今回はタイトル通りのあの男登場。楽しんでいただけたら幸いです。
どう考えても厄ネタの匂いしかしないバケモノ、蟲の魔神アトラス。あれ本当に魔神なんですかね、太古にテイワットに落ちてきたスウォームが進化した姿と言われた方が納得するんですが!後ろに視線をやりながらナヒーダとドリーとドリーの荷物を抱えながら全力疾走する私を、当たり前のように背中の翅を羽ばたかせてふわふわ浮いて追いかけてくるアトラス。
「逃がすと思うのか?」
そう言って、自分の鎧の一部を千切り取り、当たり前のように千切った部位を再生させながら投げつけてくるアトラス。なんのつもりだ、と落ちてきた鎧の一部を迂回しながら先に進むと、背後で鎧の一部が蠢いて巨大な蜻蛉の様な魔物に変形。見た目通りの凄まじい速さで突進してきて、咄嗟に宙返りで避けると先にあった川に飛び込んで巨大な水しぶきを上げた。
「恐らく、自らの血肉を媒介に蟲の魔物を生み出すんだわ!」
「本体が健在な限り無尽蔵の兵隊ってことですか……」
ナヒーダの考察に唸るしかない。シトリウスと似てるな。あっちは同じ姿の兵隊を煙から無尽蔵に生み出す能力だったけど、アトラスはその上位互換ってことか。しかも本体も再生力高いって、一撃で倒さない限り無理じゃね?スメールの三大魔神が力を合わせて勝ったらしいけど、なにをどうやって勝ったんだ!?
「すばしっこい……こういうのはどうだ?」
そう言って、その場にとどまり翅を高速で羽ばたかせて不可視の衝撃波が次々と襲い掛かる。ソニックブーム…!当たればただじゃすまない。さらに空中にとどまりながら、また鎧……よく見れば内側が血肉だから、あれは単なる甲殻らしい……の一部をむしり取り、右手に握って変形させ、巨大な百足の様な鞭を生み出すアトラス。翅のソニックブームで逃げ道を絶ってから、百足の鞭を振りかぶって大地をブルドーザーのように耕しながら迫りくる。
「まっず……!?」
「ヘウリア…!」
「おぉたすぅけぇええ!?」
咄嗟にドリーの荷物を盾にして直撃を受け、ナヒーダとドリーを庇う様にして宙に吹き飛ばされる。衝撃で三人バラバラに空中に投げ出される私達。そんな私達を丸呑みにしようと、大口を開けながらアトラスが突っ込んでくる。さらに、体勢を立て直したのか巨大蜻蛉もそれに追随する形で追いかけてきていた。
「我らが糧となれ…!」
「一か八か……!ソルトスプラッシュ!」
重さのせいか、一番下にいる私を手始めに喰らおうと迫るアトラスに、私は右手に塩を集めて、今度は散弾にすることなくアトラスに向けて放出。
「ぐああぁあああっ!?」
「掴まってください!」
「手をつなぎましょう!ドリーも!」
「ちょっと待ってくださいまし、大事な商品なんですのぉ!」
アトラスの目を潰した上でソルトスプラッシュの反動で空中を移動し、ソルトスプラッシュを放ってない左手でナヒーダの右手を掴み、ナヒーダはドリーの右手を。そしてこんなときでもがめついドリーは左手で根性なのか荷物を引っ掴み、私達は錐揉み回転しながら落ちていき。上空で目を押さえたアトラスと巨大蜻蛉が正面衝突するのを見届け、木々に飛び込んだ。
「ドリーの荷物がクッションになって助かりました……」
「素晴らしい荷物ね、ドリー」
「ああ!命はモラに変えられないとはいえっ、わたくしの商品がダメになってたらどうすれば……」
「言い値で買います」
「毎度ぉアリアリぃ!で・す・のん!」
ドリーの荷物を緩衝材にして何とか無事ですんだ私達。ドリーが泣きじゃくっていたので、声でバレるわけにはいかないとばかりに金で黙らせながら、周りを見渡す。見覚えのある景色だ。
「おや?おやおやおやおやおぉや!幸運ながら、例の洞窟の傍まで落ちた様でぇすわ!」
「それは助かります、そこで身を隠しましょう」
「ごめんなさい……わたくしのせいで」
「こうなったら一蓮托生なので気にしないでください。私はナヒーダの第一の賢者、なんでしょう?」
「…っ、ええ!」
泣きそうになってたナヒーダを元気づけるためとはいえ認めてしまった。どうしよう。どうか世界が私を忘れてくれませんでしょうか。そんなことを考えながら、ドリーの荷物を担ぎつつドリーの案内で川辺の洞窟に入る私達。たしかなんかの世界任務で訪れる洞窟だった気がする。奥には誰の者かもわからない簡易的な生活スペースがあり、そしてまさかの先客がいた。長身で痩せている、本を手にした少年だった。
「どうした?お前たちは休まないのか?俺は休むが」
この構文は、間違いない。若き日の姿のアルハイゼン……!なんでここに!?そしてアーカーシャは大丈夫か!?と見てみるも、緑色の光は見えない。
「アーカーシャはどうしたんですか…?」
