さて、今回は前回のヘウリアが覚醒している間に起きた三つの出来事を描かせていただきます。旅人視点、凝光視点、そしてモラクス視点です。そして、真の璃月編ラスボス登場です。楽しんでいただけたら幸いです。
消えた【公子】を追って辿り着いた璃月の財源、黄金屋。そこを守っていた兵士たちが倒れているのを見て【公子】がいることを確信して突入。大量のモラが積まれたその先に龍と麒麟が合わさった姿の岩王帝君の遺体……仙祖の亡骸を触れようとしていた【公子】を止めようと戦っていた私たち。私の風と岩の2つの元素を合わせた奇策を利用して仙祖の亡骸に近づき、その胸部に手を突っ込んで何も握れなかった【公子】は、笑い始めたかと思えば敵意を丸出しにして突っ込んできた。
「お、おい!?あんなやばい奴らを囮にして神の心を狙うなんて……夜叉たちと戦ってたのも演技だったのか!?」
「あれは俺にとっても想定外でね!これもそうさ!君たちが、俺より先に仙祖の亡骸から神の心を奪っていたなんてね!白亜の腰巾着と思っていたらとんだ隠し球じゃあないか!手加減しているとはいえ俺と渡り合えているんだ、誇るがいいさ!」
「だから、神の心なんてオイラたち知らないぞ!!」
「馴れ馴れしくしないで、盗人…!」
「そういうなよ!一緒にここまで来た、相棒だろう?」
そう言って仮面を被り、雷元素を迸らせると黒い衣装に変身して雷元素の武器を手に斬りかかってくる【公子】。速度も上がったせいもあり咄嗟のことに対応できず、被弾してしまう。
「ぐうっ!?その力……あなたの神の目は、水元素の、はず……!」
「ああ、これを知らないのかい?人造の神の目「邪眼」さ。神の目ほど便利じゃないけど生命力を供物に捧げることで別の元素を扱うことができる代物さ!」
「そんなことしたら、貴方の命が持たない……!」
「ハハハッ!いいさ、あの人と……白亜と互角以上に渡り合うためなら、この命惜しくはない!血湧き肉躍る戦いは、こうでないと!!」
「狂ってる…!」
「よく言われるよ!」
雷元素と水元素を同時に使い、さらには弓に双剣に槍と次々と武器を切り替えてくる【公子】の猛攻に押される。だめだ、勝てない……白亜のとっておきも水夜叉戦で使ってしまった。切札の元素解放を使おうにも隙がない、どうすれば……。
「っ、そこお!」
「うおっ!?」
私にある手札は3つ。武器の片手剣と、風元素と岩元素だ。ならそれをフルに使う。風の塊をぶつけて【公子】の手に握っていた水と雷の武器を拡散して破壊。とっさに取り出した弓から放たれた矢を片手剣で切り捨て、がら空きとなった胴体にミドルキックを叩き込んで蹴り飛ばし、元素爆発。竜巻を放つと同時に岩元素をまばらに飛ばして小石を混ぜ、殺意マシマシ竜巻を【公子】に叩き込み、砂煙が黄金屋に充満する。
「やったぞ!さすが旅人だぜ!」
「うん……。でも、仙祖の亡骸に神の心がないなんて、どういう……」
ことだろう、という言葉は続かなかった。いきなり床を砕いて地下に投げ出された私たちの見る前で、【公子】の邪眼から雷元素が迸り、神の目から溢れた水流と共に足元から包み込み、黒と紫の鎧に包まれていく。星柄のロングマントをはためかせ、長い角が生えた紫色の単眼が特徴の赤い仮面ですっぽり顔を覆い隠し、普段の2倍ほどの大きさとなった【公子】は雷元素の槍を手に空を舞った。
「魔王武装。もうオセルを呼ばなくてもいいし、ゆっくり楽しく第2ラウンドといこうじゃあないか!!相棒!!」
「ぐっ……白亜、みんな。外はお願い……私は、こいつを!」
死闘を繰り広げる私達はどちらも、外での歴史に残る激戦の蚊帳の外だとは。まだ、気づいていなかった。
