あ、今回は魔神任務第四章の超特大ネタバレがございます。まだの方はお気をつけて……ペルクリの時は忘れちゃったしこの注意喚起、今更かな?楽しんでいただけたら幸いです。
サーンドル河にある
「私は最近璃月からフォンテーヌにやって来まして。安く美味しい庶民向けの店を開いたのですが。私モラはたくさん持ってまして、金儲けが目的というわけではないのです。うちの従業員も路頭に彷徨っていたのを保護した子達です」
ここまでは本当だ。でも、さすがに未来を知ってるとか言えるわけないので、ここからは嘘になる。どっかで嘘を信じ込ませるには八割の嘘と二割の真実がどうとか聞いた気がする。
「お腹を空かせた孤児達にもごちそうしているのですが、先日マジックショーをしていたのを見かけた双子の孤児が気になりまして。様子を見に行ったら、ここ数日見かけてないという話を聞いて。嫌な予感がして捜していたのです」
「失礼だが……一歩間違えれば誘拐犯のそれだね?」
それは自分でも思ったんです。でも他にいい言い訳思いつかなかったんです許してください本当に。冷や汗だらだらである。なんか罪犯せば逮捕されるのはいいとして、見世物にされるのはやりすぎだと思うの。
「誓って下心はありません。とにかく、心配なんです。最近は連続少女失踪事件なんて物騒な事件も起きてるじゃないですか。失踪しただけで嫌な予感がよぎるのもわかるでしょう?」
「それはそうだね。怪しいところもあるが……もし本当ならば一刻を争う。マルシラック、会員に通達して手掛かりを集めるんだ」
「承知いたしました」
「フローレント。ガブリエール商会のマーセルに言って、貴族たちに何か動きがないか調べるんだ。マジシャンという一芸がある子供だ、その腕で荒稼ぎしようとする輩に連れてかれたのかもしれない」
「すぐ行ってきます、ボス」
「あ、マーセルは……」
「なにか?」
「いえ、なにも……」
危ない、口走るところだった。ガブリエール商会のマーセル。その名は覚えているとも。ドットーレに次ぐ……は言い過ぎかもしれないが、メインストーリーに置いてトップクラスの悪行をやらかした男。原作の20年前、つまり現在から10年前から起きている連続少女失踪事件の犯人だ。「原始胎海」と呼ばれるフォンテーヌ人にとっては災厄に等しい代物により恋人を失った被害者……なまではまだ同情できるのだが。
その恋人を取り戻すために罪のない少女たちを攫っては実験体にして命を奪い、さらには原始胎海を希釈して作った「ロシ」と呼ばれるいわゆるドラッグに近いクスリを作って売りさばくことで研究費を荒稼ぎし、それには飽き足らず、自分を支援してくれたカーレスがロシの真実に気付きそうになると人を使って殺害しようとし、失敗してもなおカーレスを罠にはめて殺人の容疑をかけて「不義のカーレス」という不名誉な称号を与えた上で死なせ、そのくせ平気な顔で傷心のナヴィアを支えることで疑わせぬようにし、本編でもあの手この手で無実の人間にその罪を擦り付けるわ、自分の部下も口封じに殺すわ、もう同情の余地もなくド外道なのである。
で、問題なのがこの発端となった原始胎海。これがフォンテーヌ編における鍵であり、主人公である旅人がその存在を認知する超重要イベントというところなのである。つまり、ここで潰すわけにもいかないのだ。間に合えばマーセルに関わるなと忠告ぐらいはできたのだが、もうこの時点で
「さて、人払いはすんだ。ここからが本題だ」
「本題とは……?」
「違和感はあるが、その双子を思うのは本心なのは伝わった。だが、一つ解せないところがある。君の反応だ」
「なんのことでしょう?」
「私とは初対面のはずなのに、君は私を見るなり目を輝かせていた。まるで探し物を見つけた、とでも言う様にだ。私にも用があったのだろう。違うか?」
……さすがはカーレス・カスパールとでも言うべきだろうか。フォンテーヌに認められた治安維持組織である
あれ、なんだ。何か引っかかる。フォンテーヌ編は複雑怪奇すぎて何一つ欠けてもあの結果に持っていけなかったから、マーセルの被害者はもう諦めて原作通りにするしかないと、そう思っていたけど。もしかして。もしかしてだけど。………この原作知識と塩の魔神としての力を使えば、原作通りの状態にしたまま犠牲者を減らせる……?問題は天理だ。どこから見てるかわからない、テイワットの超越者。フォンテーヌの物語は、奴にあることが視認された時点で詰む。最悪フォンテーヌ人全てが死ぬ。それを回避するには、回避するには……。
「…………カーレスさん。先ほどの、双子について違和感があると、そうおっしゃいましたね」
「ああ。なんだろうね、他の孤児たちにもごちそうしていたのだろうが、わざわざその子達だけを捜しているというのが気になったかな」
「それは、私が答えを知ってる状態で経緯を無視してるからに他なりません。そもそも私は、その子達に会ったことも、見たことすらないのです」
「それなのに、根拠もなくその子達の身柄を案じていると?」
「いいえ、根拠ならあります。私は、未来が見えるのです」
「!」
鍾離にすら言ったことのない、告白に。カーレスは目を見開いて、そして顎に手を添えた。
「……すまないが、信じられないな。まだ君が連続少女失踪事件の犯人で、その子らを誘拐しようとしていた、なら納得できたのだが」
「では、そうですね。貴方にはクレメンタインという妻がいて、娘のナヴィアを出産すると同時に病死した。違いますか?」
「それは、調べれば誰でもわかることだ」
「ではこういうのは如何でしょう。貴方は不治の病を患っている。そうですね、五年後には残り5年の命……つまり今から10年しか生きられないほど進行している。違いますか?」
「なぜそれを……マルシラックにしか話していないはず……」
だろうな。娘のナヴィアにすら死んでも隠し通してた秘密だ。主治医にして執事のマルシラックにしか話してないと思ったよ。
