次の展開がまた長丁場になりそうなので、今回からいつもよりだいぶ短い別キャラ視点の短編を連続で書いて行こうかと。まずはエスコフィエ(16歳)。楽しんでいただけたら幸いです。
私はエスコフィエ。まだまだ新人だが、「ホテル・ドゥボール」のシェフで立派な料理人だ。
料理の勉強のために、一度食文化も有名な隣国、璃月に旅行に行ったことがある。見た目も味も一級品な数多の料理も私を感動させたが、その中でも特に印象に残ってた料理がある。璃月で最も愛される国民食とされる「揚げ切り芋」だ。驚くべきことにただ、細切りにしたジャガイモを高温の油でサッと素揚げして、塩を振りかけただけのもの、である。
これは二大武神として璃月に伝わる塩華女帝……塩の魔神ヘウリアが自ら考案、調理して璃月の民に振る舞ったものであり、驚くべきことに数千年前から何も改良することなくずっと人気を有している料理らしい。岩王帝君や
私としては数千年前とかいう太古の代物で、作り方も雜なこともあって期待はしていなかったのだが、一口食べて評価が一変した。外はカリカリ、中はホクホク。ジャガイモのよさをそのまま活かし、塩をかけただけというシンプルな味付けが素材の良さを引き立てている。長年愛されていることも納得だ。数千年前にこんなものを発明しただなんて、まさに革命だったことだろう。
そして、最近できた飲食店「往生堂フォンテーヌ支店」の店主が璃月人であるらしく、その揚げ切り芋がフォンテーヌにまで進出してきた。しかも、さらなる新料理を用意してだ。その名もハンバーガー。挽き肉の生地を円形に纏めて焼いた平たいハンバーグの様なものを、レタスやチーズと共に円形で味の薄く歯切れがよいパン二枚で挟んだものだ。値段も安く貧民層から大人気らしい。
確かめないわけにはいかない。私はようやくできた休日を使って往生堂フォンテーヌ支店を訪れていた。従業員は店主を除くと美人な女性二人と、双子と思われる子供二人。ホテル・ドゥボールとは規模が違うながらも、アットホームな空気がなかなかいい。奥で料理していた店主が私を視界に入れるなりビクゥ!と跳ねていたのが少し気になった。私はまだ無名のシェフだから知られてないはずなのだけれども。
「いらっしゃいませ。ご注文はなににいたしますか?」
「店主のおすすめをいただけるかしら?」
厨房に一番近い席に座り白黒の髪の従業員にそう伝えると、真っ白な髪と肌の店主は一瞬考えてから調理を行う。ひき肉を焼き、それを他の具材と共にパンで挟み、恐らく特注と思われる網の様な器具に入れた細切り芋を油に入れてサッと揚げる。手際がいい。五分もかかることなくそれは持ってこられた。店主自ら手にした普通の銀の御盆に乗せられた、串で刺してずれないように固定されたハンバーガーと、添えられた細切り揚げ芋。さらに、コップに入れられたバブルオレンジジュースも一緒に置かれてある。
「チーズバーガーセットです。どうぞ」
「ありがとう。ところでこれは、貴方が考案したのかしら?」
「……そういうことに、なりますかね?見様見真似みたいなものなんですけど」
そう、頬を搔きながら苦笑いする店主。見様見真似?嘘だ。私の知る限り、このような斬新な料理はこれまでなかった。それともこの料理を考案したものが、彼女の師匠としていて、なんらかの理由で亡くなり彼女が世に出した、ということなのだろうか。細切り揚げ芋といい、璃月人の発想力には驚かされるばかりだ。
「いただきます」
淑女としてはしたないが、そういう食べ方ということで手に持ち、一口頬張る。肉汁が溢れ出し、それがレタスやチーズ、そして薄味のパンと合わさり……美味しい。雑ではあるし、粗を探そうと思えばいくらでも出てくる。しかしこれは、健康を度外視した味は、罪な味だ。これを私の考えた科学料理の技術を加えたら、もしかしたら至高の料理も夢では……。
「美味しいわ……特にこの、塩加減。料理の過程を見ていたけど、雑に見えてしっかり計算されていたのね。それに使われている塩も淀みがない一級品じゃないかしら。これを安価で出すのはもったいないわ」
「はへ?あ、いや。元々お金が無くて食事もろくにできない人たちのために出しているので……」
「その精神、感服したわ。貴方、研鑽を積めば素晴らしい料理人になると思うの。私と一緒に、ぜひ……」
「やあやあハクア!今日も僕が来てあげたぞ!」
店主に詰め寄る途中で、フリーナ様が来て固まる。あわ、あわわわわわ。生フリーナ様!まさかこんなところで会うなんて!まさかこの往生堂フォンテーヌ支店が彼女のご慧眼に叶ったというの!?すごい、すごいわ。尊敬するわ。私もいつかフリーナ様に私の料理を気に入ってもらいたいわ!
「あ、いらっしゃいませ。本日はどうします?」
「今日は照り焼きハンバーガーを所望する!甘辛いタレだと聞いてるよ!僕を満足させられるかな?」
「かしこまりました」
固まっている私の横の席に座るフリーナ様が、私に気付いて顔を輝かせた。カワイイッ(断末魔)
「まさか、君はエスコフィエじゃないか!噂は聞いてるよ!あの頑固なホテル・ドゥボールの料理長を実力で黙らせたらしいね!今度食べにいかせてもらうよ!いいかな!?」
「は、はいぃ……いつでもぉ……」
決めた。ハクアと呼ばれた店主への対抗心がメラメラ燃える。フリーナ様を満足させるのはこの私よ!
「エスコフィエ絶対、雑な味だって怒ってるよなあ……フリーナの手前言えないだけなんだろうなぁ……」
限界フリーナオタクなエスコフィエ概念。こんなかわいい子が次のガチャで復刻ですってよ奥さん。スカークだけ引いてエスコフィエ引けなかった民なので狙いたいけどファルカも狙いたい。辛い。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
10年後、ヘウリアは……
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旅人と旅をする
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往生堂フォンテーヌ支店を続けてる
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ファデュイにいる
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メロピデ要塞にいる