七星としてこれまでいくつも策を練ってきた。その私をして、封印が解かれたオセルに続いてその妻である跋掣の出現は、想定外の事態だった。オセルの封印が解かれることは薄々わかっていたのだ。これほどの騒ぎを起こす理由ともなれば囮だと考えるのが妥当だ。わからなかったその主犯が塩華女帝だったこと、岩王帝君がやすやすと倒されたその理由だった。
オセルと応戦していた巨大スライムだった怪獣も対応しきれずに跋掣に足止めされ、オセルの放った海水の流星群により複製帰終機が少ないダメージを負っていく。足場を形成している岩元素の陣を維持することに集中しながら、状況を確認する。状況は最悪に近いが、それでも仙人たちと複製帰終機さえ守り抜けば、まだ勝てる。水弾ぐらいなら刻晴の指示で一兵卒でも数いれば防げる、そのはずだった。
「帰終機へのダメージだけ注意して……え、うそっ……」
「我は誰だ……お前は誰だ……!伯陽、お前はどこにいる……!」
「あぁあ……あぁああぁああっ!!!」
「白亜ッ……白、ッ、亜ァア!!」
「グウウッ!?すまない……破壊衝動に、逆らえない……ッ」
群玉閣から展開された帰終機用の足場の陣に、突如四つ出現した紫色の渦。そこから現れたのは、地上の璃月港で甘雨が率いた兵士や飛雲商会をお坊ちゃんとその友人たちが戦闘を繰り広げていたはずの仙衆夜叉四人。明らかに狂気に侵されている四人のかつての英雄は雷、炎、水、岩の弾幕を放ってきて。その全てが、高速で移動した護法夜叉大将が衝撃波を纏ってその全てを防御した。
「浮舎、応達、伐難、弥怒……お前たちに、この地を破壊させはしない……!」
「留雲、削月、理水。ここはわしらが死守する。オセルと跋掣は任せたよ」
「仙人たちだけに任せてられないわ、申鶴!私達も……!」
「ああ。師匠たちの邪魔はさせない」
「微力ながら、私も加勢いたします。天権は維持に全力を注いでください」
「暗部だからと出ないわけにもいかないわね……」
立ちはだかり、仙衆夜叉に立ち向かうのは護法夜叉大将、ピンばあや、刻晴に加え、留雲借風真君に連れられてきた申鶴に、本来は迎仙儀式のあとの催事についての会議のために群玉閣に待機していて巻き込まれた劇団「雲翰社」の社長である雲菫、さらに調査に出ていたはずの夜蘭。さらに海では完全に私達の味方らしい謎のスライム怪獣が跋掣に巻き付かれながらオセルの首の一つを殴りつけていた。もはや全面戦争の様相だった。
「……塩華女帝」
沖合で暴れる謎のスライム怪獣を覆う白い装甲を見て、裏切られた敬愛する人を幻視する。巨大スライムが現れるまで、私の目が確かなら璃月港で暴れる仙衆夜叉に追い込まれた甘雨や千岩軍を守るように現れた真白空我真君がオセルの出現の際に海に飛び込んだことでああなった。つまり、あの怪獣はあの方であるのはほぼ確信できる。だけど、何故なのか。岩王帝君を殺しておいて、何故今更。そして、私達を守るのか。
「……貴女を。信じて、よいのですね……?」
禁忌滅却の札を遣ってオセルを目覚めさせた黒きヘウリアを見咎めて、止めるべく戦いを挑んだのだが、二大武神と謳われた俺をして黒きヘウリアは強敵だった。ヘウリア程の精密さはないが、大雑把な故に殺傷力が高い黒い塩による攻撃は脅威でしかない。しかもあの黒い塩は業障と同一のものだ。止めるべく幾度もアレを受けた伐難は狂気に侵され、弥怒を道連れに果ててしまった。俺であっても二の舞にならないとは断言できなかった。障壁を展開して防ぎつつ、隙を待つしかない。じり貧だ。だがそれでもオセルと跋掣は他の者に任せ、俺が黒きヘウリアを止めなければ……!
