきた。もちろん徒歩である。ワープポイント縛りは足に来るな……。
「ええと、たしか清泉町でしたっけ」
残念なことにモンドの首都であるモンド城には行く用事がなかった。残念。なんでもこの変死事件、人里離れた場所で狩りをしたり山菜狩りしていて行方不明になった人間が数日後、干からびた状態で見つかるんだとか。それがもう既に四件起きてるとのことで。雇い主である胡堂主からは、原因究明も頼まれている。
「私、何故か知らないけど退魔適性あるだけなんですけどね……」
魔除けの塩ってことなのかな。確かに私の死骸である塩の花がある現在の塩ヶ宮周辺は魔物をほとんど見ないとは聞いたけど。お、見えてきた。大きな風車が目印の集落、清泉町だ。
「ドゥラフさんですね?私は往生堂の白亜と申します。依頼を受けて葬儀を執り行いにきました」
「あ、ああ……往生堂さんか。よかった。若い衆が二人も変わり果てた姿で見つかって……せめて安らかに逝かせてやってくれ」
「承りました」
ゲームでは
「……この二人は、どこを散策していたのか、わかりますか?」
「たしか……囁きの森、ですが。如何しました?」
「いえ、ちょっと。滞りなく葬儀を執り行いますので安心なされてください」
間違いない。あの遺体二つ共に纏わりついた刺々しい草元素の痕跡………だけど死んだはず。いや、つい最近死んだ魔神が蘇ったのをこの目で見たんだ。ありえないことではない。まずは、情報を得るために……モンド城の「エンジェルズシェア」に向かうとしよう。
王が存在しない国モンドの象徴たる湖上都市、モンド城に到着し。往生堂の身分書を衛兵に見せて門をくぐると、ゲームで全ての旅人が最初に見るであろうあの光景が広がる。ああ、感慨深い……。大通りを外れて裏通りを進むと、見えてきたのはテイワット最大の酒蔵アカツキワイナリーが経営する酒場「エンジェルズシェア」だ。中に入ると、さすがにまだディルックはいなかった。まあ多分まだ幼いはずだしね。タルタルと同じぐらいかな?しかしまあ、ここに来た目的は違う。一階を見渡して件の人物がいないことを確認すると二階に上がり、奥の席まで進むと、やはりいた。真昼間だというのに飲んだくれているフードを被った少年にしか見えない人物が。
「やあ。復活したと風の噂で聞いて、そろそろ来るんじゃないかな、と思ってたよ。久しぶり、ヘウリア」
「私も、貴方ならわかりやすい場所にいると思ってましたよ。“彼女”を討った時以来ですかね?バルバトス」
風の魔神バルバトス。自由を愛するモンドの神が扮する吟遊詩人が、そこにいた。
「ここではウェンティと呼んで?でも、よくこの姿で僕だとわかったね?」
「あの時の少年と瓜二つならわかりますよ。あの子はどうしました?」
「デカラビアンを倒した時に死んじゃったよ。アンドリアスが辞退して僕が風神になっちゃった。それで、君は何の用でここまで来たの?」
「変死体の葬儀を執り行うために来ました。今の私は往生堂でして」
「あ、もしかして
「その冗談、笑えないんですけど」
いや本当に。私はモラ帰派であって夢女子ではない。腐女子でもない。モラクスと夫婦とか恐れ多すぎるわ。ふくれっ面で「冗談じゃないんだけどなあ」とぼやくウェンティの真向かいに座る。本題に入るとしよう。
「その変死体を確認して確信しました。かつて、
「さすがだね。非力な僕じゃ手に負えないと思ってたんだぁ。手伝ってくれる?」
「そのために来たんです。情報を吐きなさい」
胡堂主からの指示と言うのもあるが。原神の序章に当たるモンド編には、そんな魔神は出てくることもなく記録も存在していない。煙の魔神とかと同じく、名前すら忘れられた木端の魔神の一人だ。七神じゃなくてそれが相手なら、まだ私でもなんとかなる。それに、過去に存在した魔神が復活した……デミ・オロバシと同じだ。ドットーレの断片がまた関わってない保証もない。潰せるときに潰しておかないと。
「あ、そうだ。指、一本でいいからちょうだい?つまみが切れてさ」
「あげませんよ!?塩をおつまみにするとか通ですね!?」
マジで指を食いちぎってきそうな勢いだったので、しょうがないので「器」を出してやったら目を輝かせるウェンティ。この吟遊野郎め。
「素晴らしい……これほどとは。ここから動かせないことが難点だが、この力は素晴らしい。真の力を取り戻せば、七神の一角を脅かすことすら可能だ……魔神の残滓は、私の好奇心を駆り立てるッ!」
囁きの森の地下深くに存在する「楽園」で、狂人が嗤う。その眼下では、茨に縛られ無理矢理食事をとらされている老若男女の姿があった。その中心を聖母の様な微笑を浮かべて歩く女が一人。
「私の可愛い子供達……しっかり、ゆっくり、味わうのですよ…?」
のちのロサリアを思わせるシスターの衣装を身に着け、その全身を拘束具の様に縛り付けている茨が特徴的だ。跳ねた髪が棘の様に見える深緑色の髪を腰まで伸ばし、茨を編み込んで三つ編みの様にしている。
自由の国における最大のアンチテーゼ。「支配」のデカラビアンとはまた異なる道「束縛」を進んだ排他的な魔女。茨の魔神エリゴルスが、そこにいた。
いそうでいなかったシリーズ、茨の魔神。デカラビアンの「支配」もなかなかだけど、「束縛」っていう排他的な自由のアンチテーゼってありかなと。相変わらず原作にいなかった魔神はなめてかかるヘウリアさん。この認識が塩華女帝と言われる由縁になってますが。
アンケートでは水神と票数デッドヒートを繰り広げてたウェンティ登場。最初はウェンティ優勢だったけどフリーナが越した時は笑った。ヘウリアが死んだ時期は多分まだ精霊モードだったと思われる。原作時間軸じゃなくてもちょくちょく変装はしつつ少年姿で酒場に来てそう。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
原作行く前にヘウリアに会ってほしい人物
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ドットーレェ!!(博士)
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判決を下す!(ディルック)
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吟遊野郎!(ウェンティ)
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荒瀧・唯我独尊・一斗(荒瀧一斗)
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俺が払うよ(タルタリヤ)
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グロシをかかげよ!(フリーナ)
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あらら~?(スカラマシュ)
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ハイドロポンプ(ヌヴィレット)