「5年後。貴方は連続少女失踪事件が長年対立しているロシを流している組織の仕業だと気付きますが、ロシの売人殺しの罪を着せられ告発されます。しかし、今真実を明かせばナヴィアが標的にされると悟ります。不治の病もありナヴィアを守り切れないと悟り、貴方は「決闘」を申し出て、「不義のカーレス」という悪名と全てを抱えたまま死ぬことを選ぶのです」
「待て、何の話を……っ」
このフォンテーヌでは、被告人が告発内容に不服をもった際、命と誇りをかけて告発取り下げの決闘を挑むことが出来るシステムが存在する。まあつまり、最強の決闘代理人と戦い勝利すれば無罪を勝ち取れるシステムだ。しかし正直言って、黙って死ぬか戦って死ぬかのどちらかしかない地獄の選択肢であり、もちろん負ければ罪人としてそのまま死ぬことになる。五年後のカーレスは、それを選ぶのだ。
「その相手はクロリンデであり、彼女は貴方を殺した罪悪感とナヴィアに対する負い目を感じながら5年を過ごすことになります。そして今から10年後、ある転機が訪れる。ある事件の裁判からナヴィアとその相棒が連続少女失踪事件の真相に気付き、犯人を告発するのです」
「待ってくれ……」
ついには頭を抱え始めるカーレス。だがしかし待たない。こっちもこの告白は賭けなのだ。
「そして、その発端となった事件の裁判で濡れ衣を着せられたのが……10年後、フォンテーヌを代表するマジシャンとなった、件の孤児たちなんです」
「まさか……?」
「しかし問題が起きまして。フォンテーヌ廷に来る直前、一週間前になりますか。リフィー地区で起きた孤児院の崩壊をご存じでしょうか」
「ああ、それはスチームバード新聞で見たが……」
「それ、やったの私です。正確には、私と従業員である二人が、ですが。本来なら私が関わらなければ、二人のうち一人が死に、もう一人が孤児院を引き継ぐことになる……はずだった。しかし私は、見捨てることができなかった。そのせいで本来孤児院を引き継いだ子が保護するはずだった孤児の双子が、私の知る未来の通りならばとある貴族に養子にされ、女の子はさらに売られて慰み者にされる……そんな運命に見舞われるのです。私が孤児の双子を助けたい理由はこちらとなります。ご理解いただけたでしょうか」
「……理解、したつもりだ。病について知っているのが真実だと告げている……」
荒い息で紅茶を一口啜るカーレス。さて、この人に会えて私が喜んでた理由、だったか。
「もちろん、私は連続少女失踪事件の犯人を知っています。その人物が貴方と接触する前に警告するつもりだった、というのが私が喜んでた理由です。遅かったようですが」
「なら、すぐに特巡隊に……」
「しかしそうもいかないのです。フォンテーヌの予言、ご存じですか?」
「ああ、知っているとも。【フォンテーヌ人は皆、生まれた時から「罪」を抱えており、どれほど審判を行なっても、それが消えることはない。やがてフォンテーヌの海面が上昇し、罪を背負いし人々は海水に飲み込まれる。人々は皆海の中に溶け、水神は自らの神座で涙を流す。そうして初めて、フォンテーヌ人の罪は洗い流される】……だろう?」
「率直に言えば、10年後にその予言は実現します。しかし、その連続少女失踪事件の犯人が裁かれることがきっかけに、その予言は思わぬ形で果たされることとなるのです。これはいわゆる予定調和でして、何か崩れるだけでももしかしたら最悪の結末へ至るかもしれません。ですが、見て見ぬ振りもできません」
「……それが、私に話してくれた理由だな?」
もうなんか一気に老け込んだ気がするカーレスのその言葉に頷く。これは、私の一世一代の大芝居だ。それを成し遂げるためには、共犯者が必要だ。
「単刀直入に言います。カーレス・カスパール。私はこの未来を崩したくありません。故に、10年後まで連続少女失踪事件の被害者を救い出しつつ、犯人には事が上手く進んでいるように見せかけて騙しとおす。その演劇の共犯者に、なっていただけませんか」
「………いいだろう。その提案に、乗ることにしよう」
深く熟考したカーレスのその言葉に、私は安堵のため息を漏らした。
「だが一つだけ聞きたい。君は、何者だ?」
「私は白亜。通りすがりの…………塩の魔神です?」
「それは…………通りすがっては、ダメなのでは?」
個人でだめなら組織の力を借りればいいじゃない。初めて自分の秘密を共有した共犯者カーレス。ナヴィアと旅人が相棒なので、ヘウリアと彼に相棒関係になってもらいます。どっちかというとパトロンかな?
水神の真実について話さずに未来の説明するのが至難の業だった。でもリネリネを保護する理由が本当にどうしようもなかったから仕方ないね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
怒涛のフォンテーヌ編。誰視点を見たい?
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フリーナ
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ヌヴィレット
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ナヴィア(15歳)
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クロリンデ(16歳)
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タルタリヤ(14歳)
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シュヴルーズ(17歳)
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エスコフィエ(16歳)
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リオセスリ(18歳)