今やってるイベントの皇女様を始めとしたモンドの人々がひたすら楽しそうでなにより。クレー親子のヤバさを再確認しつつ、そう言えば今の時系列ならアリスが旅していると思われる時期なので、もしかして出せるんじゃないかとも考えてたり。
今回はヘウリアVSクロリンデ(16)。楽しんでいただけたら幸いです。
今日も今日とて、命と誇りをかけて告発の取り下げを要求してきた犯罪者との決闘を制する。今回の相手は殺人を犯してそれを認めず、往生際が悪く代理決闘を申し込んできた小悪党だった。発狂しながらでたらめに振り回される剣を一歩も動くことなく防ぎ、飛び込んできたところを一突き。それで終わり。見世物感覚で見に来ていた観客は、私の背後で崩れ落ちた男に湧きたっている。
「……よくもまあ、飽きないものだ」
曰く、史上最年少にして歴代最強の決闘代理人。雷鳴すら置き去りにする神速の剣士。カーレスの秘蔵っ子。必要ないとは思うがフリーナ様の警護を任せるなら間違いなくクロリンデ。……そう呼ばれているのは知っている。私が私でいられるのは、カーレスさんとその娘ナヴィアの前でだけだろう。剣を振るい、剣身を濡らした血を振り払う。こうすれば、観客は満足して歓声を上げ、喝采を奏でる。なんとも、虚しいものだ。
「……うん?」
そのままその場を去ろうとしたところで、観客の中に異物が紛れていることに気付いた。悲しみと恐怖、そして怒りが入り混じった複雑な表情を私に向けていたのは、白髪に白い肌の美女。いつの間にか
「っ!」
やってきた警官隊に後始末を任せながら彼女に視線を向けると、あちらも気づいて視線を向けてきて。目配せして、民衆から離れた路地裏まで移動する。すると程なくして、白亜さんはやってきた。
「こんにちは、白亜さん。買い物帰りだろうか?」
「え、えっと……お疲れ様です、クロリンデさん。ちょっとアンティークにこだわろうと思いまして……」
挨拶をすると、白亜さんは一瞬信じられない様に目を見開いて、無理矢理納得させるかのように頭を振って、返してきた。ここまでわかりやすい反応をされると、さすがに気付く。この人は、殺人を忌避している。
「私の仕事を知って、恐怖……もしくは軽蔑したのだろうか?」
「……い、いえ。決闘代理人ということは知ってましたし、なんというか……初めて見たもので。ちょっと、ショックを隠し切れないというか……」
私と彼女が初めて会ったのは、先日休暇でカーレスさんのもとに出向いた際に、子供達をナヴィアと共に世話を引き受けた時だ。その時は、子供に悪影響が出ると思って仕事のことまで話した覚えはなかったのだが……それほどフォンテーヌ廷で有名になった、ということだろうか。
「白亜さんがそう思える人間でよかった。このフォンテーヌの大人たちは、その感覚が麻痺している」
「はい……先ほども、人の死に沸き立つ民衆に対して恐怖と怒りが湧いてました」
ああ、さっきの表情は私に対してのものではなかったのか。そのことに少し、安心した。白亜さんは見ず知らずの子供たちのために命をかけれる典型的な“正義の味方”だ。彼女の家族だという先日友人になったクリーヴとペルヴェーレも、詳しい話は聞けなかったが白亜さんに救われたのだという。先日はヌヴィレット様から生き延びたと聞いて思わず決闘代理人に誘ったが……それはやはり間違いだった。私みたいな人間と関わり合いにならない方がいい。そう、離れようと背を向けたのだが。
「すまない。気分のいい話ではなかった。……っ!」
「……無理しなくていいんですよ」
どこに紙袋を置いたのか*1、白亜さんが私を背後から抱きしめていた。彼女の双丘が背中で潰れる感覚に、思わず赤くなる。全てを包み込む海を思わせる潮の匂いに身をゆだねそうになるが、なんとか気を保ち離れようともがくも、女性とは思えない怪力で抑え込まれている。
「な、なにを……」
「……人を殺しておいて、平然でいられるはずがありません。あの男を仕留めた貴方の表情には、僅かながら後悔の念が見えました。貴方は無感情に見えるけどそんなことない。子供たちに好かれるような優しい人です」
「貴女に私のなにがわかると言うんだ……放してくれっ」
「……確かに私は貴方のことを何も知らないかもしれない*2。ですが、人を殺した際の罪悪感は、よく知っています。私も、そうでしたので」
「……貴女も?」
そう肩越しに視線を向けると、白亜さんは私を放して頷いた。その顔は、後悔に満ちている。
「昔の話です。私は、大事なものを守るために剣を手にした。弱いままじゃ何も守れないので、師のもとで戦い方を学んだ。そして止む無く敵を手にかけましたが、その時の罪悪感は今も手に残り続けています。こんなもの、本当なら貴女の様な若い女の子が背負うべきじゃないんです」
