塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。ファルカ狙って課金してきた星5がジンだった時の、何とも言えぬエモさと悲しさよ。ファルカ来てたらワンチャンエウルア狙えたのに……。

今回ストーリーが結構動きます。タイトル通りあの男が登場。楽しんでいただけたら幸いです。


隊長!?隊長なんで!?

 はてさて。リネリネを家族に迎えてから一ヶ月が経過した。カーレスと共に未来のための暗躍をしつつ、滞りなく毎日を過ごしていた……はずだった。ちょっと、まずいかもしれない。

 

 

「ごきげんよう。ここが、一ヶ月と少し前にオープンしたという往生堂フォンテーヌ支店で間違いないだろうか」

 

「………リネ、リネット。今日はこれにて閉店しますので、客にはテイクアウトを提供してください。2人は私と一緒に」

 

 

 正午過ぎ、客が捌けてきた頃合いになって来店したその人物の異様なプレッシャーに怯えている四人にそう指示を出し、リネとリネットを安心させるようにポンポンと頭を撫でて、警戒してながらも怯えているペルヴェーレとクリーヴを念のために名前を呼ばずに連れて、店の奥にある共有スペースを親指で指して、来訪者に促す。

 

 

「……要件を窺います。「隊長」さん」

 

「話し合いの場を設けてもらい、感謝する」

 

 

 その人物は軍帽と一体化した仮面で顔を覆い黒づくめの軍服の様な衣装を身に纏っている長身の大男。ファトゥス第一位【隊長】カピターノその人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、あの!クリーヴとペルヴェーレは立ったまま後ろに控え、私が座った椅子の対面の客用のソファに座り、クリーヴがカタカタ震えながらなんとか淹れた紅茶をどうやってかしらないけど口にするカピターノに、現実逃避から帰還して実感する。あの、第二位の博士にすら危うく負けかけたのに、一位が乗り込んでくるって何!?ハードモード過ぎませんかね?!この人、原神でもトップクラスに強い炎神マーヴィカと、どっちも弱体化してる状態で互角に渡り合い、某最高のヒーローになる物語とか七つの玉を集めて願いを叶える物語も顔負けの超絶バトルを繰り広げていたバケモノなんですが!?

 

 いやまあ隊長がいい人なのは知ってますし、卑劣な権謀術数を得意とするファデュイ*1の中では異例も異例すぎる武人気質であり、侵攻も真正面から正々堂々と行う上に「戦いとはただ勝てば良いという訳ではない」と語り、弱った相手の虚を突くような真似は一度もしていないのは、知ってはいますが!

 

 でも大前提が違うんよ!まず、私は塩の魔神ヘウリア!神の心こそ持ってないけど、名前も知らないファデュイの元締めである氷神……氷の女皇から見たら目の上のたん瘤なのはほぼ確実!よりにもよって私の塩は草元素や氷元素に対して強いし!

 

 次に、博士と公子と召使と戦って退けちゃってる!博士に至っては二度目は自爆だけど二回!召使に至っては私が直接ではないけど殺害しちゃってる!ファデュイ最強の11人たる執行官を二人倒して一人殺してるとか、目を付けられていても文句は言えない!いや、文句は言ってやる!タルタルは若気の至りでいいけど博士も召使も外道過ぎるのが悪いんです!

 

 最後に、ペルヴェーレとクリーヴの存在。召使を殺してケジメをつけたとはいえ、彼女たちの本来の所属はファデュイだ。いわば脱走兵なのである。よく考えたら上層部に顔知られていてもおかしくないんだよね。そんな二人を看板娘にして人気店なんて開いていたら、そらバレますわ。でももうこの二人は私の家族だ。この子達を守るためなら、最悪刺された瞬間に全力開放して塩の像にして同士討ちしてやる!例え不死身の肉体だろうが塩漬けは意味がないぞ!あ、でもそうしたらナタのあれで詰むか。まずい、どうしよう。

 

 ポーカーフェイスをなんとか保ちながら、脳裏でぐるぐるぐるぐる、あーでもないこーでもないと考える。すると、紅茶を飲み終えたのか一息ついた隊長が、カップをコースターに置いてこちらを見た(目は見えないけど多分)。

 

 

「既に存じているかもしれないが、俺はファトゥス第一位【隊長】カピターノという」

 

「ア、ハイ。存ジテオリマス」

 

「今回、俺は氷の女皇の命令を受けて、一週間と少し前に失踪した【召使】クルセビナの消息を調査していた」

 

「ア、ハイ。……失踪?」

 

 

 ずっと片言で棒読みになってたけど、あれ。なんか違和感。もしかして。クルセビナの名にびくっと肩を震わせたクリーヴとペルヴェーレの振りむいて視線だけで「落ち着いて」と伝え、考える。……もしかして、バレてないのか?