「ん?ああ、今のアーカーシャはあの蟲の魔神の情報を誰もが知りたがっているせいで情報の洪水が起きていてな。読書の邪魔だったので自宅に置いてきた」
「なんというか、アルハイゼンらしいというか……」
「何故俺の名前を知っている?名乗った覚えはないが」
しーまった。緊張感がほどけてまたいらんことを言ってしまった。どうしよう、と考えていると不安げな視線を向けてくるナヒーダと目が合った。ドリーはマイペースに商品のチェックしている。
「えーと、ですね。こちらにおわすは知恵の神クラクサナリデビその人!民の名前など知っていて当然なのです、そうですよね!?クラクサナリデビ様!?」
「え!?そ、そうよ!わたくしは民のことみんなわかるの!」
「その目……なるほど、確かにクラクサナリデビなのだろう。だがお前が知っている理由にはならないと思うが」
「まさに正論!?」
アルハイゼンにレスバで勝てる人いるんですかね……まあでも、ナヒーダをクラクサナリデビだと疑わない辺り、なんというか合理的である。七執政は目がみんな特殊だから少し知識があるとわかるよね。え、私?ただ綺麗なだけで普通の目ですが何か。
「この人はヘウリア。わたくしの一人目の賢者よ」
「賢者というには頭が足りないように見えるが…?」
「失礼ですね!?不本意ですよ私としても!あ、いや、ナヒーダの賢者が嫌なんじゃなくてですね?私よりもふさわしい人がいずれ現れるって話でしてね?」
反論してたら泣き出しそうになってたナヒーダに慌てて弁解する。どうすりゃいいんだ。
「まあいい。大方、クラクサナリデビを攫った蟲の魔神から逃げて来たということなのだろう。ここは俺の隠れ家だ。ゆっくりしていくといい。家賃は1200モラでいい」
「こ、い、つ!クラクサナリデビ様にまで吹っ掛けるなんて、ドケチですの!」
「貴女が言いますか?」
「ところで、アルハイゼンと言ったかしら?貴方は、なんでここに?」
「スメールシティは今や少しでも蟲の魔神の情報を探ろうとすると教令院に捕縛される地獄になっているのでな。俺としても今回の事件は興味深かったので、関連する本だけ持ち出して真実を知ろうとした。それだけだ。クラクサナリデビに出くわすのはもちろんのこと、最も謎に包まれているという塩の魔神に会うとも思わなかったが」
相変らずストイックだなあ。もう教令院なのだろうか。というか普通に窃盗してるのさすがに笑うんだけど。
「もうなんか誤魔化してもいいことないのでもう私が塩の魔神だと肯定します……」
「そうか。はい、これ。味を変えたかったんだ。塩をもらえるか?」
「神様を調味料にするなんていい度胸ですね!?」
「いたい」
手にしたクラッカーみたいな菓子を差し出してくるアルハイゼンを思わずどついた。なにがおかしいのかナヒーダが笑ってるので、まあいいか。
スメールは奇人変人しかいないのだろうか。アルハイゼンだったら何してもおかしくないと思うんだ。
アトラスの能力は自分の血肉を媒介にした蟲の魔物生成。あとシンプル身体能力でソニックブーム起こす無法スペック。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
スメールにてヘウリアに関わって欲しい人(年齢は憶測含まれていて、また既に出会うことが決まってるキャラもいます)
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アルハイゼン(15歳)
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カーヴェ(17歳)
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セノ(16歳)
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ティナリ(15歳)
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ファルザン(110歳)
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ニィロウ(9歳)
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ディシア(18歳)
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キャンディス(18歳)
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ドリー(19歳)
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ドニアザード(12歳)