今回は、10年前編の転機に当たる話となります。ヘウリアがフォンテーヌに来て引っ掻き回した運命が集束する、そんな話。楽しんでいただけたら幸いです。
「なぜ司法の国で、暴力で解決しようと思ったのか」
「法で戦うとこっちが勝ち目ないからです」
隊長と激突した夜。ポワソン町にある
「それはなぜだ?」
「まだ話してませんでしたが、リフィー地区で起きた孤児院の崩壊を私たちがやった、というのは覚えているでしょうか。ペルヴェーレとクリーヴはそこの子供だったのですが、【召使】により殺し合いを強要され、他の子供を殺害した後にどちらか一人、というところでギリギリで私が乱入。殺し合いを止めて、それに怒って襲い掛かってきた【召使】を三人で倒し……この言い方は言い訳ですね。そう、殺害したのです」
「……孤児院を壊しただけではなかったという事か。【召使】つまりファトゥスを殺している、と。そこに、ファトゥス第一位がやってきた……それはたしかに、パニックに陥っても仕方がない。貴方は魔神でありながら小心者だからな」
「よく理解してらっしゃる……」
「だがしかし、街中で戦闘を始めるのはさすがに看過できない。しかも、先に手を出したのはそちらだと聞いたぞ」
「デスヨネー……いやあの、先手必勝という言葉があってですね…?隊長は本当に強くてですね……?最弱の私からしたら二人を守るためには先手必勝なり卑怯な手を使ってでも勝つしか……」
「どう考えても戦う気があるなら一人で来るはずがないと思うのだが」
「おっしゃるとおりでございますです」
言い訳失敗。ナヴィアの呆れた目が滅茶苦茶痛い。やめて、リネとリネットたちの前でかっこわるい無様晒したくないんです。え、自業自得?それはそう。
―――――「ヘウリア様、それはどうかと思います……」
くっ、イマジナリー甘雨にまで冷たい目を向けられてあることないこと……じゃないな、過去に言われてたな。
「それに遠目で見えたが、あれだけ殺意に塗れた攻撃で【隊長】が死んでいたらどうするつもりだったんだ」
「え、あれぐらいで死ぬはずないでしょう。【隊長】ですよ?」
カーンルイア人だから不死身だし、本編だと神の上位存在たる死の執政を相手に一矢報いた人ぞ?あれぐらいで死ぬはずない。なんなら四肢の一本でも奪えるか微妙なぐらいだし。
「私、塩の魔神ヘウリアですよ?俗世の七執政にもなれなかった負け犬ですよ?魔神戦争を勝ち残れなかった敗北者で、塩とかいう、炎でも水でもなんでもない、微妙なものしか操れない神ですよ?」
「その微妙なもので地形を変えているんだが、それについて自覚はあるんだろうか」
「この間、フリーナ様が塩華女帝の劇をしていて知ったけど、自分が手を出せない民に刺されて死んだのは敗北者でも何でもないと思うんだけど」
「遠目で見ていた感じ、【隊長】は対処するので精一杯に見えたわ。あのまま続いてたら多分白亜さんが勝ってたと思う」
カーレス、ナヴィア、クリーヴに全否定されたんですが。リネもリネットも頷いてるんじゃないですよ。ちゃっかり私の正体を知ってしまってからに。いやまあ、特に変化もなくただ慕ってくれるのは嬉しいんですけど。
「いやいや。私が隊長に勝つとかありえませんって。相討ち覚悟で腕一本持っていけるのがせいぜいでしょう」
「「「………」」」
「三人して「駄目だこりゃ」みたいな顔しないでくれます!?」
その顔モラクスや帰終や閑雲とかにもされたって!私なにか間違ってます!?