 

 

「うむ。フォンテーヌのリフィー地区に存在していたファデュイが運営し召使が院長を務めていた孤児院、壁炉の家(ハウス・オブ・ハース)が瓦礫の山となっていた。中からは保護していた孤児と思われる遺体が数多く残っていたが、その中に【召使】の姿はなかった」

 

「でしょうね……」

 

 

 落ち着くために、私もぷるぷる震える手でなんとか手にした紅茶を飲む。少し零れて飛沫が太腿*2に落ちた、熱い。

 

 

「むっ。大丈夫か?」

 

「いえ、お気になさらず……それで、こんな飲食店に何の御用でしょうか?」

 

「フォンテーヌの特巡隊から全ての遺体を回収したのだが、壁炉の家(ハウス・オブ・ハース)のリストと数が合致しなかった。【召使】以外にも行方不明になった者がいる。同時期に、この店がオープンしたと聞いた。関与を疑うのは当然だ」

 

 

 その言葉を聞いて、安堵する。顔まではわかってない、ただ時期が被ったから怪しまれているだけらしい。さすがファデュイだ、末端の人間なんか顔まで全部記録してるわけがないか。

 

 

「まさか。この二人は私の知り合いから託された子達ですし、その行方不明者二人とは何の関与も……」

 

「白亜さん!」

 

「え?」

 

 

 そのまま何とかお茶を濁そうとしていると、焦った様子のペルヴェーレから悲鳴のような制止の声。振り向くと、二人が青ざめていた。そこに、背中から突きつけられる隊長の淡々とした声。

 

 

「……行方不明者が二人とは俺は言ってなかったが、何故知っているのか。教えてもらおう」

 

「……すぅー」

 

 

 思わず深呼吸して、錆びたブリキ人形の如く隊長と向き合う。頭の中で、チーン、と。そしてちょんまげゴリラが変顔で合掌するイメージ*3が浮かぶ。終わったかもしれない。

 

 

「……えっと。私みたいな一介の料理人が、その【召使】さん?を殺せるわけないじゃないですか……」

 

「俺は【召使】は消息不明とだけで、殺したとは一言も言ってないぞ」

 

「ぴぃ!?」

 

 

 駄目だ!私に策謀とか無理だ!今やってる計画もほぼほぼカーレスが組み立てたものだし!私に腹芸は無理だあ!

 

 

「そして、貴女が執行官に勝てる理由ならば、残念ながら証拠がある。特巡隊が壁炉の家(ハウス・オブ・ハース)跡地で塩の残骸を見つけたと報告を受けている。フォンテーヌは淡水湖だ。海水の様に塩は存在しないし、海水だとしてもあんな陸地であれだけの量が見つかるのは不自然だ。そして最近、ファデュイでは執行官が二度も破られた存在の話が広がっている。……貴女が塩の魔神ヘウリアならば、そうおかしい話ではあるまい」

 

「フッフッフ……フッフッフッフッフ!」

 

 

 やべ、思わず某海賊漫画のドクサレピンクみたいな笑い声を出しちゃった。もうなんか、詰んでてヤバい。なんだろう、やってる実感もなく参加させられていた将棋で詰め将棋をされた感覚だ。泣きそう。でも、それでも。

 

 

「そして勘違いしているようだが、ちゃんとリストには写真も名前も存在する。黒のメッシュが入った白い髪のペルヴェーレと、赤い髪のクルセビナの実の娘のクリーヴ……そこの二人と合致するな?……彼女たちを連れている、ということは……クルセビナを殺したのは、お前か。ヘウリア」

 

「ペルヴェーレ、クリーヴ!逃げてください!」

 

 

 こうなったら徹底抗戦である。取り出した「器」に手を突っ込み、そこから塩の大剣を引っこ抜いて二人を庇う様に構える。同時に、取り出した真白空我真君の仮面を被って少しでも私だとバレないように努める。これから起こることは、間違いなく民衆にも見られてしまうから。

 

 

「「白亜さん!」」

 

「はああ!」

 

「むっ……!?」

 

 