「だが私は、特殊な家系で……それに決闘代理人の職を預かっている以上、私自身の意見は重要じゃない。剣がこの手にある限り、私はフォンテーヌの法律と規則を代表している。だから……」
「それは理解してます。カーレスやナヴィアのような親しい者に打ち明けれるようなものでもないことを。でも私は、限りなく他人に近い知り合いです。そんな私になら、吐き出すことはできませんか?」
「……なら、お願いがある」
「なんでしょう?」
彼女の優しさにつけ込む様で悪いが、私はこの方法しか知らない。
「剣を、交わしてほしい」
フォンテーヌ廷の壁の外、人が誰も来ないようなひっそりとした空き地にて、私の剣が白亜さんの握る純白の剣と激突する。白亜さんは最初は「私弱いので……」と断っていたものの、私の真剣さを受け取ったのか応じてくれた。私の渾身の突きを難なく受け止めるその姿を見て確信に至る。この人は、私より強い。
「はあ!」
「もっと本気で来ていただいて結構ですよ!」
距離を取り、手にした拳銃から放った弾丸が、一瞬だけ現れた白い結晶で受け止められ、残りの弾も初撃でタイミングを計ったのか全て斬り払われる。弾を斬る、そんな芸当は私でもできない。本気を出せと言われても、これが私の全力だ。過大評価されている感じがする。これでも私は、今日まで無敗を貫いてきた。その私が、完全に押されている。
「それで弱いとは、とんだ謙遜だ…!」
「このぐらい、貴女もできるようになりますよ」
「そう思ってもらえるのは光栄だ!」
弾丸をばら撒き、その対処に追われている隙を突いて背後に回り込み、最高速度の刺突を繰り出す。完全な死角だ。入る、そう確信したところで我に返る。今私は、手合わせではなく本気で彼女を仕留めようとしていた。慌てて止めようとするがもう遅い。確信できるほどの完璧な一撃。しかしそれは。
「殺気が無かったら、アウトでした」
「……参りました」
振り返りざまに彼女の剣で私の剣を絡めとられて無力化され、くるりと宙を舞った私の剣を手にして己の剣と共に突きつけた白亜さんに、両手を上げて銃を落とす。決闘代理人になって初めての、敗北だった。
「……たしかに、人を殺すのは苦しい。できれば降参してほしいと、いつも思っている。例えそれが、相手の誇りを傷つける行為であってもだ。だが私には相手を降参したいと思わせるような、そんな強さはない。それでも決闘代理人である限り、避けられないと思っていた」
「……ですよね」
「だから。お願いだ。私を、弟子にしてほしい」
「はい?」
私の申し出に、呆けた顔を浮かべる白亜さん。少し面白い。
「貴女は、先ほどの妙技を私にもできると、そう言ってくれた。だけど私にもう師はいない。これ以上強くなるためには、研鑽を重ねるしかないと、そう思って……だから白亜さんに師事をすれば、私はもっと強くなれる…相手を降参させる強さを、身に着けられる!」
「いやあの、10年もすれば私なんかあっさり勝てるようなフォンテーヌ最強の決闘代理人になれますよ…?」
「私を弟子にしてくれ、白亜さん……!」
「え、ええ……」
本気で狼狽している白亜さん。かなり長い時間思考して、冷や汗をだらだら流しながらも、ゆっくりと錆びたマシナリーのような動きで頷いてくれた。
「し、しかたありませんね……これも責任、ですか……はあ」
「これからよろしく頼む、白亜師匠」
後日、カーレスさんに報告したらすごくびっくりしながらも祝福してくれた。そして私は、今日も今日とて時間の合間に、相手を買って出てくれるペルヴェーレやクリーヴと剣を交える。私とまともに戦えるものが同年代にいることに驚きながらも、好敵手を得てそれまでより充実した日々を送っている。
クロリンデ「彼女は私の理解者になってくれるかもしれない人だ…!」
ヘウリア「また原作ブレイクしそうだけど多分私の責任だよね……」
カーレス「二大武神から教えを乞えるなんて最良の環境だぞクロリンデ」
タルタリヤ「え、羨ましい!」
ペルクリ「ファデュイとして育てられていた私達と真っ向から張り合えているのヤバイ」
リネリネ「どっちもがんばれー」
モラクス「へウリアから弟子ができたと手紙が来てご満悦」
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
10年後、ヘウリアは……
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旅人と旅をする
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往生堂フォンテーヌ支店を続けてる
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ファデュイにいる
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メロピデ要塞にいる