「あーもう、モラクス!あてしも加勢するからその黒いヘウリア倒して璃月港守るよ!!アビス教団の姫になったけど、ここはあてしのもう一つの故郷だかんね!!」
「グレメリーか!?いや、今はありがたい!」
そこに現れたのは、共に璃月港を作った仲でありながら10年前のデミ・シトリウス襲撃の主犯らしい旧友グレメリー。咄嗟に岩元素の壁で視線を遮りながら、共闘の身を選ぶ。今は黒きヘウリアを止めることが何よりも先決だからだ。
「どりゃあああ!!」
「ああッ!?懐かしいな、グレメリー!私につけ!お前もこのクソったれな世界を燃やそうって腹だろ!!私が死んであんなに悲しんでたじゃないか!!」
損傷を受けた傍から自動的にその部位が崩れて自己再生している黒きヘウリアにグレメリーの認識焼却は通用しない。数千年前に理解していたことだ。むしろ、俺が少しでもグレメリーと視線を合わせれば共闘は不可能になる。気を付けなければ。
「やははっ!ワイルドなヘウリアも好きだけど生憎と、あてしの大好きなヘウリアは白いあっちの方なんだよ!あんたはお呼びじゃないっての!」
「ああ、あれはもうだめだ。私はよく知っている、私のことを。私が表に出た時点でアイツは終わりだ。友人たちが蘇って悪の手先にされ、オセルと跋掣に璃月港を滅ぼされるのは自分のせいだと確信しているはずだ。そうなれば終わりだ。私なんてその程度の存在だ」
そう邪悪な笑みを浮かべながら自分を貶す黒きヘウリア。ヘウリアが自分のことを卑下するのは慣れているが、それにしたってここまで悲観的ではなかった。理性がないヘウリアとも言うべきか、これがアイツの本心だというのか。
「そんなことはない。彼奴は強い、俺と肩を並べた女だ!」
「業障だからって三日三晩暴れ散らしたバケモノと一緒にしないでよね!」
「その節は迷惑かけたなア……だがな、モぉラクスぅ。私はその程度の女なんだよ。重荷を背負えばすぐに潰れてしまう、歴史に関わるべきじゃなかった、そんな本来は歴史にも名も残らない雑草だ!」
「違う。あいつは自分のことが嫌いなだけだ、本当は……」
「違わない!違わないんだよ、モラクス!ああなる前の私は!自分が弱いと自覚しているから!それでも愛した民がいたから!!死に物狂いで持てるものすべてを使って逃げて、逃げて!逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて!!!ようやく、安寧の地を手に入れた。崩落で頭さえぶつけなければ、そのまま私は……それをあいつは壊した。考えなしの馬鹿でモラクスに教えを請い!中途半端に強くなったせいで、ただ自分を殺した民を塩像にするだけだったはずの業障が、私になったあぁ!!その結果、どうなった!塩の都市どころか璃月が滅ぶところだっただろう!!そうなるぐらいならみんな死んでしまえばいいんだよ」
「お前は、何を言っているんだ……」
理解ができない言葉を並べる黒きヘウリア。数千年前はこんなことなかった。悪意と殺意を山の様な体にたぎらせて全てを滅ぼさんとしていたのに。だが、これだけはわかる。この、もう一人のヘウリアは。泣いているのだと。その背後で、超巨大な津波が今まさに璃月港を飲み込まんとしていた。
「見ろよモラクス!私のせいで全部死ぬんだぁ!なあ、何が違う?私は、その程度の……ッ!」
その時だった。爆発的な光源が、璃月港を照らした。振り返る黒きヘウリアの表情が驚愕に染まる。俺も、グレメリーも。その光景から目を離せなかった。津波を打ち消したその太陽が如き光源の中心にいるのは、白き人影。しかしその長く伸びた髪は灼熱に燃え上がり、顔以外の全身を白い装甲が覆っていてその表面は罅上に赤く輝いている。ヘウリアだった。何故か、炎元素のその身に宿らせたヘウリアが、そこにいた。同時に飛んできたそれをなんとか受け止めながら確認すると、その顔は希望に満ちていて。かつてスメールで見た炎神の如く空を駆り、大剣を振るってオセルと跋掣を圧倒し、蒸発させ縮ませていく。いくら海水を取り込んで回復しようがその傍から蒸発していく。もうあの渦の魔神夫婦に勝ち目はなかった。
「………は?なに、してるんだ……?神の目?そんな、もの……私が持つ権利なんてあるとでも?ハァ……ふざけるなふざけるなふざけるな!!!!!!!!!」
その光景を見て、驚愕の顔を憤怒に歪ませ、腕の一振りで止めようとした俺とグレメリーを薙ぎ払い、踵を返して炎のヘウリア……ではなく。オセルと跋掣目掛けて空を駆ける黒きヘウリア。