 机を吹き飛ばす勢いで、振りかぶった塩の大剣を薙ぎ払う。柄にもなく全力だ。ヌヴィレット相手に惨敗して、なんでか師になってしまったクロリンデやナヴィアたちを鍛える中で、私もちょっと鍛え直した。今までの戦闘スタイルでは、ヌヴィレットみたいなシンプルパワー負けする相手にはどうしようもなかったからだ。窓を突き破り、外に飛び出す隊長。しかし、その手には怪しく光る片手剣を手にしてしっかり防いでいたようだった。

 

 

「……これほどとは。二大武神は伊達ではないな。あのクルセビナが負けるわけだ!」

 

「もうこの際正体がバレてフォンテーヌにいられなくなったとしても構いません。2人が逃げる時間を稼ぎつつ、死なない程度に痛い目見てもらいます!」

 

「来るか…!」

 

 

 足裏から塩を噴射した勢いで踏み込み、下から振り上げた一撃を受け止め、天に打ち上げられる隊長。私はロケット噴射の如く両足から噴出した反動で跳び上がり、隊長に斬撃を叩き込む。空中で体勢が崩れていたところを狙った一撃は隊長を捉え、壁の上まで斬り飛ばした。

 

 

「ぐぬう……!?傷が異常に痛む……これは、塩か。内部破壊とは」

 

「ぶっ飛べえ!」

 

 

 私の塩の大剣を受け止めた右腕を押さえて何故か動きを止めた隊長に、私は空中で生成した塩の塊を足場に蹴って真っ直ぐ突撃。そのまま塩の大剣を叩き込むも、隊長が振るった剣により破壊されたため柄を投げ捨てて、壁の上で距離を取りながらフランキスカ*4を両手に二本形成。次々と投擲しては形成し、さらに投げつけるのを繰り返す。しかしそれらは凄まじい速さで振るわれる剣により全て砕かれてしまい、隊長を傷つけることは叶わない。

 

 

「なら!」

 

「くっ…!?」

 

 

 「器」に手を突っ込んでスレッジハンマー*5を形成しながら突撃し、「器」から引き抜かれて完全に形成が終わったそれを両手で振り抜き、咄嗟に逆手に構えて防御した隊長の剣に叩き込み、一瞬拮抗するも力のままに殴り飛ばす。隊長は錐揉み回転しながらフォンテーヌ廷から遥か遠くに飛んでいき、私はスレッジハンマーを手にしたまま跳躍して追いかける。全身の骨を叩き砕いてやるから覚悟しろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目先の敵を追い払うことに集中していた私は、気付かなかった。

 

 

「フォンテーヌ廷の外に行ったよ!ペルヴェーレ姉さん、クリーヴ姉さん!」

 

「街のみんなは混乱してたり、演劇か何かだと思ってる人が多いみたい…」

 

「ありがとう、リネ、リネット!ペルヴェーレ、私達も早く……どうしたの?」

 

「……ちょっと立ち眩みがしただけだ。早く、追おう」

 

 

 リネとリネットに案内されてクリーヴと共に私を追いかけていたペルヴェーレの心が激しく乱されたことで、黒く変色した手の浸食が早まっていたことに。

*1
戦闘狂のタルタリヤすら必要とあらば策を講じる

*2
往生堂フォンテーヌ支店の制服は往生堂のもの、つまり胡桃と同じなので太腿が露出している。好みに応じてズボン(ペルヴェーレ)とかスカート(クリーヴ)だったりするが白亜はそのまま。

*3
呪術廻戦の東堂葵

*4
大体が湾曲した刃を持っている斧の一種で飛び道具。同じく小型の片手斧であるトマホークと異なり、斬撃ではなく投擲に特化している

*5
両手持ちで使用する大型のハンマー




・ヘウリア(だいこんらんのすがた)
 隊長とかいう作中屈指の実力者を前にして致命的ポカをやらかしまくってストレスが限界値を超えた結果、ヒャッハーしちゃったヘウリア。大剣、フランキスカ、スレッジハンマーと武装が容赦ないし、全身の骨を叩き砕いてやるとか思想も野蛮になってる。仮面を被って正体隠すっていう必要最低限のことはできるが正常な思考をしてないバーサーカー。だれかとめろ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

一応考えてるけど、原作前のスカラマシュは

  • ヘウリアと邂逅してほしい
  • ヘウリアと会わないでほしい
  • ヘウリアに一方的に因縁づけててほしい
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