「この自己肯定感が低すぎる神様は置いといて、だ」
「どうやって誤魔化したものかしらね……」
「小賢しく仮面を被ってたから、誤魔化すことはできると思うけど……」
「小賢しくって何ですか!?判断間違えてなかったでしょう!?」
「「「喧嘩を売る時点で間違えてる」」」
「ぐう」
ド正論返されてぐうの音しか出ない。すると、気を利かせてなのか人数分の紅茶を入れていたリネとリネットのうち、リネが紅茶を机に置いて手を上げた。
「はい!僕に案があります!」
「なんだいリネ君」
「マジックってことにできないかな?【隊長】も【真白空我真君】も食べにくる!って触れ込みで宣伝ってことにするんだ!」
「お兄ちゃん、天才」
褒められて照れるリネと、やんややんやと持て囃すリネットにほっこりしていると、カーレスたちは真面目に検討している様だった。私も混ざりたいけど、やった張本人なので大人しくするしかない。
「なるほど、それならば。【隊長】も穏便に済ませようとしていた……あちらも合わせてくれる可能性が高い」
「でも、壊れた店舗や山はどうしたら……白亜さん、思いっきり壊しちゃったし……」
「あ、それなら!店舗は
「誰が頓珍漢ですか。って、え?いやあの、あれ結構疲れる大技でそんなほいほい使えるわけじゃ……」
「私たち相手に大人げなく使ったのに?」
「いやあれはあとから四人だけでいいとは気づきましたし……」
「壊したものを直すのは当然だと私は思うわ、白亜さん」
「あの、クリーヴ?私たち孤児院を壊しているので人のこと言えませんよ?」
「労働力を用意できるなら使わない手はないな」
「実質私一人なんですが?」
ナヴィアの提案に物申すが、論破されてしまった。はい、大人しく頑張ります……。
そのあと、塩の軍勢でめちゃくちゃ頑張って修復して全部演出ってことになり、事情を大体察したのか溜め息を吐いていたヌヴィレットにも許された。フォンテーヌ人は「演出」ってだけで大体済ませちゃうらしい。なんでもかんでも劇や演出として消費するのは職業病……いや国民病?みたいなものではあるが、今回は助かったので何も言うまい。
一方その頃、北国スネージナヤにて。牢屋にて拘束されたペルヴェーレと、見張りを退室させて牢屋の外で椅子に座って視線を合わせているカピターノが会話していた。
「……礼を言う、【隊長】。貴方が【道化】に引き合わせてくれなかったら、この力で我が身どころか、クリーヴや白亜さんたち家族を滅ぼすところだった」
「いや……すまない。ヘウリアのことを黙っておくためには、君がクルセビナを倒したと報告するしかなかった。この拘留は一時的だ。すぐにでも氷の女皇から呼び出しを受けるだろう。【召使】はテイワット中の
「お母様……【召使】を最終的に始末したのは私の力だから間違いではないさ。だが何故白亜さんのことを話さなかった?貴方はむしろ被害者だ、報告しても白亜さんは文句を言えた立場ではない」
「いや、フォンテーヌにヘウリアがいると報告するわけにはいかない理由があるんだ。ペルヴェーレ、君は【博士】を知っているか?」
「執行官第二位、とは聞いているが……詳しいことは何も」
「あの男は、ヘウリアに敗れている。それ故なのか、ヘウリアにご執心だ。執行官同士の諍いは原則禁止されているから、ヘウリアが【召使】の後任になるなら問題はなかったのだが……そうでないのならば、居場所を知らせるのは悪手でしかない。手段を択ばない【博士】ならば、ヘウリアの家族を人質に取りその身柄を得ようとした挙句、彼女の逆鱗に触れるのは容易に想像できる。そうなれば」
―――――あの修羅の如き暴力が、【博士】どころかファデュイに向けられることになる。
その言葉に、ペルヴェーレは生唾を飲み込む。【隊長】を圧倒し追い込んでいた、初めて見た恩人の本気は恐怖すら抱くもので。
「君を安全に返すことができない場合でも、ヘウリアの逆鱗に触れることになるだろう。俺から進言して、君を返すように伝えるつもりだ」
その言葉を聞いて、ペルヴェーレは考える。自分の恩人を付け狙う手段を択ばない外道がいる。さらには
「……後任の【召使】に、前任【召使】を殺したものを据える、という話だったな?ならば、私が。次の【召使】になる。私が、子供たちと……クリーヴやリネにリネット、そして白亜さんを守ってみせる」
「おや、どうやら歴史が修正されたみたいだよ?修正力ってやつかねえ」
「ええ?あの神様がしっちゃかめっちゃかにしてた運命が、落ち着いたっていうの?バーべロス」
『アリス。貴女も人のことは言えないわ。ヘウリアよりかき乱してるじゃない』
「私はいいのよ!だって彼女、厳密にはちょっと違うけど……
――――――【盤外降臨者】なのよ?」
最後の最後に爆弾お届け。時系列的には旅人の双子はもうナドクライに落ちてるはずだから、第五降臨者に当たるんですが最後に出てきた魔女会によると「盤外降臨者」と呼ばれてる模様。地味に旅人、パイモンを釣り上げるまでの「旅」が謎だよね。モンドを旅してたならモンド城を知らないわけがないし。
というわけで往生堂フォンテーヌ店の黒一点リネの提案で(物理的に)解決。そしてペルヴェーレも【召使】になる道へ。【博士】の信頼がないのは仕方ないね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
現代編は……
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できるだけ早くやってほしい
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もう少しフォンテーヌ編やって欲しい
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なんなら魔神戦争時代に戻ってもいい
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他の国も行きながら過去編やってほしい
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作者のペースでいいよ