今回は前回のクロリンデ視点の続き、をナヴィア(15歳)視点で描きます。楽しんでいただけたら幸いです。
最近、クロリンデが暇さえあれば白亜さんのところに出向いている。白亜さんたちが仕事の時は私と保護した子供たちの世話したりお茶会したりしているが、仕事がないときは白亜さんから手ほどきを受けているらしい。あの、フォンテーヌ最強とも噂されているクロリンデが、である。
白亜さんとは、本当に偶然出会った。もしも私が偶然、パパたちが子供達を保護しているところに出くわさなければ、多分私と関わらせなかったんだろうなあとは確信している。本名ではなくザルツなんて偽名まで名乗って
白亜さんの店に何度か足を運んだことがあるが、もうなんというか罪の味とでも言うべきなとんでもない料理を出していて、この間は最近話題の新人シェフであるエスコフィエが唸っているのを目撃した。心なしかフォンテーヌ廷の人々がふくよかになってる気がする原因だと思ってる。私も食べ過ぎて太ってしまわないか心配で最近はランニングしている。
白亜さんの家族であるペルヴェーレやクリーヴ、リネとリネットも相まって、最近はちょっとしたフォンテーヌ廷の名物になってたりする。ペルヴェーレは男にも女にもモテるぐらい顔がいいし、クリーヴは天真爛漫ながらも小悪魔的なところもあって、黒一点であるリネはマジックが得意で双子の妹のリネットに変装して入れ替わったりして客引きが上手く、リネットは無口でクールだけどたまに機械に触れて何故か壊してしまって、その持ち主に白亜さんが必死に謝るのが様式美。なんというか、キャラが濃いのである。しかも常連にフリーナ様がいて、暴走した機械に追い回されるや否や神様だから対処できるはずなのに逃げ回って民衆を楽しませてたりする。
そんな白亜さん。普段はぽやぽやしているが、滅茶苦茶強い。フォンテーヌ廷の外で行われる白亜さんの授業をたまに見学させてもらっているのだが、ただでさえフォンテーヌ最強といってもいいクロリンデと一対一で互角に渡り合えるペルヴェーレとクリーヴもすごいのに、白亜さんはその三人がかりでもあっさり対処し地に転ばせている。なのに本人は「もっと本気を出していいんですよ?」と煽っている始末だ。いや、あれは多分煽ってないのか。本気でそう思っているに違いない。
「大丈夫?クロリンデ。はい、バブルオレンジジュースよ」
「助かる、ナヴィア。……しかし、ここまであっさりあしらわれると、自信を無くすな……」
「いや貴女も大概人外の動きしてたわよ。白亜さんが強すぎるだけ」
「同感だ。我々の動き……というよりは癖を完全に読まれている。槍を主に使い始めたのは最近なのだが」
「何故か私の動きにはついてこれてないみたいだけど、知ったことかとばかりに普通に対処してくるのはずるいと思う」
休憩するクロリンデにバブルオレンジジュースを渡していると、ペルヴェーレとクリーヴも深く頷きながらやってきたので、バブルオレンジジュースを差し出すと笑って受け取ってくれた。最近はこの四人でいることが多い。同年代なので気安く接せるというか。最近もクロリンデの趣味であるテーブルトークシアター*1をやったり、お茶会に誘ったりしている。もう何年か経ったらクロリンデと同じ幼馴染、もしくは親友と呼べる関係になるだろう。
「ふむ……教えるとなれば私にできることは全力で教えるだけなんですが、さすがに三人相手だとそんな暇ありませんね……」
一方、同じぐらい戦ってたはずなのに疲れが一切見えない白亜さんが、いつの間にか手にした古びた器を手に唸ってる。よく見たら容量いっぱいに塩が敷き詰められていた。どういう代物なんだろうかと首を傾げていると、「休憩終わり。集合ー」と気の抜けた声が響いた。
「えっとですね。ペルヴェーレとクリーヴにはもう見せているから隠す理由もないので明かしますが、これは
「え?それは……国宝なのではなかっただろうか」
さすがにパパから聞いたことがあるので、クロリンデもそれを思い出したのだろう。名前までは知らなかったが、璃月を代表する既に死した魔神である塩華女帝の残した遺物で、確か最近盗難されて一個は取り戻せたとか聞いた気がする。なぜかペルヴェーレとクリーヴがジト目で白亜さんを睨んでたので、まさかと視線を向ける。
「窃盗したものだとしたら、パレ・メルモニア所属として私は白亜さんを逮捕しなければならないのだが……」
「え。あ、いや。そうか。いやそうではなく。拾ったんですよ?はい」
明らかに動揺して見え見えの嘘を吐く白亜さんに、クロリンデの疑惑の視線が向けられる。すると、溜め息を吐いたのはペルヴェーレとクリーヴだった。