「そんな、願いィ……この私が!!否定してやる!!失望したぞ、オセル!跋掣ィ!その程度でしかないのなら……私の糧となレぇエええェエ!!!」
炎のヘウリアの横を通り過ぎ、オセルの体内に飛び込む黒きヘウリア。すぐに異常が起きる。波打っていたその海水の身体が瞬時に黒い塩へと変換されていく。夫の異変に驚き逃げようとした跋掣も黒い塩へと変えられ、一気に崩れると渦を巻いてその中心、黒きヘウリアに集束されていく。
「ぐっ、がぁあああああっ!!私を見て絶望したのなら、そのまま腐っていればよかったんだァ!!知らない様だから教えてやぐるァッ!これがぁあッ!お前のオ!私のオ!!本性だァアアアアアッ!!!!」
膨れ上がった質量がそのまま巨躯となっていく。人型ではない。近いのは蜥蜴だろうか。岩の様なごつごつとした極めて重厚でずんぐりとした鱗に包まれた四足歩行の体に、背中には亀の甲羅の様な岩盤や結晶が生え揃った様な山の如き様相で、巨大な大樹の幹の様な尻尾。そして岩の兜を被った耳元まで裂けた地割れの様な口を持つ頭部には螺旋を描く四本の角が生えており、唯一紅い両眼を有していて、それ以外の全てが黒曜石にも金剛石にも見える黒と白で彩られている。その異様は我が友、若陀龍王を思わせるがその大きさは二倍以上の山が如き巨体が璃月港の海に着水、発生した大津波を炎のヘウリアがかき消した。
それこそは、数千年前のヘウリアの死後、その業障が鉱山に憑りついて岩塩を中心に巨躯を形成した、黒きヘウリア本来の姿。黒きヘウリアはこれを何とか崩した後に出現した本体に過ぎず、俺達が総力戦で迎え撃った災厄がこれだった。その在り方は俺が塩の像でヘウリアを復活させるきっかけでもあり。現代によみがえったヘウリアには絶対に話してはならない禁句としていた怪物。
黒きヘウリアの正体は大体わかりましたかね。そんなわけで登場、白黒の若陀龍王の様な大怪獣。
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黒きヘウリアの本来の姿で若陀龍王に酷似した白と黒のみで彩られた岩塩でできた四足歩行の巨龍。ヘウリアが死した際に発生した業障が岩塩の鉱脈に憑りついて若陀龍王の形に自動的に彫り上げて生まれた山のような巨体の怪物。両前脚を基点として業障が宿った黒い塩を広げて自在に変形させる能力を持ち、黒い塩の剣山を生やすのをメイン武器とする。これにより、璃月の北方のある地域を死の土地に変えた。
璃月の歴史においては「突如出現した荒神」として知られており、三日三晩暴れ回った末に一夜にして突如消失したとされるが、モラクス一派の奮闘で巨体を破壊されたあと、中心に作り上げられた黒きヘウリアが出現、モラクスと激突したというのが真相。この際ヘウリアの様な神であっても業障となれば災厄にしかならないことを痛感した応達は発狂、伐難も友であるヘウリアを救おうと果敢に挑んだのとこれまではヘウリアが無意識に浄化していたため「許容上限」に気づけず業障に汚染されて狂乱し弥怒と同士討ちすることとなった。そのこともあり、璃月の歴史からは抹消されていた。言うなれば璃月版のアトラスのようなもの。
ヘウリアの理性が消えた結果として破滅願望の塊であり、自分が変えてしまった歴史は全部消えてしまえばなかったことになるという短絡的な考えからすべてを殲滅しようとする。話はできるが話は通じない。
ちなみにモラクスが「ヘウリアを塩の像として復活させよう」と考えたきっかけでもある。名前は日本神話の潮の流れを操る神、塩椎神(しおつちのかみ)から。
次回、炎のヘウリアVS塩椎龍王。蛍は間に合うのだろうか。
以下定型文になりますが、割と真面目に感想に飢えているのでどしどしいただけると本当に嬉しいです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
【公子】と戦う蛍は……
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早く倒して加勢に
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一緒に異変に気づいて駆けつけろ
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タルタル、強者がすぐ外にいるぞ
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焦土作戦実行!!!!!(ほたる違い)