「白亜さん……隠しているつもりなのだろうが、私達は知っているぞ」
「まあ隠す理由もわかるから黙ってたわけだけど」
「な、なんのことでしょうか?ぴゅひゅー」
ジト目な二人にへったくそな口笛を返す白亜さんに、私とクロリンデが困惑していると、特大の爆弾が落とされた。
「口笛できてないぞ白亜さん。あなたが、塩の魔神ヘウリアその人だということだ」
「実は生きていたのか生まれ変わりなのかは知らないけど……ヌヴィレット様との戦いで見せたあの塩の軍勢は、もう確定でしょ」
「「はあ!?」」
「……えへっ?*2」
クロリンデと二人して驚愕して白亜さんを見つめると、当の本人は小首をかしげて可愛く誤魔化した気でいるらしい。いやしかし、そう聞いたら納得だ。クロリンデたちを圧倒したのはもちろん、ヌヴィレット様から逃げのびたとも聞いたし、リネットの話だと巨大マシナリーも一人で倒したとも聞いてさすがに誇張だと思っていたのだが。ヘウリアなのだとしたら納得だ。
「……他に知ってるのはカーレスとヌヴィレットさんぐらいなので、本当に秘密でお願いします……」
しまいには、綺麗な土下座をかましてお願いしてくる白亜さん。神の威厳どこ……?私達が承諾したのを確認すると、何事もなかったかのように立ち上がる白亜さん。なんというか、面白い人だなあ。
「まあとにかく。バレたからには開き直ります。私のものなので盗品ではないこれを使って、一気に鍛えます。あ、ナヴィアも入ります?護身は身に着けておいた方がいいですし、手加減しますよ?」
「私?手加減してくれるなら参加するのはいいけど、武器は持ってないんだけど……」
「武器ならほら、作れますので」
そう言って、器の中に手を入れ当たり前の様に片手剣を引き抜く白亜さん。白亜さんそれで手品やっても食っていける気がするわ。本当に。くるんと回して剣身を握って持ち手を差し出してきたのを受け取る。持ちやすくてびっくりした。
「最初は片手剣でいいと思いますが、そのうち自分にぴったりな武器を見繕ってくださいね?おすすめは両手剣です。サブウェポンで銃とかあると便利ですよ?」
「え、まさか……」
「あの、白亜さんそれってもしかして……」
説明しながら器を逆さまにして、塩の奔流が溢れ出して足場を埋めていくのを見て顔を引きつらせるペルヴェーレとクリーヴ。それらが人型を形作り、剣を、斧を、槍を取り私達を取り囲んでいく。
「見よ、再現したるは我が友の無双の軍勢。我が民は無力なれど、無力故にそれらを守る術として編み出した我が奥義。やさしーく蹂躙なさい、塩の軍勢…!」
「「「「「オォオオオオオオオオッ!!」」」」」
生み出されたのは、兵隊を模したと思われる動く塩の像たち。へっぴり腰で片手剣を構えるしかない私を囲む様にペルヴェーレが槍を、クリーヴが片手剣を、クロリンデが銃と片手剣を構える。
「申し訳ありませんが私の師もスパルタだったもので。加減はします、頑張ってくださいね?」
そんな一言と共に、100はいそうな軍勢が私達に襲い掛かった。
結論から言うと。私は岩元素の、クロリンデは雷の、神の目をそれぞれ得て、クロリンデがぶっつけ本番で放った元素爆発によって軍勢は一掃されたことで終結した。多分命の危機とか友達を守らないととかそんな思いに応えたのかもしれない。ただクロリンデは無茶な動きしたせいで完全に動けなくなり、白亜さんは満足そうにズタボロな私達を眺めて頷いていた。神は、人の心がわからない……白亜さんの言っていた両手剣とサブウェポンの銃、真面目に検討しよう……。
クロリンデとナヴィアに身バレ。これでヘウリア=白亜だと正体知ってるのは、鍾離他璃月の仙人たち、凝光、ウェンティ、ペルヴェーレ、クリーヴ、カーレス、ヌヴィレット、ナヴィア、クロリンデになるかな?
白亜さんは無自覚系強者なので、教えるのは下手です。でも実戦形式で教えてくれるからまだましかもしれない。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
10年後、ヘウリアは……
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旅人と旅をする
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往生堂フォンテーヌ支店を続けてる
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ファデュイにいる
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メロピデ要塞にいる